2024.10.10
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講演「リクルートのUXデザイン組織と求められる職能について」(全1記事)
提供:株式会社リクルートテクノロジーズ
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岩佐浩徳氏:今日は貴重なお時間をいただきまして、どうもありがとうございます。ご紹介に預かりました岩佐と申します。
私は、リクルートテクノロジーズのなかのマーケティング部門のサービスデザイン部というところで、執行役員をしています。
今日は、改めて「そもそもリクルートが何をしている会社なのか」について簡単なご紹介と、我々サービスデザイン部が「どういった考え方で仕事に臨んでいるのか」について、そして、「キャリアを考えるうえで“人”というものをどう捉えているのか」についてお話しできればと思います。よろしくお願いします。
まずは、簡単に自己紹介をさせていただきます。私は、多摩美術大学というところで情報デザインを学んでから1994年にリクルートに新卒で入社しました。94年というとネットのサービス、インターネットというものがほぼ日本に存在しなかった時代でして、当然リクルートも紙のメディアを出版する会社でした。
なので入社後、当時あったR&D部門みたいなところで、「10年後に対して、リクルートがそのなかでまた戦えている状態を作りなさい」というミッションのもと、インターネットなどいろいろな“次なるプラットフォーム”を見つけるということをやっていきました。
そういった活動の一環で、インターネットの立ち上げなどをR&D的にやってきたんですが、そのときに、「インターネット上の各サービスを横断的に磨いていける、ユーザー中心のデザインを担っていける組織がないとダメだ」と、かなりの危機感を覚えました。そこで、今のサービスデザイン部に続く組織を立ち上げまして、そこから改めてサービス立ち上げやリニューアルをやっていきました。
今も基本的にはそういった活動を続けている部門で、現在70名ぐらいが所属する組織になっています。社内のなかでそのような立ち上げ方、改善の仕方、グロースのさせ方といったところをプロセス化して、その啓蒙活動と、実際にサービスに入っていって効果を出していくということを両輪で回しています。
つぎは、ざっくりとリクルートについて説明したいと思います。みなさんご存知の部分もあるかと思うのですが、リクルートの事業セグメントとしては主にこういった主要サービスがあります。
実際にはちゃんとカウントできていないんですが、200くらいのサービスがあると言われています。ただ、実際に稼働するサービスの数というのは、各メディアのPC版・スマホ版・アプリ版はもちろんのこと、リクルートのサービスの特性上、カスタマー側とクライアント側へのサービスも含めて、その倍、倍、倍と増えていくかたちになっています。
サービスは、大きく3つ「販促メディア」・「人材メディア」・「人材派遣」とその他(グローバル)に区分されています。その中でも国内事業は、ライフイベントと呼ばれる住宅・結婚・進学などの領域と、日常消費と呼ばれる旅行・理容・飲食といった領域、リクナビファミリーと呼ばれる各人材事業とほか派遣事業と区分されます。ホームページ上でも公開させていただいている情報なんですが、それぞれの領域・サービスでの売り上げになっています。実際、ここがかなり他のサービスと違うところかと思っています。
大概は数百億というビジネス規模のサービスになっています。スタートアップでどんどん変化を起こしていくというものとは一線を画した、それこそ「コンバージョンレートが0.1パーセントずれると数億のインパクトが出てしまう」というようなイメージでサービスを考えていただければと思います。
なので、そこを取り巻く意思決定、実際にどう判断するのかについては非常に重みがあります。とはいえネットのサービスですので、そのなかでいかに早くPDCAを回して効果を出していくか、ということが求められるサービスになります。
現在、リクルートの中心となっている考え方として、この「リボンモデル」というものがあります。
リクルートのサービスの特徴として、「カスタマーだけがユーザーではなく、クライアントもユーザーである」といったものがあります。先ほどもお話ししたように、我々は双方の期待する価値に応える必要があって、いかにそれぞれのニーズを結んでいくかというところが大切になってきます。
ニーズを結んでいったときに価値の対価として我々は儲けをいただくというようなもの、今は多くの種類が出てきているのでそれがすべてではないのですが、我々のビジネスモデルはそれがベースになっていると思っていただければと思います。
ここからは、先ほどのリボンモデルについて、「ではなにを価値として繋ぎにいっているか」についてお話ししたいと思います。その1つが「コトをつなぐ」こと。
我々はモノを作っていないんですね。それこそ消費材であったり、家電であったり、目に見えるわかりやすい手に取れるものではなく、情報というものをベースの商材とさせていただいています。そして、「カスタマーとクライアントのどちらかだけを重視してもいけない」という中で、いかにバランスを取りながらお互いの価値を高めてマッチングするか、ということが考えていくときの視点になっています。
ただカスタマーのことだけを考えればいいということに比べると、わりと難易度が高い思考を回していかないとなかなかバランスが取れない、というところがポイントかなと思います。
