2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
ファイナリスト発表(全1記事)
提供:アデコ株式会社
リンクをコピー
記事をブックマーク
川崎健一郎氏(以下、川崎):みなさん、いよいよ今年も2018年の「CEO for One Month」の発表の時がやってまいりました。今年は昨年の3,500名をはるかに超える7,000名というたくさんの方にエントリーをいただき、その中からファイナリト6名が選ばれ、本日、プレゼンテーションの審査を行いました。
まずは、さっそく6名のセミファイナリストの方々を紹介していきたいと思います。
(会場拍手)
こちらの6名から日本代表としてファイナリスト1名が選ばれるわけですが、まずその前に、本日、みなさんがセミファイナリストとして、この「CEO for One Month」にチャレンジいただいたことを証した修了証書を、お1人ずつにお渡ししたいと思います。
(各人に証書を渡す)
先ほど、みなさんのプレゼンも終わり、緊張も若干ほぐれたところかと思いますので、6名から社員のみなさんに、ひと言ずつ簡単に挨拶をいただきます。ではまず小澤さんから。
小澤龍二氏(以下、小澤):今日は朝から面接とプレゼンがあって緊張しました。けれども、すごく楽しくいい経験ができたなと思います。今回はこのような経験をさせていただき、ありがとうございました。
(会場拍手)
小杉山浩太朗氏(以下、小杉山):みなさん、こんにちは。ニューヨーク大学の小杉山浩太朗です。僕は、このアデコという会社に来るまで、日本で就職することをまったく考えていませんでした。初めてここに来て、みなさんとお話しさせていただいた時に、「日本にもこんな風に働ける環境があるんだ。だったらちょっと、日本に戻ってくることも考えようかな」という、きっかけになりました。
今日こうやって日本でみなさんが働いてくださっているおかげで、僕は海外で胸を張って「僕は、日本人です」と言えます。そのことに対して、僕は本当にみなさんに感謝の気持ちを伝えたいです。ありがとうございました。
(会場拍手)
荒木孝文氏(以下、荒木):関西から来ました荒木と申します。過去のCEO for One Monthの動画を、実は今日までにもう何十回も何百回も見てきました。7,000名から最後の6人に選ばれてプレゼンができる、今日という日をすごく楽しみにしていました。
(結果はまだ)わからないけれども、ずっとずっと楽しみにしてきたので、今この場に立てているということ自体がうれしいですし、これまで支えてくださった方のことを思い出すと誇らしく感じています。本日は貴重な機会をありがとうございます。
(会場拍手)
吉田優佳氏(以下、吉田):大学院1年生の吉田優佳と申します。私も今日まで、プレゼンテーションを作っている間も、海外や日本の「CEO for One Month」の今までの(動画)を何回も何回も見てきて、モチベーションを上げてきました。
参加したBoot Campはとてもチャレンジングな場で、たくさんの素敵な人に出会えました。ありがとうございました。
(会場拍手)
澤田祥大氏(以下、澤田):東京大学大学院の澤田祥大と申します。先ほど行ったプレゼンの発表ではとても緊張しました。その前に資料を提出する段階では、締切までの時間がタイトで、もう何度も諦めようと思いました。「もうこのぐらいで出しちゃおうか」と思ったこともありました。
でも、本当に最後までやりきって、資料も納得いくまで作って、発表も納得いくまでやることができて、今はすごく充実した気持ちです。こうした貴重な経験をさせていただいて、こういった場を用意してくださったみなさまに本当に感謝しています。ありがとうございます。
(会場拍手)
中村莉那氏(以下、中村):こんにちは。中村莉那と申します。私はこの「CEO for One Month」を偶然ネットで見かけて、偶然応募して、偶然、運でここまでやってこれたと思っています。
ですが、自分の内に秘めている思いを、プレゼンを通してたくさんの人に知っていただく機会をいただけて、今すごく興奮していますし、うれしい気持ちでいっぱいです。今回はこのような機会を提供してくださって、ありがとうございました。
(会場拍手)
川崎:みなさん、ありがとうございました。今回、審査員としても参加いただいたのですが、昨年の「CEO for One Month」日本代表の土井さんが応援に駆け付けてくれていますので、ひと言コメントをお願いします。
土井皓介氏(以下、土井):みなさんはじめまして。(社員へ)お久しぶりです。去年「CEO for One Month」の日本代表を務めました、土井皓介と申します。ファイナリストのみなさん、本当におつかれさまでした。僕自身、今年は審査員として楽しませていただきましたし、なにより、みなさんのプレゼンテーションの完成度が高く「去年応募してよかったな」と心の底から思いました(笑)。
そしてアデコのみなさん、こうしたすばらしいプログラムを毎年やっていただきありがとうございます。また、僕を審査員として呼んでいただいたことも本当に感謝しております。
