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渋谷未来デザイン構想(全2記事)

2017.12.26

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ヒントは「場の提供」 社会問題をもイノベーションの原動にする渋谷区の街づくり構想

提供:DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA実行委員会

新しい社会のスタンダードと向き合う都市型サミット「DDSS(DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA) 2017」の中で、セッション「渋谷未来デザイン構想」が行われました。登壇したのは渋谷区長の長谷部健氏と東京大学の小泉秀樹氏。モデレーターはBusiness Insider Japan統括編集長の浜田敬子氏。長谷部区長が「渋谷未来デザイン」を立ち上げた意図とはなにか。また、ダイバーシティが注目される中で渋谷区の在り方をどう考えているのか。行政からの街づくりの仕掛けを語りました。

新しい地域コミュニティが生まれる場所をつくる

浜田敬子氏(以下、浜田):「こうなったらいいな」ということはみんな思っていても、これまでできなかった理由もあるわけです。Entertainment Cityで言えば、長谷部さんが今日は具体的なイメージをお持ちとのことですので、ご説明いただいてもいいですか?

長谷部健氏(以下、長谷部):そうですね。最初のスライドに戻ってもらってもいいですかね。

先ほど小泉先生からも言っていただいたとおりですよね。例えば土曜日や日曜日の決められた時間に、歩行者天国に加えてキッチンカーが出てきたりすることもできると思います。

あとやはり、全部同じようにする必要はなくて、キャッチボールをしていい場所など、ブロックごとにそういうものを整理できれば、まさに新しい地域コミュニティが生まれる場所になる。

例えば、高架橋があり、首都高や高速道路の下などもそうですけども。その下は今、自転車置き場や駐車場、あとは防災倉庫を置いてあるような少しさびしい場所になっているんです。そこが……あっ、このスライドの次ですね。

浜田:この次ですね。スライドがうまく出ないんですね(笑)。

長谷部:ごめんなさい(笑)。

浜田:これで操作できなくて。

長谷部:例えば、(高架橋の下に)洋服屋さんを入れているんですよ。防火の話もあるので、飲食店はなかなか難しいかもしれません。しかし、こういった場所がドーンとできると、新しいファッション文化がその街に根づき始めます。そして、もともと渋谷区はファッションと親和性が高い。

想定しているところはもう少し甲州街道のほうなんですけど。やり方としては、文化服装学院という、世界に誇る日本のファッション大学といったところと連携していく。そうすると、また新しい街づくり、そして新しい街に息吹ができるんじゃないかと考えています。

「地元だからこそわかる視点」が生み出す相乗効果

長谷部:そして、この次に出てくるのが……。

浜田:はい、次のスライドお願いします。

長谷部:これも高架橋と同じ発想なんですけれど。(スライドを指して)これはアメリカのブライアント・パークという講演の絵です。公園でこういう映画の上映会などを夜やっているんですね。

ここの公園で、実際には周りのビルオーナーから固定資産税をうまくここに投資してもらっている。

浜田:なるほど。

長谷部:そして、公共スペースでこうやってイベントをやることで収益をあげている。年間10億から20億ぐらいの幅で収益があがるらしいんですよ。

浜田:へぇ。代々木公園とかでもできそうですね。

ここで別に政府の悪口を言わなくてもいいんですけど、プレミアムフライデーなどをやらなくても、夏にここで映画をやって「気持ちよくビール飲めます」としたら、みんなすぐ帰ると思うんですよね(笑)。

長谷部:だからプレミアムフライデーの時に、表参道や代々木公園がこういう状況になれば、まさにみんなもっと来るようになるしね。

浜田:今、キャッチコピーを決めるよりも、こういう楽しい場をつくると、自然と人が「行ってみたい」となる。ニューヨークだと、セントラルパークで夏にコンサートをやったりしていると、みんなは明るいうちから帰ってビールを飲んでいますよね。

長谷部:そうですね。そして、さらにこうやって公園や公共の場所で収益があげれるようになる。今まで区民税で運営している自治体としては、なかなか商業に投資できなかったんですけど、こういった分野で地元だからこそわかるこという視点で投資できるようになってくると、相乗効果が生まれるんじゃないかなと思って期待しています。

場所ごとの価値をいかに引き出せるか

浜田:小泉さん、なにかありますか?

