2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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石倉壱彦氏(以下、石倉):じゃあ、次の質問ですね。意外に(会場に)監査法人の人が多かったので、監査法人と事業会社の違いについてお聞きしたいです。転職するときに一番大きな壁になると思うんですけど、ここでやはり一番の違いがあって。
監査法人での経験が事業会社で活きてきたことと、逆に今まで当たり前だと思っていたことが通用せず、「自分の考え方などを変えなきゃいけない」と思ったことを語っていただけますか? じゃあ、五十島さんからお願いします。
五十島啓人氏(以下、五十島):いまの会社では取締役なので、もちろん自分で作業することもあるんですけど、人にお願いをすることがすごく多いんですね。
その中で感じたところだと、監査法人と事業会社で働く人たちの仕事の領域とスキルの大きな違いです。監査法人で働く方は、資格を持ち、特殊な専門領域で仕事をし、それに対してクライアントから高額な報酬をいただきます。そのため、職業的専門家として要求される水準を満たしていることが前提にあります。事業会社で働く方とはそもそもの前提が違うんですよね。まずそこを認識しておく必要を感じました。
石倉:じゃあ、時田さん。
時田知典氏(以下、時田):監査法人で一番勉強になったことは、内部統制という会社の仕組みを知れたことです。
実際にいまベンチャーの中で、会社の仕組みやいろいろなフローを構築しているところなんですけど、内部統制を学んでいると、「どこで誰の承認が必要か」という構築の部分は、そのまま、いまの会社に写して、あとは承認者の権限を変えていけばそのまま適用できるので。
実を言うと、監査はあまり生きていないなと思っているんですけど、J-SOX(内部統制報告制度)というところ、会社としてどう仕組みをつくっていくべきかかは、たぶん他の監査法人の方でも関わるところがあると思います。
石倉:じゃあ、玉木さん。
玉木諒氏(以下、玉木):そうですね。いま生きていることは、内部統制の知識や、会計的にどういうものがあるべきかがわかることですかね。ひとつ、大きいと思っているのは、監査法人の皆さんが何を考えてを発言しているのか、VCの人たちが何を思って質問を投げてくるのか、その意図がわかることはけっこう大きいなと思っています。
そうすると、コミュニケーションの行き違いがなくて、見当はずれなすれ違いが生まれないことや、しっかりと相手のニーズに合った情報を提供できるので、相手が何を考えて言っているのか認識できるのは、すごい役立っているなと思います。
あと、ファームと事業会社の大きな違いで言うと、事業会社だと人間関係がすごくウェットになるんですよね。一方、監査法人にいると、「このクライアントのこの案件が終わったら、もうすごいイヤな先輩いるけど、そこまで我慢すればもう大丈夫」って思うじゃないですか。
(会場笑)
石倉:あるある(笑)。
玉木:監査法人に限らず、コンサルの会社でもそうですし、監査法人は、良い意味でのドライさがあるんですよね。1つのプロジェクトのためにみんながコミットする。でも、それが終わったらいったんは解散、みたいな感じなんです。
事業会社は、自分たちの部門以外でも、営業や開発など他の部門のメンバーと、日常的にやりとりが発生するし、その人間関係が継続するんですよね。
というなかで、自分がどう立ち位置を作るかもそうですし、どういう役割を担って、他の部署とのコミュニケーションを取るかが変わる印象ですね。
なので、どちらが良いのか悪いのかではなくて、心持ちを変えないといけない。ファームのときのテンションで話をすると、ドライな感じをが強く出してしまったりするなというのが、事業会社に1年ちょっといての印象ですね。
五十島:監査法人にいらっしゃる方々で、「期限がないから、雑にエイッ」みたいな仕事されたりしないですかね? ……あの、僕はやっていたんですけど(笑)。
玉木:僕も思い当たる節があります(笑)。
(会場笑)
五十島:だから、すごい詰められ方をしても、「まあ、しゃーないな」と思うところがあるんですけど。真面目にやっても結果が出なければ詰められるということもありました。
