2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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益子宗氏(以下、益子):私の例で言うと、職種的なところもあって、楽天市場の店舗様と一緒に働くことがかなりあるんですね。「よなよなエール」を作っている「株式会社ヤッホーブルーイング」の井手直行さんとも働いたことがあって、やっぱり井手さんの魅力みたいなものとかファンを大事にするところで、ローソンとかでよなよなエールを買おうとすると井手さんとの思い出が浮かんできたりしますね。
例えば「イーザッカマニアストアーズ」の浅野かおりさんが会場にいるんですけども、商売をされている一方で、「服育」みたいなファッションに対する考え方をどう啓蒙するかといった話とかを常日頃から聞いていると、「やっぱりイーザッカマニアで服を買おうかな」とか思いますよね(笑)。
「値段が安い」とか「配送料がタダ」とか、そういう話ではなくて。ストーリーも含めて、僕は職種的なところもあって、そういう機会にはけっこう恵まれてたりします。
尾原和啓氏(以下、尾原):いいよ。ヨナーイ(佐々木氏)も話していいよ。大丈夫だよ。
(一同笑)
佐々木伸一氏(以下、佐々木):次は勝山さんが話すかなと思って……(笑)。僕も昔はそうだったんですけど、「岩手のお酒って、新潟のお酒と比べると有名じゃないから」とか考えていたんですよね。さっき尾原さんの講演でも出てきたエストニアの人口って、そういえば岩手県民と同じくらいだなと。今ちょうど130万人を切ったくらいだと思うので。
今は大阪に住んでるから、「へ~、ここだけで900万人とかいるんだ!」「大阪市民のほうが、岩手県民よりはるかに多いなぁ」とか思いながら日々過ごしてるんですけれども。だからと言って、僕は岩手が大阪に劣ってるとは思ってないんですね。
尾原:うん、いいね。
佐々木:そもそも比べる必要があるのかって話なんですよ。例えば、「伝統製法を受け継いだ職人が、厳しい寒さの朝に、氷点下何度で醸した技術の結晶」みたいな、「粋のおいしい日本酒が醸し出されます」って書いてある商品の所在地が大阪の道頓堀になってたら、「嘘やろ、それ!」って思うじゃないですか。あれはやっぱり、岩手という地域性があるから非常に強いんですよ。
僕は大阪に行ってたから、食の面で言うと不満なことがいろいろ多くて……関西関係の方、あくまでこれは僕の個人的な趣味嗜好の話ですからね。魚、うまくないですよね! 岩手県人からすると(笑)。醤油はなんか甘いし。僕、塩分が多くないと満足できない人なんで。
でも、それでいいと思うんですよ。どっちがうまいとか、まずいとか。こっちのほうが売れてるから上だってことじゃなくて。「俺はしょっぱいやつが好きなんだ」でいいんですよ。たぶん日本全国にしょっぱい醤油が好きな人って、けっこういると思うんですよ。
「うちの醤油はちょっとしょっぱすぎるし、今どきの健康志向じゃないから……」じゃなくて、「やっぱり醤油ってしょっぱくないとおいしくないよね! だから、うちはこういう醤油を造るんだよ!」って言えば、少数派だろうけど全国に届いたら、普通にそこの地域の名産品になる。それなのにみんな「今は減塩が……」、「薄味が売れてるらしいから、うちも薄味造ろうぜ」って言うから、どこもみんな似たような商品になるんですよ。あとは単純な価格勝負ですよね。
尾原:2つあると思うんですよね。さっき言ったとおり、岩手が大阪と比べて劣ってると思わない。それは「冬の寒さに耐え忍びながらそこで造られているお酒」みたいな、そういう独自性のある話ですね。
