2024.10.10
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現場スタッフの役に立つ道具を作るーバックオフィススタッフとしての執念―(全1記事)
提供:サイボウズ株式会社
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石井優氏(以下、石井):2人目は、福岡の宮近整形外科医院の中村様です。では、お願いいたします。
(会場拍手)
中村義雄氏(以下、中村):みなさん、こんにちは。宮近整形外科医院よりまいりました中村と申します。本日は20分と短い時間ですけれども、ぜひよろしくお願いします。
先ほど「kintoneを使っている」と言われた方がいらっしゃったと思うんですけれども、みなさんは誰のために作っていらっしゃいますか?
私の場合は、ここのタイトルにあるように、現場のスタッフのために作っています。サブタイトルとして「バックオフィススタッフとしての執念」。(バックオフィススタッフというのは)私のことで、「絶対にやってやる!」という思いを込めてつけさせていただきました。
まず、kintoneを導入した結果です。みなさん、もう答えはわかるとは思うんですけれども、業務の効率と質の向上は当然です。だって、システムを入れてお金を払っているんですから、ということですね。
もう1つ、私は今「現場スタッフのため」と言いました。やはり、現場スタッフのストレスを軽減することが目的の一つだったんです。これは、私がこのkintoneに携わって3年を経過した結果です。
実際、当院がkintoneを導入する前はどういう状況だったか。これは私から言うのもちょっとシビアなんですけれども、ITリテラシー、ITに関する知識がすごく乏しい。そして、ファイルの管理がとてもずさんでした。
これを言うとちょっと怒られるかもしれませんが、現実にそうだったんですね。なので、ITリテラシーが低い点が問題になります。例えば、文字の半角と全角について、「それってなに?」というところから始まるほどだと思っていただければ十分です。
続いて「kintoneの導入の対象として」とタイトルをつけています。(みなさんは)我々が整形外科で病院だと思われていると思います。そこは間違っていないのですが、その導入の対象として、3年前に開所したばかりの「放課後等デイサービス」を選びました。
その(放課後等デイサービスという)事業を行っていく上で、当院でゼロからスタートする。私は、これは格好のターゲットだと思いました。つまり、ゼロからスタートすれば、一から現場のスタッフと協力していけると思いました。
「放課後等デイサービス」という名前を聞いたことがある方はいらっしゃいますか?
(会場挙手)
あっ、いらっしゃいますね。放課後等デイサービスをご存じない方のために簡単に申し上げますと、障がいをお持ちのお子様たちを、学校が終わったあとにお預かりするサービスだと思っていただければ十分です。
ここからは私の自己紹介です。これは私の趣味で、バイクをいじっている写真です。ここに書いてありますとおり、手を動かして形になるもの全般が私の好きなことです。簡単な料理から、最近はやってないんですけれども、裁縫もできるだろうと。あとはプラモデルや日曜大工。
最近、我が家のシャワートイレが壊れてしまいまして。外で修理を頼むと3万円ぐらい取られてしまうので、某通販サイトで1万円ぐらいで買って自分でつけました。そういった、手を動かして形になるものが好きな人間です。それが、これからこの業務に携わっていくというところですね。
課題の整理です。ファイルの管理がずさんであるならば、kintoneはクラウドなので、先ほどいろいろ説明があったように、アプリの単位で「この書類はここだ」と管理していけば改善できるだろうと。ここはあまり問題ではありませんでした。
もう1つの大問題が、やはりITリテラシーが低いところです。必ずしもではないですが、一人ひとりの名前をキーボードで入力するだけでもかなりの手間だと思いました。実際、これは現場の人間にとっては、かなりのストレスになっていました。そこをまず簡素化する必要がありました。
もう1つがデータの集計です。売上が毎日あがっていきます。月単位でまとめて計算する業務は必ず発生すると思います。でも、それも日々ちゃんとデータを入れておくことで、月の終わりに簡単に集計できるように自動化してしまおうと。そうしたら、管理職も手が空くだろうというところですね。
これをどのように実装していくかということで、可能なかぎり自力で、他社の力を借りない。自社内解決することが私のテーマでした。
