2024.10.10
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Why Email Wins in a Crowded Market (なぜ今メールが重要なのか) (全1記事)
提供:株式会社構造計画研究所
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Len Shneyder氏:(片言の日本語で)「こんにちは」「ありがとう」。幸運なことに、みなさんが今日、私から聞く日本語はこれがすべてです(笑)。
私の名前はLen Shneyderです。SendGrid社でVP of Industry Relationsを務めています。
SendGridでの私の役目は、多岐に渡るさまざまなコミュニティに対応することです。サイバー犯罪と戦う対スパムのコミュニティや、 マーケティング&ポリシーといったコミュニティの人々と会話をしています。それぞれ興味の対象は異なるので様々な側面からメールやそれに類する機能の話をします。
少し歴史をおさらいします。SendGrid社だけでなく、メール業界全体についてお話しします。SendGrid社はいまから9年前、メールをより良く送るための基礎を作るべく、3人のデベロッパーによって創設されました。
それ以前は、メールを送信する方法は2つしかありませんでした。1つはPostfixのようなMTA(メール転送エージェント)を利用すること。つまり、インターネットのフリーウェアのようなものですが、それがうまく働くようにするには、知識やノウハウが必要になります。もう1つは、かなり高価な専門のMTAやハードウェアを買うという方法です。そして自分のデータセンターでセットアップして、メールを送る準備をするのです。
2つの方法どちらを採用するにしても、スケーリングやメールの到達性など、諸々すべて自分で管理しなければなりません。現代のクラウドエコノミーの観点からすると、インフラにかかる作業なども考えれば、これらの送信方法は反直感的ではないでしょうか。メールを送るために、なぜMTAをダウンロードしなければならないのか。クラウドで使えるようにすべきだと思いますよね。
(スライド上のロゴを指して)これらは全て私たちのお客様で、SendGridは1日に約20億通ものメールを処理しています。これだけの規模なので、おそらくみなさんの受信トレイにもSendGridを経由したメールが毎日届いていると思います。
メールには長い歴史があります。一番最初のメールは、1971年に送信されました。当時のインターネットはとても小さく、ARPANETと呼ばれていました。これはアメリカ政府にスポンサーされた、アメリカ国防総省のプロジェクトでした。
そして1978年、(スライドを指して)こちらのハンサムな男性が初めてスパムを送りました。彼はDECという会社に勤めており、自社製品を宣伝するメールを、当時はまだ利用者はあまり多くはありませんでしたが、インターネット全体に送ったのです。
スパムを送ろうとして送ったわけではなかったようですが、それによって、インターネットを実質的に破壊してしまいました。1971年にRay Tomlinsonが初めてメールを送ってから、7年が経過してからの出来事でした。
続いて1993年まで時間を進めます。メールは成長し、利用者も増えていました。大学などさまざまなところで使われ、いろんな人々がアクセスしていました。しかし当時はシンプルなテキストだけで非常に退屈なもので、ある種、本を読むようなものでした。多くの人にとってはそれで十分ではあったのですが。
1993年は大きな変化がありました。アメリカの複数の団体のジョイントプロジェクトとして新たなメールのサービスがスタートしました。HTMLや画像がないメールなんて今では想像できませんが、それが始まったのです。1993年は、人々にメールが開かれた年といえます。実際に使い始める人も増えました。
そこから時は経ち、現在1日に送信されているメールは約2,690億通。37億ものユーザーがいます。平均所有アカウント数は2つです。2つ以上のメールアカウントを持っている人は手を挙げてください。3、4、5……10? ワオ(笑)。
(会場笑)
それでは15個という方は? 私も15個くらい持っています、(正確には)忘れましたけどね。でも、そういうことはあまり関係なくて、私のいいたいことはわかっていただけたと思います。みなさんはもう、人生の一部としてメールを使っているということですよね。
私はあらゆるレシートはHotmailに届くようにしています。Gmailではそれを見たくないので。なぜなら、Gmailには私の家族がメールを送ってくるからです。メールを日々の生活の証拠資料という捉え方をしている人もいます。オンラインで購入できるものには、すべてレシートが届きます。確認であったりやり取りの証明であったり……そんなメールも来るわけです。
