2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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司会者:それではさっそく「抜擢人材の成長ストーリー」を始めていきたいと思います。まず初めに、パネリストのみなさまをお呼びします。1人目は、株式会社サイバーエージェント・執行役員の石田裕子さまです。続きまして、2人目は株式会社クラウドワークス・取締役副社長COOの成田修造さまです。そして、SHOWROOM株式会社・代表取締役社長の前田裕二さまです。
(会場拍手)
では、ここからの進行はモデレーターの水谷さまにお願いしたいと思います。水谷さま、よろしくお願いいたします。
水谷健彦氏(以下、水谷):では、さっそく始めていきたいと思います。よろしくお願いします。
一同:よろしくお願いします。
水谷:本題に入る前ですけど、まあ、みなさん若いですね。
前田裕二氏(以下、前田):そう……なんですかね?
石田裕子氏(以下、石田):お2人は若いです(笑)。
水谷:成田さんが今、27歳?
成田修造氏(以下、成田):今年、27歳になります、はい。
水谷:前田さんが……。
前田:僕は今年、29歳です。
水谷:29歳ですか。石田さんが35歳?
石田:そうですね。
水谷:若いですよ、十分。
今日は「抜擢される側の人材」としてお話していただくわけなのですが、若くて、それも今をときめく会社の重責を担っている方々です。いわゆる取締役や社長、そういったポジションなんですよね。
今、僕は43歳なのですが、隔世の感がありますね。今から10年くらい前は、そんな時代じゃなかったなと思います。だから、今をときめく、すごく注目されている会社の幹部を、若手たちが担うような時代じゃなかったんですよね。
最近のIT領域の進化に伴って、重責を担う若い方々が増えてきていると思うんです。みなさんは、まさにそのど真ん中にいるわけですが、今後、日本でそのスピードは絶対に加速するじゃないですか。
そういう意味では、みなさん自身の「抜擢された側の経験」「こういうことをがんばって成果を出した」「すごく大事にしてきた」といった話は、これからそういったことを検討される企業さんにとって参考になると思っています。今日は、そういった話をしていきたいと考えています。
前田:わかりました、よろしくお願いいたします。
水谷:一応、事前に少し質問を用意させていただいておりまして。1つ目のスライドを見てみてください。「年上の部下をマネジメントする秘訣は?」とありますが、当然、抜擢をされるということは、自分より歳が上の人、経験が上の人を部下としてマネジメントする役割を担うわけですよね。
チヤホヤしているだけでよければ簡単かもしれませんが、時には仕事のクオリティを指摘をする必要が、絶対にあるわけですよね。そういったとき、どうしてきたのかを聞いていこうと思います。では、まずは成田さんからお願いできますか?
成田:はい。私がクラウドワークスに入ったのは、ちょうど22歳で、大学4年生のときでした。まだ4〜5名くらいしかいない創業期の会社だったので、当時はマネジメントらしいマネジメントはなかったんです。
そこから1年くらいで人数が30名になり、上場させていただいた後は200名くらいの会社になりました。人数が多くなるタイミングで、マネジメントのあり方を自分なりに学ばないといけない状況がきたことがそもそもの前提でした。
そのときに思ったのは、どんなに年齢を重ねようが、経験を重ねようが、「すべての業務ができる」はあり得ないんです。
会社のなかでできることは、人それぞれ違います。そういう人たちの働く環境や能力をどれだけ発揮できる環境を作れるかを、すごくフォーカスしました。それは、今も変わらずやっていることです。
僕の役割は、各人の能力が、会社のビジョンや理念にまっすぐ向かうように、ある意味統合し、昇華させていくことです。メンバーそれぞれの役割をどれだけ全うできる環境を作り上げるかに集中することが、僕よりも経験ある人材をマネジメントする大きなポイントだと意識しています。
水谷:執行役員や取締役の仕事として、全体のデザインをして、組織が円滑に動けるようにする役割は、確かにあります。
一方で、ある局面において影響力を発揮しなきゃいけない。それは「いいよ」と引き上げる影響力もそうだし、「それじゃダメだぜ」もあるじゃないですか。この瞬間ですよね。
成田:まさにそういう局面がありました。年上のメンバーなのですが、捉え方や目線が低いタイミングは当然あるわけなんですよね。
やはり、自分自身が会社のビジョンや理念、1つの大きなミッションのなかでなさねばならないことをフラットに伝えて、捉える。そのため、自分自身としては、あまり私利や私欲、自分がこうしたいというものがないんです。社会からの要請に基づいて、会社としてやらなければならないものがなんなのかを適切に理解し、メンバーに伝達できるかに集中しています。なので、話す内容が間違っていることはあまりなくて。
むしろ、それが聞き入れられるように、自分の感情を抜きにしてフラットにできるか。ここに重点を置きながら、日々のコミュニケーションをしています。それは社長であってもあまり変わりはないです。社長に対しても同じように接しますし、一新卒に対しても同じように接する。そういった役割を、自分自身は意識してやっています。
水谷:なるほど。だから、「成田という自分の人格がなにか言っている」というよりは……。
成田:そうです。クラウドワークスという会社が、社会に対してどういう影響なのか、どういうことをやらなければならないのかという視点で話すように意識していますね。
水谷:なるほど。だから、年齢差は関係ないよということですね。
成田:まったく関係ないですね、はい。
水谷:例えば、部下の提案書のクオリティが低かったり「もっとこうしなきゃダメだ」みたいな話があったりするじゃないですか。そういうとき、どう向き合っていますか?
