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グローバルオープンイノベーションビジネスコンテスト 7.0 グランドフィナーレ(全2記事)

2018.04.26

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NTTデータ×ベンチャー 価値観の違いを乗り越える鍵は「いかに相手に寄り添うか」

提供:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

株式会社NTTデータが主催する「豊洲の港からpresentsグローバルオープンイノベーションコンテスト」。ベンチャー企業と大企業とNTTデータの三者がともに新規事業創発を目指す取り組みとして2014年から開始しました。第7回となる今回は、世界14カ国15都市での予選会を実施、勝ち抜いた各都市代表が2018年3月22日、東京にて開催されたグランドフィナーレ(決勝ピッチ大会)に集まり、第7回のグランドチャンピオン企業が選出されました。聴講者が審査結果を待つ間行われた特別セッションでは、前年度チャンピオンであるスペインのスタートアップ、Social CoinのIvan Caballero氏や、NTTデータと共同ソリューションを開発展開中の株式会社Paykeの古田奎輔氏、NTTデータの担当者によるパネルディスカッション「スタートアップとNTTデータの協業事例」を行いました。本パートでは、Forbes JAPAN副編集長の谷本有香氏をモデレーターに、PaykeとSocial Coin、そしてそれぞれの担当者が、協業の影響や取り組みおける問題をどう解決したかなど、本音を語りました。

スタートアップが大企業とコラボレートするときの社内の問題

谷本有香氏(以下、谷本):オープンイノベーションと言われて久しいですし、このバズワードを聞かなかった日はここ数年なかったような現状ではありますが、うまくいっている企業が少ない中で、この2つの成功事例から、ヒントを今日はたくさん持ち帰っていただきたいなと思っております。

ただ、オープンイノベーションといっても、誰と組むのか、どうやって組むのか、さらに、どのように相手を選ぶのか。さまざまな壁が立ちはだかりながら、それを乗り越え、結果的に成功という大きなゴールまで導いていくということだと思います。まず、この2つの事例がどうやって協業に結びついていったのかについておうかがいしていきたいと思います。鈴木さんと古田さんチーム、どういったかたちでコラボレートが進んでいったのでしょうか?

鈴木親大氏(以下、鈴木):はい。所属している部門は、CAFISという国内最大級の決済ネットワークを提供しています。ただ、お客さまにより深く刺さっていく時には、この決済というサービスだけではなくて、よく言われるショッパージャーニーという軸をもとに幅出し、付加価値をつくっていかなければいけません。

そういった時に、インバウンドの中の、旅行中の決済の一歩手前というところで、お客さまが困っている言語の問題を解決したいと思って、サービスの開発を検討していました。

そこでキーポイントになるのは、素早くクイックにサービスをつくっていくというところでアライアンスパートナーを探していた時、九州のベンチャーアワードでPaykeさんが大賞を取られた時に、当社のオープンイノベーション創発室がPaykeさんと出会って、そこから私がPaykeさんとアライアンスの検討をすることになりました。

その後は、こちらに書いてあるとおり、クイックに2回ほどPoC(概念実証)、実証実験をさせていただいて、昨年、ちょうど1年前ぐらいにPaykeさんへ出資をさせていただきアライアンスを締結し、我々のサービスとしてローンチをしたという流れになります。

谷本:古田さんにお聞きしたいんですけれども、スタートアップが大企業と組むというと、「なんかスピード感も遅いし」という気がするんですが、実際にいかがでしたか?

古田奎輔氏(以下、古田):実際、いざ出資になって、PoCをやっていく中で、スタートアップ側の問題もあるんですが、社内から若干の反発がありました。「そんな大企業と組んで大丈夫なの?」「いいようにされないの?」という反発です。実はスタートアップ側は社内でそういうのがあります。

ただその時に、トップの僕と今回プロジェクト一緒にやっている鈴木さんが、すでにコミュニケーションを重ねていて、「全力でやっていこう」と合意が取れていたので、僕が社内を調整して、「いいから黙ってやるぞ」という感じでスタートしたので、各社の調整自体はそんなに問題なかったのかなと思います。

いざスタートしてからは、想定してた以上に早かったというのが結論としてはあって、PoCを両社でやる時も本当に人を出し合って、PoCの現場、その時は沖縄県でやっていたんですけど、沖縄県まで両社から人を出し合って張り付きでやったりも比較的クイックにいけたのかなと思っております。

日本と欧米の企業の違い、文化の壁

谷本:Ivanさんと高野さんにおうかがいしたいです。お二人はどんなかたちでコラボレートに至ったんでしょうか? Ivanさん、いかがですか?

