2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
提供:DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA実行委員会
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これだけはやはり渋谷に宿題として残していこう。あるいは、これから渋谷でなにかやらかす人、渋谷に住もうと思っている人たちに「こういうメッセージを届けたい」など、ぜひお願いできればと思います。
最初にパネリストのお三方、それぞれ多様性社会というある意味ですごく広いキーワードに、どういうふうに仕事や活動を通じて関わっていらっしゃるのかを、それぞれうかがいたいと思います。
最初にLITALICOの長谷川さん、お願いします。
長谷川敦弥氏(以下、長谷川):みなさん、こんにちは。LITALICOの代表、長谷川と申します。簡単に自己紹介とLITALICOの紹介をさせていただくと、岐阜県の出身で、大学生のときに東京に出てきました。そのときに渋谷のNPO法人「ETIC.」さんにお世話になりました。社会起業家を輩出しようというNPOです。そこにお世話になって、それから12年ぐらいです。
LITALICOは障害のある方をずっと支援してきている会社です。12年間ぐらい活動してきて、今、社員数がちょうど1,800人くらいです。今年の3月には、障害者の支援をする会社としては初めて東証一部に上場しました。
梅澤:おめでとうございます。
長谷川:ありがとうございます。私自身のキャリアとしては、創業者ではなくてLITALICOに10年前に新卒で入っています。新卒で入って、翌年の2年目に社長になりました(笑)。というのが、ちょっと変わったキャリアになっています。社長を交代する場面とは、どんな場面だと思いますか? 僕はテレビをよく見て育ったので、社長交代を告げられる場面は料亭だと思っていたんですね(笑)。
(会場笑)
料亭で日本酒を酌み交わしながら、「頼んだ」と言われるんじゃないかと期待してました。新卒2年目のある日曜日に創業者の方から電話がかかってきて、「敦弥くん、大事な話があるからここに来てほしい」と呼ばれました。
その場所なんですが、「(天丼)てんや」って知っていますか? 1杯600円くらいの天丼屋さんですね。そこで創業者の方が先に入っていて、その店で一番安い天丼がすでに注文されていて。
(会場笑)
2人で天丼を食べながら「来月から変わってほしい」という話をされて、9年経ちました。うちの会社はもともと、障害のある方の就職の支援から始めています。今、職業訓練学校が札幌から沖縄まで60ヶ所あって、年間で1,000人くらいの障害者の方が就職しているサービスを展開しています。
大事にしている考え方は、あくまでも障害というものは、人ではなくて社会の側にあること。社会の側が彼らが持っている困難を解決するプロダクトやサービスを作ることができれば、障害をなくすことができる。
わかりやすく言うと、眼鏡やコンタクトレンズがそうですね。そういうプロダクトが社会の側にできたことによって、見る困難が随分軽減されました。
同じように今障害者とされている人は、歩くことに困難がある、働くことに困難がある、コミュニケーションに困難がある。事実として、困難を持っている方はいます。でも、その困難を解決するようなサービスやプロダクトを社会の側に作ることによって、障害のない社会を作るのが、我々が目的としている事業になっています。
長谷川:そういう価値観を大事にしながら、障害のある方の就労支援は、本人たちをエンパワーする一方で企業を変えていくんですね。いわゆる地域の各企業にアプローチをしていって、障害のある方が働けなかった企業から、障害のある方が活躍できる企業に変えていくことを、本人たちにやりながら企業にアプローチしていくのが、うちの会社がやってきたことです。
とくにその中で多いのは、精神障害の方の就職の支援が実は多いです。精神疾患ですが、これまで一番多いのは統合失調症です。その方たちの支援を1万人くらいやってきているんです。統合失調症はいわゆる幻覚が見える、幻聴が聞こえる病気ですね。
僕は統合失調症になったとしても幸せに生きられる社会を作ることを、これまでずっとやってきたんですが、「なんで彼らは統合失調症になったんだろうか」と思いました。
非常に大きな示唆があったのは、「幻覚が見えているときってどんな症状ですか」と聞いたら、「そこに怒ったおばあちゃんが立って、ずっと睨んでいる」と答えました。
「それはちょっと仕事できないよね」「生活もちょっと不安になっちゃうよね」と、大変だなと思うんです。なんで彼らが統合失調症になったんだろうかをインタビューしていくと、その方が言っていたのは、「僕はずっと子どもの頃から、勉強がわかんなかった」。
わからない状態で、日本の教育は学年だけ上がっていくじゃないですか。その中でクラスメイトからもバカにされ続けたし、親からもお兄ちゃんたちと比較して「お前はバカだ」と言われ続けたし、一方、先生からも「バカじゃないのになんでがんばらないんだ」と言われ続けて、ストレスの限界が来て、中学校のときに親を殴った。