事業会社の場合は、状況によると思いますが、すごく真面目にやって、結果が出ないことと、不真面目な仕事の進め方で結果が出ないことは注意の仕方が違うと思います。結果に至った経緯も含めての注意なんですね。その部分の差を認識するのに、最初は時間がかかりました。いまにして思うと、違いがありましたね。
玉木:監査業務は期限が決まっている仕事なので、そこまでなんとかやり切れば終わるだろうという感じはありますからね。。
石倉:確かにそうですね。事業会社は、ずっと一緒に仕事しなきゃいけない。管理部の人は、いろいろな部署の人とコミュニケーション取りながらやらなきゃいけないので、ときには煩わしがられるし、ときには無駄に超頼られることがあったりするので、コミュニケーションの取り方は一番大変ですよね。
玉木:2ヶ月ぐらい期限が過ぎた請求書を平気で出してこられると、「なんでやー!」と心の中で思うんですけど。
(会場笑)
でも、口に出しては言わないですね(笑)
石倉:逆に、事業会社に行く前に、これをやっておけばよかったと思うことはありますか? いま監査法人の人がいると思うので、「こういうことを学んでおけばよかったな」というような。
五十島:僕がけっこう後悔したというか、「あのとき、もっとやればよかったな」と思ったのは、取締役会議事録レビューってあるじゃないですか。絶対みなさんやられると思うんですけど、どういう背景で、誰が議案を上げて、どう決めるのか、みたいなところは、もっとよく学んどけばよかったと後で思いました。
実際、自分たちの会社で物事を決めるときに、どういうふうにして、そもそも議案を誰がキックするのかがすごく気になって。
どう役員が集まって話し合いをして、どう決めているのかは、その後になって実は学ぶことなんですけど。みなさん、普通に監査やられている方に接する機会が多いので、そのへんはしっかりやっとくと、今後の参考になるのかなと思いましたね。
石倉:時田さん、なにかあります?
時田:「あれをやっとけば」という業務じゃないんですけど、意識なのかなと思っていて。
例えば、内部統制にしても、結局僕らスタッフは、前からあるルーティンに沿ってチェックしていくだけなんですけど、それをただルーティンでチェックしていくだけじゃなくて、「これ、なんでやっているのか?」と思うのが大事だと思います。監査手続もそうですけど、どんな仕事でもやる意味があると思うんですよ。
「本当にこの内部統制のチェックいるのか?」という疑問は、実際にチェックがいらなかったとしても、1、2年目の新人が「いらないです」と言っても、あまり聞いてもらえないんですけど。そういった疑問をどれだけ自分のなかで処理していくか、消化していくかを、回数こなしていくことが重要なのかなと思っています。
石倉:次の質問です。CFOないし経営管理として仕事するうえで必要なことをお聞きしたいです。いま、情勢もいろいろ変わってきている中で、今後求められることは、どういうことだと思いますか? じゃあ、玉木さんから。
玉木:これも、最近強く感じるところがあるんですけど、企業のバックオフィス業務はテクノロジーを活用してもっと便利にできることがたくさんあるんですよね。
例えば、いまAIが世間で話題にあがることが多いですが、AIを管理業務に生かそうと思ったら、いま世の中にどういうサービスがあって、どういう使い方ができるのか。それこそSmartHRのようなクラウドサービスもそうです。人材不足が深刻になっていくなかで、必ずしも人が時間をかけてやらなくても良い業務をいかに効率化していくか、一方で蓄積されていく会計や人事などのデータをどうやって活用するかみたいなところを、それこそ人が考えていく必要があります。
テクノロジーに関心を持たないと、昔ながらの紙で伝票を切っているような会社は、そうではない競合企業、ひいては社会についていけなくなるんじゃないかと思います。非合理な作業に時間をとられていると、意思決定も早くできないし、そこで管理部としての価値の差が出てきてくるはずです。労務手続きや経費精算ひとつとっても、従業員に負担がかかってくるので、会社全体の成長にも影響するはずです。
石倉:五十島さんは?
