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JHVSミートアップ「AI」(全2記事)

2018.11.07

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医療はAIの導入でどう変わるのか? ヘルステックが解決する医療課題と、患者の抱く心理的障壁

提供:株式会社JTBコミュニケーションデザイン

2018年10月10日〜12日、パシフィコ横浜にて「ジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミット 2018」が開催されました。中11日には、「AI x ヘルスケア」をテーマに、ヘルスケア分野において注目されるAIのビジョンと具体的な好機を探るパネルディスカッションが行われ、6名の識者が登壇しました。本記事では、その前半の模様をお送りします。

「AI×ヘルスケア」トークセッションがスタート

本荘修二氏(以下、本荘):AIも盛り上がっていますね。私は医療系ベンチャー振興推進会議の座長をやっています本荘といいます。よろしくお願いします。

(会場拍手)

曽山明彦氏(以下、曽山):私は平の委員をやっております、曽山と申します。LINK-Jというところにおりまして、日本橋でこういったイベントをたくさんやっています。

今回の、厚労省主催であるJHVSという3日間のシンポジウムを、本荘さん、こちらに座っている奥田さんと3人で、企画から協力していろいろやっています。今日は最初だけ、(本荘さんと)2人でちょっと漫談をやりながらご紹介していこうと思いますので、よろしくお願いします。

本荘:今日は前半がスペシャルセッションです。「AI×ヘルスケア」というテーマで、こういうメンツを合わせて議論するというのは、おそらく日本でもけっこうレアなんじゃないかと思っております。自信のある人選なので、そのあとの交流会で、みなさんにつながっていただこうと思っております。そのほかに、なにか注意事項ありますか?

曽山:いや、とくには。もうざっくばらんにいきたいと思っていますので。前のセッション「Women × Healthcare」に負けないようにがんばります。

本荘:では、始めようと思います。まずはモデレーターです。『医療4.0』という本を知っている人(はいますか)?

(会場挙手)

おっ、認知度すごいですね。今日は著者の加藤(浩晃)さんにモデレーターをやっていただきます。拍手。

(会場拍手)

加藤さんが役員をやっていらっしゃるアイリスというすばらしい会社があって、私のブログやFacebookグループでちょっと紹介させていただきました。非常にユニークで、人間的な魅力のあふれる沖山社長、よろしくお願いします。

沖山翔氏(以下、沖山):よろしくお願いします。

(会場拍手)

本荘:そして、もうそのものずばり「AIメディカル」という社名をつけていただきました多田社長、お願いいたします。

多田智裕氏(以下、多田):よろしくお願いします。

(会場拍手)

本荘:そして、いまや世界を代表するAIの会社でありますエヌビディア・ジャパンから、山田さんに来ていただきました。

山田泰永氏(以下、山田):よろしくお願いします。

(会場拍手)

本荘:ちなみに多田さんの会社は、エヌビディアさんの「Inception Program」というベンチャーサポートのプログラムの最終選考までいったというご縁のある面子でございます。

厚労省がロードマップを敷く、重点6分野

本荘:じゃあ紹介はこのぐらいにして、マイクを加藤さんに譲ります。お願いいたします。

加藤浩晃氏(以下、加藤):みなさん、よろしくお願いします。

この時間はAIミートアップということで、今盛り上がってきている「医療×AI分野」、それから「医師×起業家」というところについて、お二人の先生、そしてテクノロジー企業がサポートしてくれているということで来ていただきました。その3人とモデレーターの僕を含めて4人で、この45分間をお送りしようと思っています。

今もお二人から医療×AI分野についてお話しいただいたように、盛り上がってきているところです。国としては、例えば昨年の6月に保健医療分野におけるAI活用懇談会の報告書などが出ております。その重点6分野について、ゲノム、画像、診断・治療、認知症、手術支援ともうひとつ、創薬(医薬品開発)ですね。この6分野について厚生労働省としてのロードマップが出ています。

また、8月ぐらいから保健医療分野におけるAI開発コンソーシアムが始まりました。先月9月27日には第2回の会議が行われていて、今後どうしていくかといった話もあります。内閣府では、AIホスピタルの話も今進んでいるような感じです。