あともう1つは、人の趣味嗜好って多種多様だから。塩っ辛い醤油があってもいいし、たまり醤油みたいな甘い醤油もあっていいし、みたいな。そういう、比較して決める優劣じゃなくて個性みたいな話って、データで浮き彫りにできるものなんですか? 勝山さん、どうでしょう。無茶振りするんですけど。
勝山公雄氏(以下、勝山):そうですね。先ほどファン指数みたいなのを取ってみていると申し上げましたけれども。ある程度の好みみたいなところは、楽天市場の商品にどれくらいアクセスしているかとか、何を買っているかとかから、ある程度は見えることがあるかもしれないですね。そこまで、好みまでは深掘りしてないですけれども。
一応我々のデータベースの中では、お客さんの趣味嗜好はどんなものがあるのだろうかみたいなのを(表すものとして)、お客さんの遺伝子ということで「CustomerDNA」という呼び方をしているんですけど。
尾原:へ~。
勝山:例えば粉ミルクを買ってるとかオムツを買ってるとかっていうデータがあれば、「赤ちゃんがいる人だろうな」というような。そういう商品ジャンルへのアクセスから、行動傾向やライフスタイルを予測したりしています。音楽だったら「クラシックが好きそうだ」とかですね。
こういうものを一人ひとりの属性として記録しちゃおうみたいなこともやっています。味の嗜好までは、まだ我々は見つけてないですけど(笑)。もしかしたらそういうところから、どんなものが好きそうな人かは見つけることができそうですね。
尾原:うんうん。そういった趣向性の遺伝子みたいなものを探っていったりするわけですよね。じゃあその中で、好きっていうものがより高精細に見えるようになったりとか。そこにファン層としてリピートして買い続けてくれる人がいるよみたいな。
勝山:そうですね。
尾原:ヨナーイさんの場合は、もともと酒が好きで好きでしょうがなかったから結局できてただけじゃないの? っていう話もありますよね。たぶん今日来られている自治体の方々って、「そりゃ岩手は、ヨナーイさんみたいなほっときゃしゃべる変態がいたから、たまたまよかったんじゃんか」となるかもしれない。「うちの県にはそんなのいないよ」、「うちの村にはいないよ」という質問も、たぶん出てくると思うんですよ。
佐々木:最初の自己紹介の話に戻っちゃいますけど、実家の借金が発覚して大学を辞めてプラプラしてた、地元に戻った職歴なしの27歳を、あなたたちは自分の地方創生担当に任命しますかという話なんですけど。だいたいこういう人って、面接で切りますよね(笑)。
尾原:(笑)。
佐々木:僕、「あさ開(読み仮名:あさびらき)」を扱うレストランにバイトで拾われて……あ、最初はバイトだったんですよ。3社くらいに落とされて「もういいや」ってなりましたもんね。「もう働くもんか」って思いました(笑)。
あと、僕は大学で陸上部に入っていて、けっこう強い大学だったんですけど。今と違っておおらかな時代だったので、新入生歓迎コンパとかでアホみたいに飲まされるわけですよね。うまくもない日本酒をどんぶりで。まずいし、死ぬほど具合悪くなるじゃないですか。僕、日本酒を金出して飲む奴はアホだと思ってましたからね。人生の落伍者だと思ってましたよ、本当に。
なので僕は、とりあえず別に好きで岩手に帰ったわけでも、岩手が好きだったわけでも、日本酒が好きだったわけでもないんですね。むしろ嫌いでしたし。
尾原:じゃあ、何がきっかけだったんですか?そこが変わったのって。任命されたわけじゃないですね。