小泉秀樹氏(以下、小泉):まさにこういった新しい取り組みが渋谷から生まれるといいなと思っていて。それは今までなにかこう……例えば公園でジョギングをするなど、少しくつろぐことができても、みんなが積極的に楽しむ場としての価値があるかどうかになかなか気がつかないでいたのかもしれない。そういう場所の新しい価値をいかに見つけていくのか。

それは公共が持っている公園や道路もそうだし、それだけではなくて、プライベートな企業が持っている1階部分のオープンなスペースをもっと積極的にいろいろな方に使っていただくということもあるかもしれない。

その場所ごとのさまざまな価値をいかに引き出せるのか。それは行政なり、行政に近いところがコーディネーションできるかにかかっているように思います。

浜田:そうですね、コーディネート能力ですね。

長谷部:そこで大切なのは、渋谷区はそれぞれの街によってぜんぜん違うんですよ(笑)。

浜田:はい。

長谷部:広尾も、渋谷も、恵比寿も、原宿も、代々木も、初台も。そうやって挙げていくと、それぞれ街によって特色や特徴があり、そこに合ったマーケティングをしている。そして、そこに合った企業やNPO、自治体と組んでなにかサービスを提供する。

だから、公園も今までは行政がすべて費用を持ってやっていましたけど、もう少し(情報などを)開けば、いろいろな人が関わってもらえる。さらに……なんて言うんだろうな、今まで行政に興味を持っていなかったステークホルダーが集まってくることにも期待できるかなと思っています。

浜田:はい、ありがとうございます。

「アリーナとしての渋谷区」で情報発信していく

浜田:次のキーワードへいきますね。「都市と都市の共創をデザインする、Hub City Shibuya」。長谷部さんはよく、ニューヨーク、パリ、ロンドン、渋谷とおっしゃって……。

長谷部:ロンドン、パリ、ニューヨーク、渋谷区。

浜田:失礼しました(笑)。

(会場笑)

順番に意味はあるんですか?

長谷部:あります。ニューヨーク、渋谷区というのは、韻を踏んでいるだけなんですけど(笑)。

浜田:(笑)。

長谷部:ちょっとしたヒップホップと思っていて……すいません(笑)。

浜田:はい(笑)。ということをおっしゃっていますけど、都市と都市の共創について、小泉さんはどんなイメージと思えばいいんでしょう?

小泉:「渋谷を中心に考える」ということですかね? それで考えれば、渋谷はある種、世界中の人が注目するような魅力的な場所なんです。

渋谷区全体がある種のアリーナみたいなものなんです。そこにいろいろな人が観客席にいて、注目されるような場所だと思うんですよ。だから、世界のアリーナとして渋谷区の可能性を地方都市と連携しながら活用することがあるのかなと思う。

例えば、地方都市には地方都市なりのさまざまな資源や魅力的な文化がありますよね。そういうものを「アリーナとしての渋谷区」でさまざまなかたちで情報発信していただく。また、そのお手伝いも渋谷区がやるWin-Winのかたちで、世界に日本のさまざまな価値を情報発信していく。そんな取り組みがあるのかなと思っています。

浜田:なるほど。そういう意味で、ともに発信していく。

小泉:そうですね。

浜田:日本の地域というか、地方と都市が一緒になって発信していく。

小泉:そうですね。発信することによって、海外のさまざまなファクターがまたそこに協力してくれるとか、他の自治体の方が取り組みに協力するような。まさに共創する、ともにつくるような取り組みが期待できるかもしれないですよね。

渋谷区のシティブランドとしての芽は出てきている

浜田:私、最初に「ロンドン、パリ、ニューヨーク、渋谷区」と聞いた時に、「長谷部さん、でかく出たな」と思いましたよ。

長谷部:(笑)。

浜田:「東京じゃなくて渋谷区かい」と思いましたけど、そんなに自信があるんですか?