五十島:そうですね。CFOは定義するのが難しいんですけど、僕が参考になったと思ったのは、サイト名を失念してしまったのですが、某CFOの方の動画です。
事業戦略やM&A、予実管理などがマトリックスになっていて、「それぞれが強みを持つべき」という内容でした。そのへんを整理して、自分のものに合わせられたらいいと思っているものの1つです。
経営管理の仕事をするうえでは、全体を見るのはもちろん、業務と下で働いている人たちのバランスも見て、それぞれのウィークポイントをしっかり把握する。そしてそのウィークポイントを「どうやったら改善するのか?」と考えます。あと、1人ではなにもできないので、「みんなの力を使っていかに物事を進めるか?」が必要とも思っています。
石倉:時田さん。
時田:はい。僕はCFOじゃないんですけど、CFOは会社の規模によって求められるスキルがぜんぜん異なると思っています。
僕はゼロイチのベンチャーのところだから、こうやって執行役員としてやらせてもらえていますが、お二方のフェーズの会社だったら、僕はまだまだ経験不足だと思っています。
ゼロイチのフェーズで必要な能力はなにかというと、ファイナンスや資金繰りの管理は必要だと思いますが、それよりも広い知識が必要と考えています。
僕は経理をやって、監査をやって、経営企画という経験をしています。ベンチャーはそれぞれに専属で入れられないじゃないですか。それぞれの経験は短かくて浅いんですけど、幅の広さはたぶんゼロイチフェーズのCFOには求められると思います。
石倉:僕もスタートアップで一番最初けっこうコーポレートの組織をどうデザインするかって、一番難しいなと思って。
事業会社はそもそも事業ファーストだし、スタートアップはどちらかというと事業を作るのに投資をするから、コーポレート系の投資は、どうしても(対応が)後々になっているというか、よっぽど意識が強い起業家じゃないかぎりは、なかなかそこは難しいところです。僕自身も「コーポレートのチームをどういうふうに作るか?」というのは、とても考えました。
例えば、僕の経験でいうとサイバーエージェントは本当に事業ファーストなんですよね。事業を成長させていくために、コーポレートの人は必死についていって、一緒に成長していくみたいな感じなんですよ。
ルールを決めてからやるんじゃなくて、やりながらルールを決めていく感じでやっていて。そこが僕はすごい良い経験だった。そういうこともあって、その次のステップで役に立ったと思っています。
僕の場合は、どちらかというと少人数で、スモールチームで、今後も大きくなる組織設計を進めようと思って。あまり人も増やさず、システムに投資すれば効率的になる部分もあるんだけど、そこも我慢しながらやったところも含めて、そのへんをすごい気を付けていました。
「これは人によって違うな」と思っていたんで、みなさんに聞きたいなと思ったんですけど、なんかありますかね? どなたからでも大丈夫です。
玉木:そうですね。どういうチームにするかというところで大事にしていることが1つあります。管理部門はけっこう専門性が高いんですよね。
経理・会計、労務だったら、それぞれの法令や会計基準などの知識が必要です。あとは、コーポレートエンジニアの場合は、もちろんプログラミングやシステムの知識が必要。法務は企業法務以外にも必要な領域があったり、専門性の高さを最大化した組織にしたいと思っています。
なので、「業務をマンパワーでこなすぞ」という思考より、知識や専門性を生かす体制づくりを大事にしています。
なので、単純作業であったり、時間と手間はかかるけどアウトプットは誰がやっても大きく変わらない仕事は、システムやRPAなどの導入を検討したりして、より事業の成長に繋がる仕事を生み出すようにしています。
石倉:五十島さんは?
五十島:うちはfreeeを入れています。上場企業での導入としては最初のほうなんですが、そういう部分の投資をちゃんとやって、業務の置き換えをしました。
また、GMOインターネットグループで、共通の人事システムを入れるプロジェクトが動いていて、グループ内での各種データがどこにいても同じものが取れることを目指して、当社としても投資をしています。
それとは別の話ですが、管理部門の人数はそんなに多くなくて、本当に一人ひとりが持っている力をうまく使わないと厳しい状況です。例えば、水が後ろに行かないように10人で守っている感じなんですよね。
でも、それでは人がほかに一人でも抜かれちゃうと、そこから組織が崩れていくことがあるので、その守りをすごく強く意識して、一人ひとりが持っている力を失わないように、それとその人たちの気持ちも折れないようにするところは意識しているところです。
