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人工知能時代、商業施設の必勝法(全2記事)

2018.04.12

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「大根を買うついでに車を買ってもらう」AIを活用した商業施設・トレッサ横浜の必勝法

提供:株式会社ABEJA

2018年2月22日、虎ノ門ヒルズフォーラムで、株式会社ABEJA主催による人工知能実用の今がわかるカンファレンス「SIX2018」が開催されました。プログラム「人工知能時代、商業施設の必勝法」では、株式会社パルコ・林直孝氏と株式会社トヨタオートモールクリエイト/トレッサ横浜・栗原郁男氏の2名が登壇。モデレーターを務めるパラレルマーケター・エバンジェリスト小島英揮氏の進行のもと、2社がABEJAを導入した背景とその効果を説明しました。(株式会社ABEJAが提供する「ABEJA Insight for Retail」のサービス詳細はこちら

人工知能時代、商業施設の必勝法

小島英揮氏(以下、小島):みなさん、こんにちは。お足元が悪い中、お越しいただきありがとうございます。

今日のカンファレンスは製造業のお話が多めなのかなと思う方もいらっしゃると思うのですが、実はこういう(小売の)世界もいち早くAIを導入して、いろいろとやっているということを、先行して導入されているお二人のお話を聞きながら進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

今日みなさんにお持ち帰りいただきたいお話はこちらの3つになります。

まず1つ目、商業施設のビジネス拡大上の課題がどこにあるのか。

キーノートでも、まず課題があって、それに対してテクノロジーを使うという話が何度かあったと思うのですが、その課題設定をみなさんと共有させていただき、2つ目として、そこにディープラーニング、AI等を使える可能性を考えたいと思います。

できれば、最後に「自分ゴト化」。みなさんにも実際のビジネスにどう使うのか、ご提案にどう使うのかをぜひ考えていただければと思います。

ちなみに会場にいらっしゃってる方で、「自分はどちらかというと小売や流通の事業に携わってる人間だ」という方はどれぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

小島:そこそこいらっしゃいましたね。じゃあ「小売や流通の方にご提案をしている」という方は?

(会場挙手)

小島:合わせると半分弱ぐらい。なので、アウェイというよりかは、ホームグラウンドの感じで、お話しいただけるのではないかなと思います。

今日ご登壇いただいたお二人は、リブランドされた「ABEJA Insight for Retail」をいち早く導入いただいてますので、どのような経緯で導入されて、どのような課題に対して、どのようにお使いになっているのかご紹介をいただきたいと思います。まず、栗原さまからよろしくお願いいたします。

“究極の衝動買い”は実現できるか

栗原郁男氏(以下、栗原):トレッサ横浜の栗原と申します。よろしくお願いいたします。左側の写真は、トレッサ横浜を航空写真で撮ったものでございます。

トレッサ横浜は全部でお店が220あるショッピングセンターです。トヨタがやっているショッピングセンターですので、このように60台もの新車がショッピングセンターに展示されており、ふだんお買い物をしながら、「車はあまり興味なかったなあ」とか言いながら、つい買ってしまってもらえるところだと思っております。

(会場笑)

栗原:私どもは「究極の衝動買い」と言って、大根を買いに来たついでに車を買ってもらってるというところでございます。

小島:今の、すごくわかります。みなさんも想像できると思うんですけど、家族を連れてディーラーに行くのってけっこう切り出しにくいんですよね。「いらないでしょ」みたいな雰囲気があるんですけど、買い物に行った先にたまたまディーラーがあるのはかなりエスキューズが効くので、実はけっこう行きやすいということがあります。

実際の写真ですけど、お買い物をしていたら、いつの間にかディーラーに入るような構成になってますね。やはり衝動買いを誘引するようなフロア形成というか。

栗原:そうですね。

小島:それで今、この中でABEJAをお使いいただいているんですけど、その前からの課題があるとお聞きしています。これがいただいているスライドです。

栗原:私どもは、車をどうやって購入してもらうかを考えるときに、やはりいろいろなデータ・数字が必要だと思っています。

一番はトレッサ横浜にどれだけ人が来ていただいているかということで、一番左下にある施設来館者。そこからオートモールの前にどのくらい来てもらえているか。そして(店舗展示車に)立ち寄ってもらえるか。そして店舗スタッフが接客した人数。そして商談して、最終的には車をお買い上げいただけるか。

このような数字が必要なのですが、私どもで把握できているのは極端にいうと最初の来館者数と最後の商談数と購入者数しか、明確ではないのです。その間にあるお客様の動きはなかなかわからない。

小島:これでいくと、(新規客 受注の)1個下の黄色いところまではわかるということですね?

栗原:はい。そういうときに、考え方としては、それぞれの段階をどれだけ多くつくるかということなのですが、それを把握するうえで、実は年に一度、たくさんの人を使って、オートモール通行者が何人来ているか、店舗展示車に何人立ち寄ってくれてるか、それでどのような動きをしているかをずっとカウントして。

小島:野鳥の会的な?