長谷部:まあ、あるんですよね。「大きな都市になろう」と宣言するよりいい。実は先ほどのメッセージの裏には「成熟した国際都市を目指したい」というイメージが隠されているんですよ。

それはどういうことかというと、ひと言で言うのはなかなか難しいんですけど。渋谷はあえて言うならば、シティプライドがたくさん集まった街だと思うんです。ロンドンも「ロンドンっ子」という言葉があったり、ニューヨーカー、ビッグ・アップル、パリジェンヌなど、その街を愛する人たちの呼称が自然発生的に昔から生まれている。

それは決して住民だけの言葉じゃなくて、その街で活躍している人や、そこに思い入れを持っている人たちをそう表現するんです。渋谷人か渋谷民かはわからないですけど。

浜田:シブヤーとか(笑)。

長谷部:シブヤーとかね。そういうものが出てくるようになることを目指したい。そういった意味で、大きな都市を比較で使わせていただく。当然、すでに勝っている部分もあるんですよ。安全・安心、治安の部分などでは、そういう心配はこの街には当然ないですし。その長所をしっかりと活かしながらやっていく。

そして今言ったシティプライドなどは少し足りていない、けれど芽だけは出てきてる。このイノベーションやクリエイティブの世界、エンターテインメントのところを伸ばしていけば、本当に(世界と)肩を並べられるようになるんじゃないかと思っています。

浜田:ゴールは大きく設定したほうがいいということが、イノベーションのコツなので。

渋谷は、都市と都市を結ぶハブになる

長谷部:もう少しだけ言わせていただくと、区長になってからこれはとくに強く感じるんですけど。僕はいろいろな海外の都市の方と交流することがあったり、うかがったりすることもあるんですけど。海外へ行った時に「どこから来たの?」と聞かれたら、「東京」と言わずに「渋谷から来たんだ、日本の」と言うと、相手は知っているんですよね。

浜田:あ、そうですか。

長谷部:「I know」、ときには「I've been there before(行ったことあるよ)」と言ってくれて。そういう意味ではやはり渋谷は今得しているんですよね。

海外で「東京の映像」というと、スクランブル交差点が出てくるおかげもあるんです。そこを活かしていきたい。そそこにはいろいろな都市とつながれる、海外の都市とつながれるチャンスがある。

これは国内でも同様ですね。いろいろな地方の市長さんがごあいさつに来てくださるんです。「申しわけないな」と思うぐらい、東京に来た時に渋谷へ立ち寄ってくださるんです。「渋谷の今の活動に注目してるんだ」「防災協定を結びたい」など、やはりいろいろなことがあるので。

都市と都市を、むしろ地方都市と渋谷が結ぶことによって、海外に発信することもできると思います。もっと小さいことを言えば、地方都市と一緒になって、渋谷でお土産をつくるなど、そういった新しいことにもチャレンジができるんじゃないか。

渋谷は、原材料などがなかなかないですからね。そういった場合、(地方都市と手を)組んで渋谷で加工する。そういうふうにやっていくと、これだけ観光客が世界中から来ている街ですから、ビジネスになると言いますか、そういった分野もあるんじゃないかな、と。

そういった意味で、渋谷は都市と都市を結ぶハブになるチャンスもあるし、できるんじゃないかと思っているところです。

社会問題を解決しながら新しい価値をつくる

浜田:さて、次のキーワードです。たくさんキーワードがありますけども、次は「『課題解決』から『可能性創造』へ、Inclusive City Shibuya」です。少しわかりにくいので、私なりにこんなことかなと思ったんですけど……。

私は長谷部さんが区長になってから「けっこう渋谷区っていろいろなことやっているな」という印象があるんですね。

単に理想だけを追うだけじゃなくて、行政の仕事は目の前にある行政課題や住民課題を解決していくことも非常に大切だと思っているんです。その解決の仕方が今までの守りの解決の仕方じゃなくて、少し攻めている。

中でも将来につながるような価値。例えば、私がおもしろいなと思ったのは、子どもの居場所を作られていたりしていますよね。ああいうものも今、非常に大事な問題なんだけども、それによって新しい家族の形や、子どもの新しい居場所みたいなことで価値をつくっていく。社会問題を解決しながら新しい価値をつくっているところが、とっても今っぽいなと思ったんです。

そういうことが「『課題解決』から『可能性創造』へ」なのかなと、私なりに解釈しています。それをやるためには、先ほどからも指摘しているように、(行政以外の)いろいろな人が混ざっているなど、行政だけではできないことを他も巻き込んでいらっしゃると思います。

先に小泉さんにおうかがいしたいのは、いろいろな人を巻き込む……クロスセクターとも言われますけども、たぶん小泉さんも今その中の1人として、渋谷区の街づくりに関わっていらっしゃいます。実際にクロスセクターをやってこられてどうですか? 渋谷は混ざりつつあって、うまくいってると思いますか?