Ivan Caballero氏(以下、Ivan):このオープニングイノベーションコンテストがちょうど1年前にありました。そこで優勝後、NTTデータの支援でコンサルチームを送っていただき、協業の検討を進めさせてもらいました。

3か月の協業検討を経て、われわれの事業の価値や強み、弱みについてかなりの示唆をもらい、戦略を整理統合するのに役立ちました。オープンに日本のマーケットと我々のマッチングを行いました。その後PoCを行い、我々の持っている価値が「日本の市場に対してどこが一番強みになるのか」という観点でも知ることができました。

課題としては、スタートアップとのスピード感の違い、NTTデータの多層的な意思決定過程がありました。文化的な壁、ヨーロッパと日本の企業の違いもあったと思います。

そういった課題はありましたが、多くを学ばせていただきました。このプロセスを通してよりプロフェッショナルになれたと思います。そして、MOUを結ばせていただき、我々の提供できる価値が明確になったので、どんどんスピード感が早くなってきている気がします。

今回の来日では日本のお客さまへの紹介にも同行し、未来の見えるような会議を行わせていただき、非常に楽しみなところまできたなと思います。

谷本:ありがとうございます。高野さんはいかがですか?

高野恭一氏(以下、高野):そうですね。オープンイノベーションコンテストは、各事業部からのビジネスニーズをヒアリングして、そのテーマに沿ったスタートアップとコラボレーションすることが多いです。

しかし、当初、私たちはヒアリング先に入っておらず、逆にIvanのほうからNTTデータ持っているTwitterや言語解析技術に興味があるという話をいただき、コラボレーションが始まっています。

もちろんIvanの言ってくれたような文化的な違いで、かなり産みの苦しみはありましたが、ユニークなソリューションなのでお客さまにも非常に興味を持っていただいています。

谷本:ありがとうございます。

スケートボードと自動車

谷本:本当にいろいろな苦しみもあった。それを乗り越えながら現在に至っていると思うんですけれども、どういったところが一番大変、難しいところだったのか教えて頂けますか?まずは誰よりもぜひIvanさんにおうかがいしたく。正直に、ここだけの話、NTTデータさんとの協業の難しさって何ですか? 私しかいないと思ってお話いただけたら……。

Ivan:ここに来るまで24時間もかかるということでしょうか。こればかりは電話会議をやっていても解決できないですし、非常に難しい問題ですよね。

文化という観点では、スタートアップの製品は、いわば車輪の上に板をつけただけのスケートボードみたいなものです。NTTデータのような大企業ですと、そういうスケートボードレベルはなかなか認められません。自動車じゃないと、いやせめてバイクくらいにはなっていないといけないということを強く感じました。

われわれは、このスケートボードに乗って、その土地に行って、どんな曲がり方をするのかを見てみようと思うわけですが、大企業においては、完成品として見せられないと価値が認められにくく、しっかり洗練されていなければいけない。

我々の場合はスケートボードですから、この先どんどん改良していくというレベルで出してしまえるわけなんです。そこの違いはありましたね。

ですからPoCの時は、Social Coinとしてのビジョンを形にする時期を少し延期して、NTTデータとの協業のために一旦製品の完成度アップに集中しようよ、ということをしたりもしました。

谷本:ありがとうございます。

協業の難関をどのように乗り越えていくか

谷本:一方、高野さん、例えばオープンイノベーションというと、スタートアップとの間も当然大変だと思いますが、社内での動き、イントレプレナーとして中で動き回るって恐らくもっと大変だったりするじゃないですか。しかも、相手は同じ日本企業ではなく外国の企業ですよね。その2つの意味で、高野さんはどう動いてこられて、今までどんな難関を乗り越えてこられたんですか?

