2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
提供:京都リサーチパーク株式会社
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――最初に、お二人のご経歴についておうかがいできますでしょうか。まず、中村さんからお願いします。
中村多伽氏(以下、中村):私は京都大学に入り、そのあとは国際協力団体の代表をして、カンボジアに2校の学校を建てて、それからニューヨークに留学して、ビジネススクールに通いながら報道局でインターンをしていました。それをきっかけに、在学中に社会課題を解決する人材を育成する「taliki」という会社を立ち上げて、いま1年半経ちました。
中馬一登氏(以下、中馬):僕は京都産業大学に入って、就職活動をしたんですけども、「ちょっと違うな」と思って、1年休学。それで海外でバックパッカーをして、卒業のタイミングが東日本大震災のときだったので、卒業して東北に行ってですね。
そのときに、ボランティアをしながら出版社を作ろうと思ったんですけど、ボランティア団体がお金が回ってなくて、「今からチームを2つに分けるぞ」って言われて、宮城の現場でがんばるチームと東京に乗り込んでお金を稼ぐチームに分けたときに、僕、お金を稼ぐチームに入って。
そこから給料0円で、ずっと起業家のカバン持ちをやって、東京で2年半ぐらい過ごして、独立して京都に帰ってきて、いまに至るという感じですかね。「我がままであれ!」という経営理念を掲げ、株式会社美京都(みやこ)という会社をやっています。
――日本ではまだ起業をする学生はそこまで多くない印象ですが、就職活動中はどんなことを考えていましたか?
中馬:就活って、大学生3回生の夏以降じゃないですか。僕はそのときまで「THE 普通の大学生」だったんです。だけど、一番就活をがんばった優秀な先輩に「どこの会社に行ったらいいですか?」と聞いたら、「ある関西本社企業が最強だよ」と言われたんですよ。
「なんでですか?」と聞いたら、仕事は楽だし、休みも長期休暇も取れるし、給料もいいし、最悪転職したいと思ったらすぐに転職できるブランドもある。最後に、すごくかわいい子しかいけないブライダル系企業の内定者と合コンできるっていう……。
(一同笑)
中馬:そりゃあ、マジで行くしかないですよね。しかも、たまたま僕の大学は学内推薦枠があったんですよ。初めて「京都産業大学に来てよかった」と思いました。
(一同笑)
中馬:でも、毎年一人受かるか受からないかというようなすごく狭き門だったから。「これはもう、お前行くしかないよ」と先輩にのせられて、「行きます」って言って学内推薦応募して、受かったんですけど。OBの人から、ずっと本質的なことを聞かれるわけですよ。「お前、なんで来た?」「なんで、この会社じゃなきゃあかんの?」とか。
「こういうことがしたいです」と言うと、「なんでそれなの?」とずっと聞かれるなかで、「なんでここじゃないといけないのか」「なんで仕事しなきゃいけないのか」って追っていくと、「あれ? 俺のしたいことができるのって、この会社じゃないよね」と。
「もっと世界を良くしたい」とか思っていたし、「せっかく生まれてきたんだから、野望を持って希望をもっと生み出したい」と思って、選考が進んでいたのにお断りして、休学して海外に行ったんです。そこで「あぁ、やっぱり僕は自分で何かをしていく道がいいな」と思いましたし、大学に復学してからも「なにで起業しようかなぁ」と思っていました。
そのときは本がすごく好きで、本が世界を変えると思っていたので、「出版社を作ろう!」と考えていたときに震災が起きた。僕は宮城にすごくお世話になっていて、会社はどこでも作れると思ったので、ボランティアをしながら宮城で出版社を持とう、という流れですね。だから、そのOBのおかげです。
(一同笑)
中馬:就活していく中で「なんで、その仕事をしないといけないのかな」「何のための人生なのかな」「友達って、なんなんだろう」とか、どんどん哲学にいったんですよ。その中で、「この会社に行くのは違う」と思った。自分探しと言ったら簡単なんですけど、「世界を良くしたかったら、1回世界を見よう」ということで休学して回った、という話ですね。
中村:私の場合は……。人間って、もともと「生まれる・生まれない」の選択ができないじゃないですか。生まれたあとに「存在し続ける・し続けない」の選択肢があって、「し続けない」を選択して死ぬ人もいるし、それもうまくいかないパターンもありますよね。例えば、人間って8階から落ちないと死なないって言うじゃないですか。
中馬:そうなの?
中村:5階から落ちて、致命傷でも、死ぬ確率は意外と低いんですよ。
中馬:どこの情報!?