(スライドを指して)このようなかたちで、37億人に達する人々がメールを使用し、2,690億通ものメールが1日に送られています。実はSendGridでは90日ほどで、およそ地球上の半数ほどの人にリーチできるほどのメールを送信しています。このビッグデータがあれば様々な有益な情報を得ることができます。
とくにメールの良い部分ですが、 1ドル投資するごとに38ドルのリターンがあるという調査結果が出ています。新規ユーザー獲得のコストは、検索やソーシャルを利用するよりメールの方が13倍も安いといわれています。つまり、かかったお金は常に戻ってくるのです。 非常にパワフルですね。
(スライドを指して)こちらは、将来のデジタルコミュニケーションについて12歳から50歳ぐらいのさまざまな人にインタビューをした結果をまとめたものです。調査のなかで、様々なフィードバックを得ることができました。
特に驚いたのが、とあるZ世代(1990年代後半〜2000年代前半生まれの世代)の回答者が、「歳をとれば、もっとメールを使うようになるだろう」と答えたことです。大学生になったら教授たちとメールでやりとりし、また就職活動で使ったり、ソーシャルメディアのアカウントのIDに使ったりするから、ということでした。その通りですね。
2009年のウォールストリートジャーナルに、「メールは死んでいく」という記事がありました。これはグローバルでメールの流量が減少していっていることを根拠にした内容になっていましたが、統計情報は正しく見なければなりません。実は減少したのは、ボットネットによる不正なメールであり、正当なメールは逆に増えています。
それでは、(ビジネスにおいて)メールで勝ち続けていく5つの方法について紹介します。(スライドを指して)このようにわけてみました。デザイン、コンテンツ、コンテクスト、グローバリゼーション、そして到達率の5つです。
まずデザインです。メールの50%が、モバイルのデバイスで閲覧されています。朝、起きてすぐに携帯を触る人はいますか?
(会場挙手)
私もそうです。そしてiPhoneを持っている人は? iPhoneには「スクリーンタイム」という新しい機能があります。これはどれくらいの時間iPhoneを利用しているのか、つまりどれくらいスマートフォン中毒になっているかがわかる機能です。
先週、私の妻はこういいました。毎日3時間半ぐらいスマートフォンに時間を費やしていることが分かり怖いと。ニュースを見たりfacebookを見たり、かなりの時間を費やすわけですが、当然メールの確認もスマートフォンを利用します。
なので、デザインをする際は小さな画面で表示されることを前提にしなければなりません。当然PCでもきちんと表示できる必要があるので、レスポンシブデザインにしましょう。
ここで重要なのがA/Bテストです。どういった人が(そのメールに)魅力を感じているかを理解できるだけではなく、A/Bテストは「どう見えているか」がわかるのです。例えば、最適な画像の見せ方は複数なのか1枚なのか、といったことです。
これはAirbnbの例ですが、どちらの見た目がいいでしょうか? 個人的には(スライドを指しながら)画像が1枚のメールの方が魅力的です。私ならここに行きたくなりますね。本当に「これからバケーションに行けるんだな」という気持ちになれます。
A/Bテストのポイントは1つを選んでテストするということです。件名、画像、CTAそれぞれを同時にテストしてしまうと、どれが効果的だったのか、ユーザーにとってなにがどうポジティブだったかがわからないですから。複数の要素を同時にテストしてはいけません。
メールは、実はかなりインタラクティブになってきています。(スライドを指しながら)かなりかっこいいデザインですね。CSS3とHTML5を使い、メールでモバイルショッピングカートを作るという目的で作られました。なぜこれが画期的なのか。メールというのは、1対1もしくは1対多の一方通行のコミュニケーションであることが普通ですが、このメールは非常にインタラクティブで、コンバージョンに至るまでの面倒なステップを無くしてくれています。
注意力の持続時間について考えてみましょう。地下鉄に乗るとみんなスマートフォンに顔を向けていました。これは特別なことではなく、アメリカでも同じです。このような状況でメールを読むと注意力の持続が短くなってしまいます。だからインタラクティブなメールが有効なのです。
インタラクティブなメールを使うと、コンバージョンへの道筋を最小化することができます。クリックしてモバイルウェブサイトにログインする必要なく、簡単に買いたい商品をカートに入れられるわけですから。
先ほどの講演で、メールの件名に用いるワードの数は、7つが最もよく閲覧され、4つのワードで最も高いエンゲージメントを実現できるという話がありましたが、これはターゲットによって違う結果になる可能性があります。
