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世界的クラウド企業がコミュニティを育てるために考えていること(全2記事)

2017.09.01

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「コミュニティはマーケティング目的だけにあらず」セールスフォース・ドットコムが見つめる“技術のその先”

提供:株式会社セールスフォース・ドットコム

エンドユーザーや販売パートナーに“熱狂的に”関わってもらうためにすべきことは? 2017年7月に開催された「Developers Summit 2017 Summer」の中で、セールスフォース・ドットコムによるセッション「世界的クラウド企業がコミュニティを育てるために考えていること」が行われました。「顧客の成功」の実現を目指すセールスフォース・ドットコムはなぜ“コミュニティ”に注目したのか。また、運営する際に注力していることはなにか。担当者らが赤裸々に語りました。

オンラインでもオフラインでも、コミュニティに貢献した人を称賛

坂内明子氏(以下、坂内):ここから、オフラインコミュニティのお話を少しさせていただきます。セールスフォース・ドットコムは年間を通じて、コミュニティのイベントや当社のイベントを実施しているんですけれども、この「Dreamforce」というイベントが1年で一番大きなイベントとなります。

Dreamforceはサンフランシスコで毎年実施しています。昨年は17万人の方にご参加いただいていて、サンフランシスコの街中がセールスフォース・ドットコムの色に染まるような、お祭りのようなイベントです。

当社のイベントで非常に特徴的なものは、製品の紹介ではなくてお客さまの成功体験を伝える。あとは(スライドを指して)左側の下ですね、当社のサービスや社会貢献にも非常に力を入れています。

このイベントを通して、次の世代にエイズになる方をなくしていく活動をしている団体の基金を募ったり。あとは、Equalityがテーマですので、「平等サミット」を1日中1つのタイムスケジュールとして持っています。ここでは、いろいろなマイノリティの方がどう平等を実現していくか、そういったテーマをもとにセッションが開催されます。

製品だけではなくて、社会貢献や平等といった当社の文化をイベントを通じてご紹介することで、そこに賛同していただいた方がファンになってくださるんですね。そして、コミュニティが活性化される場になっております。

当社は、オンライン、オフラインにかかわらず、コミュニティに貢献してくださった方を、会社として本当に大きく賞賛しております。

先日、マーク・ベニオフが……ちょっと前より若くなくなっちゃって、大きくなっちゃった姿が映ってますが。7月4日、日本でもイベントがあり、来日していました。

先ほど「Trailblazer(トレイルブレイザー)」というパーカーを着ている方がいましたけれども。そういったコミュニティに貢献をしてくださっている方をトレイルブレイザーと呼んで、マーク自身がその方々の名前を呼んでお礼を伝える、そういったこともしております。

コミュニティはマーケティングだけのものではない

ここでまとめになりますけれども、セールスフォース・ドットコムがコミュニティを形成しているのは、カスタマーサクセスを実現するため。これが大きな要因となります。

そのためには、オンライン、オフラインでファンになっていただく場を提供しています。オンライン、オフラインの場でトレイルブレイザーとして、先駆者として、コミュニティの貢献者の方を称える。そしてさらに活性化してもらったり、自分もコミュニティに貢献したいという方を増やしていく。そういった施策を打っております。

今までコミュニティのお話させていただきましたが、本日はデブサミなので、開発者とコミュニティという観点で、岡本からもう一度お話をさせていただこうと思います。お願いします。

岡本充洋氏(以下、岡本):はい、ありがとうございます。せっかくデブサミですので開発者の話もしたいと思います。

その前に、私が坂内の話で「これ、すごいおもしろいな」と思ったのが……コミュニティをマーケティング施策だと思っている方が多いんじゃないですかね?

私も本日の午前中にセッションをやってたので、今日のセッションは残念ながら見ていないのですが、前に元AWSの小島(英揮)さんがAWSのコミュニティをどう成長させたのかという話をされていました。

そこで、まぁようするに「Sell through the community」と言っていたんです。コミュニティに製品を売るのではなく、その人たちがインフルエンサーになって売れるものだ、と。

このように(コミュニティについては)マーケティングのように語られることも多いです。ですが、私もこのセッションをやるにあたって坂内と話をしていて「おもしろい」と思ったのは、コミュニティは必ずしもマーケティングだけじゃないんですよね。

ユーザーさんたちがより製品のファンになる。ファンになることでセールスフォース・ドットコムの売上が増えていく。セールスフォース・ドットコムはサブスクリプションモデルです。ユーザーライセンス課金なので。お客さん企業が成功して成長して、従業員数が増えれば増えるほど(使ってもらえれば)セールスフォース・ドットコムは儲かる仕組みなんですね。

そういった、マーケティングとは違ったところにコミュニティを活用しているというのはすごくおもしろいと、自分たちも思いました。

CRM市場が拡大する中で注目されるSalesforce

……と、余談でしたがあと10分あります。せっかくデブサミなので、開発者のところをお話したいと思います。

私たちはCRM市場の企業です。このマーケットは今、伸びています。ERPでSAPなどがすごくワっと盛り上がった時に「ABAPのエンジニアになったら月300万円」など、IT業界の方なら聞いたことがあると思いますけれど、そのERPに2015年の段階でマーケットとしての大きさは迫っている状態です。

