2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
提供:株式会社トライバルメディアハウス
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田中陸也氏(以下、田中):みなさん熱いですね。話し始めると止まらない(笑)。けっこう時間が来ちゃったので、ちょっとテーマを飛ばしますね。いくつかテーマを用意してたんですけど、3番からいきましょうか。「コミュニティづくりのポイント」をみなさんに聞きたいなと思います。
みなさんの中にもコミュニティをやっている方はけっこういるかもしれないですけど、コミュニティをつくっている人はいろいろな持論を持っているんですよね。その持論を聞くなかで、コミュニティをつくるヒントなどが得られると思うので、このあたりを聞いていきたいなと思います。じゃあ宮本さんからいきますか。
宮本昌尚氏(以下、宮本):(コミュニティづくりのポイントは)役割分担かなと思っています。Anycaの会員の方に「どういう瞬間に最もAnycaを好きになりましたか?」と聞いたときに、「Anycaからなにかお願いされたときに、一番Anyca愛が高まりました」というのがわかったんですよね。それぞれの人に合った役割を分担することで、一緒にコミュニティをつくっていくことはすごく重視しています。
なので、実は会員の方が受付をやってくれていたり、カート場でイベントをやっていたときに駐車場の誘導をしてくれたり、ブログでまとめてくれたり、インタビューに答えてくれたり、それぞれの人のタイプに合わせて役割を担えるように(なっています)。
さっきのイベントを一緒につくっていくというところも、半年で3〜4人というかたちで選んでいて。「この人はコミュニティリーダーとして一緒にイベントを作っていけそうだな」という人がいたら選ぶし、「撮影会とか手伝ってくれそうだな」という方には「撮影会一緒にやりませんか?」という依頼をするし。
そういうかたちで、それぞれの役割を作って、一緒にやっていくことでコミュニティづくりに役立てています。
田中:なるほど。ちなみに、なにか役割があってそこに人を当てはめるのか、人がいて役割を考えるのかで言うと、どちらがイメージに近いんですか?
宮本:両方のパターンがありますね。例えば、Anycaって女性(の会員は)10パーセントぐらいで少ないんですけど、車がすごく好きで「整備して油まみれになっても大好きなんですよ。私、Anyca大好きなんです」という女の子がいるので、「この女の子と整備イベントやろうかな」と考えたり。そういうことも、その子ができたからこそできることですよね。
あとは、マーケティングにどう活かすかでいうと、メディアとの文脈の中で、「こういう人やこういうコミュニティの活動を取材したいんだろうな」とわかったら、それに応じたイベントや取り組みを作ることもやっています。その両方がありますね。
田中:前半の部分、おもしろいですね。それってもう本当に、会員の方を見たからこそ出てくるやり方ですよね。
宮本:まさにそうです。そういうことはすごく多くて。さっきの転職したエピソードとかも、そういうことをこちらから聞くことはないので、まさに触れ合っているなかで、「そういう話があるんだったら、ぜひ取材させてください」ということが多いですね。
僕の中では、顧客を知ることを「顧客理解」と言うんですけど、コミュニティをやっている一番の良さは顧客理解ではなくて「顧客実感」です。この人がどういうタイプで、どういう感情を持っているのかを肌身で感じられることが、それをマーケティングに活かす上ですごく役立つと思います。
田中:ありがとうございます。野村さん、お願いします。
野村高文氏(以下、野村):2点ぐらいあるかなと思っていて。1つは、コミュニティの熱量は人によって差があるのが当たり前だと思うんですね。
普通に設計すると、一番熱量の高い人向けに最適化することがありますが、もうちょっと裾野を広げる、どの熱量の方でもある程度楽しめるようにするのがポイントかなと思っています。
昨今、オンラインサロンが流行しており、こうしたコミュニティでどんどん動くことに慣れている方々は、当然運営側と同じ熱量なので、一緒にやっていきたい。ただ、見ているだけの方をどれだけ満足させるかが実はポイントだと思っています。
手を動かしている方は、手を動かした分だけ返ってくるものがある。しかし、見ているだけでもある程度、それがおもしろさや学びになる状況を作れたら、コミュニティは広がりが出るんじゃないかなと思っています。そうじゃないと、コアな少人数の集団になる。もっと、裾野の広さや懐の深さが必要だと思っています。
宮本:コンテンツを作っていったりする感じですよね。
野村:そうですね。なので、見ているだけでもある程度楽しめる設計にすることが大事だと思いますね。コンテンツの面でもそうですし、なんなら、そうやって動いている人の動き自体が楽しいというところがあると思いますね。
宮本:記事や動画でまとめたり?