(経営陣からは)とくに「他社に依頼してはダメだよ」という制限は受けていなかったんですけれども、私自身が(kintone、放課後等デイサービスの両方のしくみを)理解するためにも、これを自分の制限としておりました。
こちらは放課後等デイサービスの、実際の現場の写真です。たくさんのお子さんがいます。車椅子に乗っている方から、医療ケアと言われる医療機器を必要とされるお子さんまで、ひとりひとり違った障がいを持ったお子様がいます。
障がいがないんじゃないかというような軽度の方もいらっしゃるんですが、多種多様なお子様を預かるにあたって、現場の人間はいろいろな対応を迫られます。
その中で、我々の業界は、毎日の利用者の一人ひとりの記録がとても重視されます。これを怠ると「国に請求したお金を全部返しなさい」とか、ペナルティとなるほど危険な代物です。
この多種多様なお子さんたちを相手にしながら、戦場のように駆け巡りながらも、データ入力しないといけないんですね。
ならば、「事務員を雇えばいいんじゃないか」と思うかもしれませんが、実はそういう問題ではなく、専門性のある文章が必要になるんです。(データ入力は)事務員を雇ったからといって解決するものではないんですね。こればっかりは、現場の人間の専門知識を借りる必要があります。
次に、参考として実際に必要とされるアプリを抜粋してみました。3年間かけて、かなり簡略化はしてあるのですが、スケジュールの管理であったり、利用者ごとの記録になります。(をするアプリがあります)。
あとは送迎。一人ひとりどこのルートでどう送ったかという送迎の記録も重要なんです。これがないと、さきほどと同様に送迎に対するペナルティが発生します。もうとんでもないですね。そのあとに当日、トータルでどういう利用額が発生したかも記録しておきます。
この赤い枠が1日単位で作っていくべき記録です。次に、この1日単位の記録が完成したなかで、月の終わりに集計をかける。
これは一般的だとは思いますが、「あなたはおいくらですよ」という、利用者一人ひとりの月の利用額。あとは、会社としての月の総利用額の計算ですね。この2つが必要になります。
実際、1日で10名ぐらいのお子さんが利用されます。10名が利用してアプリがもし4つあったとしたら、10名分を4回入力しないといけないんですね。40名分の名前を入力しないといけない。
そうなったときに「これは、先ほどの戦場のような現場でどうやってやるんだ?」と。1分1秒でも惜しい状況で、これはなんとかして是正したい、改善したいと思いました。
このスケジュールは簡単な図ですけれども、その日に誰が利用するかだけは、とりあえず10名分だけは入力してくれとお願いしました。それさえ入力してくれれば、あとはこちらでカスタマイズして、ほかの3つのアプリにレコードのベースを作成して、名前などの入力を自動で、作ってあげるように仕向けました。
日々激務のなか入力してくれたデータを活用して、月の集計を簡単にする。つまりは蓄積したデータは、そのまま自動集計するように仕向けています。これでだいぶ時間は削減できたのではないでしょうか?
ここからが実際に使用しているアプリです。これが利用者の基本となるデータベースです。ここにだいたい基本となる情報を全部入れておきます。「変更があったらその都度変えてね」「1回入力してしまえば、もう同じことはしなくていいから」というものです。
次に、これも現場が使っているもので、スケジュールを管理するアプリです。ここにスケジュールがあり、当日の利用者が10人なら、10人分を入れておけば、もうそれだけでいいよと。
障がいの重いお子様もいますので、当日キャンセルやお休みになられることは多々あります。そのときは、利用者のリストから(名前などの入っている)行をそのまま消して「利用」というボタンを押せば自動で処理します。
操作の順番を間違ったとしても、1(ワン)ボタンで処理してしまえばなんの苦労もないだろう、という工夫ですかね。
次も現場担当者が入力する代物です。こちらは利用者のお母様たちに渡す記録で、そのベースを作っています。あとは専門職の方たちが専門(家)の目で記録を書いてお渡しすればいいというものですね。これだけは私もちょっと手を出せません。
こちらも先ほど説明した送迎の記録です。
「どうやって送迎しましたよ。どの車で、ルートがあって、運転手は誰で、同乗者は誰で」。このへんもやっかいでした。それもある程度までは自動で入れられるようにして、時間の削減を図っています。
もう1つが、当時の利用金額を集金するアプリです。我々はよく「単位」と言われる数字を使っていて、だいたい1単位=10円ということが多いです。こういった複雑な単位を使っています。加算といって、基本のサービスのお金に付随して、何をサービスしたらプラスが増えていくかというシステムです。