高野:おっしゃるとおり、いくつか難しいポイントはあったんですけど、一番大きかったのが協業する意義を社内で理解してもらう点でした。

Social Coinのコンセプトは社会課題を解決して、より良い社会を築こうというものなんですね。一方で、日本企業は一般的にそうだと思うんですけど、どう売上を上げるか、利益伸ばすか、そっちの車輪が重要視されがちだと思うんです。夢や理想、意気込みを語るだけでは、なかなか理解を得にくいという社内的な苦しみは正直ありました。

それでどうアプローチしたかというと、短期的に既存のビジネスにこれだけつながるという点を軸にしながら、将来の大きなビジョンを描き、啓蒙することに注力しました。幸い上司が自由に動くことに寛容だったので、Ivanの情熱を自分に注いで説得しました。

谷本:ありがとうございます。鈴木さんにもおうかがいしたいのですが、オープンイノベーションとしての社内外でのご活動、どのようにされていたのでしょう。

鈴木:実は、僕もIvanさんや高野さんがおっしゃってたことと同じようなことかなと思っていて、どうしても大企業だと分析・改善、競合との競争、評価、計画、こういったものを重視すると思うんですよね。

一方でスタートアップは、とくにPaykeさんは、まず実践。そこからの学び、競合というよりは顧客への共感、そういうところを注視しているので、そこにいかに自分が寄り添うかを意識していました。

「社内は?」というところなんですけれども、私はマネージャーに理解があって、こういう取り組みを中長期にわたってやっていかなければいけないよね、という理解があったので、私が活動できる場がありました。スタートアップとの違いみたいなところを、自分が両者のクッションになるようなイメージで働いていたと思います。

谷本:古田さん、例えば大企業とコラボレーションというと、頭が固くて、なんでもすぐ「持ち帰ります」みたいな融通きかないような年配の方が来られるようなイメージもあると思うのですが、実際は、鈴木さんのような大学生のような若者が来られて。

古田:(笑)。

谷本:そういう意味では話しやすかったりしたんじゃないですか?

ベンチャー企業と大企業が敵対せずにコミュニケーションする

谷本:大企業の窓口として、鈴木さんとご一緒して、どんな印象を持ちましたか。

古田:まさにおっしゃるとおり、(鈴木氏に対して)大学生みたいなルックスじゃないですか。

僕も若いんですけど。ご縁もあって、実はうちのCOOがもともと鈴木さんのバイトの上司だったっていうことも、協業してから発覚しました。アポイントのミーティングをした際に、「あれ!?」ってなったんですね。実はよくわからない縁があったという経験もあります。

ベンチャー企業と大企業というよりは、古田と鈴木、Paykeと鈴木みたいな感じでのやり取りができるようになっていって、それこそ休日ごはんを一緒に食べながら作戦会議をしたり、そういうコミュニケーションが頻繁に取れたのは良かったなと思います。

例えば、「じゃあ、持って帰ります」「これじゃあ通らないんで、直してきてください」と言われたら、ベンチャー企業はムカッとするわけですよね。大企業側もベンチャーがそんな無謀な戦略立ててきたら、「いや、こんなの無理だよ」って言ってリジェクトするわけですよ。

ただ、そこを個人同士の信頼関係をつくれていたので、協業しておいて敵対はおかしな話なんですけど、敵対心がなく、一緒にスクラムを組める空気感はつくれたのかなと思います。

谷本:私もさまざまオープンイノベーションの成功事例を取材してきましたが、服装はじめ、ストレスなく両者がコミュニケーションとれるように大企業側の人達が変わっていったという話をよく聞きます。ごはん一緒に食べに行ったりするのも近道だと思うんです。しかし、Ivanさんと高野さんに関しては、そういうコミュニケーションができづらいわけじゃないですか。

そういう時にIvanさんとしては、高野さんに自分のフラストレーションやストレスをわかってもらえるように、どのようにコミュニケーションしましたか?

Ivan:そうですね。私がNTTデータさんに抱えている不満があるとしたら、高野さんが十分にごはんを食べていない、眠っていないというところなんですよ。

(会場笑)

睡眠時間が足りないなと思います。この人にもっと健康であってほしい。そうじゃないと、うちの事業成功しませんから。そこが一番大きな心配事かなと思います。

おそらく今年の優勝者のみなさんも、同じような体験をされるんじゃないかなと思います。これは決して不満ではなく、学んでいくこと。我々もまだ学んでいることであり、スタートアップも同じだと思います。NTTデータとコラボレーションしていくスタートアップのみなさんに対して、1つの布石を我々がつくっているんじゃないかなと思います。

一緒に我々と関わってくださったチームのみなさんは、本当に大きな努力をしてくださっていると感じます。そして、すべての地位のみなさんが、あらゆる組織のみなさんがサポートしてくださっている。これはどの立場にいたとしても簡単なことではないと思いますが、本当にすばらしい支援をくださっていると思います。

谷本:きっと高野さんがすべてのクッションになってやってくださっているから、うまくいっているということもあるのでしょうね。具体的に、気をつけてきたことや、工夫したことなどはありますか?