小泉:難しい質問ですけれども(笑)。まだクロスセクターで……渋谷区はもうすでにクロスセクターとして町場での交流がすごくあって、そこからおもしろいことがたくさん生まれてきていると思うんですね。たぶんクロスセクターの中で、行政がどうそこに関わるのかが、けっこう難しい問いかもしれないですね。

例えば、さまざまなハンディキャップの人の社会参加みたいなもの。あとは相対的に貧困な方々の社会での活躍みたいなことを考えた時に、おっしゃられたような従来的なやり方ではなくて、もっと大きな流れみたいなものをつくっていく。その中で本当にいろいろな方が生き生きと活躍できるような、新しいサービスややり方を考えていくことが求められていると思うんですね。

それを民間ベースのいろいろな試みでおもしろいことも出てくるんだけれども、社会課題をベースにしながら考えると、先ほど話したような地域の声をいかにちゃんと聞くのかですね。

浜田:そうですね。

小泉:それから、行政が考えているさまざまな課題を、どうやっていろいろな方にうまくお伝えし、一緒に課題解決をしてもらえるか。そういうことはなかなかうまくやらないと、生まれてこない。それは実感として持っています。

今までの通り、行政の職員の方だけでそれをやるのはなかなか難しい。だからこそ今回のような新しい取り組みを通じて動かしていく。その中で、行政だけではできないところを、少し行政の外に出た主体が一緒になってやっていくかたちで進めていくことが必要なのかなと思っています。

クロスセクターの核となる渋谷未来デザイン

浜田:今回のこのサミットではダイバーシティ、インクルージョンというキーワードもありますけど、「混ざる」「混ぜる」ということだと思うんですね。

いろいろな方が登壇されて、その場で会った人たちでいろいろな情報交換もあるし、新しいアイデアも生まれるかもしれない。来た方たちもたぶんネットワークされていって、「混ざる」ということだと思うんですけども。

とくに長谷部さんの役割は、その「混ぜる」「混ざる」役割ですよね?

長谷部:はい。このクロスセクターで言うと、僕自身のこれまでの経歴では、研究機関以外はほとんど経験しているんですよね。企業にもいたことあるし、今は行政の立場であり、もちろん地域の住民であり市民であり。そして、とくにNPOも長くやっています。

そう考えると、表には出ていないけど、クロスセクターとしてはもうすでにいろいろなものが解決できているんですよ。ただ、その結果として行政だけ注目されてしまうところがあります。

例えば、この保育の問題にしてもそうですね。今、すべて保育所が足りないのは行政のせいっぽく言われています。しかし、これは行政だけでは解決できない。多くの企業がまず2年間ちゃんと休めるようにしてくれたり、あとは行政の手の届かないところでNPOや市民の方々が幼児保育などのサポートをしてくれたり。

でも、実際にそういうことが起きているんでよね。それが表に出てきていない。だから、それをこれからPRしていくことも重要だと思っています。すでにいくつか成功事例がある。だから今度はもっと大きなムーブメントをクロスセクターでつくっていくことが重要なことかなと思いますね。

浜田:まさにクロスセクターの核となり、渋谷未来デザインをつくられるわけですね。

長谷部:そうです。

アイデアを創発していく組織

浜田:少しその説明をしていただく前にですね、ちょっと映像があるので、そちらを観ていただいてもよろしいでしょうか。

(映像スタート)

ナレーション:渋谷から始まる、未来の「都市」の可能性と、私たちが実現したい「夢」。世界中の都市がこれから経験する、未来のテストケースと向き合い、さまざまな人や企業とともに社会実験に取り組む。

そして、渋谷の未来、世界の未来を生み出していく。「ちがいをちからに変える街。渋谷区」から、未来をつくる新しいチームがスタートします。渋谷未来デザイン。

(映像終了)

浜田:ありがとうございます。この渋谷未来デザインは来年4月に設立と聞いてるんですけども、少しおうかがいしてもよろしいでしょうか?