佐々木:まあ、そうですね。最初はレストランのアルバイトからスタートして、やっぱり日本酒のことを聞かれるわけじゃないですか。知らないわけですよ、こちらは。生酛造りだとか山廃仕込みだとか言われたところで。
答えられないのも恥ずかしいし。「それで金もらってる以上、一応お前らはプロなんだからな」って言われてたから、「じゃあ勉強してやるよ!」と思って本を買ったりして。あと、酒を造ってる人たちがすぐそのへんにいらっしゃるので、聞きに行こうと思えば行けるわけですよね。タダで。
そうしていると、全部僕にとっては青いリンゴだったことがわかってきたんですよ。「飲むと具合の悪くなるまずいもの」が、「理由があってこういう青いリンゴになってるっぽいぞ」みたいなことが、だんだんわかっていくんですよね。
そうすると今度は、それをお客さんにちょっとドヤりながら伝えたくなるじゃないですか。「これ、実はこういういいお酒で、こういう飲み方をしたら……」みたいな感じで。繰り返してるうちに自分が自分に洗脳されて、自分のところのお酒とかそれを生み出す岩手というものが好きになっていく。
自分の扱っている酒が好きになって、それを造ってる盛岡が好きになって、岩手が好きになる。そうすると、それまで「なにも関係ねぇや」と思ってた岩手の観光地だったり、他の地域も地続きで好きになっていくという。その結果地元がすごく好きになるみたいな、変な現象が起きましたね。
尾原:なるほどね。今の話の要素を取り上げると、最初は「お金をもらっているから」というプロ意識みたいなところから始まったと。
佐々木:そうですね。
尾原:赤いリンゴを扱う職人さんがいて、その人に感化されて、その人の言葉を伝えたいとなっていった。あともう1個大事なのが、やっぱりその言葉がファンに受け入れられること。そうするとうれしくなって、より伝えたくなるという。こういうことかなと。
佐々木:そうですね。割りを食ってると思ったんですね。酒を造ってる杜氏さんっていうお酒造りの棟梁も、すごくまじめにおいしいお酒を造ってる。でも、なんせ岩手県人はマーケティングが下手すぎて。だってリンゴって……もし青森の人がいたら、ごめんなさいね。僕は別に、岩手のリンゴも青森よりまずいとは思ってないし、むしろ自分のところのリンゴのほうが好きだし。日本酒も、新潟より岩手の酒のほうがうまいじゃんと思う。米だってあるし、牛乳だってあるし。
でも、だいたいは第一ブランドを取れてないんですよね。「〇〇といえば?」っていう質問で「岩手の牛乳」とか、出てこないんですよ。だいたい北海道とかにいっちゃうじゃないですか。リンゴも青森とか。これが非常に理不尽だなと思って。いいものを作っているのに、売るのが下手なだけで。
尾原:そういうものを拾ってあげると。
佐々木:はい。これは世の中に「たいしたもんですよ、うちの酒を造ってる杜氏は」とか「うちの酒は」って言って、出て行ったら意外と受け入れられたと。
尾原:ヨナーイさんの場合は、偶然そういう職人芸に長けた杜氏さんという高解像度を持っていた人たちがいたと。ヨナーイさんはむしろ1回外に出てる人間だったから、その差に気付けた。それで、ファンに受け入れられる中で「より伝えたい、伝えたい」という増幅動機が入ったって話だと。
尾原:さっきの勝山さんの話を聞いてると、DNAみたいなものをうまく使っていくというのもありますね。ヨナーイさんはたまたま偶然に会えただけかもしれないけど、そういう人を増やせる感じがするんです。具体的に「勝山さんのデータサイエンスって、僕らはどうやったら使えるんですか?」というご質問もきていて、すごく反響があるんですけど。
勝山:どうやったら使えるか、ですか?