野村:あとはオンライン上でも見られるといったものですかね。
宮本:なるほど。
野村:もう1個は、最初のオンボーディングがとても大事だと思っています。コミュニティは、3ヶ月以内に辞める人が全体の半分という世界なんですよね。そこでいかに「ようこそいらっしゃいました!」といきなり顔が見られる関係をどれだけ作っていけるか。これはどのコミュニティもそうだと思います。
田中:最初はとにかく深いコミュニケーションを、という。
野村:そうですね。最初にいかに1人でも2人でもつながってもらうか。あと、運営が顔を見せられるかがけっこう勝負になってくるかなと思いますね。
宮本:イベントで会うのが大事?
野村:ええ。
宮本:オンラインでコミュニケーションする人を決めて。
野村:はい、そうです。
宮本:なるほど。Anycaもそれはすごく大事で、イベントの名前を「新規メンバー歓迎会」という名前にしてるんですね。そうすると新規の人は歓迎されると思って、けっこう来てくれることがありますね。
田中:そうですね。サークルの新入生歓迎会とか、そういう昔ながらの構造のコミュニティって、やっぱり1個1個に意味があったりするんですよね。当然、初めてコミュニティに入ってくる人は緊張感を持っているので、最初の3ヶ月でどれだけ馴染んでもらうか(が大事ですね)。
逆に言うと、そこで馴染んでもらうと、そこから先は「あっ、ここの雰囲気わかった。顔が見える人もけっこうできてきた」ということで、自走していくイメージが僕にはありますね。
上田晃穂氏(以下、上田):「マイネ王」も同じようにデビュー掲示板というのがあって、「はじめまして」だけをとりあえず書いてくださいと。それで最初に書くきっかけを作ってあげて、みんなに「ようこそ!」「ようこそ!」というかたちで盛り上がって継続してもらうような仕組みを持っています。
野村:単に自己紹介するって、けっこう大事ですよね。自己紹介って誰でもできるじゃないですか。まずそれをやってもらうのは、ステップとしては一番負荷が少ないですし、けっこう意味があることだなと感じています。
宮本:やっぱり、自己紹介も発信してもらうのが大事ですよね。
野村:そうです。
宮本:うちもイベントのときは、初めてメンバーでグループになって、好きな車やオーナー・ドライバーをやっているのかという自己紹介を最初のきっかけにするので。それがないと、どうしても1人ぽつんと「誰も友達いなくて来ちゃった」という人が出ちゃうので、それをなくすためにすごく心掛けていますね。
田中:その流れで聞きたいんですけど、コミュニティって新陳代謝や入れ替わりという話があるじゃないですか。せっかく入ってきた人を盛り上げても、やっぱりいなくなっちゃうことがあると思うんですけど、そのへんはどう考えられて、それを対策しようとしているのか、逆に(入れ替わりを)促そうとしてるのかを聞きたいなと思います。
上田:「マイネ王」のコミュニティももうちょっとで4年経つんですけれども、メンバーは、最初からいる人がずっといることもありますし、最初からいた人がだんだんいなくなって新しい位置に入れ替わっているというのはあります。
でも、大事にしているのは、ちゃんと来てくれる場を用意することかなと思っています。決して昔からいる人を疎外することにならないように、かつ新しい人がきっちりと入ってこれるような、場の住み分けを意識して運営していますね。
田中:それって具体的にはどういうことをされているんですか?