私の母親がこれをクリックするかはわかりませんが、おそらく4語のほうが向いているのではないかと思います。あまり(長い文章を)読めませんし、7つのワードを完全に理解するよりも、短いほうがおそらく咀嚼しやすいのではないかと思います。
また、プリヘッダー(件名の下に表示されるプレビューテキスト)も重要です。「ブラウザで表示する場合はこちら」といったプリヘッダーが表示されていることも多いですが、これでは台無しです。
このプリヘッダーに注意を払ってもらいたい。特に気にせずメールを作成してただURLが表示されているだけ、ということもありますが、それは見た目がよくないわけです。
例えば、文章を読むことに難しさのある方や、メールを音声で読み上げる必要のある方もいらっしゃいます。そういった方々にとっては、URLだけが載っているプリヘッダーは、全く意味がありません。
また、モバイルのメールでは、CTA(Call To Action)を最小化する必要があります。リンクをいろいろ挿入して、どれかが押されればいいやというのは、ユーザーを無視した行為ですし、選択肢を与えすぎてしまいます。マーケターとしての私たちの仕事は、オプションを与えすぎるのではなく、正しいオプションを与えることなのです。CTAの最小化とは、まさにこのことをいうのです。
特にデジタル世代の人に対するメールでは、コンテクストが重要です。このスライドを一緒に作ってくれたデザイナーはEvanといいますが、彼はDay Waveというミュージシャンが大好きなんです。私はTHE ROLLING STONESやThe Beatlesなどを聴いている世代ですので、Day Waveのことはわかりませんが。実はDay Waveは1,500万人に対してメールを送り、Evanが受け取ったそのメールは、コロラドに住んでいるEvanに向けてカスタムされたものでした。
そのDay Waveがデンバーに来るということで、それに関連したメールがEvanに送られたんです。グローバルに対して同一のメールを送るのではなく、受信者一人一人のコンテクストにあったメールを送るのが重要です。
別の事例ですが、eBayのカスタマー部門は興味深い問題を抱えていました。
eBayのWebサイトでは、皆が自分が売りたいものをアップロードするだけなので、商品に関するメールを単純に送るだけでは、受信者には興味のない案内が届いてしまう可能性があります。
こういう時には関連性を持たせることが非常に大切です。過去に購入した商品や、閲覧した商品に関連するものをメールで送る必要が出てきます。
また、eBayの場合、コンテンツの有効期間が非常に短いという問題もありました。メールが送られてから2日後にメールを開封したとすると、その商品はもう(売れてしまって)eBayに載っていないかもしれません。ですので、彼らは、メールを開封したときに、常に最新の情報を取得するような仕組みを構築しました。
さらにコンプライアンスも非常に重要な点です。インターネットはグローバルですけれども、規制に関しては地域性というものがあります。どのようにデータを得て、どのようにデータを送ることができるか、というのは地域によって変わります。
この図は国ごとにプライバシーの規制がどのように違うかを表現したものです。
インドや中国・ブラジルといった(コンプライアンスが)ゆるめの場所では、 プライバシーに関してのコンセプトもゆるいです。それに対して、ヨーロッパではGDPR(EU一般データ保護規則)という厳しい規制があります。これに反すれば、非常に高額の罰金を科せられます。どの会社にとっても非常に恐ろしい金額です。データを不正利用したからちょっとだけ罰金……といった程度ではすみません。
また、メールを送るには常に許可が必要ということを覚えておくべきです。これは日本も同様です。明示的に受信するという意思表示をした人にだけ送り、いつでも簡単に配信停止ができるようにしなければなりません。「このメールはいらない」と意思表示させる機能をつけなければならないのです。
世界中のISPもまた、それぞれ違います。各ISPでは、「レピュテーション」によって受信トレイに届くかどうかが決まります。
とくにGmailに関しては、とにかくたくさんのメールボックスがあり、地球上で一番多いともいえます。AOLなどは(規模が)小さくなっていますし、orangeなどはその他のISPに比べて処理が遅いです。そのような特性を知ることが重要です。
1つのメールを送る時に、1つのアドレスが必要です。10のメールは10のアドレスが、それが10万、100万となればどうでしょうか、されに1,000万なら……。機械がどのようにそれらに対応するか、それが到達性に大きく影響します。
様々な調査結果によると、意図した受信者に正常に届いているメールは5分の4に過ぎないことがわかっています。 正しく届ける(到達性を高める)ためには技術的、そして人間的なコンセプトの理解が必要になります。