今日は医療・ヘルスケア分野において、「これからどのようなことができるか」「こういうところにチャンスがあるんじゃないか」「今後、医療×AI分野はこうしていくといいんじゃないか」といったところについて話し合って、ディスカッションできたらと思っております。

6時間待ちの救急外来は、もはや機能していない

加藤:まず紹介があると聞いていましたが、(紹介が)ないようなので、沖山先生から1〜2分、自己紹介と今やっていることなどをお話しいただけたらと思います。お願いします。

沖山:アイリスの沖山と申します。今日はよろしくお願いいたします。

私は救急医をしておりまして、アイリスという会社を立ち上げたのは1年前です。臨床は週末たまに当直をするだけになってしまいまして、基本的にはアイリスでAI医療機器の開発をしています。

私たちの会社は、インフルエンザを診断するための内視鏡型のデバイスを開発しています。いろんな病気で病院へ行くと、お医者さんに3点セットで、あっかんべーをして、「口を開けて『あー』って言って」と言われて、胸の聴診をされると思います。その3つに入るぐらいのたくさんの情報量を持つ、喉の診察をAI化したいと思っているんですね。

いろんな病気で喉が腫れるんですが、腫れの強い・弱いだけではなく、「この病気っぽい腫れ方」というのがあるんです。「どこが腫れているか?」「どんな色に腫れるか?」「どんな色調で腫れているか?」とかですね。

そのなかで、インフルエンザはすごく親和性が高い疾患だと思っていまして。個人的にも、救急外来でインフルエンザの患者さんを1,000人ぐらい見てきました。私のいたのは渋谷区の赤十字の病院で、冬場は患者さんが殺到して、救急外来なのに6時間待ちになっていたりしたんですよ。

もはやこれは救急外来じゃないなと。これを解決しないかぎり、満たされない患者さんのニーズや不安があるなと思いました。もともとはプログラミングや人工知能の研究を趣味でやっていたんですが、そこで起業しようと思って、今開発をしているところです。今日はどうぞよろしくお願いします。

(会場拍手)

70人の医師が1年がかりで行う、200万枚の画像チェック

多田:AIメディカルサービスの多田といいます。私は消化器内視鏡医です。もう20年ほどやっております。僕がなんでベンチャーをやっているかということなのですが、今医療の現場では画像が溢れているんですね。

一番のきっかけとして、まだ都内では徐々にという感じかもしれませんが、胃の検査はバリウムから内視鏡にどんどん変わりつつある、ということがあります。バリウムから内視鏡に変わること自体はぜんぜん良いんですけれども、なにが問題になるかというと、検診の場合、内視鏡の二次読影、ダブルチェックをしないとダメなんですね。

どこの病院とは言いませんが、せっかく検診を受けたのに見落としていたといったことが、昨今ではさんざんニュースになっています。じつは、検診でやった画像をダブルチェックするのは膨大な労力がいるんですよね。

胃カメラであれば、だいたい1人40〜50枚撮影しますね。10年くらい前は20枚しか撮影しませんでした。なぜなら、フィルムが1本20枚で終わってしまうからです。今は見落としがないように40〜50枚くらい撮影するので、単純に10年で3倍になっています。ただ、内視鏡医の数はもちろん3倍にはなっていないということで、それがすごく大変なんですね。

だいたい浦和医師会だと年間5万件内視鏡をやりますけれど、40〜50枚撮影すると、全部で200万枚の画像をダブルチェックしないといけない。だいたい70人の医師が1年がかりでそれをやっているのですが、これがかなりきつい。

要は診察を含めて、普通の仕事が終わったあとにそれをやるわけですね。僕の場合も19時まで外来をやって、それが終わったあと、20時から21時まで1時間集まってやりますが、せいぜい3,000枚ぐらいしかできません。

これは、けっこうきつい作業なんです。それをAIでなんとかできないか、という思いで研究を始めたところ、幸いにも世界初の成果が次々と出てきました。胃がん、ピロリ菌、食道がんなどで、全部世界初の成果で実用化に耐えうる精度を出すことができまして、プロトタイプをローンチして、これからどんどん現場に広げていくという作業をやっているところです。今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

大量のデータを学習させるためのコンピュータ開発

加藤:山田様、お願いします。

山田:エヌビディアの山田と申します。まずエヌビディアという会社は、ひとことで言ってしまうと、非常に高速な計算ができるコンピュータを作っている会社だとご理解いただければと思います。