上田:具体的には、昔からおられる方はどんどん自分で掲示板を立てたり内容を書いたりされているので、いま入ったばかりでまだ書けない方には、「なにか書いてみましょう」と我々が個別のメッセージを送ったりとか。
あと、「オフ会に参加してもらったけれども、その感想を書いてくださいね」とか、なにかをきっかけにして、「こういうことをどんどん盛り上げていきましょう」という個別のメッセージを送るようなことを(しています)。
そうすると、ユーザーさんはどんどん積極的に書くようになっていって、行動に変化が現れてくるようになる。そこを捉えて、Q&AにQが出たら答えてくれるようになったり、我々の思いを代弁してくれるような擁護のコメントを書いてくれたり。そういう行動にどんどん変わっていくようなことをしています。
宮本:なるほど。mineoさんは、「Gマスター」や「SGマスター」といったレベルがあって。
上田:そうですね。
宮本:あれがその人の階層のようなものになっているんですか?
上田:そうですね。いろいろなランクがあるんですけれども、あれはもう本当に書いた量がどれだけ多いかや「いいね!」を押した数が多いかという活動量全体を指しています。例えば「Q&Aのすごいベストアンサーを取った人はこのメダル」とか、「端末に詳しい人はこのメダル」といったように。全体の活動量が多い人と、個々の得意分野がわかるようにいろいろ工夫しながらやって(います)。
宮本:物量だけだと最初からやっている人が圧倒的に得意になっちゃうから。うちも周年イベントでは、ドライバーとして最もシェアされているとか、レビューがすごくよかったとか、取材対応を一番やってくれた人とか、本当にいろいろなかたちの表彰状を用意していますね。
田中:今日も最後のセッションでチームビルディングがあるんですけど、コミュニティって、けっこうチームビルディング的な要素もあって。パズルを組み合わせるように、この人の強みと弱みがはまるとか。そういう意味でいうと、得意分野の可視化はけっこう重要だったりするんですかね。
宮本:そうですね。コミュニティリーダーを3~4人選ぶときも、チームづくりと一緒です。この人はけっこうミーティングを仕切ってくれそうだから1人入れて、この人はドライバー観点で言ってくれそうだとか、男性ばかりだから女性を入れるとか。バランスのいいチームをつくるようなかたちで、「コミュニティリーダーをやってくれませんか?」という依頼をしています。
田中:なるほど。ありがとうございます。今の話は、一人ひとりがコミュニケーションをとっているとか、一人ひとりをしっかり見ながらチームを作っていくとか、けっこう非効率なコミュニケーションが必要だということだと思います。それって、コミュニティはけっこう中長期的じゃないとなかなか成果が出ないというところにもつながる話だなと思って。
そうなったときに、みなさんがこれまでコミュニティをつくられているなかで、上を説得していかないといけないような社内の苦労や、逆に「こういったプラスの影響が対社員にもたらされたよ」という話があれば、聞きたいと思います。
野村:(コミュニティの)運営をされている方は感じられるかもしれませんが、コミュニティって、けっこう水物なんですね。ある程度はマニュアルで作れるんですけど、そうじゃないところがかなり多い。当然ですよね。だって、集まって来る人によって全然違う姿になりますから。
だからスタッフに対してのプラスの影響としては、“アドリブ力”というか、現場でマニュアルに書かれていないことに対応しなければいけない。そういう力が、スタッフには身についている感じがありますね。
一方、苦労もそこにあります。私自身も過去に反省したことがありまして。「こういうかたちでコミュニティを運営すればいいよ」というマニュアルを整えて、メンバーに渡していった時期がありました。
ただ、やっぱりいろいろなところで事故や問題が起きていて。これは非言語的なマニュアル化できない部分が多い仕事なんだな、と痛感したことがあったんです。
とはいえ、やっぱりそこでがんばっていたメンバーは、その分成長しています。そういう人間の集団を相手にするときの割り切れなさが、一番成長につながっているのかな、と感じています。
宮本:なるほど。経営層はけっこう、そこの理解があるんですね。「そこまでやってても、結局、コミュニティの中だけに閉じているんだったら、無駄な努力なんじゃないのか?」ということにはならないですか?