成田:ええと、それは……、意外に「ダメだ」と言い切ります。
水谷:おー、言っているんですね。
成田:はい。「ダメなもんはダメである」と。ただ、そこで自分自身が、どちらかというと経験で示せるものが少ない。相対的に言うと、年齢が低い、あるいは業務経験が少ない分、相対的には示せるのは実践です。そのため、ある意味、自分が率先垂範しながら、どうすればいいのかを具体的に要望として伝えるようにしています。
これはテクニカルな話ですけど、よくやっていることで。営業するならば、別に営業も自分でやりますし、プロダクトをこういうふうにしなければならないとなれば、自分で考えて伝えます。だからあまり、なんて言うんですかね、大御所の大先輩方のように「実績がなにかを語っている」というよりは、「自分が率先垂範することで示す」ですね。
もちろん、ベースとなるスキルは当然ない、マネジメントはできない前提ではあるとは思います。
水谷:なるほど。実際に仕事の能力をちゃんと見せつける、ということですね。
成田:「見せつける」という表現はおこがましいですが、自分ができる範囲で、「その人たちよりもこれはうまくできる」と思ったものに関しては、適切に行動して示す。これは若い分、やっています。
水谷:なるほど。石田さんからもいろいろお話が出てきそうですけど、どうですか?
石田:そうですね。私の場合は、社会人4年目くらいで、いわゆる抜擢をしていただいて、初めてマネジメント職に就きました。いろいろと無数に失敗して、たどり着いたのは、「無理にマネジメントをしようとしない」です。
そのため、年上年下、異性関係なく、チームで成果を出すこと。シンプルにそこだと思って、今までやってきましたね。
水谷:なるほど。私は企業の研修などもやっていて、実際に年上の部下を抱えるマネージャーの方々から相談されるんですよね。そのなかでよく出てくるのが、「本当はもっと厳しく言わなきゃいけないのに言えない」「言っても受け取ってもらえない」がすごく多いんですよ。
そういう意味では、極力マネジメントしないというのは、相手が優秀な人であれば成立しますが、そうじゃない場合は難しいところがあると思うんです。そのあたり、どうですか?
石田:そうですね。まずは、それぞれの強みを認識することからかなと思っています。それが「結局、マネジメントしている」と言われればそうなんですけど。
チームで成果を出すには、「この人にはこういう役割、目標をセットしよう」「逆にこの人にはこういうミッションを与えたほうが伸びる」を、その都度判断して、成果を出す体制を構築するのが仕事だと思っていました。
成田:嫌われる、あるいはその人を傷つけてしまうのではという、人間的な……そもそも持っている根源的なものを、基本的には取っ払う。
石田:そうですね。
成田:そのために重要なのは、マネジメントバリューです。会社のなかでマネジメントに求められる行動指針や、バリューがなんなのかを、会社のなかで明確に定義できていれば、それに基づいて基本的に行動することが推奨されますし、評価されます。
次の仕事や報酬などに紐づく体系さえ作っていれば、基本的にはうまくいくはずだという認識です。サイバーエージェントさんを参考にして、我々もチームを率いて成果を出すことを重要視していまして、我々の場合はそこに理念を加えて「理念に基づいて、チームを率いて成果を出す」というマネジメントバリューの大元を作っています。それに準ずるものであれば、どんなに嫌われようが、嫌がられようが「それは善である」と全員に伝えることをやっています。若手でもマネジメントしやすい環境を作るよう、努力しています。うまくいくかどうかは別として。
水谷:冒頭の話と近いですよね。誰かじゃなくて、会社の考え方。
成田:そうです。チーム、会社、社会のなかで、「じゃあ、どういうマネジメントをしますか?」だと思うので。
水谷:なるほど。石田さんは、それぞれの強みをわかったうえで、それを引き出す働き方をすることで、先ほど僕が言ったような「厳しく言わなきゃいけない局面」は……まあ、ゼロにはならないでしょうけど、少なくできる感じですか?