ファイナリストの方々にひと言コメントするのであれば、みなさん、自分の経験や個性を活かしたプレゼンテーションをされていて、本当にすごいなと僕は思いました。もちろんプログラム上、選ばれる人は一人ですが、Boot Campでの経験を自分のこれからの人生に活かしていって、個性を爆発させるというか、やりたいことを追求する人生を送っていただきたいなと思います。ありがとうございます。
(会場拍手)
川崎:ありがとうございました。それでは、いよいよファイナリスト1名の発表に移ります。先ほど審査員が厳正な審査の結果、1名を選出いたしましたので発表いたします。
2018年 CEO for One Month Japan代表は、小杉山浩太朗さんです。おめでとうございます。
(会場拍手)
みなさん、本当にすばらしいプレゼンテーションでした。我々審査員が困るぐらい、みなさんのプレゼンテーションは本当に熱意もあって、審査は難航しました。
今回のプレゼンテーションは「2030年という未来の働きがい」がテーマでした。どのような働きがいを手に入れる必要があるのか。その際に、もしみなさんがアデコジャパンのCEOだったら、どんな戦略・ビジョンを社員のみなさんに提示していくのか。そんなテーマでプレゼンをしていただきました。
本当にみなさん、もう圧倒的な熱量としっかりとしたロジックに基づいたすばらしい内容で、いずれも「明日から社内で試してみたいな」と思うことばかりでした。その中でも、小杉山さんは、日本の高校1年の時、思いきって日本を飛び出し海外の高校に進学をし、そんな経験を通じて、学び考えたことをテーマにしていました。まさに、自分自身がダイバーシティの環境の中でチャレンジしてきたという内容でした。
昨今、「ダイバーシティ」「多様性」というキーワードを聞かない日はないぐらい重要なものになっている。しかし、みなさんの実際の生活や働く空間において、その成果を実感できるまでには、まだまだ至っていないのではないか。
2030年までには、そのダイバーシティを、みんなが当たり前のように実現できるような社会を作り上げていきたい。そんな社会を作る中心に、アデコグループが存在するべきであると。小杉山さんには、そんな非常に壮大な内容でプレゼンテーションしていただきました。
もちろん、このような社会を実現するのは一朝一夕に達成できることではありません。しかし、掲げているテーマの壮大さやスケール、そして彼の想いや熱量というものが、最終的に審査員が全員一致で「小杉山さんと1ヶ月間をともにして、ぜひその夢を実現する道筋を作っていきたい」と思わせるものでした。
最終的には、日本のみならず、グローバルの「CEO for One Month」にもぜひチャレンジしてもらいたい。そのように思い、選出させていただきました。改めて小杉山さん、おめでとうございます!
小杉山:ありがとうございます。
(会場拍手)
川崎:それでは、ぜひご本人からもコメントをもらいましょう。
小杉山:あらためまして、みなさんこんにちは。小杉山浩太朗です。僕、名字が非常に長くて、どの国の人でもちゃんと発音できない名字なので、これからは「浩太朗」って下の名前で呼んでいただければと思います。
非常に幸運な貴重な機会をいただきまして、僕とってもうれしいです。ちょっと、うれしい表情があんまり顔に出ないタイプなんですけど、本当にうれしくてハッピーです。ありがとうございます。
(会場笑)
高校1年生の時に日本を出た時は、この日本という文化、社会、そして国が自分に合っていないんじゃないかと。いろんなことに苦しみながら飛び出しました。でも、飛び出してみて本当に気づいたのは、僕はここに生まれてきて、自分が育った文化・価値観、そして(日本の)人々が、どれほど世界の中で必要とされているかということでした。
昨日、僕はニューヨークから帰ってきたんですけれども、今朝も電車に乗っていると、ラッシュの時に、みなさん疲れた顔をされています。でも、こうやってアデコのみなさんの目を見ているとつくづく思うのが、みなさん本当に輝いた目で、パッションをもって働いていらっしゃるんだな、というのをすごく感じることができたんです。
なので、そんなみなさんと一緒に1ヶ月間過ごさせていただくのはすごくうれしいですし、さっきもお話をさせていただいたんですけれども、もしできれば、このオフィスにいらっしゃるみなさんと必ず1回はランチをして、色々なアドバイスをいただきたいと思っています。
僕はここで日本の現状を知って、みなさんの声をうかがって、それを持ってまた海外にいって、どうやって日本人として、グローバルシチズンとして、世界を変えられるか、日本を変えられるかということを考えていく人生を送りたいと思うので、このような貴重な機会をいただけたことは本当に光栄です。
ありがとうございます。そして、これからどうぞよろしくお願いします。「浩太朗!」っていつでも呼んでください。お願いします。
(会場笑)
よろしくお願いします。
(会場拍手)
川崎:それでは、実際にCEO for One Monthとして選ばれた小杉山さんには、みなさんの前で改めてプレゼンテーションを行っていただきたいと思いますので、その他のファイナリストの方、いったんご降壇いただきたいと思います。では、準備はよろしいですか?
