2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
パネルディスカッション(全1記事)
提供:パーソル プロセス&テクノロジー株式会社
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司会者:パネルディスカッションには、矢野さんと西村さんに加えて、HRプラットフォーム「HITO-Link」の責任者である河内も参加させていただきます。よろしくお願いいたします。
河内佑介氏(以下、河内):みなさまは、たぶんメルカリさんやSansanさんのお話を聞きたいのだろうと思うのですが、簡単な自己紹介があったほうがパネルに入りやすいかなと思いますので、少しお話をさせていただきます。
あらためまして、河内と申します。もともと新卒でインテリジェンス(現・パーソルキャリア)という会社に入り、人事を経験しました。そこから今のパーソルプロセス&テクノロジーに移り、営業、エンジニア、プロダクトマネージャーなどを経験して、いまは「HITO-Linkリクルーティング」という採用管理ツールと、「HITO-Linkパフォーマンス」というパフォーマンスマネジメントツールの事業責任者をやっています。
プロダクトマネージャーをやっている時に、今回お話がありましたOKRや1on1を管理する「HITO-Link パフォーマンス」というツールを立ち上げて、いまに至ります。どんなサービスかについて触れさせていただくと、先ほどメルカリさんが社内で(OKRのツールを)作られているというお話もあったんですが、思想としてはけっこう近いです。
OKRをはじめとして、最近ではCFRと呼ばれる対話・フィードバック・承認ができる機能や人事評価機能などもあります。そうした継続的なパフォーマンスマネジメントを行うためのプラットフォームが、「HITO-Link パフォーマンス」です。
こんな感じで、リアルタイムにOKRをトラッキングできるサービスになっていますので、ご興味がおありでしたら、ぜひ「HITO-Link」Tシャツ(を着ているスタッフ)の方にお声がけください。
河内:導入として、「HITO-Linkサービス開発部」という、うちの50人ぐらいの組織のOKRを簡単にお話しさせていただきます。うちの組織は、入社前の採用管理ツールとOKRのツールという、2つのプロダクトを持っています。開発やCS、営業、マーケといった全機能がいる組織になっています。
運用はある程度一般的なやり方でやっています。先ほどのお二方は3年~4年くらいやられていますが、それに比べるとまだ1年ぐらいで、最近ようやくうまく回ってきたかなという状況です。
やっていることは、四半期ごとのOKRの設定や、上長との定期的な1on1で、個人のOKRの進捗確認の見直しなどです。あとは、プロダクトごとに隔週の「Winセッション(勝者のセッション)」(チームで成果を見せ合うもの)を行って振り返って、最後に取り組みへの称賛をするという運用をしています。
OKRの構造としては、事業全体のOKRがあって、その下に各プロダクトのOKRがあり、それに個人のOKRが紐づいています。
特徴としては、プロダクトだけのKRや事業のOKRだけだと、やはり業績に寄ってしまいますので、組織寄りのKRを設定しています。あとは、プロダクトのObjectiveの下には機能として、セールスやマーケ、開発やCSが持つようなKRをつけています。
個人のOKRについては、最初にいろいろ試しました。例えば開発チームで、スクラム開発というやり方をしているんですけれども、「個人のOKRを持ってもつながりが悪いね」ということで、個人のOKRは任意で設定するように運営を変えて取り組んでいます。今日はよろしくお願いします。
(会場拍手)
司会者:OKRはもともと、GoogleやIntelなどの海外で始まったものだから、「そもそも日本でできるのかな?」という問いがけっこうあるかなと思っていました。これも念頭に置きつつ、先ほどみなさまからご質問いただいた「評価」というところから入っていけたらいいかなと思います。
私はモデレーターのような感じでやらせていただきます。一番「いいね!」が多い質問に「評価」というのが入っていますね。先ほど西村さんから少しお話がありましたが、人事評価とMBOとの兼ね合いはどうでしょう?