高校生のときに親から虐待を受けるようになって、高校生のときに街中を歩いていたら、街中の音が自分の悪口になって聞こえてきたそうです。
彼は今、精神障害者と言われていますが、彼にとって本当の障害は何だったのかと考えると、彼に合った教育が社会の側になかったことが、一番の障害だったんじゃないかなと思ったんですね。
長谷川:精神障害の方を1万人くらい見てきていると、非常にユニークな方、個性的な方が多いです。人間嫌いだけど動物好き、マニアックな趣味があるなど。仮説は、そういうユニークな個性を持つ子どもに合った教育がなかった結果、精神疾患になっている方が多いんじゃないかとわかりました。
これは教育を変えないと、障害はなくすことができないという考えにいたりました。今、「LITALICOジュニア」という教育の事業と「LITALICOワンダー」というプログラミングの教室をやっています。「ユニークな子ども集まれ」というかたちで教育の事業をやった結果、1万人ぐらいのいわゆる発達障害中心のお子さんが集まりました。
もうすごいですよ。動物園状態になっていて、4歳なんだけど宇宙のビックバンを調べている子たちがいます(笑)。僕が直接見ていた子で、ある小学校1年生がいるんですが、顔がおじさんみたいなんですね(笑)。それで「ダイゴくん」と話かけると、「ええ、ええ」と返ってくる(笑)。「どこで覚えたんだ?」みたいな。
(別の子に)「なに勉強したい?」と聞いたら「バッハが死ぬ直前になにを考えていたのか知りたい」ということを研究している子がいたり、ある子はロボットばかり作っていたりするんですね。小学校3年生です。「将来なにしたいの?」と聞いたら、「LITALICOの社員を幸せにしたい」。「ありがとう」みたいな(笑)。
「どうやって幸せにするの?」と聞いたら、「LITALICOの社員はみんな彼女いなさそうだから、彼女の代わりになるロボット作ってあげる」と言うんで(笑)。「熟女にも対応しています」みたいな言う子がいたりします。
とにかくユニークで将来の可能性を感じさせる子がたくさんいるんですけれど、やはり日本の教育は同じような子どもをたくさん作っていこうとしている。小中学校は95パーセントくらい公立ですからね。
こういう教育になっている結果、彼らは学校に行けば行くほど自己肯定感を下げていっている。これがもったいないです。子どもたちは伸びていく方向だって、伸びていくやり方だってペースだって、本来みんなバラバラじゃないですか。
それを「このやり方で同じように学べ。それに付いてこれなかったら、発達に問題がある」と判断するのは、僕は乱暴だと思っています。もっともっと一人ひとりの個性と向き合った教育づくりをしていくことをやっていきたいなと考えています。
梅澤:未来像はだいたいわかってきたので、また後で深掘りをしたいと思います。
梅澤:林千晶さん、多様性社会に関わる活動についてお願いしていいですか?
林千晶氏(以下、林):長谷川さんの話がおもしろくて聞き入ってしまいました。私が多様性社会の取り組みという意味で向かっているのは、「目に見える障害などではないマイノリティの存在とはなんなのか」です。例えば、高齢者に対しての調査と、企業や自治体の巻き込みのプロジェクトをやっています。
高齢者はみんな、年を取りますよね。だからマイノリティではないんですよね。ただ社会システムにおいて、いろいろなところで痛みがあったりハードルがあったり、もっとできるのに「できなくていいです」「役割が終わっています」。
要はできることがあるのに、「やってごらん」「やってほしい」という機会がなかなか生まれていない意味では、もちろん障害を持っている人たちもいますが。
実は、(その問題の)延長線上に「多様な社会でどういう人が輝いたらいいの?」という中に(社会の)全員がなる高齢者ということ自体も含めて向き合ってみたいなと思うと、今長谷川さんが言っていたことは、実は60歳・70歳・80歳になった人たちにもすごくつながっていくものです。
そこをどう社会変革をしていきながら、どんなに年を取ってもその一人ひとりが輝くような仕組みが、どういうことができるのかをやっているのが1つです。具体的にまた後で詳しくお話しできると思います。
もう1つはパナソニックと最近始めたプログラムなんですけれど、「100BANCH」というプロジェクトです。これも変人を集めて、変人が未来を作っています。0から1を作る人が多いんじゃないかと思います。ただ、普通の変人は、社会の中ではけっこう否定されることが多いんですよね。
梅澤:それこそ長谷川さんのところで教育を受けた変人も、きっと引き受けているわけですよね。
林:本当にそうだと思います。「なにに興味があるの?」と聞くと、「昆虫を本気でおいしく食べたいんです」と言う子たちがいますね。「なんで?」となっても、でもそういう子が「100BANCH」のプロジェクトとして採択されていると、彼らの活動の場所にいると、ホワイトボードに虫が足、羽、胴体、頭、目のように分解されていきます。どこをどう料理すると一番おいしくなるかと、世界一おいしい昆虫食を作ろうとしているんですよ。