小杉山:はい。大丈夫です。
川崎:それではよろしくお願いします。
小杉山:はい。ありがとうございます。さっきは詰め込みすぎて焦ってしまった10分だったので、ちょっとのんびりしながらプレゼンしたいと思います。プレゼンのお題は「2030年の働きがい」でしたが、僕のプレゼンのテーマは、もうちょっと大きく、「To reestablish Japan as leader of the world」、世界のリーダーとしての日本について話したいと思います。
最初にひと言、僕が日本の社会にいらっしゃるみなさんに言いたいのは、「Thank you. Thank you very much」ということです。なぜか? 僕は、先ほども言いましたように、日本を17歳の時に出て、UWC(United World Colleges)という学校で、世界100ヶ国ぐらいから集まってくる学生とともに2年間を過ごしました。
僕は日本を代表するということで行っていたんですけれども、そのなかで改めて気づいたことがあります。それは、常に自分を紹介する時に胸を張って、「Hi, I’m from Japan. I speak Japanese. I love Japanese food and Japanese language.」いつでもどんな時でも、胸を張って「日本人です」って言えたということでした。
それはまさに、今日までこうやって日本の文化・社会・歴史、そしてこの日本という国を作り上げてきてきた、先人や先輩のおかげだと思うんです。だから、僕はみなさんにも「ありがとうございます」と言わせていただいてプレゼンを始めたいと思います。
さぁ、2030年、あと12年後です。どんな世界になっているでしょうか。「VIRTUREAL(バーチャリアル)」かもしれません。これは今、存在しない言葉です。バーチャリアル。これが言葉として存在する時代になってるんじゃないかと僕は思いました。
どういうことでしょう? 今はバーチャルとリアルという2つの言葉が存在しています。2030年になると、なぜそれが1つになるのか? それはバーチャルとリアルの境界線がなくなるからなんです。
どういうことでしょうか? 簡単にいうと「No Distance」。距離がない。もうボーダーレスの世界になっていると思うんです。
例えば、一番左の「No Travel Needed」。みなさんがこうやって座っていらっしゃいます。もしかしたら2030年、自分のデスクに座ってるのは1人だけで、ほかに座っている人は、projectされて浮き上がっている人かもしれません。
例えば、僕がニューヨークから「みんな元気? そういえばね、今日ここで新しいドーナッツのお店ができていたから、今これみんなに送るから」と。フードコピー機にドナーッツを置いたら、それが一瞬でパッと出てきて、遠くでも味わえる。そんな世界になっているかもしれません。そうするとより多くの人は一堂に会することができる。そんな世界かもしれません。
「Local to Global」。どういうことでしょう? 例えば今シリアで起きている難民問題。もしかしたらこの距離がなくなることで、僕の友達が経験している、そのシリアでの紛争とかがコピーされて、こっちにやってくるかもしれません。
そんなことが起きたら、シリアでのローカルな問題が、私たちが今住んでいる東京までやってきます。ローカルな問題がグローバルなものになる。こんなことが起きるんじゃないでしょうか?