野村:NewsPicks自体、コミュニティの強さがそのまま会社の競争力につながっているところがあります。いいコメントを書いていただいたり、学びの空間でそれぞれに切磋琢磨し合って、そこからブレイクする人が出てきたり。そういうところがサービスの価値につながるので、そこはかなり(経営層も)理解しているというか、むしろ「やれ」と言われています。
宮本:なるほど。mineoさんは格安SIMだから……。どうなんですか?
上田:先ほど、コミュニティはマニュアルではつくれないという話があったんですけど、まさにそのとおりだと思っています。どうしてもコミュニティは生き物なので、あることをきっかけにネガティブ側にわーっと振れたり、ポジティブ側に振れたり、人によって荒れたり盛り上がったり。もうすごい。本当に生き物みたいだなと思っています。
上田:そんななか、私が部下によく言っていることは2つあります。1つは、ちゃんと一人ひとりに真摯に対応することを心掛けています。その気持ちの問題が非常に大事で、一人ひとりのお客さんをちゃんと見る。ハンドルネームを覚える。オフ会に来てくれたら、顔(と名前)を一致させる。(イベントに)来たときには「〇〇さん、ありがとうございます」と名前を呼ぶ。
だから、本当にイメージはホテルマンのような感じです。一人ひとりを覚えて、どんな記事を書いてくれていて、どんなことが得意かをちゃんと覚えていく。そういうふうに、一人ひとりに沿ったフォローをしていくことが非常に大事かなと思っています。
もう1つ、仕事はやっぱり楽しむことが大事だと思っています。「みんなで楽しみましょう」と言いながら、我々が楽しんでいないと、それは伝わると思いますし、楽しむとパフォーマンスも上がると思います。
やっぱり、経営層には「コミュニティをちゃんとやっているよ」というだけでは伝わらないので、KPIなどを見せて「コミュニティの成果でこれが起きてるんです」ということを常に心掛けています。
宮本:けっこうスタッフのキャラなどもありますよね。うちも、コミュニティマネージャーはもともと僕以外のメンバーがやっていました。今は僕と、現場はもう1人のメンバーにやってもらっているんですけど、それぞれタイプが違うんですね。
最初のメンバーはユーザーとすごく仲良くなって(いて)、「一番のファン度の高い人はどういう人ですか?」と聞くと、「うちの家に遊びに来た人ですね」と言うんですよね。もう家に遊びに来るほど仲良くなってるんですよ。
野村:(笑)。
宮本:相当に濃密な関係性づくりをしているので、そのコミュニティを僕が引き継いだ時に、完全に同じことはできないなと思ったんですよね。
なので、自分に合ったかたちのコミュニティ運営という意味で、僕がコミュニティを引っ張っていくのではなく、ユーザーの中のコミュニティリーダーに引っ張ってもらうというかたちにしました。
次に(マネージャーが)新しいメンバーになったときも、その人のキャラクターに一番合ったかたちのコミュニティ運営になるんだろうなと考えています。お客さん側もそうだし、社員側のキャラクターに合わせることも必要ですよね。
野村:それはありますね。「お客さん」という言い方はあまりしないんですけど、いらっしゃる方々と社員の間での前提認識が合わないとダメな時があって。
例えば、社員はよかれと思ってフランクに接していても、向こうの期待値が違ったりすると、「なんなんだ、こいつは?」と見られたりする。逆に、ちょっと真面目にいきすぎて「なんか堅いなぁ」と思われてしまうこともある。
野村:さっきの「お客さんの顔を見る」という言葉がまさにそうだと思うんですけど、どういう雰囲気でなにを求めているのかを感度良く判断する。言葉で言うのは簡単なんですけど、そこがけっこう難しい感じはありますよね。
ただ、やっぱりコミュニティを運営していることは幸せなことだと思っています。自社のサービスが伸びる喜びをお客さんと分かち合えることって、そうないじゃないですか。
お客さんが喜んでくれる。ここ(のコミュニティ)が広がっていくことが、お客さんも喜んでくれるし、我々も喜べる。そういうことは、ビジネス界においてはかなり稀有だと思っています。ただ、個別論で言うと、その過程でいろいろ起きるから、そこをいかに耐えてやっていけるかだと思います。