それから、カスタマーに訪れる人生の転機に沿うサービスについては、より一層こだわってやっています。就職、転職、結婚、引っ越しのような非常に重い意思決定であるとか、一生で何度も経験するものではないものはやはり情報が少ないですし、カスタマーにとっては「わからないこと=負」だらけなんですよね。そういった領域に、いかに伴走してサービスを提供・改善していくのか、というところにこだわっています。
リクルートは、いろいろな新しい価値を作ってきたと思っています。例えば『とらばーゆ』という雑誌についてですが、それこそ1984年ぐらいに創刊した雑誌です。当時は、「女性が1回子育てのためにお家に入ってから、もう1回社会に復帰する」ということが、なかなか世の中的に受け入れられない社会でした。
そういった状況に課題を感じて、「一度お家に入った女性の雇用を作ってください」と、実際にすべてのクライアントへ働きかけに行って、実際にそういった女性向けの転職求人を作ってもらい、メディアにしたものが『とらばーゆ』です。
同じような流れで価値を作れたと思っているものが、「地方の労働力」というところでUターンIターン。いまやUターンって一般的に使われるようになったと思うんですが、はじめは地方への回帰というものをメディア化した『B-ing』というサービスが、そのムーヴメントを作っていくというデザインをしていたというものですね。
ほか『スーモカウンター』というサービスについては、やはり一部「ネットだけでは解決できない」ことに対するカスタマーのニーズに応えるかたちで、実際に対面でのサービスをさせていただくなど価値を作っているかなと。
そもそも「UXデザイン」という言葉なんてない時代なんですよね。それでもふり返ってみると、明らかにUXデザインをやっているということで、やはりリクルートというのは無意識にUXデザインを行い、サービスを提供してきた会社なのかなと考えています。
そうこうしているうちに雑誌の時代からネットの時代になりまして、最後は、我々が今その大きな変化をどう捉えて仕事をしているかについてお話したいと思います。基本的に、UI・UX(ユーザーエクスペリエンス)・CX(カスタマーエクスペリエンス)と3段階のステップがあるのかなと考えていまして、すべてのフェーズにおいて我々はそれぞれに応じたやり方でサービスを磨いたり作ったりしています。
先ほどの各メディアにおいても、やはり立ち上げフェーズ・成長フェーズ・成熟フェーズごとにまったく課題感も違いますので、それぞれのフェーズに応じたやり方を展開しています。
世の中的にはグロースハックやLeanUXなどのやり方があると思うんですが、これを我々独自のプロセスとしてやっているのが、『CheetaUI』と呼ばれているUI改善のプロセスです。そういった独自開発したプロセスを駆使しながらベースの改善を行っています。
今後の展望をお話ししますと、現在は先ほどのリボンモデルに加えて、そこにUXデザインのアプローチを左も右もというかたちで展開をしているわけです。今後は、さらにこういったUXデザインをエンジニアリングの力、ビッグデータの力を使って、いかにオートメーション化していくかというところが、我々のメインビジョンになっています。
こういった大きなビジョンを掲げてそれを実現していくとなると、やはり我々はまだ多くのことができていません。いろいろなことをやっていかなければいけない。
現在、サービスデザイン部の組織編制は、先ほどのビジョンをまず置いて、そこに必要であろうケーパビリティというものを分解した形をとっています。それぞれの機能組織がそれぞれのケーパビリティを進化させ磨いていく、そのなかの職能を育成していく、というサイクルを今作り始めているところです。
なので、それぞれの各グループのミッション、ゼネラルマネージャーのミッションとしては、育成・品質担保・進化というものを今担っていただいています。職能の育成に関していいますと、それぞれの職能をすべて職能要件化していまして、それをアセスメント、評価できるようなプロセスを作っています。
各自が自己評価と他者評価(マネジャーの評価)というものを照らし合わせながら、そのギャップをどうやって埋めていくかについて一緒に話し合って、「このミッションを達成しよう、この職能を伸ばしていこう」といったコミュニケーションを取っています。
あと、それぞれが注力している職能に関しては、それぞれが担当するサービスに対してどれだけ品質を上げていけているか、レビュー(ふり返り)を行っています。
かつ、先ほどの機能ごと、それぞれを進化させていっていただきたいので、うちのなかでメンバーの総数のアベレージ10パーセントくらいをR&D、開拓工数としてこの機能進化を行っているという流れになっています。
ここまででざっくりとリクルートと、そのなかのサービスデザインが担っていること、そこでどんなあり方をしていてどういう人がいるのか、についてご説明させていただきました。ここからは、多様なバックグラウンドを強みにリクルートテクノロジーズで活躍してくれているUXデザイナーたちによるトークセッションに入らせていただきたいと思います。
キャリアチェンジをしてよかったことや乗り越えた壁など、リアルな声をご紹介できればと思います。では、よろしくお願いします。
株式会社リクルートテクノロジーズ
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