これはアデコの視点からいうと、この労働市場が世界で1つになるんじゃいか、ということです。日本の中だけで労働市場を考える意味があるのでしょうか。日本の失業率は今2パーセントしかないって、胸を張っている意味はあるのでしょうか。
もしかしたら、私たちが2030年に気にしなければならないのは、グローバルでは失業率が30パーセントであるということで、今の各国の失業率は意味をなさなくなるかもしれません。
じゃあ、私たちがこの世界の中で理想とするのはなんなのでしょうか? 私たちは、こういうことを理想にしたいと思います。2030年のバーチャリアルな環境においては、ダイバーシティが活かせている、多様性が活かされた環境が必要だと思うんです。
ダイバーシティには2つあると思うんです。ExternalとInternal。外に見えるタイプのダイバーシティ。肌とか人種とか、もしかしたら性別かもしれません。しかし、これだけではなくInternal。つまり、考え方、文化、アイデンティティ、そういった見えないダイバーシティもしっかりと認め合う社会ができていなきゃいけないですよね。
そして、ローカルとグローバルというところでは、さっきの多様性を認めあっただけではなく、お互いの意識・意見を乗り越えて、どうやって共通のソリューションを作るのか? このためには相互理解が図られていなければなりません。
そして、最後にこの「Global Job Market」。現状を考えますと、今世界でのグローバル失業率は30パーセントです。マッキンゼーの試算によると「2030年までに、今の仕事の50パーセントは自動化される」と言われています。そうすると、人口は増える一方で職は減っていく。私たちは、仕事の新しい価値観や概念を生み出さなければなりません。
例えば、現にイーロン・マスクがユニバーサル・ベーシックインカムの議論を始めていますし、同時に1つの仕事を2人で分ける、ジョブシェアリングということが起きています。そうすると、今まで8時間働くはずだったのが、ほかの人と4時間・4時間で仕事をシェアする。こうすると、仕事に対する新しい価値観、「Re-Defined Jobs」が必要になってきます。
ここまでは理想を言ってきました。ちょっと仕事の部分、「Global Job Market」にフォーカスしてみましょう。実は、ここで出てくる重要な価値観が日本の誇るべき価値観なんです。海外の人はこう言います。「IKIGAI」。もちろんこれは「生きがい」のことです。これは今、世界ですごく話題になっている価値観なんです。
ちょっと簡単に(スライドの)下に行きますと、これまで、仕事とか私たちが将来目指すところは、「What you can be PAID FOR」の部分だけだったと思うんですね。お金を払ってもらえること。「いくらのお金を払ってもらえるか」ということが、働くうえで大きな意味をなしていたと思うんです。
でも最近は、それだけじゃなくて、「なにが自分にはできるのか」「なにが自分は得意なのか」「なにが自分は大好きなのか」。そして「なにを世界は必要とするか」。これらがすべてマッチしたところに生きがいは存在する、ということがすごく注目されているんです。
さぁ、このすばらしい価値観が日本にあるけれども、今、私たちはこれを十分に意識しているでしょうか?たぶんアデコグループのみなさんは生きがいを感じていらっしゃると思うんですが、日本のマジョリティはそうとも言い切れないと思っています。
ちょっと理想論を語ってきましたが、2018年に戻ってきましょう。今の現状はどうなっているでしょうか?
まず、日本への関心は日々高まっています。例えば、昨年の訪日外国人は約2,800万人、外国人労働者数は約127万人でした。それは前年比の18パーセント増です。
そしてもちろん、2020年に東京オリンピックがあります。そうすると、どんどん世界から人が来るんですね。実際に、Pearson College UWCにいた僕の80名の同級生のうち、8人がこの夏に日本に遊びに来るんです。日本への関心は日々高まっています。
しかしながら同時に、日本が世界から遅れているということがあるんじゃないかと思っています。例えば、いろんなところで起きているセクハラの議論だったりとか、性的少数者に対する対応であったりとか。もともといろいろな面で進んでいてポテンシャルもある日本という国が、コツコツがんばってきた他の国々に追い抜かされているところは多々あるように感じます。
やはり、日本を出て世界中の人と話したりすると、それを実感するんです。とくにニューヨーク大学(NYU)というのは世界で一番international studentの数が多いので、彼らと話していると、やはり日本のことを説明するとき、「これはちょっと恥ずかしくて言えないな」ということがよくあります。
日本というのはウサギだと思うんです。跳べば一気にすごく高く跳べる。ただちょっと私たちはバブル以降、歩を止めてしまっているみたいです。バブル後、日本は「楽しかったから、ちょっと休憩しよう」と30年間休憩しているのかもしれませんが、そろそろ起き上がって、ぴょんと跳ばなきゃいけない時期が来ているかもしれません。
そして、なんといってもこの3枚目の写真を見ていただきたいんですが、これは先ほども言ったんですけれども、海外でこれを見せたらビックリされます。どうしてか? みんな同じ格好をして、同じ会社に行くのかと。
いい大学を出て、いい会社に行って、いい旦那さん・奥さんをもらって、いい生活をして、老後はいい家でも建てて。そういう人生がサクセスフルと定義されていますが、本当にそうでしょうか? こういった現状がありますよね。
2030年の理想論と2018年の現状を語りました。アデコのCEOとして、理想論と現状とのギャップ、引き算をしてみたいと思います。なにが足りていないでしょうか?