これも基本自動で算出するようにしています。間違っているところは現場の担当が手動で直します。ゼロから入力する必要はなく、消していくだけでよいというところです。
それらの日々の業務が積み重なって、月の終わりに「結局いくらだったの?」ということを集計するアプリも、ほとんどボタン1つでここまでバーッと計算します。これはちょっとデータが少ないので1回ずつしかないんですけれども、30回だったら30回出るようになっています。ここまで(データを集計)して、グラフでも見ることができます。
これはけっこうありがたがられますね。kintone導入を考えられている方は、ぜひ「あっ、使えるんじゃないかな」と思っていただければと。
次が当月の請求額情報です。「請求担当が」と書いてあるんですけれども、私も一応請求担当を経験しています。私自身が不便に思って、「どうやったら正確にデータを打ち込めて間違いが起きないかな?」という思いで作ったものなので、ここはちょっと凝りすぎていますね。ちょっと難しいですけれども、これがあるおかげでミスは減ります。
今は私ではなくパートの女性の方にやっていただいています。その方は、実際これをやり始めてまだ6ヶ月ぐらいです。でも、すでにミスはかなり少ないです。これだけあればデータは全部揃いますので、これだけでもだいぶ改善ができていますね。
これはちょっとおまけです。cybozu developerサイトというものがございまして、もし(みなさんの中に)顧客情報を入力して誕生日を管理されている方がいらっしゃれば、誕生日を入力しておけば、次に開いたときに自動で誕生日を更新してくれるものも紹介されているので、けっこう便利ですね。
(kintoneのアプリを)構築する際になにが必要だったか。まずはkintoneのカスタマイズ。さんざん紹介されているように、プログラミングが必要です。
もう1つなにが必要だったかと言うと、一番重要だったのが現場スタッフとのコミュニケーションです。kintoneも所詮は道具でしかないので、やっぱり使う側の人間が納得しないとぜんぜん広まらないんですね。そのため、ここが一番重要でした。
ちょっと順番に追っていきます。これがkintoneのカスタマイズです。これは私が組んだ雑なプログラミングコードですけれど、参考例です。こういうものが存在して、これをやることで自動化ができます。
kintoneの基本システムで足りない部分を補うかたちですね。エクセルの自動計算や、それに似たことをするためにはこれが必要だよ、と。もしくは有料で出ているプラグインと言われるものを活用していただければ、おそらくできるでしょう。
もう1つが現場スタッフとのコミュニケーションですね。日々の業務で困っていること。先ほど放課後等デイサービスの写真がありましたが、あの写真は私が撮っています。
私は実際にいろいろな現場(デイサービス、外来、訪問看護、放課後等デイサービス)に行って、働いているスタッフがどういう仕事をしているかを肌で感じて、どれだけ忙しいのかを見ています。「あっ、これは大変だ」「どうにかして改善してやろう」と。それを知ることが第一ですね。
現場の人間と、「どういうことをしたい? こういうアプリはどう?」と具体的に話をするんですけれども、試作品を作っていって見せて「こういう動きをするよ」「いや、でもここはこういうふうがいいな」「いや、これはああだな、こうだな」という(やりとりを)、やっぱりたくさんするんですね。
それらをして、実際にアプリを作って見せて、フィードバックをもらいます。「これは使いにくい」「これは使いやすい」「便利」とかですね。そして、それらを含めて改善点を抽出してどんどん改善していきます。
もう一度おさらいで、kintoneを導入した結果です。2つは先ほど見ていただいたんですけれども、もう1つはデータの収集が楽にできることに尽きると思います。
ふだん忙しい現場の方たちが必死に入力してくれた記録があります。それを無駄にせず、二度手間も減らせる。ちゃんと活かして計算してあげて、完璧なものを出せるので、とても楽ですね。楽ができて、精度の高いものができます。
これは当社の「みらいのいぶき」の(グループ会社の代表の)柴田謙一さんです。(ふだんは)けっこう難しい顔をされているんですけれども、現場に出るとこんなにすばらしい笑顔を見せるんですね。私もそれを見たときは、奇跡の1枚だと思いました。
やはり現場の笑顔が一番欲しいと。日々忙しいなかで業務に追われて、書類整備にまで時間をかけられて、心の余裕とか絶対になくなると思うんですね。でも、kintoneを導入することによってシステムで改善して、心の余裕を少しでも持たせてあげられれば。ちょっと大げさすぎますけれども、そういうことの結果の1つだと思います。