上田:そういう意味では、苦労を苦労と感じないような人が一番向いていると思いますね。
野村:それはありますね。
宮本:そうですね。
上田:さとなお(佐藤尚之)さんの『ファンベース』という本に、「手間がかかるんじゃなくて、手をかけたいのである」という言葉がありました。まさにそのとおりだなと思っていて。
「我々が1個1個やっていることは、ちゃんとお客さんのために、サービスのためにやっているんだ」というやる気と熱意のある人が一番いいかなと思います。
田中:じゃあ、今日のテーマの「社員の熱狂」がやっぱり重要ですね。
野村:超重要ですね。
田中:そうですよね。もう今の時点で(笑)、みなさんから感じますもん。Sli.doで質問をいくつかもらっているので、質問に答えたいと思います。
いくつか(質問を)いただいているんですけど、一番「いいね!」が多いのが一番上ですね。「Webコミュニティで、まだファンとはいえない方をファンにしていくために効果的なアプローチは?」。
要は、なかなかリアルに対面できないWebの相手に対して、しかも「まだファンじゃないよ」という人たちをどう巻き込んでいくか。さっきの野村さんの話が近いかもしれないですけどね。
野村:あまり気の利いたことは言えないですけど、自分たちが一番尖っている部分はどこかをとにかくアピールして、「こうした方々には、自分たちは自信を持ってサービスを提供しています」というアピールができれば、むしろ向こうから近づいてくるとは思いますけどね。
上田:mineoで意識しているのは、目に見えるコメント(をしてくれる人)や、すごく「いいね!」を押してくれる人、オフ会などに来てくれる人もファンなんですけど。でも、隠れファンはどうしてもいると思っています。自分では積極的に書かないけれども、非常にmineoに好意を持ってくれている。
「そういう人はどういう行動をするんだろう?」と、コミュニティの中でいろいろ分析をすると、例えば、フリータンクに積極的に(パケットを)入れてくれる。この人は紹介率も高いし、解約率も低いとなると、そういう(隠れファンの)人も立派なファンなんだなと。
コミュニティのコメントでは目に見えないけれども、そういう人を増やすという考え方も1つあるかなということです。いろいろな形態や分類の中のファンをきっちりと伸ばしていく考え方が必要かなと。
田中:なるほど。ファンは1つの定義ではなく、いくつかの定義を持っているという話だったと思うんですけど、Anycaはどう考えられていますか?
宮本:うーん。例えば「フォローに入っている」とか「イベントに来る」ということだけをファンとは定義していないので、それぞれやっぱり別なんですよね。イベントに来てくれなくても、取材に協力してくれるだけでも1つの協力者というかたちなので。
質問にあるように、「ファンじゃない人で(イベントに)来ない人が、どうやったら来てくれるかな」というよりも、その人が取材だったら協力してくれそうで、良いエピソードを持っているなら取材します。車のイベントをやったら来てくれる人だったら、車のイベントをやりますし。ユーザーに合わせていくかたちなので、無理にやろうとしないという感じですかね。
田中:ありがとうございます。2つ目の質問にいきましょうか。これはちょっと深いですね。「お金をたくさん払ってくれるお客さんが、熱狂している顧客と隔たりがある」。
要はいわゆる「2対8の法則」。上位2割がたくさんお金を払ってくれてビジネスとして成り立つんだったら、「上位2割を大切にしたらいいじゃん」という話があると思います。でも、「そうじゃないビジネスモデルで、全体的にたくさんの人を取らないといけない場合、みなさんは熱狂的なファンの熱を上げることに注力しますか?」という質問なんですけど。
たぶん、その(上位2割の)人たちだけの売上を見ていても仕方ないというか、ブランドにとってはそこまで大きくないので、ファンがほかのメリットをどう感じられるかに尽きるかなと思います。そのへんはなにかアドバイスや考えはあります?