それで国連の問題に向き合っていく。社会の中でマイノリティとなっている人たちも、もっともっと受け入れていきながら、その違いを未来を作っていく力にどうやって変えていくかなどをやっています。
梅澤:ありがとうございます。では、また後で深く。
梅澤:では澤邊さんお願いします。
澤邊芳明氏(以下、澤邊):僕がマイノリティ側にチェンジしたのは18歳です。バイク事故でこうなったんですね。頸髄という首の4番目の骨を脱臼して神経を痛めて、全身というか手を含めて不随になりました。その後、18歳から21歳までリハビリです。治ると思っていましたので、4つくらい病院を点々としました。
本当にリハビリをがんばったんですけど、「一生懸命やっても治らないことってあるんだ」と理解するのに、やはり2年くらいかかりました。そこで僕は、1つ目のポジティブスイッチというか自分の中で起きたのは、受け入れられなかったので受け入れないと決めたんです。「俺は別に車椅子でも障害者でもないし、たまたま椅子に座ったまま移動している人だ」と本気で思い込めたんですね。
そこから大学に復学して、京都の大学の工学部に6年間通います。そのときに24歳で起業したのがワン・トゥー・テンという会社です。創業してから、今年で20年くらい経っています。今150名くらいで半分以上がエンジニアの会社です。最近だといろいろなコンセプトカーを作っていたり、有名なあまり賢くない白いロボットの中身の大部分を作っていたり、いろいろやっています。
僕は5年前くらいまで、メディアには一切出なかったんです。なぜかと言うと、四肢麻痺で起業した人が珍しかったので、テレビ局などがけっこう取材に来てくれて、出るようになった時期がありました。「努力する人」という状況を作り出すために、苦労していることをまずあぶり出すんですね。
だから、僕はなかったですけれども、極端に言ったら「入浴シーン撮らせてもらっていいですか」のように聞かれました。「企業になんの関係があるんですか?」と思います。そういう落差を作った上で、「ああ、すごいがんばっている人ですね」となるんですけど、僕はそれが本当に嫌でした。業種的にはやはりデザイン会社なので、それは企業のブランディングにはまったく寄与しないです。
僕はテレビに出ないと決めて、5年前くらいまで出ませんでした。でも、自分の中でだいぶ咀嚼できて、ワン・トゥー・テンという企業活動で自信も持てるようになってきました。今であれば表に出ていっても、自分の境遇よりもやってきたことが評価されるのではないかと思いました。ある種、時代が進化して、多様性を受け入れる素地ができてきたのではないかと思って、最近は出ています。
澤邊:私はオリンピック・パラリンピックの組織委員会のアドバイザーもやっています。日本財団パラリピックサポートセンターの顧問もさせていただいています。これは別に自分からなりたいと言ったわけではなくて、広告領域でいろいろ知見を積んできたことを評価いただいて、ぜひお手伝いいただきたいということでやっています。その一環の映像がありますので、ご覧ください。
梅澤:映像お願いします。
(映像が流れる)
澤邊:(映像を指して)これはボッチャというパラリンピックの1競技ですね。昨年のリオで日本代表チームが銀メダルを取った競技ですけれど、重度の脳性麻痺の方向けに開発された競技です。白いジャックボールを投げて、それに青チームと赤いチームが青と赤の球を6球ずつ投げて、最終的にジャックボールに近いチームが勝つという競技です。
これはものすごくゲーム性が高いです。白や青にどう当ててもいいんですよ。そうすると、球の配置によって戦局が大きく変わるんですね。僕、実はリハビリで二十何年前に少しやっていて、すごくおもしろいゲームだという意識がありました。これを我々の持つテクノロジーなどで拡張したら、もっと一般の方に体験会の機会を作れるんじゃないかと思いました。
今インストラクターが不足していますので、体験会もなかなか実施できないんですね。これをバーとか夜の新しいスポーツとして、ビリヤードとかダーツに代わるものとして普及させていくことで、一般の日常の中に浸透させていけるのではないか。
ですので、1つのデザイン活動としてやっています。実際、体験料を取ろうと思っていますので、体験料の10パーセントを日本ボッチャ業界に寄付するスキームを持っています。
あまり大げさに「パラリンピックを応援するんだ」「パラスポーツを応援するんだ」ではなくて、普通に体験していただくことで、自然に支援になっている。そういう活動をしています。
梅澤:もう1つ、「CYBER WHEEL」もこの前にやられているんですよね。
澤邊:そうですね。車椅子型のVRで、400メートルのロードレースのスピードを体験できるものを、「CYBER WHEEL」として1月に発表しました。そして今度の「CYBER BOCCIA」が8月に発表したものですね。
梅澤:はい、ありがとうございます。いろいろな軸で多様性は議論できると思うんですけど、それぞれものすごく深く突っ込んで、活動されています。
次におうかがいしたいのは、「多様性社会」といいますけど、これはそもそもどんなものか、なにがおもしろいのか、なにがすばらしいのか、このイメージをそれぞれお三方から聞きたいです。では林さん、どうですか?