栗原:はい、野鳥の会をやっておりました。ただ、手動で行うのはけっこう時間とお金がかかるので、それこそ年に2日、日曜と月曜にしか実施できていないのです。

小島:では決められたときしかできないんですね。

栗原:はい。なので、店舗魅力、VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)の効果や応対力の効果などを推測して店舗運営を行なってきたのです。今回、ABEJAさんのカメラを使って、車にどれだけ来ていただけているか、そして滞留時間、つまり何秒以上その車を見ていただけているかということを、毎日、時間帯ごとに数値で取得できるようになりました。

小島:これまでの手動による人数カウントだと、都度お金もかかったり、人ごとにセンサーが少し違ってブレがあるものが平準化されると。あとは、やりたいときにいつでもできるということで、コストとスピードがすごくいいということですかね。

栗原:はい。VMDも従来は何で評価するかというと、やはりお客さんが来てくれたらと想像しながら、感性評価していたのです。本来はお客さんがどれだけ寄ってくれたかがわかることで、VMDの評価ができるのだと思います。

小島:身内で審査して「これはいいよね」というのは、実はあまり重要ではなくて、お客さんが来て、乗ってみていただいたり、触っていただくことが実は一番なんだけれども、今まではそれが取りにくかったということですよね。

栗原:はい、そうです。

限られた入店数でコンバージョン率をあげるために

小島:実は私は近所に住んでいて、トレッサに何回も寄らせていただいているのですけれども、駐車場完備じゃないですか。

栗原:はい。

小島:逆に言うと、駐車場の数で来店の上限数が決まるような考え方でいいんですか?

栗原:そうですね。とくに土日は。

小島:限界値になりますよね。だから、実は来館者人数はそんなに大きくできないという前提条件であると思っていてよろしいですか?

栗原:はい。

小島:来客人数を大きくすれば売上も上がるはずだったんだけど、そもそもその施設に持って来れる限界がある。なので間の打率というか、コンバージョンをどう上げるかがすごい大事だと。その課題を進めていくときに、数の把握が大事になってくる。それを人力よりは、カメラというかAIのほうがいいだろうということですね。

栗原:そうですね、はい。

小島:それで実際に、これをVMDと言うんですかね? ビジュアルを変えて、並びを変えて、何か数字を見ているみたいなイメージなんですか?

栗原:そうです。これを導入したのが昨年(2017年)10月なのですが、まずは10月から実際にどのくらいの人数が立ち寄ってるかを改めて把握しようということで、共用部にある車が1列目で、お店に入ったのが2列目、3列目という画でございます。

これを見ると、1列目の車の前に1日に890名来られる。それで50名ぐらいが一定時間、滞留してくれたと。ここでは15秒以上の滞在を「見た」と定義しているのですが、これでわかったのは、1列目と2列目は、通行量は1列目のほうが倍ですが、見た数は同じだったんです。

小島:なるほど。

栗原:それで3列目は、逆に一番奥なので、通行量は本当に少ないのですが、逆に言うと、立ち止まって見ている率は1列目、2列目の倍近くあるということです。やはり2列目、3列目のほうが、しっかり見てくれる人がいるということがわかりました。

小島:そうすると2列目、3列目でちゃんと見てくれる人というのは、それなりにコンバージョンしそうだということだと。

栗原:そういうことだと思います。なので、どこにいる人に声をかければいいかがわかるかなと。

VMDの効果をABEJAで可視化した結果

小島:なるほど。例えば、たくさん車を回ってるんだけど、2,3列目まで来てしばし時間をかけている人は、十分お声がけするに値するというお話になるということですか?

栗原:そういうことがあるのだなと改めてわかりました。それで今度は逆に、同じ列にいろんな車を置いたときに、立寄率がどのように違うのかということを11月にやりました。

写真①はキャンピングカーに仕立てた車です、このような見映えのする車は、他のところに比べて倍見る人が多かったと。

小島:一番数が多いということですね。

栗原:こういうことで、VMDはどのようにすればいいのか、あるいは人気の車はどういうものかということがわかりました。

小島:今までは、車を展示するとこうなるはずだということで、あまり検証のないまま売上を見て、「うまくいったよね」とか「いってないよね」という仮説で話をしていたのが、だいぶ数字で裏付けができるようになったということですね。

栗原:「こういうことをしたらこういう人数が来る」という、仮説と実際の数字が検証できるというかたちになります。

小島:では課題があって仮説があったときに、やはり数字がすぐ取れるのは非常に効果があるということですよね。

栗原:はい。それでもう1つ、今回ABEJAさんと話していて、各店舗で車が10台ぐらい入るんですけど、カメラを可動できるようなかたちをお願いして、いろいろとVMDやレイアウトを変えたときにどのように変わるかを、測定していきました。

小島:それはノウハウですよね。普通にカメラで見ると定点観測のイメージがあるんですけど、むしろ環境を変えて、ある一定条件下でちゃんと評価しようということなので。

栗原:はい。

小島:普通にカメラを設置しているより、もう少しインサイトがあるのかなという気がします。とくにビジュアル・マーチャンダイジング、どのように展示をすると効果があるかを数字で証明していくのはすごくよさそうですね。

栗原:12月(の2列目)は、写真②のように、風船できちんとデコレーションして、下に台を置いたことで圧倒的な滞在者数がありました。

小島:なるほど。デコレーションがあるだけで、同じ車でもぜんぜん人の入りが違うということですよね。

栗原:そういうことです。

小島:ありがとうございます。

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