これが2021年、オリンピックが終わって1年経つとデータ管理などよりもCRMのほうがビジネス領域として大きくなる。Gartnerが調査した結果、そう言われています。それは、当然ですね。

お客さんと接してなんぼ、というビジネスはがどんどん大きくなってきます。そのシステムは当然非常に重要になってくる。

Salesforceの場合、日本はと言うと正直まだそこまでドーンとすべての企業に入っているわけではないのですが。アメリカのケースだと、Salesforceはけっこうなデファクトスタンダードになっています。

例えば最近、テレビCMもやってますけど。Indeedという求人サイトでトップ10の求人に入っています。これはなにがトップ10なのかわかりませんけど、おそらく求人額ですかね。そういった、高い求人のトップ10のうちの2件がSalesforce関連だったり、Salesforce関連のスキルを募集してる求人の数が30万件あったりします。

あとはGDPへの影響や、雇用が2020年になると190万人がSalesforce関連であるなど、いろいろ統計があります。これはIDCさんが出している結果だったりしますけども、非常にSalesforceの仕事が増えてきています。

もちろんこれらは、Salesforceを単純に触るだけじゃなくて、開発の仕事が非常に多いです。

私、このSalesforceを“プラットフォーム”とはこのセッション中で今まで一度も呼びませんでした。CRMを中心としたクラウドサービス、基本的にはSaaSとしていました。しかし、このSaaSの中にプラットフォームの機能が組み込まれています。それを使ってエンジニアの方は、CRMにいろいろとエクステンドしたアプリケーションが作れるんですね。

(スライドを指して)バラッと並んでますけども、例えばUIフレームワークやモバイルコンテナなどは、モバイル端末でSalesforceを見てる時に、ちゃんとレイアウトが勝手に調整されたりします。フローチャートのような画面でビジネスプロセスを簡単に作れたりもします。

またデータベースも自分で作れる、APIを作れる。そしてAPIアクセスした時のログを追跡などもできる。さらにCLIなど、そもそもプログラミング自体を書いて、デプロイして動かす環境もあります。

当然、SaaSから拡張されてますので、認証とかセキュリティももともとあるわけですね。こういったものを開発者の人は使って、CRMを拡張したアプリケーションを作ることができます。

IT部門の考え方が変わりつつある

非常に便利なんですが、でも今回は重要なのはそこではではなくて、Salesforceは先ほども言ったように、ユーザーさんが非常に大きなコミュニティを持っている。フローチャートみたいなものでビジネスプロセスが作れる機能やドラッグ&ドロップで画面のレイアウトを変更できる機能もあったりしてそれを使ってるんですね。

同じSalesforceの中で、ドラッグ&ドロップで開発してる人と、ゴリゴリとコード書いてGitHubでそのソースコード管理して、CI/CDを回してる人たちが、同じ環境を開発するんですよねSalesforceの場合。Salesforceでは開発者と、開発者以外もが開発に参加するという感じです。

こういう環境でSalesforceは、うまく双方が開発ができるように考慮していたりします。

例えば、Salesforceではローカルにソースコードというか、UI画面のXML定義やデータベース定義を「こういうデータベースがありますよ」「『商品』っていう画面のレイアウトはこれです」といった情報を“メタデータ”として管理できます。

シェルスクリプトを1つ書いておいたので、実行してみます。

このスクリプトはSalesforceのインスタンスを生成してて、そのインスタンスにメタデータをpushして……というようなことをやっています。しかしこのスクリプトとは別に、同じインスタンスに今度はGUIでカチカチ設定画面から開発をやる人も同時にいる。そういった人と一緒にSalesforceでは開発するわけです。

コードを書かないでGUIでの開発を侮ってはいけません。ここいらっしゃる方々はプロフェッショナルなディベロッパーでしょうが、ローコードプラットフォームが2016年くらいから盛り上がってきている、『Forbes』の記事で書かれていました。

ローコードプラットフォームはあまりコードを書かなくても、エクセルと同じくらいの知識、または「マクロを書けたら完璧」くらいの知識で業務アプリケーションを作れるプラットフォームのことです。これはセールスフォース・ドットコムではなく、QuickBaseという会社が作ったローコードプラットフォームが伸びているという記事なんですけれども、IT部門の考え方が変わりつつあると言われているんですね。

「Bring your own device(自分のデバイスを仕事に持ち込もう)」

よくBYOD……「Bring your own device(自分のデバイスを仕事に持ち込もう)」みたいなものがありますが、「BYOA、Bring your own application(自分のアプリを仕事に持ち込もう)」として、自分のアプリケーションを業務に活かしていくことができるわけです。

これは悪く言ってしまえばシャドーITとも受け取られます。アンコントローラブルなところでそれをやってしまっては意味がないのですが、ローコードプラットフォームはマネージドな環境で、ユーザーがアプリケーションを自由に開発しカスタマイズできるように、各社でしのぎを削っているんです。