上田:mineoはもうまさに典型的です。例えば、月に1,500円ぐらいのサービス料を払ったら、その人がファンになったから「1万5,000円払います」というサービスではないです。基本的に、「ファンだから」とか「ファンじゃないから」ということで、売上がすごく変わるビジネスモデルではないです。
そのときに、ファンにどうやって我々の事業に貢献していただけるのかと考えたときに、先ほど申し上げた、解約率と紹介率がいいかなと(思っています)。
やっぱり、mineoを好きになってくれたら、人に「いいよ」と言ってくれる。やっぱり友達同士で「いいよ」と言ってくれたら、CMで「いいよ」と言われるより、絶対に入る率は高まるので。
かつ、コミュニティでいろいろ活動してくれている人は紹介率が高いと(いうデータが)出ています。「コミュニティの活動量を上げれば、口コミが広がる」という流れが見えているので、そこを我々も自信を持ってきっちりとやっています。
宮本:僕もそうですね。たぶんこの質問の意図としては、コミュニティをやることで、「コミュニティ参加者のLTVをどれだけ上げられるか」だと思うんですけど、やっぱり、そこではあまりスケールしないことがこれまでやってきてわかったことです。
そうではなくて、それ以外のところでどう貢献するかなので、お金をたくさん払っている人と熱狂している顧客は、実際、Anycaもそれなりに離れている状況です。
ちょうど一昨日のNewsPicksのテクノロジーカテゴリで、Anycaがトップ出たんですけど、その時もいろいろなユーザーの方のコメントで、「Anycaって、コミュニティ重視しているよね」ということがバーっと出てくるんですよね。
その人たちのそれぞれのLTVが高いか低いかはわからないんですけれども、そういうことから、「ユーザーに愛されている個人間カーシェアサービスなんだな。じゃあ自分も登録してみよう」と思う人がきっと出てくるはずで。そして、その中からお金をたくさん払ってくれる方が出てくる可能性があるので、あんまりそこには影響はないと思っています。
野村:そうですね。同じような話になってしまいますけど。コメント欄に良いコメントが並ぶ、というのがまさにそうだと思うんですけど、お金を払っていることはもちろん大事なんですけど、やっぱりそのあとのお話ですよね。
まずコアファンというか、好意的に思ってもらったあとにお金を払ってもらうという順番だと思います。なので、「熱狂してくれている」「好意的に思ってくれている」というのはやっぱり大事にしなきゃいけないし、その方々がどういう声、口コミ、影響力を周りに発揮していくのかが一番大事だと思いますね。
そういった方々がいるんだったら、そんなにお金は払っていなくても、絶対に大事にしたほうがいいと思いますね。
田中:今のようなところは、やりながら見えてくるんですか? 最初から仮説を立てて、「ここに活きるだろうな」という感じでやっているんですか?
