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SHARE and JAPAN. 日本経済を牽引するシェアサービスの次なる展望(全2記事)

2017.11.30

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所有することに意味はあるのか? 「シェアが当たり前」の時代、toCサービスのあるべき姿

提供:一般社団法人シェアリングエコノミー協会

世界中のキーパーソンを一堂に集めた国内唯一のシェアカンファレンス「SHARE SUMMIT2017」が11月8日、9日に開催。昨年に続き2度目の開催となった今回のテーマは「SHARE or DIE」。まちの生き残りを賭けた“シェア”という都市戦略について、各ジャンルの第一人者が一堂に会し、講演を行いました。セッション「SHARE and JAPAN. 日本経済を牽引するシェアサービスの次なる展望」では、日本を代表するシェアサービス事業者3社が登壇。日本におけるシェアリングエコノミーの現状や海外との違いなどについて語りました。

エルメス、シャネル、ヴィトンが借り放題

南章行氏(以下、南):みなさん、こんにちは。シェアリングエコノミー協会の理事をしております、株式会社ココナラ代表の南章行と申します。本日はよろしくお願いいたします。

今回のセッションは、「日本経済を牽引するシェアサービスの次なる展望」というテーマです。日本経済を牽引すると言われると、我々事業者サイドはドキドキしてしまうんですけれども。

今日1日、パネルディスカッションはかなり多く入っております。海外の方もいろいろいらっしゃって、かなり多岐に渡るんですが、シェアリングエコノミーというといろいろな側面があります。とくに今日、明日も含めて、例えば地方の課題をいかに解決するか、などですね。社会貢献としてのシェアリングエコノミーのようなかたち。社会課題を解決するシェアという側面も、けっこう多く語れるかなと思っております。

このセッションは、「日本経済を牽引する」と言っていただいておりますので、社会に対してどう課題を解決していくかということを、もう少し経済的な側面から。シンプルにシェアリングサービス、シェアリング事業が何に着目してどういう背景でどう立ち上がってきたかという事業サイドの話を中心に話をしていけたらおもしろんじゃないかと思っています。そんな感じで進めていければと思います。

では、まず最初に各事業者からどんなビジネスをやっているかということを簡単にプレゼンでご説明申し上げたいと思います。まず最初に、ラクサス・テクノロジーズの児玉さんからお願いしたいと思います。

児玉昇司氏(以下、児玉):ではさっそくプレゼンしてまいります。

ラクサスは、ブランドバッグのシェアリングエコノミーです。エルメス、シャネル、ヴィトンなどが無限に借り放題ということになります。

特徴がありまして、1つ目が6,800円の定額サービス。毎月、月々6,800円払っていただくと平均30万円のかばんが使い放題ということですね。在庫は2万種類以上なので、月に新しいかばんに交換していったとしても、1,600年以上は使えるので、一生分の在庫がありますよ、ということですね。

あとは、個数無制限、無期限です。月々にお金を払ってもらうので、継続率が重要なんですが、6,800円払い続けてくれる継続率が91.6パーセントです。シェアの金額の累計なんですが、2年と3ヶ月で100億円を突破して、足元を150億円オーバーして推移しています。

マンハッタンで事前登録開始したんですが、1週間で2,000万円以上の実収がありました。これは日本の3倍以上なので、世界に出ていきたいなと考えています。ラクサスは貸したり借りたりができるというところで、ユーザーがバッグを預けてもらって、それを貸し出して料金といっしょにキャッシュバックするというモデルです。

(動画が流れる)

児玉:10万円のかばんが、8か月で6万円の収入ということなので、年利が90パーセントっていう(笑)。

(一同笑)

すごい稼いでるかばんなんですよね。最近ラクサスは、コーデアプリも出したんですね。ほとんどInstagramなんですけれども、これがかなりバズっていまして、どんどん増えています。

事業的に拡大していく夢のような仕組みがあって、ユーザーが勝手に拡散してくれるんですよ。自分のバッグを借りてほしいと思う方や、あるいはコーデにいいねがほしいという人たちが、FacebookやTwitterで拡散してくれるので、我々のビジネスが伸びているというところです。

