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CARTIVATOR×リクルートテクノロジーズ・エンジニア特別対談(全4記事)

2018.03.30

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『鉄腕アトム』が根付く国だからこそ 「空飛ぶクルマ」開発に情熱を注ぐ若者たちの挑戦

提供:株式会社リクルートテクノロジーズ

「空飛ぶクルマ」という次代の乗り物を開発するCARTIVATOR(カーティベータ―)とリクルートテクノロジーズのエンジニアの特別対談・第3弾。今回はCARTIVATORたちが2050年までのロードマップ、「空飛ぶクルマ」の安全性の担保にどう苦心しているかを語りました。(撮影協力:TechShop Tokyo)

「空飛ぶクルマ」2020年からの未来

-2020年までのロードマップはお伺いできたので、ここからは“その先の未来”についてお聞きしたいと思います。

中村翼氏(以下、中村):2050年までのロードマップは、まだCARTIVATORの中でそんなに議論を深めているところではないので、私の妄想だと思っていただければと思います。

誰もが空を飛べる時代を目指すなかで、どういうところに使っていくか、どういう技術革新や課題があるのかをお話しできればと思います。

これは仮名称だと思っていただいて、「Aerial mobility service with Intelligence and Resilience」の略称で「concept AIR」と言っています。意味としては、「当たり前に使うもの」です。

平時は普通に飛び交います。車のためのスペースではなくて人々の楽しむスペースで、移動と住む場所をもっと近づけることを考えています。理想的には家のベランダから飛び立てるようなものを考えています。

また、地震などの有事の際にはそれが助けとなるものを考えています。警察や消防、レスキューという機能。地上は交通遮断されてしまっている状態、そのときに空から助けにきてくれる。レスキューヘリなどが大量に連携して飛ぶようなイメージをしています。

しかし、ヘリでそれをやろうとしたら騒音が問題になると思います。やはりヘリコプターは音が大きいので、騒音を減らしていかないといけないです。

また、量産化した際にはプロじゃないパイロットが飛ぶようになるので、基本的には自動運転にしていかないといけない。

そのたくさん増えた乗り物をどう監視して「いつ飛んでいいですよ」とするためには、管制システムも今からアップグレードしないといけない。バッテリーも少なくとも現状の2倍ぐらいの性能が必要です。

風などの外部影響もあります。ビル風がある環境や鳥が飛んでたりなど、旅客機が空の高いところをたくさん飛んでるのとは、少し違う世界になってくると思っています。そういった少し複雑な世界に入ってくることで多くの課題があるかなと思っています。

バーチャルなエアルートの可能性

小玉祥平氏(以下、小玉):例えば、仮に事故が起きた場合にどういう処理をするのか。また、同じところに行きたいけど、順番がぶつかって争いが起きたときにどう解決するのか。そういうことに関してのルール作りもそこに入っているんですか?

中村:そうですね。ルールに関しては、日本はまだ議論が進んでいないんですけど、アメリカやヨーロッパでは議論されています。

例えば1つの例として、バーチャルなエアルートがあります。目的地AからBまで行くときに「ここを通ってください」という、物理的ではない司令を受けるものです。「この間は誰も入っちゃいけませんよ」のような司令が時間的・空間的に現れて消えるなどの案も提唱されています。

大戸一希氏(以下、大戸):2013年の海外でのカンファレンスでもそういったことを言っていました。実際、Bluetoothなどは今、車で音楽をつなげるじゃないですか。あの機能をハックするとハンドルをいじれたりするイメージですかね。

中村:そうですね。

喫緊の課題はセキュリティ

福谷和芳氏(以下、福谷):セキュリティに関しては喫緊の課題だと思います。僕も自動車メーカーでエンジニアをやっていますけれども、やはりすごくリソースを割いて取り組んでいる領域の1つですね。

ご存じだと思いますけど、数年前にある北米の自動車メーカーの車がハックされて、勝手に運転して土手から落とされる事件がWeb記事に上がって有名になっていたんです。国際的な規格でそういう問題が起きている。

あとは欧州で5月ぐらいから個人情報保護法のような、けっこうきつい規則ができましたね。

大戸:GDPR(EU一般データ保護規則)ですか?