長谷部:はい。今出てきたように、社会課題が当然たくさんあり、行政だけでなかなか解決できないものもあります。さらに言うと、スピード感が求められているものもたくさんあるはずなんですよね。

例えば、企業であれば自分たちのビジネスの中で、もしくはそこで学んできたもので、チャレンジしたいことがあるはずなんです。しかし、行政のリソースをうまく活用できない。規制があるなど、二の足を踏んでいることがあったりすると思うんです。

そういったことをスピード感を持って実現していくために、オープンにして、フューチャーセッション形式で課題を抽出していく。そして、そこに関わっている企業と、「あ、これだったらうちですぐやります」「こういったサポートします」などの声をあげやすくして、企業同士で混じり合っていただく。

例えば、鉄道の運営など電鉄をやっている会社とIT系の会社で混じり合って、新しいサービスを行政とともに生み出すなどですね。そういったクロスセクターも踏まえて、アイデアを創発していく組織を今考えています。

浜田:まさに場づくりですね。

長谷部:場づくりですね。

渋谷区のサウンドマップづくりを坂本龍一氏が提案

浜田:小泉さんも参加されますけれども、どんなことを期待してらっしゃいますか?

小泉:そうですね。これまで議論してきた、例えば、新しい社会課題の解決や、さまざまな公共的空間をもっと意味のあるものにしようなど、そういうものは行政単独ではなかなかできないですよね。

話の繰り返しになりますけど、行政や、行政に近い主体の役割としていろいろなセクターの人たちとの協働、共創をどううまくつくりあげるのか。そこが問われていると思うんですよね。

そこを専門的に考える部署や組織がないといけない。そうでないと、目に見えたかたちでの共創や取り組みは、うまく登場しないのかなと思っています。

今回、渋谷未来デザイン会議ができることによって、そういったある種の共創の仕組みづくりや場を一つひとつつくることも大事なんですよ。場を生み出すための、ベーシックな取り組みですよね。仕組みの部分ですね。

実際に渋谷の中で、今までの日本にはまったくないようなかたちでつくりあげる。そういうところをぜひ目指していければいいんじゃないかな、と思っていますけどね。

浜田:はい。私もちょっと参加させていただくので、ワクワクします。

ここでもう1人、先ほど伊藤穣一さんからもメッセージをいただきましたが、もう1人、渋谷区に向けてメッセージをいただいております。そちらをご覧いただけますでしょうか。

(映像スタート)

坂本龍一氏(以下、坂本):坂本龍一です。渋谷というと、渋谷駅周辺のことがどうしても頭に浮かんでしまうんですけど、正直言ってうるさいんですよね。僕はあんまり、実は好きじゃないんですよ、うるさいところが。

だからというわけじゃないんですけど、渋谷区の音の風景、サウンドマップといいますか、サウンドスケープをつくったらどうかなと勝手に思っていまして。もう2年ぐらい前から思っています。友達と話し合っていて、仮のアプリとかね、地図なんかも、「こういう地図ができたらいいんじゃないかな」と勝手に考えていました。

そうしたらこのダイバーシティの話があって、ぜひサウンドマップづくり、そして「渋谷区のどういうところにはどういう、どのくらいの騒音があって、ここはどのくらい静かだよ」など、そういう音のマップをつくっていく。その後に「じゃあ、渋谷区としてどういう音環境だったら、みんなは幸せに暮らしていけるのか?」を考えるきっかけになってくれればなと思っているんです。

ぜひこのプロジェクトを、無理矢理、押しかけなんですけど(笑)。採用してほしいなと思っているんです。よろしくお願いします。

(映像終了)

さまざまな提案があり、イノベーションが起きる

浜田:サウンドマップというような発想は、私たちからは出てこないですよね(笑)。

長谷部:まあ、すぐ「採用です」と言っちゃいそうですけど(笑)。今、坂本さんの言っていることも、本当に区の抱えている課題です。本当に今、宣伝カーみたいなものがすごく走っていてうるさかったりします。その中で防災のことを考えた時に、肝心なサイレン音があまり聞こえないことがあったり、いろいろあると思うんです。

坂本さんが今、渋谷区中のいろいろな場所の音を録っていて。

浜田:あ、もう実際に録ってらっしゃるんですか?