昨今のAI、とくにディープラーニングですね。こういったAIには大量のデータを学習させる必要があって、よくお聞きになられると思いますが、大量のデータを学習するにはたくさん計算しなければいけないということで、普通のコンピュータを使っていると何日も何日も、ものによっては何ヶ月もかかってしまいます。

それを10倍、20倍、ものによっては100倍も高速化して、どんどん速く回せるようにしましょうということで、速く計算ができるコンピュータを作っています。

そこで私自身がやっていることが2つございます。1つが医療およびヘルスケア・ライフサイエンスといった領域のビジネス開発です。もう1つはスタートアップ企業ですね。スタートアップ企業を支援して、連携していきましょうというようなことをやっています。

1つ目のライフサイエンスと医療については、これも幅広くて。今日いらっしゃっている先生がなさっているのは画像を使った診療だと思いますが、こういった画像診療の領域もそうです。それから、先ほどの重点6領域で出てきましたように、創薬、ゲノム解析、それからライフサイエンス機器、あるいは介護・見守りなど、その計算基盤を提供する身として、薄くなんですけれども、幅広く関わらせていただいているというのが現状です。

あともう1つ、後半のスタートアップ企業との連携では、先生方のような医療のスタートアップ企業さんとはもちろん、医療以外の幅広い産業分野(と)も(連携させていただいています)。それこそ農業のリンゴを摘むロボットみたいなものから、水産業まで幅広くあります。

また、工場の中で不良品検知をしましょう(といったことをやっている企業)だったり……車のボディを塗装していって、わずかな塗りムラなどといった不良品を検知しましょうといったことをやっているような方々も含め、日本で100社ぐらいのパートナーになっています。

そういったことで、非常に幅広い分野と薄く付き合わせていただいているということですので、今日もなにかしらお役に立つところがあればうれしいなと思っております。よろしくお願いします。

(会場拍手)

困りごとの解決が世界初の成果となった

加藤:ありがとうございました。私もちょろっとだけ話すと、もともと10年間ぐらい眼科医をしていて、そのあと厚生労働省に出向することがありまして。今はデジタルハリウッド大学で、第4次産業革命に関するようなテクノロジー×医療の教室運営をしております。

今年は大学院生が16人ぐらい入っていまして、今回はV65について展示していますので、ぜひお帰りの際にまた寄っていただいて、チラ見をしてもらったらと思っています。あとは沖山先生と同じアイリスというところで、いま取締役をさせていただいています。

今日は最初にお話ししたように、「なにができるのか」「今後どうしていくといいのか」といった話につないでいきたいなと思います。

では、「なにができるか」というところについてです。沖山先生も多田先生も画像というところを(されてらっしゃいます)。とくに多田先生は、先ほどお話しいただいた「いま画像でこういうことができる」ということから、画像分野で起業されました。沖山先生にもあとで聞きますが、そのほかにも例えば「こういうことあったんじゃないか」「どういうことをやろうかな?」といったことについて、なにか考えたりされましたか?

多田:僕ですか? すみません、僕は正直、起業を目指していたわけではないので(笑)。

加藤:そうか(笑)。

多田:自分の困りごとをこそっと解決していたら、それがたまたま世界初の成果ということで起業にいたったので。起業のネタをなにか探していたというわけではなく、現場の困りごとを解決してたら、それがビジネスになるというかたちだったんです。内視鏡医なので、内視鏡以外のことはぜんぜん考えていませんでした。

加藤:先生が「ただともひろ胃腸科肛門科」に勤めている間、内視鏡のデータがずっとたまっていて、ダブルチェックで大変だというところで僕がお会いをして、その話をしていたかたちかなと思います。

先生の中で、今やられていることについて、こういう講演に登壇したりというのも(あるんでしょうか)。例えば今日も海外から帰ってきてすぐだとうかがっているんですが。

多田:はい。

加藤:日本以外で話を聞いていて、例えば「日本でもこういうところとやったらいいのにな」とか、ほかの分野で「おもしろそうだな」と思う話はありますか?