最後に、これは当院の宮近整形外科医院に関わるメンバーのバドミントン大会の写真です。今回のCybozu Daysのテーマは「楽しいは正義」でしたよね。それにかけさせていただいて、「楽は正義」とさせてもらいました。
この通り、(写真に写っている)人数が多くてわからないですけれども、基本は整形外科医院ですので、看護師や理学療法士のほか、放課後等デイサービスであれば保育士さんもいます。介護士さんもいますね。多種多様な方がいらっしゃるんですけれども、その方々は、やはり看護師であれば看護が専門なんです。
書類を作ったり、データを整備することはできたほうがいいんですけれども、そこに時間を使うぐらいだったら、現場の患者さんたちに注力してあげてほしい。そこで、楽できるものはとっとと楽をしてしまおうと。そんなものに苦労する必要はないということですね。
もう1つ、冒頭にも言いましたように、kintoneを作成するにあたって私が心がけていたのは、「すべては現場のスタッフのために」と「現場のために」ということです。
私から言えるのは、「kintoneを導入するにあたって、みなさんはどういう思いでこのシステムを導入されるのか」。管理者ならば会社を管理するアプリを作るであろうし、現場のスタッフに寄り添うのであれば、現場を改善するアプリを作るであろうと。多種多様に対応できるシステムではあります。
ただ、やはり道具ですので、最後は使う人間次第というところでまとめさせていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
石井:中村さん、ありがとうございました。緊張されましたか?
中村:そうですね。かなり緊張しました(笑)。
石井:おっとりとした話し方なんですけれども、すごく熱い想いを持っていらっしゃることが、たぶんみなさんにも伝わったんじゃないかなと思います。
中村:本当ですか。ありがとうございます。
石井:私も実は営業職なので、病院やデイケアセンターにおうかがいすると、やっぱり(みなさんが)少しでも現場が楽になるようにという思いで動いていらっしゃるので、こうした活用も進んでいるんだと思います。
とはいえ、1人目の(登壇者の)虻川さんのときにもありましたように、システムを入れることにアレルギーがあるケースはたぶんあるんじゃないかなと思うのですが、そのへんはどうクリアしていかれたんですか?
中村:そうですね。ちょっとサイボウズさんに失礼かもしれないんですけれども。私が入社したときにすでにkintoneが入っていたんですが、正直、信用していなかったんですね。
ExcelやWordがあるなかで、やはりExcelは印刷も含めて利便性が高かったんです。kintoneは印刷などは苦手でしたが、管理においては強く、これからはやはりクラウドであると(思いました)。
(導入する際は)kintoneのとっつきやすさが活かせました。現場のスタッフの人たちに反対されたり使ってもらえないことは多々あったんですけれども、実際にものを作って現場に持っていって、「これはどう?」と、意見をどんどん仕入れるんです。
私もそうなんですが、やはり人間は自分に利益がないと道具を使おうとしないので、「こういう利益があるよ」「こうやったら便利だよ」と、実際に示してみせるんですね。
実際に苦労しているのは私もわかるので、「この苦労を改善したいんだったら、こうすればできるから。ちゃんと出るから」というものを先に見せる。そのあとに「その代わり、日々の業務でここだけはがんばって入力してください」と持っていくんです。
石井:なるほど。
中村:こんなことを言ってしまうと、現場のみなさんに怒られそうな気がしますが。
石井:いえいえ、とても参考になると思います。
中村:それが私の常套手段といますか。
石井:なるほど。ちゃんと現場に寄り添いながら……。
中村:利益を見せるという。お互いWin-Winであると。こちらとしてはデータの集計が楽になるのでラッキーというところですね。
石井:なるほど。集計の部分のカスタマイズなど、これはお一人で全部やられたんですか?
中村:そうですね。kintoneのカスタマイズに関しては、基本私が一人でやっています。
石井:そうなんですね。けっこう大変じゃないですか?
中村:大変と言えば大変なんですけれども、現場に出ているスタッフに比べたら、まだ軽いほうかな、というところでしょうか。
石井:なるほど。本当に参考になる事例だったと思います。ありがとうございます。
中村:ありがとうございます。
(会場拍手)
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