石田:そうですね。でも、あまり嫌われたくないという発想は、もともと持ってはいないんですが。
水谷:力強いですね(笑)。
石田:(笑)。ずっと「あなたはここがウィークポイントだよ」と言い続けるよりも、その人の伸ばせる力にフォーカスをしたほうが、チームとしてはいいケースもあります。場合によっては、ちゃんと弱みに向き合って、そこをどんなに嫌われようがずっと言い続ける局面も必要だと思いますね。
水谷:前田さんはいかがです?
前田:僕はですね、個人的に印象的なエピソードとしては、一番最初に50代の方をマネジメントすることになりまして(笑)。
(一同笑)
水谷:ええと、前田さんが何歳のときですか? それは(笑)。
前田:26……ですね。
水谷:なるほど。
前田:質問が、「年上の部下をマネジメントする秘訣は?」ということなんですが、結論から言うと、まずは徹底的にリスペクトしてもらえるための努力をします。リスペクトの方向性には、ハード面とソフト面の両方があると思っています。
ハード面では、端的に言うと、僕が彼よりできる部分を徹底して見せつける。例えば、僕は営業が得意です。彼と一緒に営業に行って、自分のほうができる部分をはっきりと見せる。これをくり返しているうちに、次第に頼ってもらえる構造になります。これがハード面ですね。
彼からリスペクトされるような営業成果を出すには、その裏側において、圧倒的な努力や仕事へのコミットメントが必要です。それをやりきる自信があったので、彼の前では成果を出し続けていました。
ソフト面では、彼が抱えていた「子供の進路をどうする?」など、一見仕事が全く関係ない問題をテーマに、飲みに行ったりしていました。1人の人間として彼をリスペクトし、リスペクトされる。そういった相互の信頼関係を強く意識していました。ハードとソフトの掛け算だったような気がしていますね。
そして気がつくと、ある時、彼からすると僕は子供に親しい年齢だと思うんですが、仕事上では信頼できるパートナーになっていました。
水谷:……すさまじい人間力、だと思いますね(笑)。そのハード面……仕事のスキルを見せつけて、尊敬やリスペクトを集める。これ、よくわかるんですよ。それを営業の局面でやったんでよね。
もう一方、子供の進路相談を夜な夜な聞いて、その信頼や感謝も集めたということだと思うんですが。まず、ふつうは「相談をしてくれない」と悩むじゃないですか。そこはなにかあるんですか?
前田:人間関係は鏡みたいなものだと思っています。まず、僕の悩みや弱みを打ち明けて、すごく心が通じ合う状態を作っていくということですかね。
僕は、組織というものは感情で動いていると思っています。左脳で動かそうとがんばりますが。まさに僕も今日、ここに来るまで組織の問題に立ち向かっていました。
組織のほとんどの問題について、一見、左脳的なロジックで捉えてしまいます。でも、その裏側には「こいつのこと、あまり好きじゃないよな」といった、どちらかというと感情的な要因があったりします。その根っこ部分の膿みたいなものを出さないと、表面的にはよくても、根本的には解決していない状態になってしまうなと。
とにかく僕は、社員が抱えている仕事上での悩みより、どちらかというと、その人の人生全体における課題や悩みに向き合うように意識しています。それを「ソフト」と表現しました。
水谷:自分から先に吐露することで、相手からも引き出すということですね。そして、相談に対しても真剣に真摯に向き合っている。そして信頼関係を築き上げ、結果的に上司・部下の適切な関係になっていくんですね。
前田:そうですね。今のは、どちらかというと僕個人としての目線です。1つレイヤーを上げて、「どんな組織だったら今の話がワークするのか」という、組織側の目線でも考えると、ストック or フローの視点が大事だと思っています。その人が会社に対して貢献してきたこと、いわゆるストック的なものが評価される場なのか、あるいは、瞬間最大風速的に出したフロー的成果が評価される場なのか。組織の評価体系や空気感がどちらに寄っているかによって、自分のやり方が通用するかどうかが変わるかなと認識しています。
