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コミュニティ先進企業から学ぶ! ファン コミュニティの“つくり方”と“活かし方”(全4記事)

2019.01.08

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900社がひしめく「レッドオーシャン」をどう抜け出すか? 格安スマホmineoが描く“共創戦略”

提供:株式会社トライバルメディアハウス

2018年11月5日、品川インターシティホールにて株式会社トライバルメディアハウス主催の「熱狂ブランドサミット」が開催されました。マーケターがどのように顧客を熱狂に導くかをテーマに、経営者やデザイナー、インフルエンサーといった、さまざまな立場の有識者がセッションを行いました。今回のセッションには、コミュニティ運営の先駆的な企業3社が登壇し、取り組みの好事例や苦労した部分について具体的に紹介。本パートでは、mineoの事業責任者の上田氏が登壇しました。

格安スマホMVNOの安さの理由

田中陸也 氏(以下、田中):ありがとうございます。では最後。

mineoの上田さんお願いします。

上田:mineoの上田です。この中でmineoって聞いたことあるという方、どれぐらいおられます?

(会場挙手)

あっ、けっこう。ほぼ全員。ありがとうございます。じゃあ、この中で「mineoを使っている」という方?

(会場挙手)

ありがとうございます。たぶん1パーセントぐらいだと思います。あとでシェアも申し上げますので。

まず簡単に自己紹介をします。私は中高で陸上部の長距離をやっていまして、毎日10キロ20キロ走ってたんですけど、この写真にある「コレ」と書いてあるのが僕で、今より15キロぐらい痩せている僕なんですけど。

実はこの写真に写っている一番後ろの人がオリンピック選手で。オリンピック選手より勝ってるように見えるんですけど、これは1周目なのでまだ勝っているという、ただそれだけです。

(会場笑)

大学の時はあんまり勉強していなくて、塾のバイトでずっとしゃべりまくってました。その時は時給1万円ぐらいもらっていたので、月収ウン十万とか、ちょっとバブリーな学生生活でした。そのあと関西電力に入って、今はケイ・オプティコムに出向していまして、mineoの事業責任者をしております。

まず、MVNO、格安スマホとはなにかを簡単にご説明したいと思います。MVNOと呼ばれるものはなんで安いのかということなんですけれども、簡単に言うと、携帯電話は無線で通信していて、それを借りてるから安いということです。「じゃあどこから借りているの?」というと、auやドコモやソフトバンクから借りています。

なので、何千億とか1兆とか、そういう設備投資もいらないですし、ショップもほとんど持っていません。例えば、ドコモさんだと3,000店舗ぐらいありますけれども、我々は即日でSIMをお渡しできる店舗が、日本全国でも百数⼗店舗しかないので安く済むというかたちになっています。

mineoの契約数なんですけれども、2014年の6月からサービスを開始しまして、auのプラン、それからドコモのプラン、それからソフトバンクのプランも始めまして、最近ですと111万回線のお客様にご利用いただいております。

市場のシェアは年々伸びていまして、最近ですと9.2パーセント。市場の第5位まで来ております。

レッドオーシャンから抜け出すための「mineo」の戦略

上田:ただ、MVNOって市場の競争がすごく激しくて。先ほど申し上げたau・ドコモ・ソフトバンクのお客さんのシェアがどれぐらいあるかといったら、携帯電話を使われている方の約90パーセントは、まだここにおられます。

残りの格安スマホのユーザーはどれぐらいかというと10パーセント。それを何社で争っているかというと、900社ぐらいで争っています。もう血みどろの戦い。レッドオーシャン。

我々はここからなんとか抜け出したい。独自価値を発揮して、ブルーオーシャンのところに行きたいなと。「mineoオンリーのところにいきたいな」ということで、mineoの選んだ戦略は、「ファンとの共創を独自価値として、オンリーワンの戦略を採りたい」ということでございます。

共創戦略ですけれども、まずお客さんの立ち位置は、ブランドを一緒につくる同志・仲間・友達です。これがいの一番。ここの関係性を間違えるといろいろかたちも変わると思うんですけれども、我々は本当に家族のようなものと捉えています。

それから、顧客価値はいろいろな側面があると思うんですけれども、機能的・情緒的・社会的の3つの側面があるということをきっちり意識しながら、きちんとストーリーを立てて提供する。これが肝かなと思います。

