2024.10.10
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“個人で仕事をする”ことの大変さと“美しい人生”とは…(全1記事)
提供:株式会社BSジャパン
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ナレーション:世田谷に建つ、とあるマンション。
スタッフ:おはようございます。
太田美際氏(以下、太田):おはようございます。
スタッフ:今日はよろしくお願いします。
太田:よろしくお願いします。
ナレーション:今回仕事に密着する太田美際さん。31歳。大手IT企業、サイバーエージェントのグループ会社を6年勤めた。
太田:1年目は広告営業をやっていて、そのあと社会人2年目からは秘書室で働いていました。
ナレーション:現在、個人でフラワーデザイナーとして働く。
スタッフ:どちらに行かれてたんですか?
太田:今は砧(きぬた)公園の横の世田谷市場までお花を仕入れに行ってました。
ナレーション:彼女は会社に属さないため、自宅が作業場となる。
仕事は、主にレストランやウェディング会場など空間を彩るお花の製作から、個人のフラワーギフトまで。さらに初心者用のフラワー教室も開いている。
なぜ大手IT企業を辞め、個人で働くフラワーデザイナーの道を選んだのか?
太田:花っていろんな人を喜ばせることもできるし……。
ナレーション:そこには彼女の花に対する情熱と、夢に向かって挑戦する努力の源が隠されていた。
この番組は「働くって“だから”おもしろい!」をテーマに、全世代に向け、転職や学生たちの就活など、働き方のおもしろさとその魅力を伝える番組です。
友近氏(以下、友近):みなさん、どうもこんばんは。『ジョブレボ!』の時間です。
原田修佑(以下、原田):さあ、仕事に正面から向き合って前進するみなさんを応援する番組、『ジョブレボ!』。テレビ東京アナウンサーの原田です。
そして、これまで多くの企業や求職者のサポートを続けながら、就活や転職などをテーマに国内外年間200回以上の講演を行ってきました仕事のエキスパート、佐藤裕さんです。よろしくお願いします。
佐藤裕氏(以下、佐藤):よろしくお願いします。
原田:IT企業で営業や秘書などを経験したのち、個人でフラワーデザイナーの仕事を始めた太田さん、友近さんの第一印象はいかがでしょうか?
友近:そうですね、まず、かわいらしい方。でもやっぱり自分で今までのことを辞めてなにかをやりだすという勇気とご苦労はあったんだろうな、これから紐解きたいなという状況ですね。
原田:こういった個人事業って今増えているんですか?
佐藤:増えてはいないんですが、昔ほど珍しいというよりも、チャンスはあるかなと。まだまだ少ないんですが、自分で考えて一歩踏み出すという方はちょっとずつ、という印象ですね。
ナレーション:企業に属さず、個人で働く道を選んだ太田さん。この日の午後、レストランで生ける花の準備作業に取り掛かる。
太田:これから水揚げを。
ナレーション:水揚げとは切り花に水を吸いやすくさせる作業。これにより、花は生き生きとし長持ちする。
太田:お花とか枝とか、大きさ・太さによって、切るだけなのか割いてあげるのかが変わってくるんですよ。
やり始めは本当にこのナイフすら使えなくて。ただでさえ手を切りそうで怖いじゃないですか。ナイフを使えるようになるまでもすごい時間かかりました。
スタッフ:実際に手を怪我したことあるんですか?
太田:何度もあります。びっくりするぐらいにこのナイフ切れるんですよ。
ナレーション:ようやく水揚げ作業が終了。
スタッフ:次はなにをやるんですか?
太田:次はコラムの記事用の写真を撮ります。
ナレーション:太田さんは月2回、Webマガジンへのコラムを掲載しています。
太田:どういうふうにお花を家で飾っているかって、見る機会がないじゃないですか。花の飾り方、「こういうふうに飾ればいいんだ」とか「置き方があるんだ」みたいな、ちょっとした発見をしてもらえればいいなと思いながら書いています。
――転職のキッカケ
太田:秘書時代に、お客様にお祝い花をお贈りしたりいただいたりしたときの手配と管理も私の業務の1つだったんですけど、その時にお花屋さんに花を見に行ったら、花をそこまでわからなかった私ですら「これあんまりオシャレじゃないな」という花ができあがっていたんです。
できあがったお花を写真に撮って会長にメールで送ったら、速攻連絡がかかってきて、めっちゃ怒られましたね。「太田君どういうことだ!」みたいな。花の知識をもう少しつけようって思ったのが一番はじめの出来事ですね。
ナレーション:秘書業務で経験した失敗から花の勉強を始めた太田さん。次第に花の持つ魅力に惹かれていき、フラワー業界に憧れを抱き始めた。そして花の道を目指すことを決意する。
太田:インターネットで画像検索で自分が好きなお花、全部1枚ずつURLのリンクたどっていったんですよ。そしたら、全部の写真がフランスにある「Rosebud」というお花屋さんにたどり着いたんですよ。
ナレーション:そんな熱い思いを抑えきれず、単身フランスに花修行に向かった。そこで彼女を待ち受けていたものとは?
