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キントーンを利用した活用事例(全1記事)

2018.02.28

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「お客様の信頼は完全に失墜した」 不祥事発覚を経て、京阪バスのシステム屋が打った起死回生の一手

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が主催する「Cybozu Days 2017 Osaka」のなかで、kintoneによる業務改善プロジェクト成功の秘訣や活用のノウハウを共有する「kintone hive」が行われました。「キントーンを利用した活用事例」というテーマで登壇したのは、京阪バスICT推進部の大久保園明氏。不祥事をきっかけに社内システムの効率化を達成した事例を語りました。

創業90年超、京阪バスの活用事例

大久保園明氏(以下、大久保):京阪バスの大久保と申します。実はkintoneを導入して1年に満たない会社ですけれども、弊社でどのような事柄で利用しているのかを発表させていただきます。

簡単に京阪バスという企業についてご説明させていただきます。(スライドを指して)ここに「京阪」というブランドの名前がついているように、京阪グループの一員です。鉄道や百貨店、ホテルなど、さまざまところでご利用いただいていると思います。本当にいつもありがとうございます。

そのなかのバス会社でございます。(スライドを指して)ここに見えている京都タワー、こちらも京阪グループの一員でございますので、ぜひ京都タワーを見られたときには京阪を思い出していただけたらと思います。

京阪バスは大正11年、京都の伏見桃山で創業しました。それから年月を数えて約95年、今の京阪バスにいたっています。本当に住民のみなさま、さまざまなみなさまのお世話によって成り立っている会社です。

路線バス事業をメインとして、京都、大阪、奈良、滋賀の2府2県で路線バス事業を行っております。また高速バス、定期観光バス、リムジンバス、貸し切りバス、そして不動産事業も行っている会社です。

営業はどんなことをしているのかと言うと、営業距離は年間で2,500万キロ走っております。1日で計算しますと、地球を約1.7周走っている計算になります。

また、お客様の数としては約6,500万人に年間でご利用いただいております。1日で17万7,000人のお客様にご利用いただいている企業でございます。社員数は1,300人、車両数は630両での営業をしております。

バス運転手が業務中に「Pokémon GO」

大久保:私は大久保園明といいます。(スライドを指して)ここにあるように、ちょっと見かけが若く見えるんですけど、2004年入社で13年以上経っているんですけど、ずっとシステム屋1本です。

畳一畳ぐらいのホストコンピュータ時代から、今はさらに最先端のオープン化のサーバまで、その開発や運用に携わっております。私が所属している部署のICT推進部はこういったものです。

ここからは、kintone導入のきっかけです。たいへんお恥ずかしい話ですが、弊社のほうに「運転手が方向指示器を出さずに右折した」というお客様からの問い合わせがございました。事実確認のためにドライブレコーダーを確認したところ、なんと運転手が「Pokémon GO」をしていたことが発覚しました。

ちょうど1年ぐらい前、10月、11月ぐらいの世間を騒がしていた時に弊社としてもこういうことが発覚してしまいまして、全国ニュースで報道され、また、記者会見を行う結果になりました。

この時、「携帯電話の管理を徹底するように」という指示を出したんですけれども、実はそのまた1ヶ月後、次はまたお客様より弊社のほうに「予定の時刻より早く出発した」という問い合わせがありました。

そしてドライブレコーダーを確認したところ、次は子会社の運転手なんですが「Pokémon GO」をしていたことが発覚しました。

この運転手は翌日に懲戒解雇になったんですけれども、やはり全国ニュースで再び登場してしまうといった、今までの95年の会社の中でも失態をこなしてしまったのが去年の現状でございます。

これを機に、携帯電話のバスへの持ち込みは、業務用であろうと個人用であろうと、一切禁止している状況で、再発は防ごうとしています。

信頼回復のための一手

大久保:先ほど1日約17万7,000人のお客様にご利用いただいていると言っていたんですけれども、この時、弊社の中では「そのお客様に対しての信頼は完全に失墜した」とうちの社長から通達が出ています。そして、「信頼を回復するためになにができるのかを各々で考えていくように」というかたちになりました。

私は先ほど言ったように13年間ずっとシステム屋ですので、乗務員のなにかに関して変えることはできないんですけれども、システムを通してなにが変えられるのかを検討した時に思いついたのが今回のシステムです。