最後になるんですけれども、うちはプログラマを募集していまして(笑)。ファッション大好きな方はぜひ応募してください。一緒にやりましょう。L3000(クーポンコード)で3,000円分のクーポンがありますので、使ってみてください。以上です、ありがとうございました。

カーシェアサービスの「Anyca」、得意を売り買いする「ココナラ」

:では続きまして、Anycaの馬場さんから、カーシェアサービスと言ったらいいんですかね。Anycaのご説明をお願いいたします。

馬場光氏(以下、馬場):よろしくお願いします。ディー・エヌ・エーの馬場と申します。Anycaの事業責任者をやっております。

まず私、ディー・エヌ・エーという会社にプログラマとして入りまして、5年間ぐらいずっとエンジニアとして働いていました。その後、1年ぐらいAnycaの責任者をやっています。

まず、Anycaというサービスがどんなものかを紹介するサービス動画がありますのでご覧ください。

(動画が流れる)

馬場:はい。Anycaはこういうサービスになっております。もともと、シェアリングエコノミーという思想自体が大好きなんですけれども、一番は車を気軽に持ってほしいというところと、気軽にいろいろな車に乗って楽しんでほしいという2つを目指すために、このAnycaというサービスをやっています。

2015年の9月9日にリリースしまして、ちょうど今3期目に入っております。2年間で、累積の会員登録数が約10万人ほど。車が今3,500台、600車種あるということになっています。累積のカーシェア日数が4万日ぐらいまで伸びてまして、順調に2年間数を積み重ねてきたというかたちになっています。

以上となります、ありがとうございました。

:ありがとうございます。では続きまして、私どものココナラの説明をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。ココナラは2014年に設立した会社で、5年と少しサービスを運営している会社でございます。

サービスとしては、得意を売り買い。のちほど説明しますが、「ココナラ」というサービスのほかに、会社としては弁護士に無料で法律相談ができる「ココナラ法律相談」と、あとはハンドメイド製品のマーケットプレイスである「ココナラハンドメイド」を展開している会社でございます。

メインのサービスであるココナラですけども、みなさん「メルカリ」などはご存知の方が多いと思うんですが、物ではなくてスキルを個人間で売買できる。そんなフリーマーケットなサービスだとご理解いただければと思っています。会社としてのミッションは、個人の知識、スキル、経験を可視化して必要とするすべての人に結びつけて個人をエンパワメントするんだ、と。

そんなプラットフォームを提供したいという想いでやっております。今日はシェアリングエコノミーというのがテーマとなっていますけども、僕らは何のシェアかと言ったら、こういう知識だとかスキル、あるいは経験といったみなさんのなかに眠っているものを可視化して、流通させたい。そんな想いでやっているサービスです。

どんな構造になっているかというと、我々は購入者と出品者という言い方をしているんですが、出品者が「何々を教えますよ、アドバイスしますよ」といったものをオンライン上で出品して、その人に相談したい人が購入する。我々プラットフォームはその仲立ちをしている。そんなビジネスモデルになっています。

現在、登録ユーザー数が65万人ほどいて、出品されているサービスが17万種類ほどございます。基本的にやりとりは1対1なんですが、累積の成約件数は150万件に到達しているサービスとなっています。カテゴリは本当に多種多様で、ここでは例としてナレーションやアイコン作成、翻訳みたいなものを挙げていますが、本当に恋愛相談から就職活動の相談まで幅広く、17万種類のサービスが売られています。

画面としては、(スライドを指して)先に左のようなかたちで「何々の相談に乗りますよ」みたいなものが売られてるんですけども、そこで購入すると、右側の画面にあるような1対1の相談の画面にいって、そこで相談する。そしてやりとりが終わったらお金を振り込む、という流れになっているサービスです。

「役に立ててうれしい」「チャレンジしたい」という出品者の方に非常に喜んでいただいたり、あとは「誰に聞いていいかわからなかった」という方がココナラで「ここだったら誰かが教えてくれる」と。そんな場所になっています。

はじめて5年になって、そこそこな規模になってまいりました。今年7月には全国でテレビCMをやれるほどにはなりました。ご覧になられた方もいらっしゃるかもしれませんが、今はそんな規模感です。「得意を売り買い、ココナラ」というキャッチフレーズでやっています。