西村晃氏(以下、西村):もちろん「それはそうだ」って話なんですけど、人事評価との兼ね合いは、正解はないと思うんです。
ぶっちゃけ、OKRが出るまで、みんなMBO(Management By Objective/目標管理)を意識したことはなかったのではないですか? OKRの比較対象としてMBOと言いますが、たぶんみんな、普通に目標設定はしていたと思うんですよ。僕は、それは別に変える必要はないかなと思っています。
たぶん別の質問にもあったんですけど、「必ずしも上位のKRに紐づけなきゃいけないんですか?」というのは、OKRの前提としてそもそも「否(No)」という世界観です。なので、メンバーはみんなが個人発信のOKRを持ちます。それってMBOっぽいんですよね。ここを変に意識しすぎると、かなり堅くなる印象があります。
ノーレイティング(年次評価の廃止)という話もあります。メルカリなどもそうだと思うんですけど、変にグレードを作ってしまって、評価がそれに引っ張られて本当は上げるべき人を上げられないよりは、MBOだろうがOKRだろうが、一番自然なかたちの目標設定と評価にするのがいいと思っています。
もちろん事業体によると思うんですけれども、あまり意識せずにやったらいい。当初は無理に紐づけて、かなり苦労したんですよ。「上位のKRから引っ張らなきゃダメ」ということで、1半期回したんですけど、どう考えても紐づけられないものがあるんですよ。
例えば、ゴミ業者の選定など「えっ、どれに紐付けるの?」となってしまうので、やはりきちんと自分で新しいOを設定することをよしとしたほうがいい。僕はMBOっぽくてもいいのかなと思いますが、どうですか?
矢野駿氏(以下、矢野):まったく同じですね。MBOを入れている場合、そもそもなぜMBOを入れているかによって変わってくると思っています。OKRを入れるときに、理由がないといけないと思っていて、むしろ「なぜOKR入れるんだっけ?」というところで答えが変わってくる気がします。
要するに、評価しやすくためにOKRを入れるのであれば、いまの評価制度をちょっと変えてもいいかもしれないですし。逆に言うと、評価制度ではなくて、カンパニーの目指す目標を共有するためにOKRを定めたほうがいいんじゃないかということであれば、両立できる気はしています。
河内:メルカリさんに質問してもいいですか?
矢野:はい。
河内:さっきノーレイティングという話もあったと思うんですけど、メルカリがノーレイティングするという記事が、けっこうバズっていたじゃないですか。その前後でどう変わったんですか?
矢野:ノーレイティングって、けっこう誤解を招きそうだなという気はしています。別にノーレイティングだからといって評価をしないわけではなくて、単純に絶対評価で給与に紐づくかたちで評価しているというイメージですね。
なので、ノーレイティングによってなにがしやすくなったかと言うと、僕の個人的な感覚では、違うチームのメンバー同士を比べやすくはなったのではと思います。
西村:どういうこと?
矢野:すごく難しいんですけど、メルカリの評価プロセスは、純粋に「この人の貢献度はこれぐらいだよね」というものを、OKRの達成度なども含めて、まずチームでCalibrationします。次に、このVPレベルでCalibrationして、という評価で全部やっています。要するに、評価が反映されるものがレートではなく、純粋にバスっと給与なんですよ。
西村:なるほど。ちなみに、高い年収で入った中途の人は、ノーレイティング思想としては、なにかバイアスがかかりますか?
矢野:かからないです。面接もそうなんですけど、最近流行っているじゃないですか。希望年収などではなく、純粋にその人のスキルで給与を提示する……。
西村:マーケットバリューで出すみたいな。
矢野:それと同じなんですよね。要するに、いまシリコンバレーで3,000万円もらっている人が、日本に来てエンジニアをやりたいといったときに同じ金額を出すかというと、そうではなくて。
「この人の実力はなんだっけ? 影響力を踏まえて考えれば、これくらいの給与だよね」ということをバチッと定めれば、入ったあともほかのメンバーと比べて評価が左右されるわけではないので、採用の時点からそれをしっかり意識することが重要なんじゃないかというイメージですね。
西村:なるほど。理解しました。
河内:(本人の)希望では評価しないけど、人の軸で相対比較して、市場価値をベースに給与を決めるようなイメージですね。
実は前回もこういうイベントをやったんですけど、その時も「評価とOKRをどうしていますか?」というご質問がかなり多かったですね。
今日も弊社のツールを導入いただいている企業が何社かいらっしゃっているんですけれども、「評価はどうしますか?」という話があって。何十社かお話ししたなかで、まだ結論というかベストの解が出ていません。しかも、いまのところ、それは永遠に出ないような気もしています。