高野:はじめ、協業に向けて話をし始めたときに、ブラッシュアップ中の機能が想像していたよりも多く存在しました。一方で、先ほどのIvanの話と重なりますが、NTTデータだと、100パーセントのもの、自動車を求めていたりして、当初はそのすり合わせでフラストレーションがお互い相当あったと思います。

ディスカッションを進めていく中で、「あ、きっとスタートアップにここまで求めちゃいけないんだ」という気づきもありましたし、IvanはIvanで「日本企業にはここまでのレベルが求められるんだ」といったところのすり合わせができてきたかなと思います。そこから先は一緒にプロダクトをつくる感じになっていったかなと思います。

当然それで、食事の時間を確保できなくなるぐらいに忙しくなったんですけど、今いい関係が構築できているのは、「プロダクトを一緒につくる」という共通認識を醸成できたからかなと思っています。

谷本:なるほど。

オープンイノベーションを起こすために必要な変化を語る

谷本:協業のメリットの前に、ぜひみなさんにおうかがいしたいのは、一般論として、日本で数々のオープンイノベーションを起こしていかなければならないという中で、目先の課題みたいなものってたくさんあると思うんです。

例えばよく聞くのは、上の人たちが「それ、儲かるのか?」「いつ結果出せるんだ?」とか言ってきて、本当に短期間でだめになってしまう事例。どういったところに成功のメルクマールを置くのかということもそうですよね。

古田さん、いきます?

古田:鈴木さんがすごく言いたそうな表情してるので、パスします。

鈴木:(笑)。他のプロダクトと同じようにそのサービスを評価されるとつらいところがあります。スピード感、ビジネス規模がスタートアップと一緒にプロダクトをつくると、他のものとは平仄が合ってこない部分がありますからね。

ただ、それは、大企業側が「なぜそれでも取り組むのか?」という理由付けができれば問題ないと思うんですね。うまくは言えないですけれども、もっとやりやすい制度やルールがあるといいのはもちろんなんですが、大企業側がスタートアップのプロセスや考え方みたいなのを、もう少し理解して歩み寄ることだと思います。

谷本:例えば、協業相手と一緒にごはん食べに行ったりすることもあると思うのですが、それを仕事と思う人もいるわけじゃないですか。

もしかして鈴木さんは楽しんでやっているのかもしれないけれど、「嫌々、しょうがないからやってるんだよ」「時間外手当欲しい」という窓口の人もいるかもしれない。つまりは、その協業のためにやっていることを、どのように評価されるかということも重要で、そのあたりは実際どうなんですか? NTTデータのことではなくて、一般論として。

鈴木:僕が休日に古田さんとごはんを食べるのは、仕事のためというよりは、楽しいからというのが強いんですよ。

今やっている仕事の評価がどうこうというよりは、Paykeさんが目指してる姿、古田さんが青写真を描いたことを語るわけですね。夢を語るんです。そこは共感ができて、Paykeの一員ではないんですけれども、企業は違うけれども、Paykeの一員のようなかたちで一緒にサービスを大きくしたいという気持ちですかね。

谷本:ありがとうございます。Ivanさん、お待たせしました。

Ivan:お答えを聞いていて、私もどうしてもコメントしたくて待てなくなりました。申し訳ありません。

NTTデータが、ということではなく、あるいは、スタートアップだからということではなく、やはりグローバルというところもあると思います。大量生産する農業と日本の庭園の違いだとも考えていますこの2つのコンセプトを一緒に共存させるにはどうしたらいいのかと思っています。

スタートアップというのは美しいことを語るわけです。そして、どんどんと変化しながら美しいお花を育てているんですが、これを大量生産していきたいなとなった時に、そのコンセプトへの移行が難しいんですよね。美しい庭を大量生産に移していくための概念が必要です。