尾原:はい。たぶん自分の自治体にいる人は、「今の話でいう杜氏みたいなところとか、どうやったら見つかるんだろう?」と思ってるんじゃないですかね。
勝山:そうですね。まず、名刺交換させていただいてですね……。
(会場笑)
それで一度打ち合わせをさせていただくことが必要なんじゃないかなと思います。もちろん現地でですね。ついでに、私は城に行っちゃうかもしれませんが。
尾原:はい(笑)。プロセスの話で、今後はデータの仕組み化をしていくんですよね。
勝山:はい、そうです。我々の内部でわかるものを、資産みたいなかたちでデータベースにどんどん貯め込んでいく、みたいなことはやってます。これは、赤いリンゴを見つけられるようになるための下準備みたいに見ていただけるといいかなと思いますね。
それと、うまく楽天とお付き合いいただくというのが、その次にくるのかなという感じです。
尾原:そうですね。そうやって赤いリンゴを判別することが、データを使うことによってできるようになっていっているから。そういったものをどういうふうに増やしていくかというのが、すごく大事ということですよね。必ずしもそのジャンルの部分がものすごく最初から詳しい人じゃなくても、ユーザーに受け入れられる中で赤いリンゴの識別の仕方も育てていくことができるのは、すごくいいと思うんですよね。
勝山:そうですね。今のヨナーイさんのストーリーでも、1回外に出て客観的になるというのがあったと思うんですけれども。やっぱりずっと(中に)いるとわからないこともあるかもしれませんので、そういったいったん客観的になるみたいなところも、我々はお手伝いできるのかなと思いますね。
佐々木:尾原さんのさっきの基調講演の最後の資料で、「ありがとうをお互いに言い合える」とか「感謝の経済圏」のスライドがあったじゃないですか?
「あさ開」の社内とか岩手の中だけとか、盛岡の中だけにいると、「社内にこんないい酒を造ってくれる人がいる」ってことを、ありがたいって思わなくなるんですよ。当たり前だと思ってしまって。自分の地域にこんな景色があるのって、それこそ文字通りありがたい(有り難い)ですよね。サンキューじゃなくて。「なかなかないぞ、こんなとこ」みたいなところも、結局よそと比べないと、いつも見てる風景だから変わらないんですよね。
ところが今は、インターネットだったりこういう場もあるので、ほかの人と交わると「すごいじゃん、これ!」とか「え! こんな場所があるの?」「え、こんな感じのことって!」「カモシカとかって(市内に)普通に出てくるの!?」みたいになる。その人たちにとってはバリューでもなんでもないのに、「うわ、こんなとこ行ってみたい!」とかにつながることって、多いんじゃないかなとは思いますね。
益子:それはちょっと、僕も感じることがあります。僕は秋田出身なんですけども。秋田から東京へ来ることで、秋田にはソウルフードみたいな魅力的なコンテンツがいろいろあると気づいて。わかんないと思うんですけど、「チョロギ」っていう漬物みたいなやつがあるんです。根菜なんですけど……知りませんよね。一目惚れして、そのTシャツを今着てます(笑)身近にあるとわかんないかもしれないですけど、そういったように、いろいろ売れるものがあると。
技術的なところの話で言うと、例えば会津若松市へたまに行くんですけれども。そっちのほうは空き家問題がけっこう深刻で、困っていると。僕は最近VRの研究とかもやっているんですが、VRの研究をやろうとすると、けっこうなスペースがいるんですね。東京でその実験をしようと思うと、どうしてもそのスペースを確保するのが難しくなってきていて。
地方の空き家とかをうまく使って研究開発したほうが、実は非常に効率が良いんですね。そっちのほうがアドバンテージができますし。東京一極集中みたいな話もある中で、そういううまく活用できる資産もあるのに、資産じゃないと思われている。むしろ負債だと思っているところが、逆に僕からすると資産になっているというところもあるなと感じますね。
尾原:そうですね。あと付け加えて言うならば、もう1個大事なのって、「シェアリングエコノミーって、モノをみんなで利用できるようになる」という文脈で思っている人が多いと思うんですけど、逆もまた然りなんですね。
例えば僕の友人で、(僕と)同じようにバリとシンガポールの2拠点生活をしてる人がいるんですけど、彼はバリにも家を持っているし、シンガポールにも家を持っているんですよ。なぜかと言うと、シンガポールにいるときはバリの家を貸してるんですね。バリにいるときは、シンガポールの家を貸してるんですよ。家は2つ持ってるけど、結局家賃は1軒分なんですよ。
このようにテクノロジーは、「持つ」ということもリスクではなくしてくれる。どんどんどんどんそういうかたちで、地方に分住すると。リモートでいるから、むしろ平日こそリゾートの中で自然に囲まれて働けるみたいなこともあるのかなと思いますね。
それでは、あと8分あるので、Webでご質問できなかった方から質問があれば、2つくらい受けられると思うので、もしあれば挙手していただければ。なければ、いくらでもまたヨナーイがしゃべりますので。
佐々木:そうですね。(質問がないようなので)何の話をしましょうか……あ、どうぞどうぞ!