「多様性を活かした社会の必要性」と「今、日本への関心が高まっている」というところを見たとき、なにが足りていないと言えるのか? まだまだ世界の多くの人材が日本に来ているとは言えません。街に出てみても、今日も電車に乗ってきましたが、1両の中に「日本人じゃないかもな」というルックスの方は1人しかいらっしゃいませんでした。
日本の人口は今、世界全体の1.6パーセントです。それが2050年には0.9パーセントになります。私たちが認識しなければいけないのは「日本社会の一員であることは、グローバル社会の一員であることと直結している」ということです。やっぱり、もっと世界から人を取り込まなければなりません。
同時に「相互理解の普及」という理想と「世界から遅れてしまっている」という現実を考えると、やはり世界の人に来てもらうだけではなく、私たち日本人が世界に出ていって状況を知ることが必要だと思います。
現に僕も日本を出てみて、初めて分かった日本の良さもありますし、世界の問題も感じました。そして、日本のアプローチがもしかしたら世界の問題を解決するかもしれないということも考えることができました。
そして、最後に「新たな働きがい」。この新しい価値観を植え付けるのは非常に大変です。例えばいきなり明日、「今日から働きがい・生きがいを考えてください。自分の好きな、さっきの(スライドの)4つの丸が入るところを見つけて、なにが自分の生きがいか考えてください」と言われても、わからないですよね。ということは、やはり引き算をしてみると、価値観を根本的に変える教育が必要だと思うんです。
そこで僕は、1冊の本を紹介したいんです。これは、僕が人生の中で読んだ本の中で一番印象に残っている本です。これはどんな文庫本よりもどんな啓発本よりも心に残っています。邦題は『たいせつなきみ』という本です。これを初めて読んだのは5歳とか4歳だと思います。もちろんその時は字も読めなかったので、母に読んでもらっていました。
この中の1ページで、すごくいいシーンがあります。この本の設定は、木で作られた人形たちの世界で、その中でお互いに「あ、彼いいことやってるな」と思うと、金色の星のステッカーをつけてあげる。
ただ、「この人なにをやってるの?」と思うと汚い灰色の丸いステッカーを貼る、というシステムの世界だったんです。お互いの価値を評価していく。そして、その星の数で社会の中の自分の価値が決まってしまう。こういう世界でした。
その中で、パンチネロという1人の男の子がいました。その彼はなにか一生懸命やろうと思っても失敗してしまって、いつもみんなに笑われて汚い灰色の丸いステッカーを貼られていました。彼はある時悩んで、自分を作ってくれたおじさんのところに行くんですね。
「僕はなにをやってもうまくならない。こんなにたくさん汚いステッカーもついているし、僕の価値はないんじゃないか」と彼は聞きました。そうしたら、そのおじさんは、「違うよ。君が本当に生きたいように生きればいいんだよ」と言ったんです。「君にとって『君である』というのはどういうことなのか?」。
それを言われて、彼はふと気づいたんです。「周りの人がどう考えるかじゃなくて、自分が大事にするものをしっかりと意識して生きていけば、僕は幸せになれるんじゃないか」と。そして、それに気づいた彼からは、1つのステッカーが落ちたんです。そのシーンがこれなんですけれども、小さなステッカーがポロッと落ちてるんですね。
これは彼が実際に、社会が自分をどう評価するかではなく、自分自身で定義した自分だけの定規を使って見つけた世界こそが、自分の人生を定義するんだと気づいた。その時に、彼の身体からこのステッカーが落ちました。
僕はアデコがこの価値観を変える教育を(実現)できた場合、日本人の多くの人が、この経験ができると思うんです。
さぁ、じゃあ具体的に何をしましょうか。これまでいくつか申し上げました。「世界から人材を取り込みましょう」、そして2点目は「世界に人材を送り出しましょう」ということで、もう1つ提案したいのは、「Adecco Global Job Force Exchange」というものです。
どういうことでしょう? これは例えば今、アデコのWebサイトの仕事情報では、「どこで仕事を探してますか?」という質問に対して、日本国内に限定されていると思うんですが、ここに「Global」という枠を設けて、日本から海外に行ってみたい人を支援するようなシステム、これをアデコのグローバルネットワークを使ってすることを構築します。