矢野:先ほども言いましたように、OKRは達成するのが難しいんですよ。正しくOKRを設定するというところ。そもそもOKRのOが達成できることはあまりないと思っているのですが、達成できなかったら給与が上がらないということではないと思うんですね。
いわゆる評価制度としては、OKRもある程度は見ますけれども、Peer・Feedbackなども含めて設定していくことが重要なのかなとは思います。OKRはあくまで、「なにをやったか」「どういうことをしていくのか」をわかりやすく見るための指標という立ち位置だと思いますね。
西村:たぶんみなさまもOKRを運用されていたり、これからやりましょうというときに、「60パーセント達成の目標で、人間は走れるのか?」という疑問がありますよね。僕らは、100点満点・100パーセント達成の世界で生きてきたじゃないですか。
これは、結論としては走れますよ。だって、めっちゃワクワクしているんですもん。「メジャーリーガーになろう」と言って、日本のプロ野球に入った人が「やっぱり日本か」とはならないじゃないですか。
そうなると、なぜ走れないかと言うと、「メジャーリーガー(になろう)」というOがたぶんずれてるんですよ。ぜんぜんワクワクしていないし、納得感もないと思うので、さっきのミッションの話と同じですが、カンパニーのOは相当みんなの納得感(を得るために)、最初は膝詰めしてでもやる必要があると思っています。
西村:僕はたぶんOKRで(達成したのは)最大で75パーセントくらいなんですけど、本当にもうずっとガッツポーズをしていましたよ。その時はたまたま採用の人数だったんですけど、60パーセントの目標設定で15パーセントアッパーなので、すごく高い達成をしたんですね。
変な話、100パーセント達成していたら、会社が(採用人数を)受け入れられなかったんですけど、その60パーセントがいかに自分にとってのマックスなのかという納得感は、たぶん大きなOに対してどれぐらい納得しているかということです。
変な話、1個のOKRで(達成が)5パーセントとか(のものも)あるんですよ 。なぜなら、優先順位を下げて次の期に回した場合は、その期のOKRは達成率が5パーセントなので。でも、「目指していたOに対して別のOKRを充ててよし」ということになっていれば、そこに対してはすごく納得感があるなと思います。
もし60パーセント目標でがんばれないんだとすると、OKRという制度というよりは納得感やOの立て方のところで、もっとやりようはあるのかなと思います。
河内:質問をしてもいいですか? OKRの目標の難度はけっこう高いと思うんです。最初は目標がストレッチすぎて、逆に達成できるイメージが湧かなくて、あまりモチベーションが上がらない。逆に無難すぎてもそんなに動機づけがされなかったり。
そこをやっていくために、お二人の会社では研修やトレーニングをされていますか? 例えば「中途で入られてきたマネージャーが、速攻でOKRの目標設定をうまくできるのか?」とか、すごく気になります。
矢野:僕は、5ヶ月前に入ったきた新人マネージャーなんですよ。まだ1回しか評価プロセスを回していないので、ちょっといろいろと失言があるかもしれないのですが……。
(会場笑)
矢野:僕も(メルカリに)入ってOKRを学んだんですけど、研修があるというよりは、やっぱり隣のメンターや周りの人、マネージャーから聞くことが多かったです。会社のカルチャーの一環としてOKRが入っていることがすごくよかったので、僕もスムーズに入れたんですけど。
OKRのObjectiveがストレッチすぎるという話はよくあるじゃないですか? でも、正しいKRを定めれば、Oがおかしいこともわかるはずなので、Objectiveがストレッチすぎるということは、たぶんKRの設定を間違えている。Objectiveがストレッチかどうかは、KRを設定してから判断してもいいと思います。
河内:なるほど。
西村:例えば、営業(の売上目標が)1億円増となったら、テレアポ1日6,000件で、100パーセント無理というような。
矢野:それです、それです。
西村:そういうことだよね。
矢野:はい。極端な話ですが、(KRが)「無理だ」ということは、Oが違うということになります。
なので、ちゃんと定量的なKRであるかが非常に重要です。採用人数もそうですけれど、人事施策を確立するなかで、例えば「3人で1クオーターで採用数750人」というのは、絶対に無理じゃないですか。「じゃあこれはOの立て方をちょっと変えたほうがいいのかな」「KRを変えたほうがいいのかな」という。
OKRをちゃんと設定して、Objectiveが上げすぎず下げすぎずのストレッチになっているかどうかを決めるのは重要かなと思っています。
河内:Sansanではトレーニングのようなものはあるんですか?