質問者1:1点質問をさせていただきたいんですけれども。高齢者の方々に最新のテクノロジーを使っていただくよい方法ということで、一応取り上げていただきまして、ご意見等もうかがったところなんですが。
我々のように、地方のみなさんに直接接している自治体職員としての実感としては、いくら直感的だとみなさんが言われていても、高齢者の方々はやはり「使えない」、「使いたくない」とおっしゃる(笑)。先ほどもおっしゃられていましたけれども、心理的に「できない」という思いが非常に強くて。なかなかその1歩が踏み出せないというのを、非常に感じています。
心理的にも、私は便利になって一番喜ばれるのは高齢者の方々だと思っておりますので、そういった方々に便利なテクノロジーというものを使っていただく手法について、改めてご意見をいただければなと思います。
尾原:ありがとうございます。高齢者の方って、どうしても新しいものに食わず嫌いというか、どうしてもとっかかれない。そこをどうするかというご質問ですね。
もしほかにご質問があれば、その質問を先に受けてからお聞きしたいと思いますけど。たぶんこの質問は、益子さんにぜひ楽天技術研究所の観点からお話ししていただければ。ほかに質問あれば、先に受けられますけれども。せっかくですから、どうですか?
(会場挙手)
質問者2:ありがとうございます。今高齢者の方を例に出されましたけれども、市の組織の中でもやはり業務を効率化するために新しい技術を入れるとなると、スタートアップの最初の準備段階、変更段階がどうしても大変ということで。なかなか、どの組織でも盛り上がらないという現状があります。
組織の中でも、「最初にがんばれば、技術を導入したあとは楽になるということがわかっているけど、なかなかその1歩が踏み出せない」というところについて。組織的に取り込んでいける方法やアイデアとかがありましたら、教えていただければと思います。
尾原:なるほど、なるほど。テクノロジーによる業務の効率化というのを、今度は組織とかに使っていくときに、最初のハンドルを回すためにはどうすればいいかということですね。これは、勝山さんにお願いいたしましょうか。
尾原:じゃあ益子さん、最初のご質問から。高齢者がテクノロジーに触りたがらない、変わりたがらないというところの最初の弾みは、どうすればいいかというお話ですね。
益子:ちょうど私も高齢者向けのシステムを作っていて、まさにどうしたらいいのかなと今模索中ではあります。けっこう問題になるのは「そのシステムを使えば楽になるよ」とか「いいことあるよ」って感じで、強制的に使わされてるとかっていうイメージが強くて。
その先に、具体的にどういう便利さが自分ゴトとして得られるかみたいなのがわかるように伝えていかないと。例えばiPhoneでもiPadでもいいんですけど、簡単になったとはいえども、越えづらいところがやっぱりあるんじゃないかなと思っていて。
そこの良さみたいなものをうまく体験していただけるような機会を、まず1つ作るのが大事なのかなと。それをどうやって作ればいいのかというのは、ケースバイケースですが。例えばVRだと、初めの1回はちゃんと一緒に手取り足取りやって、「これを使ったら孫の顔が見られた」とか「孫と一緒に買い物に行けた」とか「昔デートしたところに行ってみた」とか。そういう自分ゴトにならないとたぶん面倒くさいので使われないのかなというのは、けっこう正直なところです。
尾原:そうですね。ベネフィットをちゃんと最初にどう伝えるかという話と、やっぱり自分ゴト化になるっていう。そういう意味でLINEさんとかにお話を聞くと、「LINEが圧倒的に普及できたのって、結局孫の写真を見たいからだ」とか「孫と動画でしゃべりたいからだ」みたいなことがあって。やっぱり感情的な、自分ゴト化できるためのケースをどうやって作るかですよね。