このローコードプラットフォームはシチズンディベロッパー、要はコードを書かないディベロッパーの人たちにとって強力なパワーになるだろうと言われてるんですね。なので、Salesforceはここに意識を入れています。

そうこうしているうちに、先ほどのShellスクリプトが組織を生成してソースコードがプッシュされました。サンプルデータのインポートなど、アクセス権限の設定などもスクリプトに入れておきました。

インスタンスにカスタムドメインを設定するのに少し時間がかかりますが、ひと通りの作業がコマンドラインからすべてできました。

この後ブラウザが立ち上がり、アプリケーションやデータがすべてデプロイされたものを見ることができるわけです。そのGUIの中で、今度はコードを書かない開発者がGUIで設定を変えたり、開発したりする。これがSalesforceで起こることです。

ディベロッパー同士のコラボレーションが可能

そうするとどうなるのか。

(スライドを指して)例えば、この画面ではドラッグ&ドロップしたり、ゴミ箱に捨てたりできますが、ここで使われているのはJavaScript開発者の間でよく活用されているChart.jsのライブラリです。

他にも商品リストでフィルタかければ動的に画面上のリストが絞られたりします。こういった挙動をするコードを先ほどデプロイしたわけですね。

ここでSalesforceの場合は、すべての画面はコンポーネントベース・フレームワークで作っているので、画面の一つひとつのレイアウトなどは、コーディングしなくても自由にレイアウトが変えられます。

このレイアウト変更などは管理者がやったりするわけです。管理者が「こういうふうにレイアウトを変えよう」「スライダーは上」「これはいらない」といった具合にに変えるかもしれない。

もっと言うと、ビジネスプロセスを設定するフローチャートがあると先ほどお話しました。そのフローチャート画面ではかなり高度なことができます。

先ほどのShellスクリプトでローカルにあったビジネスプロセスのXML定義ファイルをデプロイしてしましたが、Adminの人がそれを無効化して、新しいバージョンを、今度はGUIから作り込むこともできる。「『担当にメールを送る』という処理を追加しました」といったことが実際に起こります。

ディベロッパーが作ったものと、ローコードのディベロッパーのコラボレーションになるわけですね。そうなった時にのために、プロフェッショナルのディベロッパーが、GUIでおこなった変更をソースコードとして逆にそれを取り込む仕組みをSalesforceでは用意しています。

例えば「sfdx force soruce:pull」。これはSalesforce DXのという機能のコマンドなんですけども、実際に実行するとGitなどのリポジトリからではなく、デプロイした先のSalesforceインスタンスにあるソースコードやメタデータをローカルへ取ってきます。つまりシチズンディベロッパーによってGUIから更新された、ビジネスプロセスの定義だとか、ページのレイアウト変更などの定義ファイルが取得できるわけです。

なので、また新しいSalesforceインスタンスを立ち上げてデプロイする時には、このシチズンディベロッパーが変更したものも取り込んで、さらに追加で開発したものも入った全員にとって最新の環境をすぐに作る事ができるわけです。

セールスフォース・ドットコムは顧客の成功にフォーカスする

このようにSalesforceでは同じインスタンスをいじったり開発したりするので、一般ユーザーと管理者、開発者、パートナー、もっと言うとセールスフォース・ドットコム社員の距離がものすごく近いプラットフォームと私は思います。

そうするとなにが起こるか? みなさん、例えばJava……私はJava言語がすごく得意だったので、Javaユーザー会に参加したりしていましたが、Node.jsだったらNode学園に行ったり、いろいろあると思うんですけど、言語だったりインフラだったりフレームワークだったりの開発者コミュニティにエンドユーザーはいないですよね?

Salesforceの場合、おもしろいなと思ったのは、開発者とエンドユーザーが同じコミュニティの中で、けっこうディスカッションしたりしているんですね。もちろんガチの開発者だけのグループを作って、マニアックなことを語っている人たちもいるんですけども、そうじゃないことが起きる。

今回のデブサミのテーマは「技術のその先を見ましょう」ですよね。私ももう40歳手前ぐらいになってきて、テクノロジーは大好きなんですけど、テクノロジーの先のビジネスを考えるようになってきました。その時、やはりこういった、ビジネス側と近い環境は非常にありがたいなと思ったりします。

どうしてもエンジニアはテクノロジーだけに逃げてしまいがちなんですけども、逆にユーザーのコミュニティが大きく、そして開発者がそこと近いプラットフォームはすばらしいなと思いました。なので、少し紹介させていただきました。

これで、私のパートは以上です。

今日は3つのお話をしました。カスタマーサクセスとコミュニティと開発者。セールスフォース・ドットコムが考えていることは、まずは顧客の成功にフォーカスする。カスタマーサクセスにフォーカスします。そのためには、コミュニティは不可欠なんですね。

最後に開発者、デブサミですので。開発者の位置づけは、コミュニティの中でユーザーと離れず一緒になることで、技術のその先が見えてくるのではないかと個人的に思っています。

というわけでお時間になりましたので、私たちのセッションは以上となります。どうもお忙しい中、ご参加いただきましてありがとうございました。

(会場拍手)

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