2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
シェアリングエコノミー協会インタビュー(全1記事)
提供:一般社団法人シェアリングエコノミー協会
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――シェアリングエコノミー協会の代表理事であるお2人ですが、まずは協会を立ち上げた経緯を教えてください。
上田祐司(以下、上田):(重松氏に)2年前にうちの会社に講演にきていただきました。その1年後くらいに交流会を開いて社長さんみんなで懇親をして、そのあと「COMMUNE 246」という表参道のイベント会場で初めてエンドユーザーを呼んでshare! share! share!というイベントを開催しました。
最初は尖った人だけだったんですけど、口コミが口コミを呼んで広がっていきました。そこに(衆議院議員で自民党IT戦略特命委員会事務局長の)福田(峰之)先生がいらっしゃって、「これはおもしろい」「協会作るぞ」と。
重松大輔(以下、重松):以前は各自バラバラにやっていた感じでしたが、やはり新しい業界なので、世の中とうまく対応させながら業界的なルールをきちんと作っていくといい、ということを教えていただきました。
――なるほど。1年近くやってこられて、業界は変わってきました?
重松:やはり認知度は少しは上がったかなという手応えは感じています。今日のイベント(シェア経済サミット)の通りですよね。
朝から鶴保大臣(情報通信技術(IT)政策担当大臣 鶴保庸介氏)がいらっしゃって、今川さん(総務省 情報流通行政局情報流通振興課長 今川拓郎氏)、犬童さん(内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 内閣参事官 犬童周作氏)、平井先生(衆議院議員 自民党IT戦略特命委員長 平井卓也氏)など、錚々たる政府や自治体のキーマンが賛同してくださって。
上田:できて10ヵ月の協会に大臣さんがいらっしゃることなんてなかなかないですよね。
――新たにパソナやfreeeがシェアリングエコノミー協会との提携を発表されましたが、周辺のサービスにも徐々にシェアリングエコノミーが広がってきていますね。
上田:これまで会社が個人を雇用していたのが、フリーランスが働くというふうに社会システムが変わってきているんですよ。そうすると、会社が提供していた機能が、今後フリーランス一人ひとりをどうしていくのかということに変わっていきます。
そういった部分を代わりにやっていたのが、パソナさんやfreeeさんですね。freeeさんはクラウド会計ソフトですし、パソナさんはグループ会社にベネフィット・ワンという福利厚生の会社がありますから。そういう意味では、いま会社の管理部がしているような、製品・サービス提供以外の周辺の仕事が、どんどんこれまでと違ったスタイルで出てくると思います。
例えば、我々(ガイアックス)が提供させていただいてる個人認証のサービスは、まさに入社手続きみたいなものです。ホストさんが入社するときに「この人は本当に本人ですか」というチェックをするとか。あとは、保険のサービスもありますね。
重松:保険会社さんには今回もスポンサードしてもらったんですけど、CtoCが広がっていくとなにかしらのトラブルが出てくるので、その上で安心して取引できるようにという意味で、保険が必要になってきます。
上田:これまではなにかミスしても個人が責任を負うことはなくて、会社が代わりに責任を担保したんですよね。じゃあこれからフリーランスの個人が担保できるかというと、できない。そこを保険会社だったりベネフィット・ワンさんみたいな福利厚生会社が担保してくれるということです。
――安心がちゃんと確保されれば、シェアリングエコノミーがどんどん加速されていきますよね。
重松:おっしゃる通りです。安倍政権の副業推進や、働き方をどんどん変えていくというトレンドは、おそらくもう戻ることはないと思うので。そのなかでフリーランスが増えたときに、どうやって安全、安心を担保できるかということですね。どんどんマイクロアントレプレナーが増えていきますから。