じゃあ、2番目のご質問ですね。勝山さんから、今度は組織についてですね。最初の歯車をどう回すか。
勝山:そうですね。若干、今の楽天の仕事でも少しあるんですけれども、どちらかと言うと前職のコンサル会社でよくやっていたかなと思うんですが。データサイエンティスト集団をどう作るかというご相談を受けることがけっこうありますというのが、まず1つ。あとは、データを使う文化を広めてほしいみたいなことをリクエストされることが、前職でも今でもあったりするんですけれども。
そのときに我々がどうするかというと、「あまり難しいことを考えないようにしましょう」というのがまず1つ目ですね。あとは、今益子が申し上げていたこととほぼ似てるんですけれども、なにかやったらその先に得られるベネフィットとか成果など、そういったリターンが何かあるのかみたいなところを、きちんと方向性を付けて、最初の1歩をどう踏み出すかというのも大事です。
この「メリットを受ける」みたいなものというのは、理性の「理(ことわり)」みたいなところがあるかなと思うんですけど。我々はけっこう理と情って言ってたりするんですけども。あ、城って書いて「じょう」じゃないんですけど(笑)。すみません、余計なこと言いました。
尾原:なんでも城ですね。結局(笑)。
勝山:理と情っていう、情に訴えかけることと、理論でやることとを両方混ぜ合わせて歯車を回していかないと、やっぱり回っていかない。金属の歯が噛み合う歯車だけあればいいわけじゃなくて、潤滑油って必要になると思うんですね。そういった意味でも理と情をうまく混ぜて、最初の1歩をどうやって進めてリターンを受け取るか。リターンをうまく受け取れないのがずっと続いちゃうと、「結局、歯車回らないじゃん」みたいになっちゃうんで。
先ほどの「いかに赤いリンゴが見つかったか」に似てるんですけれども、リターンは何だったのかをきちんと認識して、そのリターンが必ずしもお金であるとかそういうものではなくて。みなさんがなんらかの経験を1歩踏んだので、その経験値から得られるものがこれで、必ずポジティブにプラスになっているということを認識するのが大事なのかなと。
これがふだん、我々がお伝えしているやり方です。これで、質問のご参考になるのかってことなんですけど(笑)。
尾原:そうですね。1つはさっきも言った自分ゴト化。意外と1歩目を出してみると、そのあとはスルスルいくので考えずにやってみることが大事。でも、やってよかったことをやるためには、やったことのリターンを短いサイクルでどうやって返していくかということですね。
勝山:そうですね。
尾原:そういうことで、90分のパネルセッションもあっという間に時間がきたんですけれども。出てきたキーワードを並べていくと、まずテクノロジーというのはターミネーターではなくドラえもんだよってことですね。
今日のご質問って、半分くらいはテクノロジーというものがみなさんにとって「怖い」とか「難しい」っていうものじゃないということで。ときどきトラブルもしてしまうけれども(笑)、愛らしいものだという中で、一緒に何をやっていくか。
課題解決のためのテクノロジーは私の講演の中でも話しましたけれども、もっと大事なことは、どうやってデータの力とかテクノロジーの力を使って、地方再生のために独自性というものを磨いていくか。自分たちの中にある「赤いリンゴを伝える人」を、ファンと一緒に育てていく。そういうかたちで独自性を届ける。「ものを売る」のではなくて「ものがたりを売っていく価値」というものを、どうやって作っていくか。これが、今日の話だったのかと思いますね。
益子さん、勝山さん、ヨナーイさん、今日は長時間ありがとうございました。
(会場拍手)
楽天株式会社
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