僕の友達にもすごく日本に来たいと思っている人がいます。でも、例えばWebサイトが全部日本語だったりとか、必要なqualificationがちゃんと整っていなかったりということがあるので、アデコが率先して海外から日本に来たい人を取り込む仕組みを作ります。もちろん、このときに生じる文化や価値観の違いも、しっかりとアデコがサポートします。
これをすることによって、まず日本人が世界の先端を知ることができます。例えば、Googleで働いている僕の友達がよくこんなことを言ってきます。
「日本人ってよく残業時間を自慢するけれども、Googleで残業していると、今日の仕事の能率が悪かったから残らなきゃいけないということになる。つまり、それってGoogleなら『早く自分のクビを切ってください』って言ってるのと同じなんだよ」と言われたんですよね。「あ、こんな価値観があるんだ」ってことを学んだんです。
日本から海外に行って、こういう価値観を学べる人がいたら、それを持って帰ってきてくれたら、どれほど日本にとってプラスになるでしょう。日本社会の新陳代謝が活性化されます。
それと同時に、海外から日本に人を取り入れることによって、私たちは彼らに日本のすばらしさを感じてもらうことができます。例えば生きがいということを、私たちが本当に一生懸命感じながら生きていたら、彼らがそれを学ぶ機会がある。日本の文化をシェアできる。それと同時に、私たちも彼らから学ぶことができます。
そして、今までと違う価値観・文化の中で生きてきた人と過ごすことによって、私たちが今まで立っていたステージの根本を改めて見つめ直すことができます。これは非常に重要なことだと思うんです。
僕は、日本を出て初めて、これまでとぜんぜん違う価値観で日本を見たときに、自分の立っていた日本文化が何なのかということを考えさせられました。そして今、これまでより日本が大好きになりました。僕と同じような経験ができると「日本をもっとよくしよう。日本をさらによくしていこう」という思いが強くなると思うんです。
そして「価値観を変える教育」としては、今アデコがやっているこういった教育のサービスだったりとか、あとは Win4Youthとか、いろいろなことをやっていると思うんですが、さらにこれを加速するために、「Adecco Education」という分野を立ち上げたいと思います。
これをすることによって、より多くの人が将来、アデコが今変えようとしている、日本社会というステージに立って踊るための必要な教育を受けられます。僕の知り合いで、ブロードウェイでライターをやっている人がいるんですが、彼がある時僕に尋ねました。「浩太朗、どうしてブロードウェイってこんなに有名な産業になったか知ってる?」。
「それはね、ブロードウェイというシアターがあっただけじゃなくて、そのシアターで踊る人を教育することができた。そのシアターのパフォーマンスの内容を書く人の教育もあった。さらには、音響とかそういうバックグラウンドでやることの教育もできていた。ステージを作るだけじゃダメなんだ。そこのステージで踊れる人をちゃんと育てなきゃいけない」。
2030年には、今小学4年生の人たちが社会人になります。小学4年生って、たぶんみなさんが振り返ると、やっぱり親に「いい会社に行きなさい」とか「ちゃんとテストでいい点数取って、いい会社へ行って、いい給料もらって」と言われてましたよね。
そんな彼らにもしそんな価値観じゃなくて、「生きがい」というこのすばらしいアイデアがあるんだということを提案できたら、彼らこそがチェンジを起こしてくれる源になるかもしれない。そう思って、Adecco Educationをやりたいと思いました。
(会場笑)
さぁ、なぜ僕なのか? ちょっとこれはたぶん、アメリカみたいなプッシュなカルチャーだと思うので、日本であまりないと思うんですけど、ちょっと説明させてください(笑)。
やはり日本代表としてグローバルな環境で過ごすことができた人間として、僕が感じたことは、ダイバーシティというのはすばらしいということなんです。しかし、過去30年、ソ連が崩壊して、市場経済・自由市場にいろんな国が入ってきました。そして、インターネットや交通手段の発達によって、私たちは物理的にもバーチャルにも、世界のほぼすべてのことに触れられます。
しかしながら、自分たちが触れる多様性が増えてきたにもかかわらず、私たちが情報を手に入れるときはどうでしょうか? インターネットやソーシャルメディアを使うと、私たちの好きな情報が入ってきますよね。自分の興味のある、フォローしている情報しか入ってこない。または、サーチエンジンがフィルターを通した情報しか入ってこない。
そうすると、私たちはより多くのことを知らなきゃならないときに、自分たちのスコープを狭めてしまっていると思うんですね。僕はそれが問題だと思って、このスコープを広げていくような人生を送りたいと思っています。