西村:結論、ないですね。僕らはまだ模索しているんですけど、フィードバックの仕方は人事を含めてコメントをしています。やっぱり、社内でもOKR自体が定まってない、どうしていいかわからないマネージャーやメンバーもいるので。設定とフィードバックはがんばるんだけど、決まってしまうと走らないといけないので、僕らもまだ解がないですね。
西村:いま矢野くんが言ったのとは少しだけ意図が違うかもしれないですけど、Oを設定してKRを設定したら、「これはどうやらOがおかしい」というケースと同時に、もしマネージャーの方がいらっしゃったら、「そのOって本気で達成できないんだっけ?」という問いは、ムーンショットという観点からいくと「わりとありなのかな」と思っています。
例えば、いま、僕らのサービスの導入社数は8,000社なんですね。Sansanは法人向けなので、このなかにもお客様がいらっしゃると思います。本当にありがとうございます。「3年後に10万社」という目標を置いているんですが、それはたぶんKRを引いたら無理なんですよ。
ただ、「それなら手法を変えよう」ということになるので、実は裏側というか、本丸のOKRとは別に、「3年後に10万社にいくための道筋をつける、ないしはHowを考える」というKRを持っているメンバーもいます。なので、必ずしも「いまは無理なOだから閉じる」というよりは、そこを考えるKRがあってもいいかなと。
通常のOKRの思想上は、「考える」というOKRはありません。なにか考えて、いくつかアウトプットを出すKRにならないといけないという思想なので。だからすごくファジーな感じです。
矢野:それはすごいですね。
西村:でも、個人に落とすと、彼らは勝手にやっていますよ。「10本アイデアを出す」というふうにやるんですけど、その部署的には「考える」というOKRがどうしてもない方もいらっしゃるんですね。
司会者:ちょっと1問1答的に、次に「いいね!」が多い質問を聞きたいと思います。「管理部門のOKRを定量化する」。人事はものによると思うのですが、管理部門・総務・経理といった、コーポレート系の部署のOKRは(どう定量化していますか)?
河内:ちなみに管理部門の方はどのぐらいいらっしゃっていますか?
(会場挙手)
西村:みんなけっこう管理部門じゃない?
河内:人事の管理部門ですね。
矢野:KRじゃなくても、やっぱり管理部門は、目標設定をなかなか定量化しづらいですよね。例えば、人事・労務はなにを目標にしてなにを達成したかは、正直、「KRだからどう」「OKRだからどう」というわけではないかなと思っています。
だから、細かい課題を洗い出したときに、「これは定量的になりそうだね」というものを「こういうふうにここに入れてみようか」とか。定量的にならないところは、「いついつまでにこういうことやります」という感じで、要するに「Yes・No」で答えられるようなKRの立て方はあります。
河内:ああ、実施の有無を問うようなKRですね。
矢野:そうです。「いつまでに」が重要なんですよ。いついつまでに何をやる。1か0なんですけど、それだったら達成したかの判断ができます。だから、「何月何日までにこれができているようにする」というのは、KRであってもいいと思っています。だから、そのような設計の仕方をするという感じですね。
河内:僕も昔は人事をやっていたので思っていたんですけど、いろいろな施策が回っているなかで、やったのに記録に残っていなくて評価されづらい側面もあるかなと思っています。KRだと、人事でも「やった・やっていない」というかたちで残せるからいいですよね。
矢野:そうですよね。「Candidate Surveyを11月末までに始めます」と言ったら、それはそれでKRにしてもいいし。
西村:うちもそうですね。経営管理部というところがあって、「組織力アップグレード」という部門のOに対して、KRは「そのアップグレードを実行する」ということになっています。たぶん、「プロマネの養成」「労務グループを人事部に移管する」というものがその管理部のKRであって、それがDoneされているかが個人メンバーのKRになっているんですね。移管できた・できていない。できたら100パーセント。
河内:「できている・できていない」ですよね。
西村:定量化がしづらいです。うちの会社じゃないですけど、昔、ある会社で「ミスの数」というのをやったらしいんですよ。
河内:ふーん。ネガティブな感じですね。
西村:けっこうネガティブじゃないですか。ワクワクしなきゃいけないはずなので、それはあまりおすすめしないですね。
矢野:そうですね。
西村:「〇〇の達成」というようなワーディングはけっこう肝だと思います。
矢野:そうですね。
河内:エンジニアの目標などでよく見るダメなものは、「不具合何件」「チケット消化数何件」。ああいうものはつまらないなと思うので、盛り上がる目標がいいですよね。
矢野:そこはやっぱりObjectiveをどう定めるか。Key Resultsが必ずしもワクワクするものかと言うと、そうではないと思っていて。定量的にやっていて、複数あるKRが達成されればワクワクするよね、という感じの考え方かなと。
司会者:私が個人的に気になったのが、「なにをもってOKRは成功と言うのか?」という質問についてです。私も人事だったのですが、人事の施策は成功を定量化できないじゃないですか。「これをもって成功でした」と。新しいことをやるときは経営判断もあると思うので、なにかOKRの成功と言えるものはありますか?