技術的にはIPのアーキテクチャをきちんと理解する必要があります。送信者が誰であるのかを証明するための技術、例えば送信元IPアドレスの設定や、SPF/DKIM/DMARCといった認証、適切なドメインを使っているかといったことは、すべてメールの到達性に関わってきます。
人的な要素としては、法令の遵守、そして適切なポリシーを定めることができているか、といったことが挙げられます。これができていないと万が一ブラックリストに掲載された時にもうまく対処ができません。
ですので、人的な要素と技術的な要素を理解することが、高い到達性を実現するには重要です。
続いてはレピュテーションについてです。
レピュテーションという概念が生まれた背景を説明します。2000年初期のスパムは、すごくシンプルでした。たくさん(のスパムメールを)送り、ブロックされたらまた新しいIPアドレスを取得するというやり方です。ISPは確かにスパムをブロックすることができていましたが、スパムの送信履歴がないIPアドレスを利用すればブロックするまではスパムを送ることができるのでこれでは問題だ、とAOLなどが声をあげました。
そこで生み出されたのがレピュテーションという概念です。送られてくるすべてのメールに関して、受け取るかどうかの判断に利用します。レピュテーションが高ければ到達性も上がり、低ければ届きにくくなります。
それではここから、レピュテーションを高める方法について説明しましょう。
まず重要なのはメールを送信することに対する同意をえることです(オプトイン)。そして必ずPreference Center(メールの受信設定)を設置しましょう。例えば、「1日に3件受け取りたい」、あるいは「1週間に3件受け取りたい」「1日1件受け取りたい」など、いろんな方がいらっしゃると思います。さらに、さまざまな嗜好もあるかと思います。受信者自身に自分たちの受け取りたい頻度や内容を選択してもらいましょう。
そして、エンゲージしていない受信者を削除することも重要です。メール送信に利用するIPアドレスは、徐々に送信量を増やしていくウォームアップが必要ですが、似たような考え方はエンゲージメントに対しても有効です。エンゲージメントの低いユーザーに対する送信はやめて、高いユーザーにのみ送信するということです。例えば60〜70日間メールを開封していないユーザーがいれば、そのユーザーに対する送信はやめるのがよいという事です。こうする事で到達性は改善されます。
実際にメールを受信したいと思っているユーザーに送ったほうがいいわけです。「Less is More.」ということです。少ない受信者、しかし質の高い数少ない受信者を得ることを目指しましょう。
エンゲージメントにはポジティブなシグナルとネガティブなシグナルがあるのでそれらを正しく検知する必要があります。
例えば、開封はわかりやすいポジティブなシグナルです。わざわざスワイプして開封するというのはエンゲージメントが高いという証拠です。
また、スパムフォルダから受信トレイに移す、メールに返信をするというのも、非常にポジティブなシグナルです。逆に開封せずに削除されると、ネガティブということになります。このように受信者の様々なアクションからそのメールがどのように思われているかがわかるので、注意深く観察する必要があります。
これに関連して面白い話がありまして、先ほど述べたように送ったメールに返事があるというのはポジティブなシグナルです。しかし見たことありませんか?「このメールには返信しないでください(Do not reply)」という差出人になっているメールを。誰かがそのメールに返事をしてくると、さらに返事をしなければならなくなるからこのようにしている、というのは理解できるのですが、ポジティブな反応を潰してしまっているということは理解しておいたほうが良さそうです。
リストが健全であれば高い到達性につながります。古く、エンゲージメントが低い(開封もクリックもされない)宛先1~5%程度は思い切って送信対象から外しましょう。そういう人たちは何をするかというと、読まずにただメールを削除しているのです。本来、配信停止にすればよいはずですが、人間は面倒くさがりなのでそういうことはしません。そういった宛先を残したままにしていると全体の到達性を下げることにつながってしまいます。
メールマーケターとして必要なのは計測することです。開封されたのか、クリックされたのか、スパム報告されたのかバウンスしたのか、それらをきちんと計測して、自身のパフォーマンスを知ることが重要なのです。
では、最後のアドバイスです。美しくデザインされたメールを、受け取りたいと思っている人に対して送りましょう(必要としていない人には送らない)。それなら何の問題も起こりません。違う話に聞こえるかもしれませんが、それはまさにAOLが15年前にやろうとしたこと(レピュテーションという概念を作ろうとした)なんです。ありがとうございました。
株式会社構造計画研究所
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