ナレーション:6年勤めた会社を辞め、お花屋さんの経験もないまま、フランスに花修行へと渡った太田さん。
太田:フランス語なんてぜんぜん勉強もしたことなくフランスに行ってしまったので、花にたどり着く前に、そもそも人が言っている意味が理解できない。初めて一緒に働くフランス人に名前すら覚えてもらえないとか、仕事すら指示してもらえないっていう悔しさはすごいありましたね。
ナレーション:立ちはだかる言葉の壁と将来の不安。そんな状況で心の支えとなったのが、修行でお世話になったお店のオーナー、ヴァンソンさんからの言葉だった。
太田:「ラヴィエベル」という、「人生は美しい」という意味のフランス語なんですけど、それを日常的にというか、さらっと問いかけてくださったり、「人生って美しいものだよ、すばらしいものだよ」って。
日々の努力の積み重ねによって美しい人生になる。些細なことに対しての取り組み方とか向き合い方が、その言葉によって大きく変わりましたね。
――仕事のやりがいは?
太田:やっぱり人に喜んでもらえたときが一番うれしいですし、お花をふだんあまり見ない人でも、その空間に居合わせた人が「すてきだね」とか「お花っていいんだね」というふうに感想をもらったりしたときはすごいうれしいですね。
原田:さあ、今回はなんとフラワーデザイナーの太田美際さんご本人にお越しいただきました。よろしくお願いいたします。
友近:ようこそ。
太田:はじめまして。よろしくお願いいたします。
友近:お願いします。
太田:本日は友近さんをイメージしてお花を作らせていただきまして、よろしければ。
友近:うれしい。ありがとうございます。
太田:すいません。ちょっと重いんですが。
友近:かわいい。きれい。私のカラーって紫なんですよ。
太田:本当ですか、よかったです。
友近:そうなんですよ。めちゃくちゃうれしい。
これはやっぱりイメージして、私の色はこうかなって思ってくださったんですか?
太田:はい、そうです。友近さんをテレビで拝見している時に、艶っぽさというか、大人の女性のイメージが、紫だなと思って。
友近:うれしい。もうバランスというか。華やかで。
佐藤:すばらしいですね。
原田:そして匂いがまたいいですね。
友近:ねえ。うれしい。ありがとうございます。
フランス語もまったくしゃべれないのに(フランスに)行ってしまったと?
太田:そうなんですよ。実質、日本のお花屋さんで働いた経験もなくフランスに行ってしまったので、言葉と業務と、暮らし自体もそうですけど、全部ゼロベースからのスタートでした。
友近:すごいね。
原田:すごい。
友近:でも、そこでやっぱり先ほどのVTRに出てきた……誰さんでしたっけ?
太田:ヴァンソンさんですね。
友近:あの方の言葉でちょっとこう、「このなかでも生活できるんじゃないかな」って思ったということですか。
太田:そうですね。今まで過ごしてきたなかで「人生は美しいんだよ」なんて言葉にして言われたことがなかったので、その言葉をさらっと言われた時に、「そっかあ。確かに今は大変だけど、1年前の自分はここに来るためにすごい努力をして毎日やっていて。今、その目的だった場所に来られて、目的だったお花屋さんで働けるようになったということだけでも、去年の自分からしてみたら『ようやく行ってる』って思ってくれてるだろうな」というふうに思って。
そのヴァンソンの言葉に、今だけじゃなくて、自分の人生というひとつなぎで自分の生活を見られるきっかけになりました。
原田:また、なぜ個人で働くかたちを選んだんでしょうか?