それから、最近マーケティング・ミックスは4Pから4Cに変わってきているということもありますので、それを意識して。とくに「共創」は、我々の新しいサービス開発戦略です。ユーザーさんからいただいた意見をサービスにどんどん反映して、PDCAをすごく速く回していく。こういうことが大事かなと思っています。

それから、コミュニティというとオンラインの世界に閉じているように見えるんですけれども、それだけでは絶対ダメで、オンラインとオフラインは必ず融合する必要があります。融合してハイブリッドで顧客体験を提供することが大事。

そして、外に向けて企業から発信するメッセージの中に「mineoはこういうブランドですよ」ということをタイムリーに出していくと同時に、社内のブランドに関わるすべての人間に対して、ちゃんと「mineoはこういうブランドなんですよ」という定期的に勉強会等をして、インナーマーケティングの徹底を図っております。

コミュニティの価値をはかるKPIの指標

上田:1つ外向けに出しているもので「ブランドステートメント」というものがあります。mineoは「Fun with Fans!」というステートメントを掲げています。「楽しみながら、ファンの人と一緒にmineoを作っていきましょう」と。これが我々の考え方すべてになります。「楽しいほどいいよね。一緒に作っていこうよ」。そういう思いを込めています。

その「Fun with Fans!」を掲げて、我々はどういう価値を提供しているのかといいますと、mineoのサービスの上に「マイネ王」というコミュニティがあります。ダジャレみたいですけど、「マイネ王」をファンの方が使いながら共感していただいて。先ほど申し上げた、機能的価値・情緒的価値・社会的価値の3つをきっちりとストーリー立てて提供していくという考え方です。

単に「格安スマホ使ったら安いよ。お得だよ」というだけじゃなくて、「mineo使ってると、楽しいことがある。うれしいことがある」という情緒的価値もあわせて提供したい。かつ、世のため人のためになるような、社会的なサービスも提供したい。こういう考えで我々はサービス提供をしています。このうちいくつかはあとでご紹介します。

また、KPIをきっちり設定するのも大事だと思ってまして。もしこれをしないと、例えば、経営層から「なんのためにコミュニティやってるの?」「事業においてどんな役に立つの?」と絶対に言われますので、必ずKPIを出して、この数値を経営層に報告するということを意識しています。

まず1つは「満足度」。満足度が上がると、NPS(ネットプロモータースコア)が上がり、おすすめ度合いも上がる。そうすると、自分自身がやめない。解約率が下がりますし、NPSが上がると人に勧めたくなるわけですから、口コミというかたちで紹介率も上がります。こういうサイクルをきれいに回していきたいと。

こういうことによって、ファンの人がどんどんファンを連れてくるサイクルを回したい。かつ、アイデアの提案をいただけるような場を設けていますので、その提案数と実現数もKPIとして設定しています。

これがファンサイト「マイネ王」の概要になります。会員数45万人、月間PV600万、UUが130万、月間投稿数は約5万というかたちで、9つのコンテンツがあるんですけれども、この中のいくつか特徴的なものをあとでご紹介したいと思います。

パケットを貯金したり、使い過ぎても引き出せる「フリータンク」

上田:まずは、非常に特徴的なQ&Aというコーナー。例えばmineoについて知りたいと思ったら、普通は我々が提供するコールセンターなどに問い合わせると思うんですけど、これは違います。コアのファンの人が答えます。ユーザーさんが質問するとユーザーが答える。そういうきれいなサイクルが回っているようなかたちなんですね。

しかも、Aがめちゃくちゃ早い。Qを書いてから1分ぐらいしたら誰かがAを書いていると。それを補足するように複数のAがつく。平日の昼間であっても、「回答してくれている方たちも本来の自分の仕事があるだろうに、こんなにしてくれて大丈夫かな?」と心配になるぐらいの早さでどんどんコメントがつきます。それぐらいすごく早くて、丁寧で、わかりやすい。そういうQ&Aを返してくれるコアファンがたくさんいます。

これは簡単に言うと、「こうやってサービスを使ってほしい」「新しくこういうサービスを作ってほしい」という、目安箱のようなイメージです。

そこに毎月100件以上、たくさんのテーマで投稿されていれます。それを毎週、我々が全件見て、「これはやる」「これはステイする」ということを決めていきます。これまで3,500件のアイデアが寄せられて、350件が実現しています。