これまで、添乗査察システムが弊社にございました。簡単に言うと、本社の人間がバスに乗り込んで、そのバスで運転手の運転を評価する。快適だったのか。また、急スピードを出してなかったか。急停止していなかったのか。

そういったものを評価して、それを紙に書いて本社に提出していました。そしてそれを本社部門が手で集計して、営業所に渡す。営業所が運転手にフィードバックする。そういった仕組みで運用していました。

まさにこれはムダが非常に多い仕組みです。まずは紙で集計して、手で集計、それをエクセルに落とし込む。そういった手作業が1つ入っています。手作業が入ることによってフィードバックまで時間がかかる。この2つのムダが発生していました。

これをなくそうということで、簡単な提案資料ですけれども、2回目のポケモン事件が起こったあとに、社長のところに私が直接「これをやりたい」と出しに行きました。簡単に言えば、オンラインで集計するという仕組みです。それをもとに決定したのがこのシステムです。

査察者によって、バスの中でスマートフォンや携帯電話などによって直接運転手の状態を評価します。そして、それを査察者が登録すれば、すぐに営業所にメールが行き、そして営業所のほうで、その乗務員が営業所に帰ってきたときにすぐにその結果をフィードバックして、適切な指導をする仕組みです。

kintoneを使って2日でスピード構築

大久保:当たり前のようで、当たり前にされていなかった仕組みなんですけれども、普通にシステムをこれを作り上げるならば、システム設計だけでおそらく40〜50万円かかります。プラスアルファ、サーバ維持費ということで月額利用料が非常に高い。通常であれば、そういった仕組みなんですけれども、私たちはこれをkintoneを用いて実装しようと思っておりました。

kintoneとサイボウズさんとの出会いなんですけれども、弊社「サイボウズ Office」を約14〜15年使っておりまして、サイボウズさんから「kintoneという3日で簡単に作れるシステムがあるよ」ということをおまじないのようにずっと言われていました。

そのおまじないを覚えていましたので、それを実現するためにはkintone。そしてサイボウズスタートアップスさんの「フォームクリエイター」という商品、また「kViewer」という関連システムを導入すればすぐに実現できると思っていました。

この3つの商品、1ヶ月のお試し期間がありますので、その1ヶ月のお試し期間を使いまして、私のほうで2日で構築しました。サイボウズさんはよく3日で構築するとか書いてあったので、負けずに「2日で構築してやろう」と思って2日で試してみたら、実際にできたというかたちです。

2日で構築しまして、ちょうどこの1ヶ月のお試し期間が終わるまでに、ユーザー部門でのレビュー、そして役員会でのレビューを行いまして、事件が発覚してから1ヶ月以内にkintoneの導入が決まったというかたちです。それほどスピード感をもって行うことができました。

手作業でのエクセル集計を解消

大久保:(スライドを指して)サンプル画面です。kintone自体はデータベースで、データが入っていくところです。私たちが求めていたのは、Web上から簡単にデータが入れられる仕組みです。こういったWebページを用いて、各自のスマホまたはガラケーなどで乗務員の名前や所属営業所、乗り心地など、さまざまなところをチェックして、そのデータを送信する仕組みです。

データを送信したら、営業所で(スライドを指して)こういった一覧画面でどのような査察結果が出たのかを確認して、これを乗務員にフィードバックしていく仕組みを作っております。これによって、先ほどの問題点となっていた、紙でやっていたら数週間かかるところが本当に数時間でできるシステムをすぐに実装することができました。

また、手作業でのエクセル集計という問題もございました。それをなくしたいと思っておりましたので、サイボウズさんの仕組みでクロス集計が簡単にできます。今まではエクセルでクロス集計を作るの非常に時間かかっていました。しかし、1〜2分でこういったクロス集計をする設定さえしておけば、そのアドレスをクリックすることによって今現在の集計がすぐに出る。それを活用したいと思っております。

この2つの点、フィードバックの素早さ、事務作業の削減というものがkintoneを使うことによってできたと思っております。そうすることによって乗務員へのフィードバックが早くなり、お客様への信頼を回復していくことにつながっていると思います。

アジャイル・モデルの確立

大久保:システム側から見たときのkintoneのメリットなんですけれども、システム屋さんを13年やっておりますので、今まででしたらウォーターフォールモデルといって、要件定義して、設計して、開発して、テストして、実装。この要件定義を間違うとユーザーに対してぜんぜん使い物にならないシステムになってしまう。そういったことが多々ございました。