太田:はじめは個人で働くとは思ってなかったんですけど、フランスで1年間過ごして日本に帰る日が近づいたときに、それもヴァンソンなんですけど、ヴァンソンに「君は日本に帰ったら1人で仕事したらいいよ」って言われたんですよ。
向こうで過ごしているときに、日本人のシェフのレストランで1年間装花をさせていただいていたんですね。それはお店を介してではなく、個人としていただいたお仕事で。
そういうふうに異国の地で自分の仕事を取ってこられた経験があるんだから、それをもっと発展させるように、「日本に帰ったら1人でやりなよ」って、たぶん軽く言ったんですけど、私はそれを真に受けて「あ、そっかそっか」と思って(笑)。
原田:そこで裕さん。今回、企業に属さず個人で仕事を立ち上げる。ここに見えてくるのはどんなキーワードでしょうか?
佐藤:これはずばり「働き方改革」ということです。本来、働き方改革というものは、最近でいう残業を抑えなきゃいけないとか、リモートワークとか在宅でお仕事をしようという話がフォーカスされがちなんですが、実は企業に属さずに枠から飛び出てでも自分のやりたいことを一歩踏み出す起業という働き方も、今後のテーマになってくると思っています。
インターネット環境もよくなっていますし、少し起業がしやすくなっている環境ではあるので、まだまだ少ないんですが、これからもう少し時代が来るんじゃないかなとは見ていますね。
原田:起業するのに必要なことってなんですか?
佐藤:太田さんのような、やっぱりポジティブで、とにかく自分の想いをかたちにしようという人ですね。
友近:そうですよね。
佐藤:友近さんもまさに起業家タイプですね。
友近:いや、でもね。私もどっちかというとそっちのタイプだとは思うんですけど、異国の地には行けないんですよ。だから、そこはもう大尊敬。だからそこで成功するって本当にすごいなと思うし。一握りですしね。
佐藤:と思いますね。
スタッフ:うわ、積み込みですか?
太田:そうです。
ナレーション:午後になり、週に1度定期的に装花を依頼されているレストランへ向かう。およそ30分で到着。店には車を止められないため、いつもの駐車場へ。しかし……。
太田:あれ、満車? もしかして。満車じゃん。え、まじで誰か出てくれないかな。
……車問題。
ナレーション:1人でやっているがゆえの問題が発生。
スタッフ:こういうことになると、お店の作業時間が……。
太田:そうなんですよ。ああ、満車。
スタッフ:左は?
太田:左もあるんですか? あ、満車……。
スタッフ:うわっ。
太田:なんだ……。
ナレーション:その後駐車場を探すものの、なかなか見つからない。どうする! 車問題!
ナレーション:個人でフラワーデザイナーとして働く太田さん、15分後、ようやく空いている場所を発見。
スタッフ:1人で持てますか?
太田:持ちます。
ナレーション:駐車場探しから運転、荷降ろし、運搬作業まですべて1人。それだけに想像以上に苦労が多い。ようやくお店に到着。
太田:こんにちは。おつかれさまです。よろしくお願いします。
ナレーション:西麻布にあるレストラン「マルゴット・エ・バッチャーレ」。花を生ける場所はお店の入り口。一番お客様の目につく場所だ。
お店がオープンするまでに完成させなければならないため、遅れた分はそのまま作業時間に影響する。そんな状況でも決して揺るがない仕事へのポリシーがあるという。
太田:作っている人は私、同じなので、きっとスタイルはあると思うんですけど、そのなかでも少しでも新しさみたいなものを出せたらいいなとは思っていますね。
空間の中を彩るための装花なので、空間に調和して引き立てる存在になるように、花を生けますね。
ナレーション:どんなに時間に追われようと決して仕事に対して妥協はしない。そこにはこの道を目指したときの熱い思いがあるから。
レストランの装花作業を始めてからおよそ1時間、無事作業が終了。
太田さんの印象をお店の方に聞いてみた。
加山賢太氏(以下、加山):仕事に本当に熱心だし、仕事に対してのベクトルがすごく高くて情熱的だし、人に喜んでもらいたいという気持ちがすごく強い子だなと。だからすごく信頼しています。
ナレーション:企業に属さず、個人で働く。そこで生まれる心境の変化とは?
太田:変わったことは責任感と周りの方々に対しての感謝。花屋をやれているのも花屋でいられるのも、周りの人たちあってこそなので、信用してお仕事をくださったことに対しての感謝の気持ち。自分で仕事をやり始めてから、比じゃないぐらいに感じています。
ナレーション:企業で勤務していたときには感じにくかった責任と感謝の気持ち。個人であるがために必要以上に身に染みる。
スタッフ:太田さんにとって花ってどんな存在ですか?