先月、たまたま表彰をいただけました。トーマツさんから、3年間の売り上げの伸び率が1,200パーセント越えだということで、向こうのテクノロジー会社で、応募した会社のなかだけなんですけども、そこで1位をいただけまして、おかげさまで順調に伸びています。そんな会社です。

以上でございます。ありがとうございます。

日本におけるシェアリングエコノミーの動向

:ではここから、PwCの野口さんに。このあと説明があると思うんですけれども、PwCは世界中でこのシェアリングエコノミーのサポートや調査をやっていらっしゃるということもありまして、昨日、日本でも国内のシェアリングエコノミーに関する意識調査をやっていただいたようなので、まずはそちらのお話をうかがいたいと思いますので、プレゼンテーションをお願いいたします。

野口功一氏(以下、野口):はい。昨年はこのイベントでアメリカの調査結果を説明させていただいたんですけれども、そのときに「日本でもやってくれ」という話が多数ありまして、この5月に調査をしましたので、簡単にサマリーをご説明したいと思います。

まずシェアリングエコノミーサービスの認知度なんですけれども、日本ではまだまだ低くてですね。そもそもいろいろな事業者さんの名前は知っていても、シェアリングエコノミーという言葉自体なかなか知らないというところがあって、約7割近くが知らない。認知度はやはりまだ低いですね。

それから利用経験。これは「利用経験あり」と答えている人が10パーセント以下です。ここもまだまだ、借り手、貸し手ともに、まだまだ日本では利用経験も少ないです。

利用意向は、「これから利用したいと思う」「利用を検討している」という人なんですけれども、これは年代別で出しています。やはり若年層ですね。若い人たちが「利用したい」という傾向が非常に高いです。ネット世代というか、ミレニアル世代というんですかね。そういった人たちの意向は、当然ここでは強くなってきているということです。

それから年収別に見ると、おもしろいのは、1,000万円以上の年収の人たちは利用意向があります。このあたりはデジタルディバイドと関係あるのかわからないですけれども(笑)。比較的収入が高い人が「利用したい」と言っています。

それから、子どもの有無と年代別ですね。やはりライフスタイルの変化が激しい未就学者の人たちは、やはり所有よりも共有を望んでいるということが見てとれます。

続いてサービスのカテゴリーですね。利用回数に関しては、物や移動手段が8割以上ですね。やはりメジャーどころのところですね。共有したい事業者の方々の、まさにメジャーどころの方々のほうが利用経験があります。

あと懸念事項は、これもいつも言われる話かもしれないですけど、事故への対応や何かあったときの不安。信頼ですね、信用担保というところが、知らない人と取引するというところが、やはり非常に不安がられています。

一方で、日本や、経済や社会に与える影響ですね。そういったものはすごく影響力があるというとみなさん思っていらっしゃいますね。このあたりに1つのキーがあるような気がします。それから自分自身に与える影響ですね。これは金銭的な節約ができるとか、実益も含めて影響があると思う、というところがあります。

なので、将来的な部分では、日本のなかでもいろいろなポテンシャルはあるかな、とは考えています。簡単ですが、以上になります。ありがとうございました。

:ありがとうございます。

信頼性の担保に対する日本と海外のアプローチの違い

:それでは、そのままセッションに入っていきたいと思うんですが。まず引き続き野口さんに、いくつかおうかがいしたいと思います。そもそもの話なんですが、PwCとしてシェアリングエコノミーの調査結果を今出していただきました。PwCとしてはシェアリングエコノミーの何に期待して……ビジネスとしてなのか、あるいは、もう少しCSR的なのか、どういう思惑で、なぜシェアエコノミーに注目しているのかというところを少しおうかがいできたらと思います。

野口:ここにいらっしゃるみなさんは認識されていると思うんですけど、いわゆる昔ながらの資本主義経済の所有の概念を覆すようなかたちで共有して何かをやると、お金の流れも変わると思うんですけども、そういうものが徐々に主流になっていくかもしれないということは、経済コードが変わるということになりますよね。

ということは、まず1つは我々のお客様、クライアントがまずそういう世の中に直面します。お客様が直面するなかで、我々がそれを調べなければいけない(笑)。というのが1つですね。