福谷:はい。今、シェアリングの話が出ましたけど、どういう人が使ってどこに行くかが、どんどん見えるようになってしまいます。そこに取り組むのは、当たり前にやらないとダメでしょうね。

小玉:確かに、交通法規やインフラ整備以外にも、個人情報の問題は国境・国家と切り離せないですよね。

話がちょっと変わってしまうのですが、やはり空を飛び交うものが急に増えるとなると、既存の都市計画とコンフリクトがあるような気がします。

例えば、道路一つをとっても、その道路を作ったら都市がどう見えるようになるのかというところまでを国交省の方々はずっと議論していると思うので、そのあたりと折り合いをつけるのがすごい大変なんだろうなと思います。

福谷:あると思いますね。そういうのを考えると、すごいおもしろいですよね。

小玉:そうですね。

地球外の都市開発の一助に

福谷:僕も個人的に空を飛ぶモノが好きで、「将来こういう世界が来るだろう」というものに、eVTOLなどの可能性があると思っているんですよね。

eVTOLの話は、今2050年の話になったので、僕も思っていることをいうと、やはり地球外の惑星などで都市を開発するときに、地球から化石燃料を持っていくことは不可能に近いぐらいなんですよね。

なので、eVTOLの可能性がすごいあると思うのは、やはりそういうところです。交通インフラがないところでどうやって活動していくか。例えば火星にコロニーを作る際に、資源がある場所へ行くのに、交通手段などを作らないといけない場合、ソーラーから電気エネルギーを取ってそこで活動するためのインフラを作るんじゃなくて、モビリティを作って活動をするなど、拡張の可能性があります。

都市設計なども、「人がどう活動するか?」を考えながらやっていくべきことなので、すごく先見性のあるプロジェクトになると思うんですね。かなりおもしろいと思うんですよ(笑)。

大戸:そうですね。これがあれば電車やバスは必要なくなりますからね。火星は気流等が地球とは大きく異なりますしね。

中村:あと重力が少ないなど、いろいろメリットはありますね。

大戸:重力は確かに小さいですし、大きなメリットになりそうですね。

中村:大気がないと飛べないですけどね。

大戸:そうですよね。大気の濃度も関係しそうですし、薄いと難しそうですね。

日本でやるからこそ得られるメリット

松原舜也氏(以下、松原):空飛ぶクルマを進めるにあたって、日本でやるからこそ得られるメリットはあるんでしょうか?

福谷:いろいろあると思うんですけど、やはりモノを作るというところだと思います。すごく緻密な設計や、小林くんがやっている制御の部分とかもそうだと思いますし。本当にフィジカルなものを作るというところの力はすごいあると思うんですね。

ファシリテーションとかもそうなんですけど、そういう手を動かせる人がいるのはすごく大きいです。すごく近くにいろいろな得意分野を持っている人たちが集まっているのは、かなりメリットだと思うんですね。海外でもできないとは言わないんですけれど、僕の感覚的にそういう感じがします。

小玉:もしかしたら、技術者以外の人たちという観点でも、日本は技術者ではない、ロボット大好きな人たちがたくさんいる。『鉄腕アトム』を小さい頃から見ていた人たちがたくさんいると思います。そういう目に見えて動くモノを応援する人が外部にかなりいるような気がします。

中村:そうですね。実際、我々もスポンサーさんが今40〜50社ぐらいついていただいています。本当に応援いただいていますね。

低騒音化や耐風性の問題

小林:流体の話になるんですが、低騒音化や耐風性も流体が絡みますので、これからシミュレーションをやっていく必要があると思っています。シミュレーションもしっかりやるとなると時間が大量に必要になるので、そこは機械学習などを使ってもっと効率的なシミュレーション方法ができてくると思います。

大戸:これら(流体力学の)分野は、世界と比較した場合、日本は進んでいるのでしょうか?

福谷:機械学習のアルゴリズムなども、どんどんオープンソースになってきています。「どういうところが一番だ」というものは差が詰まってきていると思います。

設計して作って、テスト結果と設計のロジックを検証して、「なにが正しいんだ」という精度をどんどん上げていかないといけないので、そこをどれだけ早く回せるかが一番だと思うんですよね。

大戸:言葉足らずで申し訳ございません。僕がなぜこの質問をしたのかというと、すごく先進的な取り組みで、一番に実現できると、その後優位的に物事を進めていけるものだと思っています。日本としてもすごくいいかなと思っており、その中でコアとなるテクノロジーの研究や知見が界的に見て日本の位置付けがどの辺りかが気になりました。

中村:そうですね。今はデモフライトショー競争のようになっているので、我々も早く作って2020年の7月に飛ばせれば、そこは日本が遅れをとらずにいけると思うので、なんとか進めたいんですけど、いろいろ大変ですね。

大戸:そうですよね。

小玉:オリンピックに飛ばしたいですよね。これ。

中村:そうなんですよ。

大戸:自国開催で影響力大きいでしょうからね。

小玉:うん。国際社会に示せますからね。

まだインフラがないところでこそ使うべき

松原:また別の質問なんですけど、交通渋滞を緩和するのがたぶん最初の一番大きなゴールになってくると思います。

それをやろうと思った場合、今はほとんどが通勤の移動だと思うんですけど、例えば法律を変える、高速道路を値上げ、リモートワークを普及させて移動しなくてもいいようにするなどの方法があると思います。

緩和するための施策がほかにもあるなかで、やはり空を飛べるクルマだからこそ、それらに先んじているメリットを示せると、今後さらにみんなが「じゃあ空を飛ぶクルマを作ろう」と動きやすくなると思います。

そこの一番大きなメリットはどういうところで今進められているのでしょうか?