太田:癒やしだし、私を助けてくれる存在。いろんな経験をさせてくれるのも花だし、出会いをくれるのも花だし、楽しいとかうれしいって感じるのも花なので、人生を豊かにしてくれていますね。
友近:自分が作業している姿をやっぱり見てくれているんですよね。だからみなさんああやって評価してくださるというか。うれしいですよね。
太田:そうですね。すごいうれしいですね。今回こういう機会をいただけたので、どういうふうに思っていらっしゃるかがわかったんですけど、それまではもちろん「いつもありがとう」「みんなで楽しみにしてるよ」とは言ってくれてるんですけど、そこまで深いことをあまり聞かなかったので。
友近:個人で働く上で重要なことというのはなんだと思われます?
太田:本当に誠意。誠心誠意一生懸命1つのことに取り組むことが大事だなとすごく感じますね。やっぱり、なんでその花が必要だったかという理由は、金額や規模に関係なく、みなさんちゃんとあることなので、その気持ちを裏切っちゃいけないなと毎回思います。
佐藤:実際に一歩踏み出した時のイメージと実際は違ったという、このギャップはどんなところにありましたか?
太田:そうですね。見えない作業時間がすごく多かったということですね。あと、日本に帰ってきたばかりの時は、フランスに全財産費やしてきたので、ほぼ無一文みたいな感じで帰ってきたんですよ。
お花だけあっても、例えば「どんなラッピングペーパーに包もうか?」とか「リボンは?」とか、見えない必要な材料というのがやり始めてわかったことなので、「もっとお金が必要だったな」というのが一番大きかったですね。
佐藤:それでも企業に属さないで個人で貫くというのは、どういう意味があるんですか?
太田:花屋さんに転職しようと思った時に、すごくたくさんのお花屋さんを日本の中で探したんですけど、ただ、勤めたい場所がなかったので、せっかくフランスまで行ったのに、またどなたかの屋根の下に入ってしまったら、フランスに行かないで1年前からそこで働いていたほうがキャリアとしてはいいじゃないですか。なので、そういう選択をしなかったので個人でやろうという、そこです。
佐藤:すごい。
友近:でも、性格的にも合ってる気しますけどね。
太田:ありがとうございます。
友近:うちの母親もフラワーアレンジメントの講師してるんですよ。
太田:へえ、そうなんですか!
友近:個人でやってて、やっぱり自分でいろんなところを自由に飛び回る人やから、性格的にたぶん似てるのかもしれないですけど。自分で交渉しに行って、自分でその人と関係を築いてやっていくというほうが、なんか伸び伸びとやってますわ。
太田:すごい楽しさがわかります(笑)。
友近:ねえ(笑)。じゃあフラワーデザイナーを目指す方にアドバイスをいただいてもよろしいでしょうか?
太田:はい。どのようなお花屋さん、もちろん周りの関わる方、人にもよると思うんですけど、それが一番重要だと思うんですね。自分の感性や好みが絶対あるはずなので、そこを妥協せず貫いて活動できる場所だったり方法を、人それぞれ合うものを見つけていただけたらな、とはすごく思います。
原田:それでは裕さん、今回のジョブポイントをお願いします。
佐藤:今日はまず圧倒されました。自分の人生を、仕事を通じて豊かにするということを体現しているということをこの距離で感じるというのがものすごく勉強になって、すごく励みになったなと思います。
やっぱり「人生は美しい」という言葉を強く感じることができたので、こういうことをどんどん働く人が言っていくべきなんだなと強く感じました。
(CMが流れる)
ナレーション:企業に属さず個人で働くということ、それには仕事に対する大きな責任が伴ってくる。しかし、誠心誠意仕事に取り組む姿は必ず誰かが見てくれている。そこでもらえる感謝の言葉はなにものにも代えがたいものになり、1人で働く彼女を支え続けている。
――今後の夢は?
太田:少し先の将来の夢なんですけど、小さくてもいいので自分のお花屋さんを持つことですね。お客さんと店主ではなくて、人と人としての関わり方を。そういう心と心でコミュニケーションを取っている場所がRosebudの特徴の1つでもあったので、そういう空間を私も作ってみたいなと思っています。
ナレーション:花を通して人の心と心をつなぐ、夢だったフラワーデザイナーという仕事。その道のりは決して平坦なものではなかった。言葉の通じないフランスでの花修行。しかし、そこでの出会いと経験が彼女に美しい人生を与えている。そんな彼女の仕事への思いとは?
BSジャパン「ジョブレボ!」にて5月26日(金)放送
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