西村:やばい。「それに答えられる日本人がいるのか?」という問いなんですけど。
河内:最近ちょっといい経験があってですね。私の部がいま50名ぐらいなんですけど、所属している大きな組織は1,000名ぐらいなんですよ。そこは普通のMBOをやっています。
うちでOKRがけっこううまくいってきたので、「それをやりませんか?」ということを大きい会議で話しました。その時は「ROIがどのぐらい出ます」「エンゲージメントがこのぐらい上がります」ではなく、「いまの人事評価をどう思いますか?」ということを全員で議論しました。
そうすると、「いまの人事評価は社員の成果向上につながっていると思いますか? どうですか?」と聞くと、「やっぱりつながっていないね」という話になってくるので、「OKRを新しく導入したい」という話があると、個人的にはそういうやり方がおすすめかなと思っていますね。
矢野:やっぱり、OKRを入れる理由を達成できていればというところだと思っています。僕は、必ずしもOKRは評価だとは思っていません。評価制度ではなくて、ある程度の指標だったり、会社全体の方向性をメンバー個人まで落とすという意味で入れる手法だと思っています。例えば、メンバー全員がカンパニーの目指す方向が言えたら、僕は成功でもいいと思います。
必ずしも評価=OKRというのは……もしかしたらもともとGoogleが提唱しているものとはちょっと違うものだと思っていて。そんな感じじゃないですか?
西村:うん、そう思う……。
矢野:いま、ちょっとマインドフルネスしてました?
(会場笑)
西村:マインドフルネス(について)、興味があれば聞いてください。
西村:さっき申し上げたとおり、MBOからOKRのような流れで、OKRは新しいじゃないですか。だから、もしかしたらですけど、プラクティスとして取り組むことは、1つの会社のステートとしてありなのかなと。
世の中に目標設定や評価で満足している人はそんなにいないと思うんですよ。(評価)している側も恐々としてやっているし、(評価)される側も「もっといいのあるんじゃないかな?」と思う。そこに一石を投じるという意味で、別にOKRじゃなくてもいいですけど、OKRを入れること自体が、成功への一歩なのかなと。
その結果、合わないねということでMBOに戻すのが負けなのかと言うと、そんなことはないと思っています。そこにモメンタムを作るというか、動きを出すこと自体が成功と言うとちょっとあれですけれども、ポジティブなことかなと思っていますね。
本当の成功は、たぶんOKRが議論にならなくなって、日本の企業の生産性や目標設定が超野心的になって、世界のスタンダードになるようなサービスの企業が生まれてくることだと思います。個社で成功・失敗を問い始めると、もはやこのサービスをCOBOLで作っていようがRubyで作っていようが、それが成功していればいいという話だと思うので、言語の話に近いかなと思います。
ただ結果的に、いまの世の中のすごくハイグロースな企業がOKRを取り入れているのであれば、やってみることが成功への一歩なのかなと。ちょっとずるい答えですけど。
Sansanにおいて、「ツールを入れる・入れない」という基準があります。それは「世の中のベストプラクティスかどうか?」。ベストプラクティスなら、ある程度ノータイムで入れる。入れるかどうかの判断がないんですよね。「世界で一番使われているサービスは1回使う」ということだけは決めている節があります。
もちろん社内に諮られるんですけど、結局、最後に紛糾すると、代表が「入れる」ということになるんですね。これはぜんぜんトップダウンではなくて、僕らがベストプラクティスになろうとしている会社なので、だったら世のベストプラクティスを使わないという理由はないんですよ。だからOKRも入れたと。実は、ただそれだけなんじゃないかなと。
「OKRがすごそうだから」「ベストプラクティスだから」というふうに入れるのは、わりとありな姿勢なんじゃないかなと。
最初は超紛糾しましたよ。それこそ「Yammer」というMicrosoftのサービスを使っていたんですけど。
矢野:(笑)。
西村:それをWorkplaceに変えるときも、すごく紛糾するんですよ。使いやすかったので、僕も最初は(変えるのが)めっちゃ嫌なわけですよ。