林:ちょうど、このDDSSの一連のプログラムで「高校生と考える多様性」が日曜日にあって、高校生と半日議論していた時に、すごい発見が2つありました。
1人の女の子が不登校で、兄弟4人全員が不登校の経験をしています。それで、学校の先生が何回も話に来るんだけど、彼らは不登校が悪いという前提で、どうやって登校させるかということしか話さない。
「でも私が話たいのは、なぜ登校しなければいけないのかで、不登校が悪い前提がそもそも違っている。そのことにどうやっても気付いてくれない」「だからニュースでも『不登校が問題だ』と言うけれど、学びを私は変えたい」と言っていました。
つまり、まさに長谷川さんが言っていた、障害とか不登校というのは社会が作った結果であって、彼女は学びたくないわけではない。でも「学校の中に痛みがあって、登校したくないという選択肢がある」と言われたのが1個。
もう1人の女の子は、「個性個性と言われる時代ですが、LGBTもある種1つの個性です」「でも私はXジェンダーで、男でも女でもありません」と言っていました。「どっちの感覚もないのに『どっちなんだ?』と個性はなにかと言われることが苦痛です」と言われたんです。多様性を考える時に良かれと思って、考えている前提が浅すぎると、新たな……。
梅澤:新たなマイノリティを作る?
林:新たなマイノリティを作ることであり、マイノリティの逆はマジョリティではなくて、気付いていないことだと常々思っています。だから気付いていたら、そこは変えてあげられます。
気付いていないことがマイノリティを生むという意味で、なにかに(区切る)線があるのではなくて「1人ずつ違うね」ということだけを認識し合う。だから身体に障がいがあるから障がい者、という話ではなくて、人それぞれがものすごくやれることや興味があること、記憶力、物事を理解する力なども人によってぜんぜん違います。
林:例えば、私は事務能力が極端に低いんですよ。今日、(DDSSの会場の明治神宮会館ではなく)明治記念館に行ってしまったんです。そこに着いて、「なんか結婚式やるところみたいだなあ」「なんのロゴも出てないし、ここでいいのかな?」って思って不安になってもう1回スケジュールを見ました。「明治だけ合ってるけどその後違うじゃん」みたいな。というくらいのことが毎日起こります。これは本当にランキングされると……。
梅澤:5段階評価で1みたいなやつですね。
林:という話なんですよね。人それぞれ違うけど得意なこともある。そう成り立っているだけで、そういう時は梅澤さんについていく、そうではないときは「私についておいで」のように、得意なことがみんな違います。
「あなたそこ得意なんだったらお願い」と頼めるけど、違うところでは頼まれるというのが常々いいと思います。だから(価値観を区切る)線があって無理して、多様性どうこうよりは……。
梅澤:ここから先がマイノリティとかではなくて。
林:もうそれぞれ違うだけだから、「澤邊さんがそれを得意だったら、澤邊さんにお願い!」と、要は澤邊さんにさえもどんどん私は頼みたい。頼まれて澤邊さんは、「じゃあ私にはこれだけやっていいよ」と言う。そういう助け合いが自然に起こるためにはなにをやったらいいのかを考えていたりします。
梅澤:長谷川さんは(生徒)一人ひとりにとことん向き合ってその人の強みとか「ポテンシャルはなんだろう?」というところから組み立てる感じなんですか?
長谷川:そうですね。一番大事にしているのは、その人がどうしたいか。だから「強みを活かしたいんだったら、どうぞ」。「弱みだし苦手だけど、やりたい」と言ったら、それも「どうぞ」と言います。
梅澤:ああ、なるほど。
長谷川:一番は意志が大事だなと思いますね。
林:でも、状況的に意志が持てない状況だったらどうします?