――本日のイベントのなかで、将来税収が減っていった場合、政府がその分をシェアリングエコノミーでまかなうこともありえるというお話がありましたが、そういう意味では、政府や自治体からの需要も大きいのでしょうか。
重松:かなり危機感を持っていますね。健全な自治体は危機感を持たないとおかしいんですよ。子供たちの世代のことを考えると、税収は減る、養わなきゃいけない人は増える、年金も払わなきゃいけない。完全に破綻するのが目に見えているんですよね。
そうした時に、やはりシェアの力でできることがあるのかなと思います。夢のサービスだというわけではないですが、助け合っていかなければいけないという大前提があるので。そこにみなさんが危機感を持っていますね。海外を見ると、わりと自治体がリーダーシップをとって主導しているんですよ。今回のイベントでは、それを見せられたのがよかったですね。
上田:例えば、アメリカってシェアリングエコノミーが進んでいるように見えますけど、実は州ごとにまったく法律が違って、シェアリングサービスが禁止されている州と禁止されていないイケてる州があるんです。それで、イケてる州からビジネスが立ち上がってるんですよね。自治体と言うと違和感がありますけど、アメリカも結局そうなんですよ。
重松:それで、日本も一律禁止ではなくて、地域によって事情が全然違うんだから、本当に困っていてライドシェアなどを必要としているところからやっていこうというのが安部政権の一貫した考えですね。そこはすごくいいなと思います。
――しかし一方で、現状ではまだ規制などもあるわけですが、そのあたりについて協会としてのお考えは。
上田:シェアエコは少しややこしいんじゃないかという印象があって、もっとセーフティなものなんだというイメージを持っていただくことが必要だと思っています。そもそも、シェアエコを認めないというのが、消費者保護になってないと思うんですよ。
僕らはシェアリングエコノミーのサービスを提供している会社だと思われていると思うんですけど、単に決済しているだけですよ。手数料をいただいているだけなんですよ。実際サービスを提供しているのは消費者なんです。
僕らを叩いていただいてもいいんですけど、例えば車を買ってもレンタカー業法があるがゆえに車を人に貸せないという、この世の中の消費者は本当にかわいそうだと思うんです。借りてもいいと言っている人がいて、貸してもいいと言っている人がいて、すべてが透明化されているこの世の中で。
――需要はあるし、自己の責任できちんとやりますよという話なのに、ダメだということになってしまっているということですね。
上田:そうなんですよ。一体、消費者保護のためにサービスを作っちゃダメだと言っているのか、既存の事業者さんがあるから使っちゃダメだと言っているのか、そこをちゃんと見極めないと。シェアリングエコノミーは日本では許しませんということについては、みなさんまだ気づいてないですけど、潜在的に消費者が心を痛めるべきなんですよね。
――なるほど。もっと便利な世の中になるチャンスが奪われていると。
上田:もっと言えば、自分自身が買ったものをホストとして世の中に提供できるチャンスを奪われているということです。僕らなんて決済手数料だけですよ。7~8割はその方に入りますからね。
――でも、先入観かもしれませんが、例えばライドシェアなどはちょっと怖いイメージがあるのですが。
重松:そうですよね。僕も最初すごく怖かったです。「えっ? 他人の車乗るの?」みたいな。
上田:でも、1回使ったら「なんだこれは!」感が半端ないです。だってサービスに自信がなかったら、紹介プロモーションをメインに据えないですよね。よほど自信があるんですよ。
――Uberなどはまさにそうですよね。最初にどんどんキャンペーンを打っていって。
重松:やはり実際に体験させていくと、それが当たり前になってきて、他人に勧めたくなる。それで、紹介クーポンをたくさん発行して、一気にグロースしたんですね。
――サービスの質としてはどうなんでしょう?