そのために今、なにをしているか? まず学ぶことです。どうやって学ぶのか? 世界に自分をさらけ出すことが大事だと思っています。僕は大学1年次に国連日本政府代表部でインターンをする機会に恵まれました。
この時、アメリカのヘイリー国連大使の話を聞く機会などもありました。世界の現状を直に感じることは、すごく大きなことだと思うんです。「世界には、こんなにも多くの問題が蓄積しているんだ」とか、あるいは「日本の価値観も、もしかしたらこんなポテンシャルあるんじゃないか」って、自分をさらけ出すことによって、いろんなことを吸収できました。
じゃあ吸収したらそのままでいいのか? 違います。アクションを起こしたいと思います。今、僕がいるNYUという大学は、アメリカで一番インターナショナルな生徒が多い学校です。
国際的であり、ダイバーシティがあるということは、いいことなんですがすべての生徒が満足しているのかということには疑問をもっていました。そこで僕がやっていることは、「色んな国からさまざまな人が来ているけれども、その人たちが自分の声を発することができているの? みんなここでハッピーなの?」という投げかけを生徒のボードを作って、学部長と学長とかけあいながら大学のポリシーを変えていっています。
それだけではありません。大学のステージを作ったらそれだけでいいのか? 違います。そこで踊れるダンサーも作っていかないといけない。実は今、実際に子どもにダンスを教えてるんですけれども、通っていた高校では、いろんな国のダンスを知ることができたので、ダンスの多様な違いなどを通して、多文化理解の重要性を子どもたちに教えています。
この写真は、1年生に教えている写真なのですが、これを通して、舞台を作っただけではなく、自分も含めた将来の人材がどうやってその上で踊れるかを考える機会を一緒に作っています。
さぁ、こういうことをしてきた自分が、今回「CEO for One Month」をさせていただくことになりました。よくリーダーになる人はこんなことを言います。「Let me be the leader. I want to be a leader」。でも、僕はこれを言いたくないんです。なぜか? それは、僕のリーダーという定義には当てはまらないから。
どういうことでしょう? リーダーってよく考えると、こういうグループを率いる1人の人という価値観があると思うんですが、僕はそれは間違っていると思うんです。
例えばみなさん、こんな状況を考えてみてください。今ここに、すごく重いおもりがあります。今ここにいる人全員が、それぞれ1本のロープを持っています。それは、そのおもりにつながっています。もし「引っ張るぞ」と全員が違う方向に引っ張ったら、動きますか? 動きませんよね。
CEOはあくまで「みんな、こっちの方向へ引っ張るぞ」というふうに方向性を示せる人だと思うんです。そして、それを見たみなさんと一緒に、もしそれが正しい方向だとみんなで思えたら、「じゃあ引っ張ろう」って、一緒の方向へみんなで引っ張ったときにリードする。全員がこのおもりを引っ張れていますよね。これこそが本当のリーダーシップだと思うんです。
実際に日本というのは海外と対照的で、「こっちに行くぞ」って言われたときに、みんなで一緒の方向に引っ張るのは、すごくうまい国なんです。例えばアメリカとかだと、みんなが「はい、こっちこっち」ってあちこちで引っ張り合ってるんだけど、このおもりがぜんぜん動いていないですね。アメリカの政治が今、実際にそうした状態だと思います。
僕が伝えたいことは、「アデコのみなさんと一緒にリーダーになりたい」ということなんです。だから僕は「Let me be the leader」ではなくて、「Let us be the leader」と言いたいと思います。
これから1ヶ月間、ちょっとしかないですが、みなさんと一緒にこのアデコという会社、日本という社会、そして世界というこの大きなおもりにつながれているロープを、みなさんと一緒に引っぱりたい。
そして、インターンシップが終わったときには、「あのちょっと早口で滑舌の悪い男の子がいっていたことをよくよく考えてみるとちょっと日本が変わるんじゃないか」とか、「もしかしたら世界が変わるんじゃないか」とか、そういった気持ちになれるような1ヶ月を過ごさせていただきたいと思います。
ということで、僕のプレゼンテーションを終わります。ありがとうございました。そして、これからよろしくお願いします。
(会場拍手)
川崎:すばらしいプレゼンありがとうございました。どうでした、みなさん? ちょっとワクワクしたでしょ?