長谷部:録ってます、集めています。

浜田:へぇ。

長谷部:そして研究しているんです。それを今度、渋谷未来デザインと組んで進めていきます。渋谷未来デザインはこれからもいろいろなパートナーがもっと増えると思うんですけども、そういった企業の知見と合わせていく。

ある程度の現状がわかれば、「こういう規制をしていったらいいんじゃないか」「こうすることによって、住宅街の安全が守られるんじゃないか」などが出てくる。そういったものを区議会などで区として提案して、また一緒に話し合っていくきっかけにもなると思うんですね。

浜田:なるほど。

長谷部:非常におもしろいご提案をいただいたな、と。

浜田:小泉さんは今のご提案はどうですか? 坂本さんの動画をご覧になって……。

小泉:すばらしい提案だと思うんですけれど。(こういった提案を)我々は発議と言っています。多様な発議があって初めてイノベーティブになるし、多様性も実現できるんですよね。だから渋谷は、いろいろな考えを代弁して発信できる方が多様にいますよね。

だから、先ほどのクロスセクションのリーダーの話がありましたけど、そういう方々が活躍できるような機会がある。坂本さんみたいなかたちでどんどん提案していただいて、それを前向きに実現していくことがこれからできると、本当に楽しいなと思っていますね。

対立を調和に変えていく新たな解決策

浜田:そうですね。一方で、騒音やイヤな音は規制してほしいけれども、渋谷はけっこう路上で演奏してるアーティストが駅などにはたくさんいます。

長谷部:いいですよね。

浜田:でも、あれも警察といたちごっこだと聞いてびっくりして「そうなんだ、ダメなんだ」と思ったんですけど。むしろ新しいことにチャレンジして、ここからスターが生まれる街みたいになるほうが渋谷の価値としてはEntertainment Cityだし、Creative Cityですよね。そのへんをうまくできればおもしろいものと……。

長谷部:そう。禁止するだけじゃない。例えば今の話にあった「演奏している人たち」がいたとしたら、その人たちの要素として「街の役に立つ」が追加されればいい。AEDを使用できる免許を持っている、緊急時に役立つなど、新しい街にとってのメリットが出てくればいいと思うんです。

先ほどの坂本さんも動画で言っていましたけれど、「じゃあ、ビジョンの音はこれぐらい絞るけれど、こういう生の音楽の演奏は、アンプ使わずにやっていいよ」など、いろいろなことが考えられると思いますね。

小泉:まさに共創というかね。だから、いたずらにやってしまうと反感を買うかもしれないけれども、プロフェッショナルの人の知識ややり方をうまく取り入れながらやることで、一見対立しているようなことがうまく調和するようなやり方が見つかるんじゃないか。それがこのプロジェクトのミソだと思うんですよね。

そういうかたちで新しい解決の仕方など、思いつかないようなやり方をぜひこの音楽とともにやっていきたいですね。

浜田:そうですね。例えば、渋谷の路上で演奏してた人たちが渋谷からデビューしたとなると、先ほどのシティプライドは絶対に持つと思うんですよね。

長谷部:そうですよね。

浜田:渋谷の街からスターが生まれるようになれば、やはりスターになりたい子たちが渋谷に集まります。

長谷部:集まってくるし、スターになった人を支援するファンドでもつくられるなどのシステムが回ったりすることがあると思うんですよ。

小泉:もともと渋谷にはライブハウスがあったり、楽器屋があったりします。

浜田:そうなんですよ、レコード店もあったところです。

小泉:そこでアーティストの卵がバイトしながらプロの演奏を観たりして、プロになっていく文化だったり、場だったりしたわけですよね。

長谷部:今はダンサーなどが増えてきてます。そういったジャンルがありますね。

一昔前の「不良イメージ」だったものがメジャーになりつつある

浜田:そうですよね。ホールがつくられているとおっしゃったんですけど、渋谷は地下がすごく広いので。なんらかの条件は必要だと思うんですけど、その一部がガラス張りになって、ストリートダンサーの子が練習できるような場所になったら……。