上田:シェアリングエコノミーって「今はサービスレベルが低いですけどマシになっていきますよね」みたいな論調が多いんですけど、これはまったくの誤解で、既存サービスよりも今日時点で遥かに上ですよ。それが今後さらに上がっていくという感じですね。
重松:すごくリーズナブルで、めちゃくちゃホスピタリティがあるオーナーさんがいますよね。そういう方はすごく人気なわけですよ。そうすると「今までの既存のサービスはなんだったんだ」というふうになっちゃうんですね。
上田:サービスの売上100パーセントフルコミッションですよ。普通のサラリーマンがサービス精神で勝てるわけないし、サービス精神のない人を会社がクビにするかって言ったらしないですよ。シェアエコの世界ではレートが悪いとどんどん仕事がなくなる。
重松:本当に仕事こないですよ。逆に、よければいいだけバンバンくるし。
――なるほど。サービスレベルが高いオーナーが残っていくということなんですね。提供する側からすると、すごくシビアな世界ですね。
上田:シビアです。しかもすべてのサービスが最新のテクノロジーで動きますから、全部が透明化されているわけですよ。昔の制度に則って、年に1回点検に行って安全をチェックしますというのが本当に安全なのかという話ですよ。今はお客さんが気づいたことをどんどん本部に口コミできて、レーティングできるわけです。もう四六時中見られているんですよね。
重松:油断ならないですよ。
上田:ライドシェアに至っては、どこに行っているかをGPSで全員が見られるし、KIDSLINEさんが今日のセッションで言っていましたが、本当はできればカメラを導入していきたいと思っています。
重松:そうですね。カメラを導入するといろいろなトラブルがなくなるんです。いろいろな要素があるわけです。「鍵は大丈夫か」とか。そうしたら「スマートロックにすればいいいじゃん」みたいに、今までできなかったことが、どんどんITの力で解決していってるんですよ。そうすると個人間の取引がますます増えていきますよね。
――一方で、まだ日本では最初の1回を試すハードルが高いと思うんですが、その点を解決するための施策はありますか?
重松:シェアサービスを1つ使ったら、ほかのシェアサービスも使ってみたくなるんですよね。やっぱり仕組みを体で理解する。
上田:地方自治体さんもたぶん同じ心理で、新規で人を雇ったり、保育園を作るよりも、シェアで済ませたらいいのはわかっていらっしゃると思うんですよね。でも最初の1回が怖いわけですよ。
今回、認定マーク(条件を満たすシェアサービス事業者に授与される予定)を作る意図としては、これだけ政府と一緒にディスカッションしてきて、自主ルールを作って、認定マークも作ったことで、一定の信頼が担保されていますよねということで、最初の1歩をいきたいなということです。やはり自治体さんから告知してもらったら、サービスの印象が全然違いますよね。
重松:この会社は認定マークあるから大丈夫ですよ、問題ないですよと公の人たちが言ってくれる。韓国はそういう感じなんですよ。こういうイベントにも全部政府がお金を出しているんです。
あとは、実際に体験してもらうことですね。
上田:マスコミさんの取材って重要だと思っていて、ビジネスライクな取材じゃなくて、「やってみた」みたいなああいう体験。我々も「TABICA」をすごくご利用いただいていて、そういうものをテレビでやったりすると反響があるんですよね。
重松:「おもしろいじゃん」とか。今までにない体験ですよね。
上田:このビジネスは伸びているとか、どういう経営者だとか、そういう取材もありがたいんですけど、できればイベント体験みたいなものがあるとさらに広がっていくと思います。
重松:体験していないと本当にわからないんですよね。一方で、1回使うと中毒性がある。海外に行くとUberとか本当にやばいですよ。
上田:もうUber以外考えられないですよ。
重松:話す必要もないし、支払いは終わっているし、しかも安い。明朗会計。
――今、認定マークのお話が出ましたが、これはそもそもどういった経緯で構想しているのですか?