これはまずいので、今回はkintoneを使いまして、設計、実装、テスト。つまり、試しに作ってみて、ユーザーに渡して感想を聞いて、その感想をもとに改良していく。いわゆるアジャイル・モデルがkintoneによって簡単にできるようになったと思います。そうすることによって使い物にならないシステムとが不要になってくると思います。

またkintoneは定額ですので、アプリを何個作っても一緒の料金です。ですので、そういったところも、逆にアプリをいっぱい作らないともったいないこと、またアプリ1個あたりの役員会などで通すコストの決裁が不要になりますので、そういったメリットもあると思っております。

非効率な紙のアンケートを改善したい

大久保:次に考えているのが、定期観光バスという京都での観光バスを運用しています。今年で89周年となりましたが、まさに体制も古くて、アンケートを取っているんですけれども、いまだに紙でのアンケートをしております。

紙でのアンケートは母数が少ないので、今は全体の4パーセントのお客様しか声を聞けていません。今考えているのは、これをオンライン化することによって、定期観光バスのご利用の15万人のお客様すべてにアンケートをアピールできます。今はアンケートの入力作業で26日間かかっておりまして、これを削減できると思っております。

また、紙アンケートはアンケートの種類に限りがありますので、その上限がオンライン化することでなくせると思っています。オンラインアンケートの仕組みを作ってみたら3時間でできました。

日本語、英語、中国語、多言語化を含めて、簡単なアンケートをkintone、その他のツールを使うことによって実装できております。以上が京阪バスの事例でございます。

システム屋のみにとどまらない活躍

伊佐政隆氏(以下、伊佐):ありがとうございました。

(会場拍手)

ありがとうございます。共有しにくいところまで共有いただいて、本当にありがとうございました。

大久保:お恥ずかしいかぎりでございます。

伊佐:いえいえ。これがユーザー会だということですね。ここでお話ができるのがいいところだと思います。

私、ふだんから大久保さんとお話ししていて、システム屋さんだという印象がずっとなかったんですけど、アンケートのことやお客様のサービス品質のことなどを常に考えて活動されていらっしゃるじゃないですか。それはここ最近で変わったことなんですか? 役割が変わったということなんですか?

大久保:そうですね。今まで、うちの部署というのは、総務部についていたり、いろいろな部署のおまけとして情シス部門がついていたんですけれども、うちの社長の考えで「これからはICTだ」ということで、2年前にICT推進部を立ち上げました。

そこでICTとして企画をたくさんしていくようになりましたので、提案ができるようになって、今まさにシステム屋ではない面を出せるかなと思っております。

伊佐:それでは、このシステム屋ではない2年間があって、その中の新たなチャレンジの1つに、アジャイル型という、ユーザーさんの現場の声を聞きながら作る取り組みも入っていたということなんですね。

アジャイル・モデルが寄与したこと

伊佐:実際やってみていかがでしたか? ご自身がどうだったかということと、現場の方からどんな声が上がってきたのか。両方をお聞きしたいです。

大久保:そうですね、アジャイル型が入る前は本当にストレスが溜まるんですね。

伊佐:例えば?

大久保:みんなで要件を決めても、例えば偉い人の誰かの声で要件が覆る、開発途中までいったのにまた戻る。それで逆にユーザー部門と雰囲気が悪くなりますので。

伊佐:なかなかモノが出てこないのはつらいですよね。

大久保:そうですね。そこがアジャイルにすることによって、もうなくなるのかなと思っています。

伊佐:なるほど。とにかく動くものはユーザー部門が早く触れるようにしてあげる、ということが大事だということですね。

大久保:そうですね。逆にシステム開発以外に提案もしているところで、例えば今の定期観光バスのアンケートなどに関しては、ユーザー部署から言われたのではなくて、うちから私が「これはムダやから、こういうシステムを使えばいいやん」と提案して。でも、その提案をするときには、kintoneで画面まで作って提案できていますので。

伊佐:それはいいですね。ユーザー部門の方わかりやすいですもんね。

大久保:そうなんですよ。理解していただけますので、そういった部分でメリットがありますね。

伊佐:なるほど。ありがとうございました。いろいろお聞きしたいんですけど、時間なので以上にさせてください。ありがとうございました。改めて、大久保さんを大きな拍手でお送りください。ありがとうございました。

大久保:ありがとうございました。

(会場拍手)

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