今、例えば、桜ヶ丘のビルのところなどではみんな練習していますよね。

長谷部:そうですね、やっていますよね。

浜田:あとは東大などでも、みんなあそこで練習しているんです。そういう子たちが路上でパフォーマンスができる。それこそ竹の子族は、そこから始まっていたわけですよね。

長谷部:そうですね。しかもダンサーの子など、もうあまり不良じゃないというか(笑)。

浜田:そうですよ。今はダンスが授業に入ってますからね(笑)。

長谷部:そうなんですよ。でも、ダンサーは昔「不良だ」と言われていた。もっと前は、バンドをやっていたら「不良だ」と言われてたり。スケボーやサーフィンあたりも不良でしたよね。でも、それもオリンピック種目になったりしています。今、eゲームだってすごく変わってきていますよね。

浜田:そうですね。

長谷部:そういった偏見を持って追いやるんじゃなくて、しっかりと取り入れてメジャーにしていく。そうすることでいい文化になっていくことはあると思うんです。それを生み出し続ける街が、渋谷の価値ですし。

坂本さんも「あまり好きじゃない渋谷」と言いながら、こうやって提案をしてくれるような街だと思うんですね(笑)。渋谷の惹きつける力と言いますか、そこは最大限に活用しないといけない。それが僕らに求められていることなのかなと思っています。

浜田:あれだけ黙っていても、ハロウィンとかすごいことになっていて(笑)。

長谷部:あれはあれで大変なんですけどね(笑)。むしろ「どうやったら禁止にできるんだろう?」と最初に思ったんですけど、その術が浮かばないですね(笑)。

浜田:もう渋谷でハロウィンをやることは風物詩になってしまって。逆に言えば、渋谷っ子が増えることで、「ゴミのポイ捨てはやめよう」「ゴミをみんなで持ち帰ろう」という動きに。

長谷部:今は、そうですね。

渋谷らしいポジティブな解決策に変えていく

浜田:ハロウィンのゴミ拾いでは、長谷部さんがもともとやっていらっしゃったグリーンバードのような動きが出てくる可能性もあります。

長谷部:次は、来ている人たちにもう少しモラルを持ってもらって、ゴミを捨てない、持ち帰るところまでいけるといい。朝の掃除の準備はもうボランティアの方が来ているので、その負担をなるべく減らしてあげることができるといいかなと思いますけどね。

浜田:渋谷に住んでいようが、働いていようが、遊びにこようが、自分たちの街というふうにみんなに思ってもらわないといけない。でないと、自分事としてなかなか考えてもらえないということがありますよね。

長谷部:そう思います。

浜田:そういう人を1人でも増やしていくことが、この渋谷未来デザインのその先につながるのかなと思います。

長谷部:そうですね。先ほど話しましたけど、今年4月にスタートした時、坂本さんの提案もそうですし、渋谷区周辺のクリエイティブ・エンターテイメント特区として公園や道路をうまく使う話、ほかにも民泊を問い入れる話など、いろいろな要素が混じってくれて、渋谷らしいポジティブな解決策が浮かぶんじゃないかというところにいます。

まだなんとなくもやっとしていますが、いろいろな人と話し合うことでお互いに創発して、社会課題をポジティブに解決していくことにつながるといいなと思っています。

異なる価値にはクリエイティブな解がある

浜田:はい、ありがとうございます。小泉さんも、最後にちょっと一言。

小泉:もう今の区長のお話がすべてかなと思います。本当に多様な主体の連携をすることで、創造的問題解決は我々の言い方では言うんですけれど、異なる価値が対立してるように見えるんだけれども、実はあるクリエイティブな解がある。両方の価値を包含するようなやり方が見つかると思うんですね。

そのためには、本当にいろいろな人がいないとダメなんですよ。多様なアイデアがあって初めて創造的問題解決が生まれる。だからこそいろいろな人に参加してもらいたいし、関心を持って一緒に取り組んでほしいですよね。

我々だけではない、本当に「渋谷民」と言われる、企業、地域で活躍しているNPOの人、それから本当に地場の自治会の方など、そういういろいろな人たちの力をうまく結集する。そして、新しいクリエイティブな創造的解決を引き起こしていきたいなと思っています。

浜田:はい、ありがとうございました。みなさん、長時間にわたりご清聴ありがとうございます。今一度、長谷部さんと小泉さんに、大きな拍手をよろしくお願いいたします。

長谷部&小泉:ありがとうございました。

(会場拍手)

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