石倉:時田さん。
時田:会社のフローを作っているなかで意識しているのが、これから会社が伸びていくので、絶対人が増えるんですね。人が増えた後に新しいルールを浸透させるのは、すごく時間と労力がかかる。3ミニッツ時代に、150~200人近くになってくると、200人に新しい経費精算のルールを浸透させるのだけでも、けっこう大変なんですよ。
なので、小さいうちから「将来どういう体制になるのか?」「何人ぐらいになるのか?」みたいなことをイメージする。例えばシステムを入れるときも、今のフェーズなら「承認者は誰だ」「これ以上入れると事業のスピード落ちちゃう」などイメージを膨らませながら、効率化とビジネスに支障が出ないよう仕組みを作れたらいいと思っています。
石倉:了解です。わかりました。
石倉:じゃあ、次の質問ですね。ベンチャーなので、コーポレートが一番大変な部分が多いと思うんですけど、いままで一番キツかった経験。その経験のなかで「これで成長できた!」などの点はありますかね? じゃあ、五十島さんからお願いします。
五十島:そうですね。組織再編を行うなかで取引先の方と行き違いがあって、先方の性質が高めになっちゃって、これまでのやりとりを全部ひっくり返して取引を検証することになってしまいました。実は先方の認識違いだったって話なんですけど、その時は多少プレッシャーがかかったかな…。
あとは、監査法人から入って、風土の違いが出てきてしまって、ミスマッチが起こってしまった。すごく一生懸命仕事をして、自分としては誰よりも一生懸命仕事をしているんだけど、なぜか裏側で悪口言われているみたいな、そういう状態はすごいキツかったですね。
どちらかというと、精神的にキツかったのは後者かもしれないですね。でも、そのおかげで風土の違いや、そこで働く人を尊重することに関して改めて認識できたりしました。
当たり前のことなんですけど、許すことがすごく重要で。それができたことによって、人としてすごく成長できたと思いますね。
石倉:じゃあ、時田さん。
時田:僕は一番大変ということがなくて、僕は就職してからずっと「キツいな」と思っているんですよ(笑)。
(会場笑)
僕はジョブチェンジが多いので、だいたい2~3年で転職しています。「7割の法則」だと、最初の7割を習得するのが早かったりするじゃないですか。
その7割を何個か掛け合わせて、いま仕事をしているんですけど。最初に経理をやって、監査法人に入って、ベンチャーで経営企画やったときや、最初のキャッチアップのところはすごくしんどいんですよ。業界のこともまったく知らないので、勉強しなきゃいけないし、新しい業務の知識も勉強しなきゃいけない。なので、このキャッチアップの部分は、常にずっと「キツいな」というイメージを持っています。
石倉:じゃあ、玉木さん。
玉木:「一番」と言われると迷うんですけど……。
石倉:一番じゃなくてもいいですよ。なんでもOKです。
玉木:一番じゃなくてもいいですか。キツいことって、その時は「もうこれ以上ないだろう」と思っても、またそれ以上のがくるんですよ。
(会場笑)
というふうに思っていますね(笑)。「これしんどかったな」と思っても、またそれよりすごいものが来ちゃうんで、あまりキツい・キツくないは意識しないようにしています。(問題を)だいたい大別すると、お金の話か、人の話です。
石倉:そうですね。
玉木:とくに事業会社だとそうですね。なので、お金はどちらかというと、あるか・ないかという割り切りのつく話のことが多いんですけど、どちらかというと人の話の方が複雑なことが多い。
全体を見渡す同じような立場の人からもよく聞くんですが、「どことどこの部署が......」みたいな話もありますし、部署内での「この人とこの人が……」みたいなウェットな話あったりするんで。
「人がなにを考えているのか?」というのは、すごくキャッチアップして考えるようになったり、以前より人への理解は進んで、それは事業会社ならではの経験と思っています。
石倉:僕が3ミニッツをやっていたときも、短期間で事業を伸ばすために、赤字でもいいから事業を伸ばす戦略を取っていたので。マーケット的に短期間で業界のポジションが決まるビジネスモデルだったので、短期間で伸ばすことを進めていました。リアルにキャッシュがなくなりそうになったことが3回ぐらいあって。
一番キツかったのが……たぶん会計士の人はわかりますよね、手形があるじゃないですか。手形はなかなか最近見ないじゃないですか。ある大企業に行って、ある程度大きな売上になると、入金が手形になるんですよね。それを現場のメンバーが知らなくて。3,000万円ぐらいあったよね。