最終的なゴールというものは、大企業のみなさん抱いていらっしゃると思うんですね。ですから、日々の業務というところとは少し切り分けて、そこからお金を得るというところとは少し違うところに置いていただけないかなと思います。

谷本:ありがとうございます。

大企業の側が予算化と負担の見通しを立てる

谷本:他にいかがですか? とくに大企業の方の戦略として、スタートアップ側としてこういうふうに変わっていってほしいということがあればぜひぜひ言っていただきたいです。古田さん、お願いします。

古田:そうですね。一緒に組んでやっていく時に、いろんなところでよく聞くんですけど、どうしてもスタートアップとして踏み込みきれない事情をいろんな経営者仲間と話していて聞きますね。スタートアップとしても、すぐにお金にならないんですよ。大企業と違ってリソースが限られていて、本当に1人がマルチタスクをやりながらプロジェクトをやっている中で、お金になんないプロジェクトっていうのは比較的に後回しにされるんですね、スタートアップの中では。

基本的に自社でプロダクトを持って、そのサービスを伸ばしていくというスタンスでスタートアップはやっているので、「ぜんぜん新しいプロダクトを協業でつくっていきましょう。お金になるかどうかはわかりません」というものに関して、踏み込みきれないんですよ。

例えば予算化をしてくれて、「じゃあ、開発が新たに必要になったら、開発費を充てるよ」「じゃあ、PoCでこのぐらい人がかかって、このぐらいコストがかかるから、それをある程度、負担するよ」と、お金が動くかたちをなるべく早期につくれるようにするのが、加速の糸口かなと思っています。

売上になればスタートアップは動くので、そこをなんとかPoC段階、プロトタイプの開発段階で大企業側が潤沢なお金がある中、少しだけでもスタートアップに予算を充ててくれると、非常に動きやすくなるなというのがよく聞くことです。

谷本:高野さんはいかがでしょう? オープンイノベーション推進のために企業として変わらなければいけないんポイント。

高野:古田さんの話であったんですけど、実は大企業も縦割りで、縦で見ていくとリソースもなければお金もないという、実はスタートアップと同じような感じなのかもしれないなというのは話を聞いていて思いました(笑)

オープンイノベーションを進めるためには、やっぱり「人」が重要だと思っています。その人が「オープンイノベーションに取り組みたい」と思うような風土を会社としてつくってあげないと、売上、利益、目の前のことに忙殺されて、イノベーションは二の次、三の次になってしまうかなと思います。

とても難しいことだとは思うんですけど、チャレンジしていることへの評価といったところが正当になってくると、各組織のエースクラスの人たちがどんどん我先にとチャレンジするようになってくるんじゃないかと思います。

谷本:なるほど。いわゆるイントレプレナー、鈴木さんも高野さんもそうですが、起業家の方たちの変態性とか、際立った情熱にきちんと共感できることって大切じゃないですか。

けれど、一方で、それが属人的になってしまうこともある。つまり、「高野さん・鈴木さんだからできたんだよね」ということ。そうではなくて、少なくともお二人ではない大企業の誰もがスタートアップの方にきちんと向き合えるようになるためには、どんな素養が必要なのでしょう? お二人はどうやってそれを身に付けられたんでしょう?

鈴木:僕は「オープンイノベーション」っていうバズワードが気になっていて、Paykeさんと知り合う前から座学というかいろいろニュースで情報収集はしてたんですね。

僕はNTTデータでしか働いたことがないので、ベンチャー企業、スタートアップで働いている人たちが、どういったモチベーションで、どういう考えを持って働いているのかっていうのは、自分で体験することはできない。ただ、そういう前提知識みたいなものが、少しはあったんですよ。

あとは実践と学びですね。Paykeさんとお付き合いをする中で、Paykeさんの考えを理解して、寄り添っていくというか、収集していったっていうのが実際のところです。

谷本:ありがとうございます。

成功へのマイルストーンは密なコミュニケーションと相互理解

谷本:さて、このように成功に向けて動いている2つの事例として協業によって得られたこと。また、成功要因は何だったのか。どのように分析されてるのでしょうか?