宮本:僕も最初は、コミュニティに参加している人のLTVがどれぐらい高まるかということをやっていました。でも、効果がなかったので、こっちじゃないなと思いました。
上田:そういう意味では、(コミュニティの)立ち上げのときは、立ち上げることに必死で、運営してみないとわからないところもあるんですけれども。(運営を)やっていくなかで、「こういう人はこうなんじゃないか」という仮説をいくつか立てて、もしいい結果が出たら「あっ、こういう流れがある」と。それを自信を持って、KPIとして設定して、その数値をウォッチしていくかたちがいいのかなと。
思っているような数値がなかなか出ないことはたくさんあるので、そこはやりながら試行錯誤かなと思います。
野村:そうですね。我々も定性的な満足度などは、明らかにその施策で上がっているなという感じはします。
そういったところから、「これはある程度当たりがいい、筋がいいんだろう」とか「いや、これはぜんぜん刺さらないな」と、PDCAを回している感じですかね。
田中:ありがとうございます。そろそろ時間になりましたので、最後にひと言ずついただきたいなと思います。
今日、たぶんコミュニティをやられている方もやられていない方もいると思うんですけど、おそらくファンづくりや「ファンをどう味方につける?」というところには関心がある方が多いと思います。宮本さん、いいですか?
宮本:トライバル(メディアハウス)にいたときに、コミュニティでマーケティングにちゃんと成果を出すって、すごく難しいなと思いながらやってきたんです。
でも、Anycaをやって、「コミュニティ」と「マーケティング成果を上げる」ところと「組織の成果をつくる」ところを分けて考えることで、マーケティングの成果が明確に出るんだなと。僕の今のKPIは獲得なので、ユーザーを何人獲得するかというところにちゃんとコミュニティが効いているんだと、自信を持って言えるようになりました。
たぶんマーケターの方が多くいらっしゃってると思うんですけど、これはマーケターのみなさんにしかできないことなんですよね。代理店やほかのところが顧客の声を一番(よく)知るのはすごく難しい。やっぱり、顧客の声を一番よく知ることができるのは、サービスとつながっているマーケターだと思うので。
アライアンスやPRなどのいろいろな部署との連携を作っていくことがコミュニティを活用する上ですごく重要です。それができるのはマーケターの方々しかいないなと思うので、ぜひコミュニティをマーケティングに活かしていただけたらなと思っています。
田中:ありがとうございます。野村さんお願いします。
野村:さっき「コミュニティは水物」という話をしたんですけど、成功のコツは、ある程度数でしか得られないと感じています。
もちろん(やり方は)いろいろあって、最近は本も出ていますが、本当にコミュニティは千差万別ですし、そこにいらっしゃる方々に応じてどう立ち振舞ったらいいかは微妙に変わってくるところがあります。自分の中にどれだけ引き出しを持っているかが、すごく重要になってくると思います。
自社のビジネスでなんらかのコミュニティを作ろうと思っている方々がいらっしゃったら、まずユーザーの立場で、なにかのコミュニティに入ってみることが一番です。別にNewsPicksアカデミアの宣伝をしてるわけではなくて、興味があったら入っていただければいいですし、それこそお二方のコミュニティに入ってみるのもいいと思います。
ひと口にコミュニティといっても、オンラインを主体にするものから、リアルを主体にするもの、実際に活動するものからWebに投稿するもの、実名のものから匿名のものまで、本当に千差万別です。
自社にどれが合うかは、やっぱり引き出しを増やしていくことがすごく重要になります。なので、「JUST DO IT」じゃないですけど、まずどこか(のコミュニティ)に入ってみるのがいいと思います。
田中:最後に上田さんお願いします。
上田:最初に田中さんからありましたけれども、コミュニティをうまく運営するコツは、狭い意味で、「我々はコミュニティを運営しているんだと思ったらあかん」ということかなと思います。
やっぱり、広い意味で、コミュニティは1つのチャネルであって、我々はファンマーケティングをやっているんだと。そう思って、一人ひとりに真摯に向き合い、一人ひとりとコミュニケーションを取りながら、一緒にサービスを作り上げていく。そういう広い視野で関わる人間が常にいることが大事かなと思っています。
今回の話を聞いて「マイネ王を体験したいな」という方がいらっしゃいましたら、ぜひmineoと「マイネ王」に入っていただいて、実感いただければと思います。ありがとうございます。
田中:みなさん、ありがとうございました。最後に拍手をお願いします。ありがとうございます。
(会場拍手)
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