時田:はい。3,000万円ぐらいの入金は、スタートアップだと貴重なんですけど、それが入金されるタイミングで入金されなくて、「おや?」と思って担当に聞いたら、営業担当も若い人だったので「手形が来ます!」と言っていて。
(会場笑)
石倉:「この人はなにを言っているんだ?」と思って(笑)。誰もが知っているような大企業なんですけど、よく調べたら、手形が送られてきてから入金までに3ヶ月ぐらいかかるんですよ。だから「4ヶ月ぐらい入金がかかる」と言われて、「本当に困ったな」と思って。
とりあえず、ファクタリング(注:売掛債権に保険をかけてリスクを回避すること)じゃないけど、銀行も審査に時間がかかりますし。
「大企業の与信なんて、誰が言わなくても通るだろ」みたいな感じで困っていたら、その大企業のグループ会社に金融の会社があって「手形をこの利率で決済しますよ」「ここに手形を預けたら、何パーセントの手数料で入金できますよ」と言われました。「お金あるんだったら払ってくれたらいいのになー」と思いました。(笑)
(会場笑)
時田:そうですよね(笑)。
石倉:あと、玉木さんと話していて思い出したんですけど、スタートアップは人数がガーッと一気に増えるんで、オフィスの場所がどんどん変わるんですよね。たぶん1年半に1回ぐらい変わる。オフィスが変わるのは敷金・礼金もかかるし、人数が増えれば増えるほど、キャッシュがアウトするので基本的にオフィスをずっと探していますよね。
玉木:そうですね。アンテナを張っておかないと。
石倉:僕も引っ越しするタイミングで、物件を何十個も見にいって、基本的にキャッシュ少なめなんですが、みんなが働ける環境として良い場所を、すごく吟味して選んで。たまたま、それが麻布十番にある新しいきれいなオフィスにして、「これにしよう」と言ったら、僕が半年ぐらい探し続けて選んだのに、メンバーから「石倉さん、麻布十番が好きだからそこにしたんでしょ」みたいに言われて。
(会場笑)
石倉:非常に悲しくて、結局そこにしなかったんですけど、という悲しい経験もありましたね(笑)。
玉木:意外と大変なのに、それを知ってもらう場がないかもしれないですね。さきほど五十島さんが話されていた、朝から夜まで働いているのになぜか嫌われるみたいな話と一緒で(笑)。
五十島:そうですね(笑)。
石倉:じゃあ、次です。「いまの仕事は楽しいですか?」みたいなところなんですけど、大変なこともあるし、楽しいこともあると思うんですけど、いままでの総括として、「いまの仕事はどうですか?」というところです。
玉木:フェーズによって、楽しさが違うような気がします。
石倉:そうそう。
玉木:まさに今、いろいろ整備している時田さんはどうですか?
時田:そうですね。さきほど「キツかった」と言っているんですけど、いまもこの4ヶ月ぐらい「一番しんどいな」と思いながら働いています。ただ、「このおもしろさは、もう他にないかな」と思っています。自分で仕組みを作れるのはすごい楽しいんです。
すごいどうでもいい話なんですけど、学生の頃は文化祭が大好きで。自分で企画して、一緒にみんなでやっていくのが大好きだったんですけど、まさにいまその感覚です。いろいろなルールを作って、予算をちゃんとそれぞれに与えて、「こんなものをよくやっていきましょう」、みんなでワーッと「やろうぜ!」みたいなことがすごい好きなので、いまやっていることは楽しいですね。
石倉:そういうノリの会社だと、管理するのがさらに大変なんじゃない?
時田:大変ですね。
石倉:(笑)。
時田:動画メディアは人が労働集約型のビジネスなので、人の管理に労力がすごくかかります。
人が増えてくると、無駄遣いが非常に増えるんですね。見えないところでお金を使ったり、それこそ僕が知らないところで、人が増えていることも本当にあって(笑)。お金に関わることは事前に共有が必要ということを伝えています。教えるのが好きな人は、いいかもしれないですね。
石倉:じゃあ、五十島さん。
五十島:そうですね。さっきすごいキツい話をしておいて、すごく矛盾するような感じなんですけど、いまはすごく楽しくて。別にマゾなわけでもないですけど。
(会場笑)
五十島:いまでも嫌われているかもしれないんですけど(笑)、「嫌われていない」と思っています。
玉木:すごいネガティブ(笑)。
(会場笑)
五十島:一応、取締役で、常務はその1つ上で。一応、嫌われていないから昇進できたと思っているんですけど。みなさんもそうだと思うんですけど、自分の成長を実感できたときは、「すごく楽しいな」と思います。
できることが広がったり、会社としてのチャレンジと、自分と、僕のなかでは会社のレベル感と自分のレベル感がすごい競っている感じで、「なるべく会社よりも上回ろう」みたいな気持ちで動いているので、そういった意味では、あらゆることがすごく楽しいなと思っています。