古田:得られたことのまず1つは、今回「一緒に協業しましょう」となった時にも、すでに「こういうメリットがお互いある」「Paykeとしてはこういうメリットが生めるし、NTTデータさんとしてはこういうことを提供できるよ」という合意があらかじめ取れていたんですね。

うちとしてはデータベースがあって、プロダクトがあって、あと開発の技術があって、営業チャネルが弱い。「大企業へのパスっていうところをどうやって開拓しよう?」という話をしていました。

ちょうどCAFISは決済の端末なので、小売店さんやリテーラーさんにパイプがあって、うちがタッチできないような大企業さまともパスがつながるような状況でした。「だったら、そこにサービスを流し込んでいけば、ある程度もうニーズはあるんじゃないか」という見立てが立っていたので、そこはスムーズに進みました。弊社でパスがなかった大企業さんへの導入も進んでいるので、そこが得られて大きかったところかなと思います。

谷本:成功の要因というのは、とくにどのあたりだったと思いますか?

古田:成功の要因は、コミュニケーションの話にもなるんですが、頻度高くコミュニケーションを取っていて、1週間に1回は絶対にFace to Faceで会って定例ミーティングをしているんですよ。

スピードのズレをなるべくなくそうという意図もあって、1週間に1回ほど会って、「じゃあ、翌週までにこれをこう進めましょう」となって、どんどん1週間ごとにアップデートをしていく、ということをやっています。

それぐらい頻度を多くして会っていくと、鈴木さんはこっちの事情もわかるし、こっちは鈴木さんの社内調整の事情もわかる。互いにお互いの事情がわかった状態で進められるので、そこはとってもよかったです。

あともう1つは、鈴木さんと僕だけの関係で動いているのではなくて、鈴木さんはPaykeの社員、他の人ともみんな知り合いなんですよ。それぐらいオフィスに足しげく通っているから。うちのメンバーもみんな鈴木さんを知っているという状況の中でやっているので、その分人数もいるし、僕がいない場でも鈴木さんとうちのメンバーでプロジェクトを回せるみたいなのが、1つ成功の要因かなと思います。

谷本:ありがとうございます。では、Ivanさんにおうかがいしたいのですが、コラボレーションから得られたことと、今までうまくいっているところの成功要因は何だと思っていらっしゃいますか?

Ivan:一番大きなマイルストーンとしては、1年前、この車を走らせられるような調達をしようとしていたところでした。拡大して、世界に向けて出ていきたいと思っていたところなので、NTTデータに大きくお手伝いいただきました。

私はスピードが遅くなるとかなりイライラするタイプなんです。その点で、1年間、距離がありました。信頼感をお互いに築いていくところ、人とつながっていくというところ、そして、何がモチベーションになっているのかを確認し合うところは難しかったです。

しかし、その過程で実際の価値として我々が提供できるものが、世界的に適合できるものなのかどうか、NTTデータのみなさん、高野さんと一緒に確認をしていきました。少しずつですが、非常に大きく変化を生んでくれたと思います。

数週間前、日本語を理解できるスタッフをバルセロナで採用いたしました。これは大きく変わっていける要因になるかと思います。日本語での製品レビューもレベルがあがりましたし、より多くの電話会議ができるようになり、製品に対して、もっと深く理解してもらえるようになりました。なぜこれをやっているのか、どうしたらいいのか、高野さんにも自信を持って、我々が構築しているソリューションの独特な個性を理解していただけたと思います。

谷本:ありがとうございます。

これからの仕組みづくりと協業で新規事業をする方へのメッセージ

谷本:さあ、ほとんど時間が残ってないので、最後にいくつか質問を詰め込みます。新規事業ブームが立ち上がっては消えていくということが繰り返されてきたと思うのですが、これからちゃんと長期コミットメントをできるような仕組みをどうやって作るのか。

そして、これからみなさん協業で何をどうやっていきたいのか。さらには、これから協業する、もしくは、新規事業に携わる方へのメッセージ、この3つをお聞きして終わりにしたいと思います。

鈴木:質問が多かったので、一部かいつまんでお話しますが。

谷本:はい、よろしくお願いします。

鈴木:これからやっていきたいのは、しっかりとPaykeにとってどういったかたちでサービスが大きくなるか。NTTデータにとってというより、協業パートナーであるPaykeにとって何がいいのかを重視しながら、一緒に歩みを進めたいというのはこれまでもこれからも変わらないです。