中村:いわゆるエアタクシーはおそらくその一つですよね。並行でいろいろなものが動いていくと思います。それこそARでバーチャルミーティングなどができればいいですよね。

ただ、そこで充足しきれない、やはり直接会ってじゃないと伝わらないところを補完していくんだと思います。最終的にも、エアタクシーで全部移動するとは言い切れなくて、いろいろなものが混在している社会になるのかなとは思っています。

この交通渋滞の緩和はゴールじゃない。さっきの福谷さんがおっしゃったように、まだインフラがないところでこそ使うべきものだと思っています。

イーロン・マスクに学ぶ

松原:そこらへんはイーロン・マスクのテスラの普及の仕方がすごいうまかったなと思うんですね。とにかくカッコイイところと、エコに配慮しているのが一種のステータスになるところを上手くついて、高級スポーツカーから入ったのが、新しいものを普及させる上での戦略として「ああ、美しいな」と思いました(笑)。

大戸:うん。資金の集め方がうまい。

松原:そう、「うまいなぁ」って思ったんですよ。

小玉:ハイブランドから入っていますからね。

松原:ハイブランドから入るのは、こういう新しいプロダクトを作る上での鉄則なのかもしれないと思いました。

中村:そうですね。ただ、飛ぶモノに関しては、やはり一番大きな障害になりえるのが、「落ちたときどうする?」とか、そのパブリックアクセプタンスの部分がすごい重要だと思うので。今いきなり普及させたときに、たぶんクレームみたいな話になってしまうので、ある意味、そことどう調和するか。

社会的意義と、デメリットというか、その障壁、心理面などのバランスをいかに取れるかが肝だと思っています。

安全性の担保について

松原:既存の分野も一緒に成長していくのが大事なんだろうなというのはすごく感じています。

中村:そうですね。

松原:それこそ保険だったり。「クラッシュしたときに保険ってあるんだっけ?」みたいのもすごい大きいんだろうなって思います。

中村:私的にはそういう意味では有事で使う。とくに日本や東南アジアなどもそうですけど、どうしても地上じゃダメだというときに、この飛ぶモノで助けるのはすごく社会的に意義があると思います。

一方で、毎日起きる問題ではないので、ある程度音が静かになるとしてもゼロではないところに対する許容度というのが、ここにアプライできるんじゃないかとは1つ仮説として思っています。

大戸:自動車事故よりも少なそうですね。直感で根拠はありませんが。

中村:そうですね。実際、少なくとも自動車よりも安全じゃないとたぶん受け入れられないですし。

-ブレーキとアクセルの踏み間違えでコンビニに突っ込む事件もありますね。

中村:そうですね。

-そういった年配の方向けにどうするべきかという考えはありますか?

中村:そうですね。たぶん自動車より少し操作が難しくなると思いますし、いろいろな対応をしなければいけないという意味であると思うので、やはり実用化には自動運転かなとは思いますよね。

地上の自動運転との比較が生じる

小玉:ただ、2030年時点では、おそらく地上の自動運転との比較になりますよね。そうなると、安全性を示す点では大変なのかなと思います。今の運転ではなくて自動運転との比較になるので、厳しい。

中村:そうですね。そういう意味では、都市部でいきなり導入というのはなかなか難しいかなとは思っているんですね。

福谷:ただ、そういう意味では、やはり自動運転もインフラ側を整備しないといけないという課題はまだ自動車産業的には残っているんですよ。なので、今、自動運転をやっているのも限られた地域などに限定されています。

先進国ではない国のインフラの脆弱性はもちろんですが、自動運転というステージで考えたときには、まだまだ先進国であっても普及していない。

小玉:なるほど。

福谷:逆に先進国だから整備するのに、ものすごい大変な障壁があると思うんですね。

なので、いきなり都市部はやはり難しいかもしれないですけど、交通僻地のような地方で活躍できる可能性はありますよね。例えば、運転ができないお年寄りたちがたくさん住んでいて、診療所に行かないと治療を受けられない、逆にお医者さんが来てくれないと困るような地域。

大戸:これが完成した場合、既存のインフラや自動運転の車もあるけど、eVTOLとの使い分けというのも考えられますね。

中村:はい。そうですね。きっと組み合わせになると思いますね。

大戸:なにかアイデアとかあったりするんですか?

中村:(資料を指して)イメージはこんな感じで、車と飛ぶものがシームレスにつながっているんですけど、最終形は、本当に走ることもできれば、乗り換えなくていいので。

大戸:これ1台で全部可能という。

中村:そうですね。

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