石倉:玉木さん。
玉木:違うベクトルでの楽しさをお話しすると、上海、深セン、もしくは東南アジアなど、どこでもいいんですけど、そういう国に行くと「すごくうらやましいな」と思うのが、彼らは「今年より来年のほうが絶対良い社会になる」と信じて疑わないんですよね。
国全体がもう右肩上がりで、これからどんどん良くなっていく一方みたいな社会全体の雰囲気があるんですけど、いまの日本はあまりそういうことがないじゃないですか。
僕が物心ついた頃には、バブルが崩壊して、「失われた10年・20年」と言われて、暗い時期があったり。それでなんとか維持している社会でずっと生きてきたので。こういうベンチャーの成長企業にいると、そのアジアの成長著しい国がやっている雰囲気をすごく味わえるんですね。
僕が去年10月入ったとき、メンバーは30人ぐらいの会社でした。いま90人ぐらいなんですが、一気に3倍になって、売上もどんどん伸びていて、オフィスも1年くらいで変わっていって、移転先は良いオフィスになって、ということを体験していると、そういうことを日本のなかで感じられる場所は、そんなにないんだろうなと思うんです。
そういう意味では、CFOの仕事というよりは、ベンチャーやスタートアップという成長企業で働く楽しみは、そういう高揚感を味わえることです。どんどん会社が成長して良くなっていって、それがちゃんと社会に対して良いサービスを提供していることでお金をもらえることはやっていく楽しさとしてすごくあると思っています。
石倉:ありがとうございます。
石倉:じゃあ、最後に、今後のキャリア展望というところで。上場した会社の役員になられたり、いま上場前だと思うんですけど、僕らみたいなキャリアの人たちはいろいろなところで活躍できる仕事ですし、コーポレート系の人材はニーズがめちゃくちゃ高いんですよね。
日本中で、いろいろなVCやスタートアップの経営者が続々と生まれてきています。こういう環境下で、日本や海外も含めて、ご自身の今後のキャリアをどうしていきたい感じですか? 五十島さんから。
五十島:そうですね。僕は2014年に役員になったときに、会社で目標を立てているんです。「2019年に○○」みたいな感じで。そこがまずマイルストーンになっています。「それが達成できたら、このままいまの会社でがんばろう」と思っていて、もししくじったら、そのときはそのときに考えようかなと。
究極的には、やはり会社と自分が近しいところでがんばれる状態が好ましいと思っているんで、基本は、目標をちゃんと達成して、会社と自分で一緒になってがんばっていけるのが、自分が描いている一番良い未来です。
石倉:次のチャレンジは考えていないんですか?
五十島:いまの仕事が楽しいので、あまり考えていないですね。強いて言うなら、(会社の規模が)ある程度までいったときに、自分の知見を使って、違う会社でどこまでできるのかみたいなことを考えるのかなと思うんですけど。
でも、結局、「(それを)いまの会社でもやれるんじゃないか」と思うと、「他の会社で」とは思わないんじゃないですかね。
石倉:じゃあ、時田さん。
時田:ワンメディアを上場させることが目標です。ゼロイチが得意な人や、その先の1から100が得意な人、それぞれタイプが分かれていると思いますが、僕はゼロイチのフェーズが好きだと思っています。
僕が会計士を目指したときに、こういうキャリアを歩みたかったと思っていたかというとぜんぜん違うし、その時にならないとわからないと思うんですね。
ワンメディアが上場したときに、今よりおもしろいことがあれば、ワンメディアでもっとやっていくし、逆に「やはり自分はゼロイチのフェーズが合っているのかな」と思ったら、会社からも自分は求められなくなるタイミングだと思うので。
僕は飽き性で、新しいことが好きなので、そのときにやりたいことをやっていくのかなと思います。
石倉:じゃあ、最後、玉木さん。
玉木:冒頭でお話したとおり、あまり「こういうキャリアを目指したい」という思いはないので、明確なものはないみたいな話なんですけど。
CFOとして最終的に何の数字にコミットするかというと、時価総額だと思っています。その場合に「SmartHR という会社の時価総額をいくらにできるか?」が、1つ重要かなと思っています。
会社が成長していくと、フィットしない人が出てくるのは仕方がないんですよね。SmartHRが大きくなるにつれて、いつの日か、僕がもう不要になるときがくると思うんですよ。
その日が来るのをどこまで自分が先に伸ばせるかだと思っています。老害化せずに、ちゃんと会社に価値を提供できる人間でい続けられるためには、どこまで行けるかというところですかね。