あとはもう1つ、我々自身のビジネスも、おそらくシェアリングエコノミーのなかで大きく変わっていく。例えば会計監査のグループ会社がありますけど、Uberのような会計監査の仕組みができてしまったら、町の会計士の方々がどんどん僕らと同じことができるようになるということもあり得るわけですよね。

そういった我々自身のプロフェッショナルサービスのインパクトも考えて、シェアリングエコノミーには何かしらのかたちで突っ込んでいかなきゃいけないなということが背景にあります。

:なるほど、ありがとうございます。少し先ほどの調査内容についておうかがいしたいんですけど、我々自身も、あるいはいろいろな会社が今シェアリングエコノミーがどれぐらい普及しているのかとか、可能性について調査をしていると思うんです。

多かれ少なかれ、例えば「若い人のほうがよく使う」とか「日本での普及はまだまだこれからですね」と。じゃあ何が鍵になるかというと、「トラブル時の対応がやっぱり不安なんです」という話が出てくると思います。

みなさんも、シェアリングエコノミーは海外に比べると日本はまだこれからだろうという認識までは持たれていると思うんですが、PwCさんが世界中で調査されていて、日本ならではの、何かシェアリングに対するスタンスや難しさ、あるいは希望みたいなところで、違いとして出てきたものはございますか?

野口:今言われたように、信用の担保などは概ね同じなんですよね。ただ、例えばシェアリングエコノミーに対するメリット、シェアリングビジネスに対する利用者のメリットといったものを調査する項目でいうと、アメリカなどは意外と「コミュニティとの結びつきができる」といった項目が上位にくるんですよ。日本の場合は、価格だとか、実利的なところがきますよね。なので、そういったところで国によっていろいろ違うような気がします。

あとはトラブル対応の話や、信頼性の担保みたいな話はどこでも同じなんですけれども、当事者同士で解決する仕組みが必要というのが、アメリカでは対応策としてパーセンテージが高いんです。

日本の場合はどちらかというと、国のルール作りや規制のほうをやってくれ、というのが多いので、そういう細かいところではけっこういろいろ違ってきますね。

:なるほど、おもしろいですね。私も先日アムステルダムに行って、現地のシェアリングエコノミーを視察してきたんですけど、発想が「ローカルコミュニティの人たちが繋がらなきゃいけないんだ」というところからなので、そのあたりは日本的な感覚と少し違うかもしれません。

私も事業者として思うのは、実は日本人って人を信頼するのがとても苦手な国民なんですよね。なんとなく、お互いに助け合ってそうなイメージがあるんですけど、実は国やルール、仕組みなどで担保されてるところが非常に多い。

それでいくと、98年だったかな、山岸俊男先生の『信頼の構造』という本があるので、もし興味を持った方は読んでみたらいいんじゃないかと思うんですけど。社会が安定している人たちは、安定しているがゆえに、他人について「この人は自分にとって有益なのか害があるのか」を判断する能力が、だんだん落ちていく、と。

だから逆に社会が不安定な国ほど、人が信頼できるかどうかを判断する能力が高いという話が、学術的な結果で出ている。たぶん日本人って「知らない人は盗人だと思え」みたいな教育を受けているところがあって。どうしても国の仕組みのなかで安心、安全を担保するということが言われているところなので。

日本でシェアリングエコノミーをやっていくなかで、海外以上にいかに信用・信頼を担保していくか。もちろんルールは大事なんですけど、ルールを作っていくと同時に個々人がそういう能力を高めていく取り組みがけっこう重要だなと、やっていて思います。今の話とすごくリンクしているなと思いました。ありがとうございます。

ラクサスのユーザーのペルソナ

:では、ここからはラクサスさんとAnycaさんに順番にお話をうかがっていきたいと思います。まず児玉さんにおうかがいしたいなと思います。

先ほどプレゼンで少しびっくりしたんですけど、ものすごい伸びだなあ、と(笑)。まず、このラクサスを使っていらっしゃるユーザーさんは、どんな年代、どんな層なのか。例えば、お金を持っている、持っていないだとか、あるいは地域はどこなのか。どんなユーザーさんが貸したり借りたりしているかということを、もう少しだけ突っ込んでおうかがいできたらと思います。