西村:でも、「どうやら国内で、どういう開発体制を敷いて、いくら投資をするらしいよ」と知ったら、「あっ、これはベストプラクティスだな」と思って決めるので、OKRの成功というのは、この前段階の意識や会社の姿勢なのかなと思います。まあ、OKRのベストプラクティスは、HITO-Linkなので。
(一同笑)
河内:ありがとうございます(笑)。
西村:今度、デモアカを発行してもらっていいですか。使ってみるのはありだと思いますね。だから、さっきまさに話していましたように、いきなり全社導入だと重たいので、一部で試してみるとか。社内の「このマネージャーは物わかりがいいな」というような人と結託して、そのチームだけでうっすらOKRを始めてみるほうがいいのかなというのはありますね。
最後に、僕は「成功」という言葉があまり好きじゃないんですよ。「誰が決めんねん?」という話なので、「OKRはなにをもって成功ですか?」と聞いてきた社長がいたら「バカなのか」と。「この事業の成功はなんなのか?」と聞いたら、どんどん変わっていくわけじゃないですか。
「OKRを入れてみたけど、またMBOに戻します」は失敗じゃないと思うので、成功・失敗でOKRや評価制度を語ると、やりづらくないかなと思ったりします。なので、「もっと気軽にOKRを楽しめばいいんじゃない?」と思いますね。
河内:その際に、ぜひHITO-Linkをお願いします。
(一同笑)
西村:アフィリエイトがあるので、僕のサイト経由で(笑)。
(一同笑)
河内:(リンクを)つけてください(笑)。あと、「どうしても聞きたい」という質問がある方。
司会者:「我こそは」という方がいらっしゃれば。どうでしょうか?
質問者1:いまのお話はすごくおもしろかったです。自社でも試しているんですけど、あまりうまくいっていなくて。そのなかでちょっと聞きたかったのが、いまのは管理者や上司の目線だと思うんですね。
とくにハイパフォーマーではないメンバーが、OKRを入れたことによってなにか変われたエピソードだったり、「OKRじゃなかったら、このパフォーマンスを出せなかったね」という具体的なエピソードがあったら、(OKRを)入れるにあたってすごく強い動機づけになるかなと思うので、ぜひ聞かせてほしいなと思います。
矢野:僕から。僕はむしろ、そのためにOKRを使っています。メンバーのモチベーションを上げるために。例えば、ずっと毎週各メンバーに1on1をしているんですけれども、「こういうことに悩んでいる」「こういうふうにすれば改善しそうだね」というときに、それをOKRに設定してしまえばいいと思うんですよね。
「それが達成できたらこうなる」というOを入れて、KRは「これをやればいいんだ」というものでやってみたらいい。そうすれば、自分自身の評価にもつながりやすくなるし、OKRに設定して導入しちゃおうよ、ということをけっこう言っています。
モチベーションが下がっている社員ほど、OKRを意識して作ってもらう。それが最終的にチームのOKRにうまく紐づくようなかたちで、マネジメントをしたり。そういうところで、逆にOKRが使いやすいのかなと思います。
西村:それはすごくあるなと思っています。MBOとOKRを比較して考えることは、そこまでないんですけど。最近友人から「エモいって言葉を使うな」と言われたんですけど、OKRってエモいんだと思うんですよ。
(一同笑)
だけど僕は、みんながなんとなくわかるこの言葉が好きなので、あえて「エモい」という言葉を使います。雰囲気が伝わればいいんですよ。「一生懸命がんばって働いているなかで、なんで目標設定だけカチッとやらなきゃいけないんだ?」と、ずっと思っていたんです。
西村:僕は個人事業が長かったので、ずっと目標設定は「年収1億いく」というものでした。当時は、野球選手みたいになりたいと思っている銭ゲバな僕がいたんですね。僕はたぶん、1人OKRだったんですよ。どうしたら1億円にいけるかを日々考えていて、「この案件は大好きだけど、1億円にいかないから取らない」というような。自分のなかでそういう目標設定がありました。