長谷川:なにかしらの多様性を活かしていくことだったら、お互いのことを理解したり、その人のタイミングを待つのは、粘り強さと思うんですよね。そんなに簡単にいかないと思うので、1年間ずっと引きこもっていたけど、ある時3年経ったら動くタイミングなど、なにかに誘惑されたり、なにかをやってみようと思えるタイミングを待ちます。
環境側も努力しながら、粘り強く向き合うのが現場でやっていることです。多様性がある社会によくある話で、YouTuberはおもしろいなと思っています。この前もYouTuberのマネージメント会社の社長に会って、「このYouTuberがだいたい600万円ぐらいの年収を稼いでます」と言っていました。ぜんぜん有名ではない、ほぼ知らない人で、動画を一通り見てみたけど、まったくつまらないですよね。ぜんぜんおもしろくないみたいな。
でも、これがおもしろいのは、僕はまったく(動画を)おもしろくないし、100人いたら99人おもしろくないんです。でも、「この動画おもしれー」と思う人がたぶん1人はいるんですよね。
重要なことは、学校の中では「みんなに好かれなさい」みたいなことがあるんですけど、インターネットでぜんぶ繋がっていると、おおむね嫌われてよくて、1人だけめちゃめちゃ好かれれば、それで生きていける。
「こんなふうなんだ」「こうありたい」という動画の自己表現をおもしろいと思う。その人がそんな動画を見ながら生活したい、誰かの自分らしい生き方がマッチングされていくのが、すごく大事なことだと思うんですよね。
さきほどの昆虫の話もマイノリティ系の人が困ることで。この前あるひきこもりの方の支援をしていたら、「馬が好き」と。馬が熱狂的に好きなんですよね。でも、馬が好きという個性が誰かのニーズに変わる場面は、なかなかない地域なんですね。日本中を探したら、たぶん近い学年で馬好きとかなり会いたかったんですよ。馬について語り合いたかった人を探したらいるんですね。
そこのマッチングさえうまくいったら、この人のニーズとこの人の自分らしい生き方がマッチングされて、お互いにハッピーな構造ができるので、誰かの自分らしい生き方と誰かの自分らしい生き方をどう繋げるのかを、たくさん根として増やしていけるかが大事だと思っています。
梅澤:意欲や自分らしい生き方という話が出たんですけど、澤邊さんご自身はなにがモチベーションでなにが自分らしい生き方ですか?
澤邊:きっと澤邊という特殊性を言うなら、さきほど言ったように(障害を)受け入れないと決めたので、マイノリティ意識がないです。だから、障害を意識してないんですよね。障害がある、マイノリティであることは、当事者からしたらすごく面倒くさいんですよ。さきほど言ったようにバイアスでどうしても見られるので、ある種の振る舞いが求められるんですよ。
僕も18歳でいろいろな病院に入って、リハビリ病院などでいろいろな障害を持っている人を見ました。ある特定の悪い組織「893」みたいな。例えばああいう人が車椅子になったとして、途端にいい人になるかというとならないですよね。だけど、周りは障害を持っているから、いい人扱いしちゃうんですよ。
梅澤:なるほど。
澤邊:でも、そういう人はやはり「893」なんですよ。そういうのを目の前で見てて、あまり画一的に見るのは非常に危険だなと思います。今すごく感じるのは、形質的な違いや、例えば人種が違うことや、障害がある・ないなど、そういう部分はテクノロジーの進歩でだいぶ平均化されてきて、バリヤー(注:障壁・防壁)なんですよ。そんなに差はない。
例えば自動翻訳できたり、いい義足ができたりします。医療の進歩でIPS細胞などで、例えば目に障害を持っている人や脳障害の人が治っていくすると、どこまでが障害者でどこまでが健常者かという線引も恐らく曖昧になっていく。
だけど、心情や文化、思考などの意味での多様性は1つあって、これはテクノロジーでバリヤーを除くのではないんです。より強化していって、それを活かしていけばいいと思っています。例えばアーティストはそういう能力をある種、上手くアウトプットできる人たちなので、歴史上人類は活かしてきたわけです。
それが今のところ、事実に組み込まれていないというか、ある作業者のところで、ある一定の作業をやることがあるにしても、もう少し、その能力の発見に何か気づきがあれば、ものすごい活かし方があるかもしれない。活かし方というのは上からで嫌ですけど、でも、何かに手を差し伸べることができるなら、そういうところは何かある気がしますけどね。
DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA実行委員会
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