児玉:うちのユーザーは、ロングテールなんですけど24歳でパッと立ち上がって、そこから50歳までまっすぐ行くんですよ。もう50歳からふわっと層が変わっていくという。

:じゃあ、20代、30代、40代の女性が等しく使う。

児玉:そうですね。だからビジネスがエクセレントというよりは、たぶんバッグのライフタイムが25年間ぐらいあるのかなと。ただ、50歳から落ちていくのは、アプリなのでリテラシーの問題もあるのかなと思っていて。

:実は、50代でもアプリになじんでいたら、本来的にはニーズがあるサービスだと。

児玉:それが、実際うちは今3年目に入ったんですけど、少しずつ伸びてるんですよ。なので、おそらくそういう意味なんじゃないのかな、と。

:貸している人と借りている人というのは、それぞれやはりペルソナというか、人のタイプとして違いってあるんですか?

児玉:貸している方々は40代の方が多いんですよね。

:借りるのは若い方が多い?

児玉:いや、若い方というよりも、それはもう本当分け隔てなく。30代後半は少し伸びるんですけど、1パーセント、2パーセントなのでこれは誤差だろうなと思っています。うちはあまり広告とかしないので、広告にタッチするかどうかはあまり関係ないんですよね。

:なるほど。

児玉:やはり、幅広く。

:口コミで伸びている。

児玉:そうですね、ほとんど口コミですね。

:素晴らしいですね(笑)。とくにこのシェアリングエコノミーって、余っている時間やものを個人間で貸し合うみたいなものが、わりと王道だったりすると思うんですけど。よく我々の業界で言われているんですが、この個人間のサービスって、提供する側と提供される側の両方をやる人が多いサービスほど成長が早いというのが、僕が何年か前から提唱している考え方で、見ていると大体そうなんですよね。

それでいったときに、成長率がすごいなと思ったときにやっぱり、貸しもするけど借りもする人ってそれなりにいらっしゃるサービスなんですかね?

児玉:そうなんですよ。よく受ける質問として、「我々が貸し出しするから物の売上が下がるんじゃないの?」とおっしゃる方がいらっしゃるんですよ。そうではなくて、うちに貸し出すことで手元にかばんがなくなるから、ちょっと満腹だったのが空腹感になってまた買いに行っちゃうみたいなんですね。

(一同笑)

それで、またそれを預けてくれる。だから、物を入れて移動するために収納する物が欲しいんではなくて、「これではないほかの物が使いたい」という。なので僕は、「バッグ売れてるんじゃないかな」ってちょっと思ってるんです(笑)。

:なるほど。もう貸す・借りるだけじゃなくて、その行為に参加するのに、あえて買っちゃう。

児玉:そうなんですよ。実は、「ラクサスエックス」という別のアプリがあって、貸すだけのアプリもあるんです。そこでは、例えば「このかばんは何人待ってますよ」とか、トラックレコードに「これで何円稼いでますよ」ということが見えるんですよね。するとそれを見て、コメ兵とかそういうところに行かれて……。

(一同笑)

「持つことがステータス」から「シェアが当たり前」の時代へ

:いやあ、うまいですね。なるほどな。これは、はじめられたのが3年ほど前?

児玉:そうですね。

:シェアサービスでいくと、Airbnbしかり、ほとんどのサービスって、実は極めてアイデアとして一見不合理だったりすると思うんですよね。

Airbnbなんて、今でこそ世界を席巻するすごいサービスになってますけど、はじめて聞いたときは「知らない人に自分の部屋貸すの!?」「部屋荒らされたらどうするの?」「ホストの方が犯罪者だったらどうするの?」とか、突っ込みどころが山ほどあるわけじゃないですか。

そういう意味でいくと、たぶんどんなサービスでも、我々ココナラもそうだったんですけど、だめな理由は、ものすごい数をぶつけられると思うんですよね。「いやいやそんなのうまくいかないよ」と。

(ラクサスを)立ち上げた当時に、どのようなできない理由が考えられていて、でもそのなかで「これいけるぜ」という自分だけが見えていた真実みたいなものって何かあったりしたんですかね?