「これからオープンイノベーションをやりたい人に」という話なんですけれども、オープンイノベーションっていうのは単純にアライアンスの1つの形態でしかないと思っているので、もうすでにみなさんやられていることだと思うんですよね。

ただ、「オープンイノベーション」というキーワードだけで見ると、今日せっかく登壇なので調べたのですが、イノベーションリーダーズサミットの実行委員会と経産省が、イノベーティブな大企業ラインキングを今月発表していまして、当社がトップ10に入っていたんですよ。

これ、僕は知らなかったんですけど、改めて考えてみると、周りや上司、それから他事業部の協力が得られる雰囲気はありましたし、オープンイノベーションの活動も積極的にやっているので、この会社はやりたい人がそういうことをやりやすい風土があると思います。もっともっと積極的にやれる人が増えてくればいいのかな、と思っています。

谷本:古田さん、引き続いてお願いします。

古田:今後やっていきたいというところでまず1つ。すでにこのPaykeとNTTデータさんの協業においては、お客さん、クライアントが何社か付いてしまっているというのがあるので、もう後に引けないんですよね。

「やっぱやーめた」は絶対できない状況までもう進んでいるので、あとどれぐらいお客さんに対して、深く刺し込める商材にしていくか、サービスにしていくかというところを、腰を据えてつくっていきたいなと思っています。

ファーストプロダクトのローンチまで急ぎ足で、お互いの持っているものを掛け合わせてつくったものにはなるので、もっと腰を据えてしっかりと開発をゼロイチベースで始めて、ここでしかつくれないサービス、他社は絶対真似できないようなものにして、市場に出していきたいなと思っています。

谷本:ありがとうございます。続いてIvanさん、メッセージいただけますでしょうか?

Ivan:未来に向けてのビジョンですが、我々のソリューションはとてもユニークで、グローバルにも展開できるものだと思っています。すでにこのことは、さまざまな国で今、適用が始まっており、お客さまを介して実証しつつあります。NTTデータのスペイン、南米のグループ会社everisとも協業を進めているところです。もちろん、高野さんのチームの売上にも貢献できますし、Win-Winビジョンを掲げながら、非常に革新的に伸びてきています。いろいろな角度から共に成長できるというのがオープンイノベーションの可能性として魅力的なところじゃないでしょうか。

谷本:ありがとうございます。

自分自身の市場価値をどう高めていくか

谷本:では最後に、高野さんお願いします。

高野:Social Coin社との協業が始まったばかりですが、まずはCitibeatsいう彼らのプロダクトを日本市場にどんどん展開して、デファクトスタンダード化させていきたいです。

併せて、今週、Ivanと「グローバル市場で、どういうことをやっていこうか?」といった前向きな話、例えば、「Citibeatsの次のプロダクトについて、こういうことを考えてるんだけど」という話もしました。どんどんプロダクトを成長させていく、マーケットを広げていくといったところを両社で連携しながら進めていきたいなと考えています。

これからこういう取り組みをやっていく方々になんですが、たぶん苦労すると思います。私も想像していた以上に大変でした。どうしてもイノベーションっていうと不確実なもので、成功するかどうかもわからないですし、社内で評価されるかも正直わからないリスクの大きい取り組みだと思います。

では、何をモチベーションにやっていくかというと、社内で評価されるっていうのももちろん大事ですが、自分自身の市場価値をどう高めていくかに立ち返って、1人のビジネスマンとしてプレゼンスを上げていくのであれば、非常にやって意義のある取り組みかなと考えています。

あとはスタートアップの代表の方にお伝えしたいのが、大きな企業なので、どうしても舵切りが遅くなると思います。ですが、その中にはがんばって舵をきろうとしている人たちもいるので、スタートアップの方達には遠慮せずに、お尻を叩いてどんどん動けってプレッシャーをかけてもらえればと思います。そうすれば、自ずとスピードも増していくかな、と考えています。

谷本:ありがとうございました。まだまだお話おうかがいしていきたいんですけれども、この2つの事例がぜひ日本だけではなくて世界に向けて、さらに未来永劫、このイノベーションとして非常に輝いていただけるような事例になるように応援させていただき、そして、ぜひともどんどんご活躍いただけるような事例になりますように祈念いたしながら、このセッションを締めさせていただきたいと思います。

では改めまして、このみなさんに大きな拍手お送りください。どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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