多田:確かにぼくはベトナムから帰ってきたばかりで。ベトナムの消化器学会なので(笑)。

加藤:そうか。

多田:すみません、ベトナムの消化器内視鏡医としか会っていないので、ちょっとほかの分野は(わからないですね)。

加藤:わかりました。打ち合わせもなく、強引に話を振っているような感じがだんだんわかってきていると思います(笑)。

(会場笑)

先生、あとでちゃんと適切に振ります。

多田:はい。

医療におけるスペシャリストとジェネラリスト

加藤:沖山先生はどうですか? AIでやれることがいろいろとあるなかで、今は1個に絞ってインフルエンザの画像を選んだというかたちだと思います。そのほかにも「なにかおもしろいことがあったりするんじゃないかな」と考えられたことはありますか?

沖山:そうですね、アイリスで取り組んでいるのはインフルエンザの事業で、まずはそれだなというのは思っているところなんですが。

多田先生の消化器内科と、私の救急科ですごく対照的でおもしろいなと思うことがあって。消化器内科というか、救急と総合診療以外の科は、やっぱりプロフェッショナルでスペシャリストだと思うんですよね。

救急と総合診療は逆で、ジェネラリストを目指すんです。浅く広く、なんでも診れるようにならなくちゃいけない。だから、1個1個の疾患や診療領域の知識は、その道のプロフェッショナルには及ばないと。

僕はわりと浅く広く、いろんな疾患を診るのが自分のスペシャリティだと思っています。そういう意味でいうと、自分の身体は1つしかないのでできないんですが、「こういう病気にもAI使ったらいいのにな」と思うところはやっぱりたくさんあります。

時代的な流れでいうと、ディープラーニングが得意なのは画像の解析なんですよね。もうちょっと経ってくると、耳の聴診の解析や触診の解析などもセンサーの進歩とともに、どんどん発展してくると思うんですが、ここ5年間ではやっぱり画像だろうと。

画像を処理するなかで、ただの画像ではなくアウトカムを出すというのが、ここ1〜2年ぐらいの流行りで、すごくおもしろいなと思っているところです。

人間とは違うプロセスで推測するAIの思考

沖山:さっきも山田さんとお話ししていたんですが、エヌビディアから出ている研究成果は、普通の病理画像なんですよね。病理画像の肺がんの切片かなにかを顕微鏡で見るんですが、人間はそれを見て、「がんの形をしている」というように、形から判定するわけなんですよ。

それを免疫染色というふだん使わないような特殊な染色液を使うと、「このがんはこういう遺伝子の特徴があるらしい」といったように、遺伝子の結果がわかるんですね。つまり、写真の情報ではなくて、目で見た情報から遺伝子がこういう情報だというDNAの結果を回収することができると。

人間はそういった免疫染色という特殊な1プロセスを挟んで、「免疫染色してこの色に変わったということは、DNAがこうであるに違いない」という検査方法をするんです。でも、AIはその免疫染色のプロセスをすっ飛ばして、写真だけ見て「この患者のDNAはこうなっているはずだ」というのを推測できてしまうんですよね。

それは人間からすると、ぜんぜん意味のわからない推測で。「化学薬品と反応させていないのに、DNAのことがわかるわけないじゃない?」と人間は思うんです。AIにたくさんの画像を学ばせると、おそらく背景では「こういうDNAのときにはこういう特殊な形の変化がある」というのを検知しているはずなんですよ。でも、それが人間には追いついていなくて。

画像を見ているんだけどDNAの答えがわかるというのは、モダリティ変換といって、こういう変化球みたいなものがAIは得意になってきているところで、すごくエキサイティングな領域だと思います。

技術的に可能でも、心理的な障壁は簡単に越えられない

加藤:ありがとうございます。

山田さんは広く世界中で医療×AIの分野を見てきていて、今ヘルスケアの業界で「問診×AI」「画像×AI」、それから最近だとCDIの認知症・介護のケアプランのところでのAI活用が目立ってきて、今サービスとしても出てきているようなイメージがあると思います。

海外から見て、例えば「こういう領域でよく行われている」「取り組みが始まっているのにまだ日本では少ないな」といったことはあったりしますか?