ネット業界だとGMOやサイバーエージェントや楽天みたいな、数千億円、1兆円になっていく会社や先輩たちに追いつけるか。さらに追い越して、SmartHRが日本でどういう会社になっていけるか。こういったことは、自分の目標というか、今後やってみたいと思っているところです。
自分の要がなくなったときに、次に誰に自分の仕事を渡せるかみたいなのも、ずっと考えていかないといけないんだろうなと思っています。
石倉:僕もアカツキでは、もともと4年前に20名だったのが、いまは1,000人ぐらいになって、50倍ぐらいになったんですけど。3ミニッツはゼロからやって200人ぐらいになりました。
玉木さんがおっしゃったとおり、組織が変わると意思決定の仕方も変わるし、考え方も変わるし、バリューを発揮できる人の役割がぜんぜん変わっていくことはすごく痛感していて。なので、会社の成長とともに自分たちも成長しないと、いつでも置いていかれるなと思いますね。
ちなみに、先ほどお二方は上場を目指すというところだったんですけど。(東京証券取引所の)鐘を鳴らすのはすごく気持ちいいです。
(会場笑)
玉木:順調にいけばマザーズと東証1部の2回鳴らせるはずなので(笑)。
石倉:僕の野望で言うと、僕1回目マザーズのときは、思いっきりカンカンって気持ちよく叩きました。2回目は3人ぐらいでやったんですけど、すかしっ屁みたいな感じで。
(会場笑)
石倉:「カツン」みたいな感じだったんで、個人的にもう1回叩きに行こうという野望がありますという、はい(笑)。以上です。
石倉:最後にメッセージをということで、時田さんから順番にお願いします。
時田:そうですね。今日はいろいろな人がいると思うので、あんまり全員に向けてというのはできないと思うんですけど。僕は7割的な進み方をずっとしているんですが、やはり新しいことを学んでいくのは絶対に必要だと思っていて。
もしも、いま自分がやっている仕事で、「これ以上やっても意味ないな」みたいなことを思ったら、絶対に次に行ったほうがいいと思っています。
7から10のところに持っていくのは相当労力が必要なので、「本当にその知識って将来活きますか?」というと、実際はそんなことないと思うんですよ。会計基準や細かい論点をいちいち覚えて、それがいま実務では生きないですね。必要な時は専門家に任せればいいので。
ベンチャーで執行役員になりたいのであれば、広さが必要なので、自分がいま学んでることに「そろそろ限界かな」と思ったら、次に進むのが大事かなと思います。ぜひいっぱい転職してください(笑)。
(会場笑)
石倉:五十島さん、お願いします。
五十島:そうですね。お三方の経歴を見て「すごいな」と純粋に思っちゃうんですよね。僕は自分で自分をどう見えているかよくわからないんですけど。ありがたいことに「すごいな」と思われることもごくたまにあります。
例えばメルカリという会社も、数年前にはないところから、強みを生かして、いまあんなふうになっていると考えると、「やはり強みで勝負していくべきだな」と思います。僕もそうですけど、ここにいらっしゃるみなさんも絶対強みがあるはずなんで、そこでしっかり伸ばされるというのが一番いいんじゃないかなと思っています。
で、もしその強みを伸ばされる先に、例えば経営企画や上場会社のIRをやりたい方がいらっしゃるようであれば、当社、奇遇にもその採用枠がありますので。
(会場笑)
五十島:終えられた後に、ぜひお越しいただければなと思っています。以上です。よろしくお願いします。
石倉:じゃあ、最後、玉木さん。
玉木:今日は、石倉さんを含めて3名の方のお話を お伺いして思ったのが、みなさんけっこう「運が良かった」「ラッキーだった」「こういうときにめぐり会えて良かった」というお話されているんですけど。たぶん多くの人がそういうチャンスが来るタイミングがあると思うんですよね。そういうときにちゃんと動けるかが重要だと思います。
立ち止まって考えちゃうと、それをしない理由を人間は無限に作れると言われているらしくて。自分の目の前にチャンスが来たときに、それに対してすぐつかみにいけるかどうが皆さんの言っている「運」につながるんだと。そこがすごく長けているから、チャンスを上手くつかめているんじゃないのかなと思います。
もしみなさんの目の前に「これは良さそうだ」と思うチャンスが来たら、それにすぐ飛びつくことができれば、いろいろ変わってくるんじゃないかと思っています。
そして、SmartHRでは現在経理を募集しているので、いつでもお声がけください(笑)。
(会場笑)
石倉:ありがとうございました。
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