(一同笑)
中村:まぁ、それはともかくとして、基本的に多くの人は毎日存在し続けることを選択しなきゃいけない。「じゃあ、その命をどう使うか」と考えたときに、私は「存在し続けたい人」のために使いたいなと思って。
トランプの大統領選があったときに、アメリカの報道局で働いていたんですけど、弱い立場の人にインタビューして、それを広げてみんなに助けてもらうようなイメージだったんです。でも実際に入ってみると、大きい報道局だったので拾いきれない声もあれば、どうしてもこちらが立てばあちらが立たずという状況もあって。
例えば「メキシコとの国境線に壁を作りましょう」というときに、メキシコ移民が入れないようにすることが果たして正しいのかって、けっこう難しいんですよね。国境付近の町の人たちは、メキシコ移民が持ってきたドラッグで家族を亡くされている方もいて、「メキシコに壁を作ってくれ」と大泣きして。
でも、メキシコはメキシコで、すごくひどい状況からどうにかして家族を生かすために……。国境を超えるって、死ぬ確率がとても高いんですよ。兵士に殺されるか、砂漠で殺されるか、マフィアに殺されるか。
その現状を伝えることももちろんすごく大事だけど、私は「どうにもならないよね」と言って、どちらかに肩入れするよりも、「どうにもならないけど、いま苦しんでる人がいるから」と行動するプレイヤーを増やしたり、応援したりする会社に行きたいなと思ったんですよ。
プレイヤーを最大化する会社で、2つ内定をいただいているところがあって。1つ目はけっこう大きめな事業会社で、そこは社会課題を解決することに、社員全員がすごくコミットする会社。もう1つは、事業再生などのファンドを持っているコンサルで、どっちもいいなと思っていたんです。
でも、よくよく考えてみたら、「会社に入って修行して創業するよりも、いま起業して泥臭くやったほうが、3年後には成長してるんじゃないか?」と思って会社を作ったら、出資を受けてしまい、引くに引けなくなった感じです。
中村:私も、もともとは組織に入る以外の選択肢を持っていなくて。だけど結局、「組織に入るか・入らないか」って、「よりやりたいことができる・できない」という話ではなく、「どっちが向いてるか」というだけの話なんです。株主にも内定先の人事にも、「お前は絶対会社じゃないほうがいい」って言われたんですよ。
それは、私がすごくリーダーシップを持っているとかいう話じゃなくて、たまたま自分で会社を作ったほうが向いていたから。いま1年に何百人という起業家の方に会いますけど、正直、「この人は組織の中で活躍したほうが向いてるな」という方もぜんぜんいらっしゃいます。私はたまたま起業だったと。
中馬:僕も、それはありますね。サラリーマンスキルが圧倒的に足りない。松下幸之助さんが「貧乏で、学歴がなくて、体が弱かったから成功した」と言われたのにすごく似てて。僕、ビビるぐらいにスキルがないんです。数字とか事務的なことは、ちょっと気がおかしくなるんですよ。
メールがほんまにだめで。FBメッセージやLINEのやり取りはいいんですけど、「じゃあメールで、CCで」って言われたら、「あっ、CC……うわぁぁぁ」って。8階から飛び降りようかなって。CCとか言われたら、もうちょっと本当に……。BCCまで言われたら、もうちょっと生きていけへんなぁって(笑)。
中村:たぶん社長でも無理ですよ(笑)。
(一同笑)
中馬:だから、経営者は向いてないと思っていて。ちょっと僕の会社での役割を変えようかという話も出ているぐらい、経営も向いてないですね。最近は、乾杯や司会がうまいのでMCにいったらええんちゃうか、っていうぐらい。本当に資料も作れないですし、管理もできない。
中村:でも、中馬さんには中馬さんに合ったポジションがあって、そこにはまったというか、それを取りに行ったという感じですもんね。
中馬:そうですね。逆に、僕はこれ以外できんと思いますね。今からすごくいい会社にヘッドハンティングされても絶対使えないと思うし、どれだけ年収を積まれても絶対行きませんし。
――ご自身の中で、自分は起業したほうがいいなという確信があった感じですか?
中馬:消去法的な感じもあるんじゃない。多伽ちゃんの話を聞いてたらなんとなくわかるかなぁ。「ここしかなかった」って感じだもんね。
中村:どうだろう……。私は、起業のかたちにもいろいろあると思っていて。私の場合は、初期投資がすごく必要だったのと、かつスタートアップが色濃かったから、株式会社でエクイティで調達するのが向いていたんです。
だけど、NPOでも合同会社でも、課題へのアプローチの仕方はいくらでもあって、なんなら法人格を持たなくてもいいかもしれない。結局、目の前のやりたいことに対する手段として、株式会社か組織しか知らなかったから、いま株式会社になってるだけで。もしかしたら違うほうが、もっと効果的だった可能性はぜんぜんあるとは思います。でも、結果よかったので、それで正解にしたのかな。
中馬:正解にしたいよね。もう一個、僕は大学生からずっと思ってたんですけど、究極の安定が欲しかったんですよ。就活をやめたときに、レールを外れるわけじゃないですか。休学した時点で、同級生たちとは卒業できないんですよ。
僕は、休学中も後半は大学の好きな授業に行ってたりしたんですけど、同級生に会うと、みんな内定をもらって「あとは残りの3、4ヶ月間を遊ぼう!」という時期だったんですよ。そのときに僕は休学もしてるし、復学までまだ数ヶ月あるし、海外に行ったり、ようわからん修行とかも行ってたんですよ。