それから、「フリータンク」と呼ばれるちょっと特徴的なサービスをご紹介します。これは右側ですけれども、mineoユーザー全員のパケットの貯金箱のようなイメージと思ってください。mineoでは、パケットの翌月繰越はできるのですが翌々月までは繰り越せないので、消えてなくなってしまうぐらいだったら、こういうところに貯金箱に預けておこうと。

例えば、「今月はちょっと旅行に行って、動画を見すぎて使いすぎたかも」という人は、この貯金箱から引き出すようなイメージです。それをmineoユーザー全員でやっているとイメージです。

これも「えっ、誰か入れる人おるのかな?」「みんな引き出すばっかりちゃうのかな?」と思われるかもしれないんですけど、実はこれがすごくきれいに仕組みが回ってまして。何回か枯渇しかけた事件はあったんですけれども、サービス開始から一度もなくなることなく、きれいにこの仕組みが回っています。

やっぱり、ただパケットをやりとりするという機能的な価値だけじゃなくて、その奥にはちゃんと情緒的な価値があって。「困ったときはお互い様。もしこの余った私のパケットを足らない人があったら使ってねー」という気持ちが乗っかったサービスであると思ってるので、この仕組みがうまくいってるのかなと思っています。

被災地のユーザーにパケットを寄付する「災害支援タンク」

上田:それから、先ほど「オンとオフきっちりとハイブリッドで」という話をしましたけれども、リアルの場も重要視してまして、15人ぐらいのオフ会、100人ぐらいのファンの集い、それから「王国イベント」と呼ばれる長期利用者をおもてなしするような場。

それから「格安スマホ相談会」といいまして、これもちょっと特徴的ですけど。普通の相談会といったら、我々事業者が初心者に説明する場なんですけれども、その説明側がコアのユーザーさんです。これもやっぱりユーザーさんがユーザーさんに説明する場を設けています。

社会的価値のところで2つご説明をします。1つは「災害支援タンク」。災害救助法が適用された地域の方というのは、普通「フリータンク」は毎月1GBまでしか引き出せないんですけども、「災害に遭われたら、やっぱりいろいろスマホでコミュニケーションすること増えますよね。情報を取るシーンが増えますよね。そしたら10GBまでは引き出せるようにしよう」。そういうサービスになります。

最近ですと、例えば北海道で地震がありました。北海道全域が停電になって、スマホでしか情報が取れない、コミュニケーションができないという状況になった時に、罹災者の方は10GBまで引き出すことができ「ありがとう、助かります」と多数の感謝の声をいただきました。

そしたら、日本全国の人はどうするかというと、「北海道の人、この私のパケットを使ってください」と、この「災害支援タンク」に(パケットを)どんどん入れてくれるようになってきます。逆に容量が増えたりします。そういうふうに、本当に困ったときにこの「フリータンク」「災害支援タンク」を使って助け合いが起こるというサービスになっています。

掲示板にハッピーな書き込みを増やす施策

上田:それからもう1つ。「green project」というのをやっています。コミュニティをやっていくと、いい言葉も書かれるんですけど、やっぱりちょっと嫌な言葉とかを書かれることがあって。「掲示板は居心地のいい場所にしたいね。ハッピーであふれるような場所にしたいよね」ということで、「ハッピーな言葉が書かれたらカウントしよう!」ということを始めました。

それが「HAPPY METER」というもの。「うれしい」とか「楽しかった」「ありがとう」ということを書かれるたびに1、2、3、4と数えていくと。

それが100万ハッピーになったので、「みんなが憩えるようなリアル場を作れないかな?」と考えて、「じゃあ全国に桜を植樹しよう」ということで、「green project」が始まりました。100万ハッピーになるたびに桜を植樹して、ゴミ拾いをして、みんなが楽しく集える場にしたいというかたちになります。

最近はけっこう賞をいただくことが多くて。「総合満足度」「おススメ」「おもてなし」。我々は勝手にこれを「三冠王」と呼んでいますけれども。いろいろな場面でいろいろな方から賞をいただくたびに、大変うれしく思っております。

先ほどご紹介したKPIについても、「満足度」「NPS」とともに向上しつつ、MVNOの中で1位をいただくというかたちで「我々のKPIの数値も上がり業界1位も取れて、ファンの皆さまありがとうございます」という気持ちでいっぱいです。

解約率も下がって、口コミでの紹介率が上がって、これで「マイネ王をやることで、経営にも良い影響が出てきてます!」「事業的にも貢献してますよ」と自信を持って言える状態になっているのかなと思います。以上になります。

田中:はい、ありがとうございます。

(会場拍手)

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