上田:認定マークというのは結局グレーゾーンじゃなくて空白地帯なんですよ。今までイメージしていなかったことが実際に取引として発生して、「これ一体なんなんだ」という。これについて、地方自治体とか世の中の人が使うにあたって「認定マークがいるよね」という話になっています。
シェアリングエコノミーの普及にあたってやるべきことは2点あって、1つは我々が作っていくフレームワークを基に実際の安全性を高めましょうと。これは既存の業界の法律に基づいた安全性もあれば、シェアリングエコノミーならではの安全性を高める必要性もあって、両方あわせて高めていきましょうと。
もう1個は法律を守りましょうという点なんですけど、法律を守るといっても空白地帯なのでやり方がない。かといって「白黒つくまでやらない」というのは違いますよね。試しに裁判してみて白黒つけるのも違うと。官公庁に聞いても向こうも答えられない。じゃあこのままなにもせずに行くんですかというと、それも違うでしょうと。
我々が出した解は、弁護士さんのように法律を専門とされている方に聞いて、「これは明らかに違法とまではいえないですよ」というものをいただいたものにマークを付けましょうということです。
重松:あんまりがんじがらめにすると本当にイノベーティブなサービスって絶対に生まれないんですよ。すると、そういうサービスが結局全部海外に持っていかれちゃうんですよね。なので、そこはあまりガチガチにせずにという意味です。とはいえ、もちろん全部フリーでどうぞというわけにもいかないので、一旦弁護士さんの意見はもらうということですね。
上田:今日のイベントで感じていただいたと思うんですけども、我々業者は法律に照らしてどうかということさておき、「安全性を高めよう」というのは本気なんですよ。
そういう意味では、トライアンドエラーを繰り返して、フレームワークを組み立てて、いざ法律を作るとなったときにどういうところを押さえないといけないのか、というところを一生懸命やっているわけです。それを一切禁じていたら、法律すら作れないですよ。全部禁じていたら、結局その間に外国勢に持って行かれちゃうんですよ。
――現にUberやAirbnbは海外からですね。
上田:そうなんですよ。グローバルで資本投下されていたら、サービスレベルも上がりますよね。
重松:Uber何人いるって言ってましたっけ? 確か8,000人くらいいるって言ってましたよ。
上田:本来は海外のサービスにも勝てるんですよ。本来は勝てるというのは言い過ぎですけど、日本企業としてこれは勝つべきジャンルなんです。
というのは、例えばウイルスソフトとかスマホのOSとか、表計算ソフトとかグラフィックソフトとか、これはやっぱりグローバルな戦いになります。でも、シェアエコってホストも日本人、ゲストも日本人。本来は日本で完結し得る数少ないチャンスですよ。これを落としたらなにを守るんや、という。
重松:鎖国をするかチャレンジするかどっちかなんです。鎖国をしていたら滅びるだけですよね。
日本のマーケットは結構大きいので。人口はどんどん減っていくので今後どうかはわからないですけど、今はそこそこのマーケットがあるところなんです。しかも言語の壁もあるわけですから、海外勢は入りにくいはずなんですけど、あれだけの資本を投下されたらね。
上田:早く盛り上げないとね。
重松:でも今回のイベントで、みなさん熱い思いがあるということを再認識しました。
上田:政府の方もいろいろ来ていただきましたし、大手企業さん、一流企業さんもスポンサーというかたちでご支援していただいたので、それは本当によかったですね。
重松:あとはやはり優秀な人材がどんどん入ってくるようにしていきたいですね。
上田:どの会社も人材難というか、優秀な人はたくさん来ていますが、それ以上に会社が成長しているので、ぜひ多くの人材がこの業界に流れ込んできてほしいですね。
――例えばどういった職種の方ですか?
重松:それは本当にさまざまです。ビジネス開発もエンジニアもそうですし、うち(スペースマーケット)はまだ30人くらいですけど、社員弁護士もいますし、自治体から出向しているメンバーもいます。
自治体のことがわかる人がいると自治体とのコミュニケーションも変わってきますし、弁護士がいるとスピードが違います。「これってルールあるんだっけ?」ということがたくさんあるので、いちいち弁護士に相談するより、すぐそこにいたほうが、スピードが格段に変わりますよね。
――ということは今、働き手からしてもチャンスですね。
重松:チャンスです。
上田:こういうのは早めに入らないと。早めに入れば入るほど、あっという間にプロフェッショナルになりますし。協会と提携させていただくのも、できれば早めに提携していただいたほうがいいですね。
――なるほど。これからの業界の動向も楽しみです。今日はいろいろとお話しいただきありがとうございます。
重松:ありがとうございます。
上田:ありがとうございます。
一般社団法人シェアリングエコノミー協会
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