山奥にこもって、1日10時間以上瞑想とか。『ドラゴンボール』のかめはめ波みたいな、気を使って何かを発せそうなレベルまでいったんですけど。
中馬:そういうことをしていたのは、僕はどんなことが起きても、自分が思う世界を作り続ける人間になりたかったんですよ。例えば、震災で家もすべて無くなったけど、日本全国と世界中の友達が、「だったら、うちに来いよ」「家族ごと来いよ」と。「仕事もあるし、お前だったらここでも成功できるだろ。来いよ」って呼んでくれる仲間がいたりとか。
何もなくなって借金を背負ってもそこから這い上がれる力があったり、自分のしたいことができる力を持っている人が、究極の安定人だと思ったんですよ。僕らの世代って、就活で「勝ち組・負け組」っていうのが流行ってたんですよね。大手に行ったら勝ち組って言われてたし、銀行も公務員も、消防士や警察とかも。それで、よくわからない中小企業は負け組で、「大丈夫? その会社」ってみんなに言われてたりするんですけど。
僕は、大きな会社も潰れる可能性があるし、その看板がなかったら「お前は何ができるの?」というのは、大学生の頃からずっと思ってたんですよね。だから、いろんなことをしながら「ちょっと氣が使えたら、どっかでいけるかも」みたいな(笑)。
(一同笑)
中馬:僕は、それも1個の武器になるんちゃうかなと思っていたんです。友達から「お前、地に足を付けろよ」「ちゃんと就職しろよ」って言われたときに、「いやいや、お前以上にマジで人生考えてるから」と。「お前みたいに安易に就職活動して、ようわからん会社に行ってへんから。そんな安易な人生を歩んでないで、めちゃめちゃ自分と向き合ってるから」ってずっと思ってたんです。
だけど、そう言っても理解されないから、「大丈夫。5年後に絶対に結果出てるから」って言って。大学生の時に何を言われても、ずっとそう言ってたんですよね。5年以上かかりましたけど、日経新聞に載ったら、みんな「いや中馬、お前やると思ってたよ」「お前は昔からさぁ」って。僕は、究極の安定に一番近いのは起業家だと思ったという話です。
中村:確かに。やりたいことができる自分になる。
中馬:そうそう。絶対大変なのはわかってたんですけど、これを何年か耐えたら、最終的には究極の安定になるんちゃうかなと思ってたので。困っても助けてくれる先輩や仲間がいたり、なんとなくですけど、だんだん近づいてる気はするんですよ。それは合ってたなと思います。
――お二人とも、就職活動や大学時代の経験が、生き方を考えるきっかけになったんですね。逆に日本では就活まで、なかなか社会と自分の関わりを意識する場がないようにも思います。今の世の中で、ご自身の事業の役割をどのように考えていらっしゃいますか?
中村:私はやっぱり、個別最適だと思っていて。みんなが物質的に満たされることを求めていた時代は全体最適で社会が回ってたけど、そのひずみがどんどん出てきたのが現代だと思っています。個別最適の重要性とか、「自分らしく」というワードが出てきたのは、ここ数年の話ですよね。それこそインターネットの発達で、個別最適に注目しやすくなったとは思います。
でも、「マジョリティだけじゃない」といろんな人が認知し始めたときに、全体最適を崩すことが正しいわけではないんですよね。個別最適を全体最適の土俵に上げて、そこで戦えるようにすることが、私は絶対にいま必要なことだと思っていて。
例えば、資本主義の仕組みに則ったときに、経済格差や貧困家庭の方、LGBTQの方に何かをしようとすると必ずお金が必要だけど、資本主義的にはそこにお金が集まらない。だからといって、「もうやらない!」とか「お金が回らなくても、やってることは美しいからいいじゃない!」というのは不健康ですよね。
社会問題に近いんですけど、そういうことを今の資本主義のルールの中でどう回していくのか。そうした取り組みをやりたいなとすごく思っています。
中馬:僕はいま、10代のキャリアの可能性を広げる塾みたいなプラットフォームをやっています。僕も起業家がすべてじゃないと思っているけれども、そういう選択肢があることとか、中学校に行かなくても海外に行けたり、中学生でもお金を稼ぐことができると教えてくれたりする場所があったらいいな、って思うんですね。
僕は子どもはいないけど、そういう塾があったら行かせたいし、自分がタイムスリップして小学生だったら、そんな場所に行きたい。ないから作るってだけなんですけど。
あともう一つ、僕は3年ぐらい前に、ある自治体さんと一緒に若者の就労支援のための研修をやってきたんです。20歳から35歳の間の就職困難者の人たちが、地元企業に就職できるようにするプロジェクトをやっていたんですよ。
いろんな方にお会いしたんですけど、35歳近くになればなるほど、思考回路が固まりやすくなる。就労支援自体はいい事業だと思いますが、いまの10代の教育を変えることで、将来困る20代・30代を生まないようにしたいと思ったのが、僕の事業のここ数年間の流れです。
中村:環境が人をつくるって、まさにそうですよね。社会問題を水際で対策するのは本当によくないなと思っていて。子どものころから、クリエイティビティや関係性を大事にすることを学んで、それを自分の資産として使えるように育てるのはめっちゃいいなと思いました。いい話でしたね。
中馬:ありがとうございます。うれしいですね。
京都リサーチパーク株式会社
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