ローパフォーマーの子たちは、目標設定が嫌なんだと思うんです。だって、振り返りがまず「お前はダメだ」から始まって、「次もダメそうだから、お前の目標はこれでいいよ」(と設定される)。そうじゃなくて、「ちょっと一発逆転で、こんな目標を置いてみたいか?」というもの。いま矢野くんが言ったように、モチベーションを上げるためのツールとして……やっぱりちょっとエモいんですよ。
(会場笑)
矢野:感極まっちゃった(笑)。
西村:感情が揺さぶられるようなOを置いてみて。ダメでもいいじゃないですか。マネージャーが一緒に「ダメだったな」って言って、「次はどんなのいく?」というふうに、目標設定をもっと民主化できるような気がしています。
ハイパフォーマーは、OKRをけっこうピチッと決めつけるんですよ。わかっている。ローパフォーマーほどマネージャーが入って……1on1ってそういう時間だと思うんですけど、すごく嫌な時間を楽しい時間にする。そういう意味で、OKRは矢野くんが言ったようなツールだし、それを「やっていい」と会社が言ってくれています。
しかも、100パーセント達成じゃなくてもいいじゃないですか。20パーセント達成でも「がんばった」と言っていいシステムなので、ローパフォーマーにこそ効くんじゃないかなと思ったりしますね。
矢野:それをチームのOKRに紐づければ、最終的にカンパニーのOKRに紐づくので、「あなたの一言が会社の経営に貢献しているんですよ」というコミュニケーションが取りやすい。
司会者:本当は「3年後、日本でOKRは浸透しているのか?」という質問で最後に締めくくってもらおうと思っていたんですけど、あまりその話にならなかったので、その答えでもいいですし、そうでなくても、最後に一言ずついただければと思います。
西村:ありがとうございます。さっき、「そうだ、そんなテーマだったな」と考えていたんですけど、全部しゃべってしまいました。「OKR」という言葉がなくなったら、たぶん根づいているということだと思うんですよね。
僕は(日本にOKRが)根づくと思っていますし、ここには人事の方もわりと多いと思うので、人事がリスクを取って、OKRに限らず新しいものをどんどん取り入れていく。
「頭の固い社長や部長陣をどうするんだ」という質問もありましたけど、喧嘩するしかないですよ。こっちがめちゃくちゃ勉強して、本当に魂を込めて提案をしていくことが重要だったりするので。それは1つ(の方法)です。根づくと思います。
もう1つは、僕らの職種は孤独なので、やっぱり横の連帯とかこういう場を使ってノウハウをためていくことによって、経営者や部長に提案していきやすいのかなと思います。質問の答えに対しては、十分根づくなと思っていますが、正解はたぶん3年後も5年後も10年後もないと思うんですね。
それこそ、メルカリさんや当社が「OKRでグロースした会社だ」と言われるんだと思うんですよ。それだけではないですが、OKRが理由の1つだったということはありえるかなとは思います。経営者もいらっしゃると思うのであれなんですけど、人事も一緒にがんばれたらいいねと思っています。
このあと懇親会もあると思いますが、今日来ていただいた方は名刺交換やFacebook(の友達申請)はオールウェルカムなので、申請をいただいて一緒にやっていければなと思っています。引き続きよろしくお願いします。
(会場拍手)
矢野:すごい。最後に自己ブランディングとか(笑)。
(一同笑)
矢野:「OKRが良さそうだ」と入れてみるだけでなく、そこからOKR2.0とか3.0というふうに、自社のニーズを考えた上でどんどん良いものに改善しながら運用していくのがいいんじゃないかなという気がしています。
西村:そのノウハウが共有されるといいよね。
矢野:そうですね。
西村:実際、メルカリ病というものがありませんか? 「メルカリさんがあれをやっているから、やってみよう」という……めっちゃ頷いている(人がいる)よ!
(会場笑)
矢野:いまはOKRがフィットしていても、もしかしたら次のクオーターからはうまくいかないかもしれないので、そこはぜひみなさまと一緒にいろいろとノウハウを共有しあえたらなと思います。
司会者:はい、ありがとうございました。
(会場拍手)
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