山田:いろいろな産業を含め、ディープラーニング・AIの技術について、画像分野に関しては「勝負あった」というと言葉が悪いんですけれども……勝負あったといっても、別に「アメリカに負けています」という意味ではなくて。単機能で区切ったときに、ある程度の判断はもうだいたいできます。

手法としてはある程度確立していて、できることがわかっている。じゃあどこに適用しますかということがありますよね。それに、適用するものを決めたときに、その大量のデータを整備しなければいけない。そこにものすごく労力が(かかります)。

たぶん多田先生も、そのあたりで死ぬほど大変な何百万枚の画像の話をうかがえるかと思います。そういった努力での勝負になってきているのかなと感じています。

とくに既存の医療のモダリティですよね。X線、CT、MRIといったところでは、それがかなりできることがわかっています。例えば、特定の疾患が画像上にあるかないか、ということはかなりできることがわかってきているので、課題はどう適用していくかですね。

でも技術的にできるからといって、それがすぐに社会実装できるかというと、当然FDA(アメリカ食品医薬品局)やPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)といったものもありますし、あるいは心理的なものがありますよね。医療者側の心理だけでなく、医療を受ける側も「AIの診断なんか信じられるか」というようなところもあると思います。そういった心理的な障壁などが大きいですね。

そういった障壁をいかに乗り越え、いつ社会実装していくかというところには、ちょっと興味があるといいますか、注目しているところではあります。

がん診断だけでなく、内視鏡検査そのものを楽にする時代の到来

加藤:ありがとうございます。今、山田さんのお話の中で画像のところでは「もう勝負あった」という話がありました。これは多田先生におうかがいしたいところなんですが、確かに海外とか、最近では慈恵医大の乳がんに対してディープマインドでやってきたり(しますよね)。

今までの画像のストックがあるところと、AI技術やディープラーニング技術があるようなところが組んで、どこかが面で押さえていこうという世界の中で、先生は今、内視鏡のところでリアルタイムに「それはがんなのか」を診断されるようなサービスを作られていて。

それが例えば、ほかの会社でもやろうとしているようなものと、どう差別化できるのか、どう工夫をしているか。それから、先生はどう画像を集めているのか。先生のクリニックには当然(画像データが)あると思いますが、どうやってデータを作っておられているのか。そのあたりの取り組みについて教えていただけたらと思います。

多田:内視鏡でがんを見つけられるかどうかという意味だと、私どもは確かに今、胃がんや食道がんで世界初のシステムを開発しておりますが、当然半年から1年ぐらいのレベルで、(ほかの会社に)技術的に追いついてこられる可能性は十分にある分野です。

現場思考でいうと、がんの見逃しをゼロにするのが内視鏡検査の目的ですよね。ということは、例えば胃がんが映っていればほぼ100パーセント検知できるというのは、人工知能の能力からして当たり前。(その技術は)もう飽和してしまっています。

今取り組んでいるのは、そこを突き詰めることではありません。浦和医師会で胃がんの見逃し症例を検討し直すと、ほとんどの場合「そもそも撮影していないんですよね」という話になります。だから、そもそも発見できていないと。

人工知能がいくら「がん100パーセント見つけますよ」といっても、撮影しなければ意味がないわけです。それにあわせて開発しているのが、部位を全部、人工知能に認識させること。例えば、人工知能は胃の部位を全部認識できます。ここが食道で、ここが胃の上、ここは胃の下、真ん中というように、胃の部位を全部人工知能に認識させると。

そうすると、単にがんを見つけるだけではなく、胃の部位がすべて撮影されているから、ハレーションしていたり、ちょっとブレていたり、光っていたりしても全部検知できます。ちゃんと撮影できているかどうかについても、画像を組み合わせて(判断して)いくこともありますし。

どこまで言っていいのかわかりませんが、将来的には内視鏡だけでなく、内視鏡検査そのものを楽にする技術も出てくるのではないでしょうか。バーチャル内視鏡(3D-CT)と組み合わせたりして。

もっと将来的なことでいうと、今ステート発表できるのはカプセル内視鏡ですね。今まで普通に胃カメラ・大腸カメラを使っていたのがもっと楽になりますし、一気に飛躍できる可能性がある。

内視鏡の画像だけでも、これぐらい1つを突き詰めていくといろんな分岐点があるので、そういったことをどんどんやっていくというのが1つですね。

加藤:ありがとうございます。

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