児玉:僕には見えていた真実がやはり1つあって。もちろんサービスをやる前にアンケートをしないといけないと思ったから、女子を呼んでインタビューしたんですよね。「ヴィトンの30万円ぐらいのかばんが、6,800円だけど借りたいと思いますか?」と聞いたら、「いや、それは違うんですよ。今どき30万円のヴィトンじゃなくて、4、5万のこういうのがかわいいんですよ」と。「だめですよ、そんなの借りない」と言われて、これはだめだ、と。

それで、「じゃあリースをやめるから、このかばんどっちか1個あげるよ」と言ったんですね。「じゃあヴィトンを」って。

(一同笑)

児玉:「ちょっと待ってください」と言って。次の女の子を呼んできて、「あなたの友達だったら借りると思いますか?」と聞き方を変えたんですよ。そしたら全員が、「私は借りませんけど、私の友達なら借ります」って言ったんですよね。

これはおそらく、自分を守っていて。友達というのは自分自身だと思うんですよね。そこで「これは見えたな」と。自分を一応守って本心を言う、みたいな。これで無理矢理ゴーしましたね。

あとは、おもしろいところで言うと、「所有するから意味がある」とよく言うんですよね。それはおかしいなと思って。

:やはりそういう突っ込みは多かったですか? 例えば「ヴィトンのバッグを借りるなんてちょっとださいし、そんなの人はやらないよ。持ってるからステータスなんでしょ」みたいな反応が多かった感じですか?

児玉:99パーセントそれですね。でも「所有するのに意味ってあるか?」と。あれは使うために買うんだと思うんですよね。

:仮にステータスだとしても、人に見てもらってなんぼですよね。

児玉:そうなんですよね。だから富の象徴みたいに思う人がいるんだけど、あれはファッションのアイテムなので。それは考え方が少し違うところにあるなと思ったので、はじめちゃったんですよね。

:なるほど。わりと、「いけるかな?」と思いつつ、それなりに見切り発車感も持ってスタートされた?

児玉:ぜんぜん、もう見切り発車です。

:ユーザーさんの気持ちについていただいたのでもう少し聞いてみたいんですけど。ブランドバッグがある種ステータスだとした場合に、ユーザーさんは口コミで伸びているという話だったじゃないですか。そこに少し違和感を感じていて。

なぜならば、見せてなんぼだと。「私はヴィトン持ってますよ」というステータス。これを借りていることはあまり言いたくないんじゃないかな、と思うんです。これは借りている人が口コミしているのか、むしろたくさん持って貸している人が口コミしているのか、で言うとどっちなんですかね?

児玉:最初は、もちろん僕も「口コミしないだろうな」と思ったんですよ。でも、借りている人たちが口コミしているんですよね。

:借りている人が?

児玉:借りている人たちが。それで、ありがたいことにテレビの取材がたくさんくるんですけど、テレビの方々も「ユーザーを出してくれ」と言うんですよ。なかなか出てくれないだろうなと思って、トークでバーッと流してみたら「出る出る!」ってすごい出てくれるんですよね。

:ほう。それは若い人でも少し年配の方でも、等しく出てくれますか?

児玉:出てくれますね。驚きだなと思って。聞いてみたら、女性の場合は有意義な情報を出すことによって自分の株が上がるというマインドなんですよ。我々(男性)は、「いい話はとっておこう」って(笑)。

:なんとなく、自分のステータスをあげるために後ろ側にある秘密は隠しておこう、みたいな。

児玉:だけど、女子はそうじゃなくて。

:なるほど。このあたりはひょっとすると、世代の変化もあるのかなというのは感じますね。仮説でしかないですけど。私も42歳なんですけど、我々より上でいくとバブルを経験、あるいはバブルの残り香を経験した、「持ってなんぼ」の世代だし。

僕より下になると人生で不景気しか経験したことがないので、だんだんシェアするのが当たり前の世代になっていく。そういったときに、ステータスはステータスなんだけど、やはりいいものを持っているステータスだけなのであって。

それが実は本当に買っているか借りているかっていうのは、本質的にはあまり気にしてないし、むしろそういう有意義な情報を出していくのが素敵な人だという、そっち側のマインドが強くなっているのかもしれないですね。

児玉:そうですよね。

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