1ヶ月は短い期間かもしれませんが、この中でも浩太朗と一緒に携わる方もたくさんいらっしゃると思いますので、ぜひワクワクするようなことを実際にアクションしていければと思います。もう一度、すばらしいプレゼンに大きな拍手をお願いします。
(会場拍手)では、ぜひファイナリストのみなさんももう一度ご登壇ください。
(ファイナリストの方々が再登壇)
いよいよクロージングの時間になりました。今発表させていただいたように、今年は、小杉山浩太朗さんが見事「CEO for One Month」に選ばれました。今年は7,000名という非常に多くの方の中から選ばれ、このステージまで上がってこられた6名のファイナリストのみなさんには、それぞれ本当にものすごい熱量で素晴らしいプレゼンテーションを行っていただきました。
おそらくこの中には、今後、我々のCXO for One Month(1か月間、CHROやCMOなどの業務にチャレンジする、アデコグループのインターンシッププログラム)にもチャレンジされる方もいらっしゃるのではないかと思いますので、また近いうちにお会いできる方もいるのではないかと楽しみにしております。ぜひみなさん、改めてこの6名のすばらしいファイナリストたちにもう一度大きな拍手を送ってください。
(会場拍手)
ありがとうございます。そして見事「CEO for One Month」に選ばれた浩太朗と、この1ヶ月間、明日へ向かって新たな一歩を踏み出していければと思っています。先ほど、浩太朗が行っていたように、彼が1人でリードするということではなく「Let us be the leader」ですから。
それでは、以上をもちまして、「CEO for One Month 2018年」のファイナリスト発表を終了いたします。本日はどうもありがとうございました。
(会場拍手)
アデコ株式会社
関連タグ:
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.11
自分の「本質的な才能」が見つかる一番簡単な質問 他者から「すごい」と思われても意外と気づかないのが才能
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.12
自分の人生にプラスに働く「イライラ」は才能 自分の強みや才能につながる“良いイライラ”を見分けるポイント
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.11
気づいたら借金、倒産して身ぐるみを剥がされる経営者 起業に「立派な動機」を求められる恐ろしさ
2024.11.11
「退職代行」を使われた管理職の本音と葛藤 メディアで話題、利用者が右肩上がり…企業が置かれている現状とは
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.12
先週まで元気だったのに、突然辞める「びっくり退職」 退職代行サービスの影響も?上司と部下の“すれ違い”が起きる原因
2024.11.14
よってたかってハイリスクのビジネスモデルに仕立て上げるステークホルダー 「社会的理由」が求められる時代の起業戦略
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.11
自分の「本質的な才能」が見つかる一番簡単な質問 他者から「すごい」と思われても意外と気づかないのが才能
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.12
自分の人生にプラスに働く「イライラ」は才能 自分の強みや才能につながる“良いイライラ”を見分けるポイント
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.11
気づいたら借金、倒産して身ぐるみを剥がされる経営者 起業に「立派な動機」を求められる恐ろしさ
2024.11.11
「退職代行」を使われた管理職の本音と葛藤 メディアで話題、利用者が右肩上がり…企業が置かれている現状とは
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.12
先週まで元気だったのに、突然辞める「びっくり退職」 退職代行サービスの影響も?上司と部下の“すれ違い”が起きる原因
2024.11.14
よってたかってハイリスクのビジネスモデルに仕立て上げるステークホルダー 「社会的理由」が求められる時代の起業戦略