もともと僕は、投資銀行出身ということもあって、思想がフロー寄りなんですよね。投資銀行では機関投資家向けに日本株の情報提供をする仕事をしていたんですけれど、お客様は、「トヨタは、20年前はこういう株の動き方をしたんだよな」という昔話を聞きたいわけじゃない。昨日起きたニュースに対して、マーケットが今日、そして将来、どういうリアクションするか、すなわち、現在〜未来の情報や洞察に対して価値を置いているクライアントが多かった。
よって、現在進行形の努力がインパクトにつながりやすいビジネスだった。だからこそ、僕みたいな新卒1年目が、20年目の社員の人たちに立ち向かって、彼らのストックに対して、フローの努力で立ち向かっていくことができた、越えていくことができた。たぶんそれは、組織のルールに恵まれていたんだと思っています。
僕は、ストックに寄り添って生きている人たちをあまり増やしたくないと、少なくとも今の自分の組織においては思っています。この瞬間をすごいがんばっている人たち……当然、会社の過去の栄光に貢献してきてくれた人たちに対するリスペクトは絶対忘れちゃいけないんですが、とはいえ、今出しているバリューをちゃんと見極めて、それに報いていくことは本当に大事だと思っています。
たぶん、親会社であるDeNAもある種投資銀行的に、フロー的な評価軸を持っていたのだなと思います。そのおかげで自分は、インターネット事業の経験が人一倍浅い中で、フロー的現在進行形努力でもって、価値を出せたのかなと。
水谷:なるほど。だから、前田さんの考え方と、その組織の「ストックとフローだったらフローじゃん」という価値観がすごく合っていたということですね。
成田:そう考えると、ルールを作るということなのかもしれないですね。ルールを明確にすることと、自分をしっかりさらけ出して、できないことはできないと言う、助けをほしいときは助けを求めていくのは、共通のものなのかもしれません。
水谷:ちなみにクラウドワークスさんは、今のストックとフローだったら、フローだとか、組織マネジメントの価値観のルールみたいなものはありますか?
成田:うちはどちらかというと、ストック重視だと思いますね。当然、業務なので、「そのクオーターでどうこう」という話はあります。とはいえ、そこに対して中長期でどう貢献してくれるかは、人材育成プランなど、全社的に組みながら考えていきます。多少そこでダメでも「じゃあ次どうする?」は考えようという文化が強いと思いますね。
たぶん、サイバーさんもそっちのほうだと思うんですけど。
石田:まさにそうですね。
成田:うちはそれを比較的参考にさせていただいて、ストック型を選択しているというのがあるかもしれないです。ルールはけっこう明確に細かく決めますね。「この組織においては、これがいいよね」とか。
うちのスローガンというのが今、「いいチームを作りましょう」なんです。その「いいチームの定義」を各チームで作ってもらっています。
そのルールに基づいて、「じゃあ今いいチームになってますか?」を日々問うたり、バリューに基づいて自己申告で評価をするような仕組みを作ってみて、それに対して「自分なりにどういうふうに振り返りますか?」とすることで、少しでも循環していくような、そんな仕組みなんです。
前田:それ、おもしろいですね。あえて「いいチーム」という抽象的な表現で、定義をぼやっとさせているじゃないですか。各チームに主体性と当事者意識を持たせるために、抽象的なテーマ設定にする。
成田:そうです。まさに。
前田:すごいですね。なるほど。へー、おもしろい。
水谷:あえての抽象度ですよね。
成田:いいチームが、しかも「いい」もひらがなで「いい」としていることと、人によって感情的な「いい」になりやすいと思うんですよね。
「良い」と漢字にして書いちゃうと、なにか成績のようなものに結びつきがちなので。そうではなく、「あなたとしていいものはなんですか?」と定義するために、ひらがなでわざわざ使うなどの工夫をしています。
前田:おもしろい。なるほど。
水谷:もともとは今の話、「年上の部下をどうマネジメントするか?」でしたけど。
成田:すいません(笑)。
水谷:いや、大丈夫ですよ。本人側の考え方、例えば「ソフトとハードでちゃんと影響力を出そう」も、会社の組織のルールですよね。そこも連動させることで、よりマネジメントしやすい環境を提示できるんでしょうね。抜擢された人材にはね。
株式会社カオナビ
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