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Day2 基調講演 -共に生きる-(全5記事)

2017.01.17

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誰もが「共に生きる」社会は創れないのだろうか? サイボウズ青野代表が投げかけた問い

提供:サイボウズ株式会社

「共に生きる」をテーマに、サイボウズが開催した「Cybozu Days 2016」。2日目の基調講演は、サイボウズ青野代表がゲスト登壇者を迎え、「情報システム部門と現場部門」「経済格差」「男女」という3つのテーマで語り合い、それぞれが共に生きるためのヒントを探ります。いよいよ働き方改革への機運が高まっていますが、問題はその先の未来にあります。「もっとみんなが助けあって共に生きられる社会が創れないでしょうか?」。セッション冒頭、青野氏から大きな問いが投げかけられました。

チームワークあふれる社会を創る

青野慶久氏(以下、青野):みなさま、こんにちは。サイボウズの青野でございます。本日は、はるばる幕張メッセまでお越しいただきまして、誠にありがとうございます。

昨年までは都内のホテルで1日の開催だったんですけれど、今年は「Cybozu Days」ということで幕張メッセの大変広い場所をお借りしまして、2日間に渡って開催させていただいています。

昨日はDay1ということでユーザーのみなさま限定で1,000人近くお集まりいただき、大変盛り上がりました。その盛り上がりのなか、トランプ氏が大統領になるという非常に記憶に残る1日となりました(注:開催は11月9日、10日)。今日もDay2、ぜひお楽しみいただければと思います。

今回のテーマは「共に生きる」です。この社会が多様化するなか、私たちはどのように多様化を進めていけばいいのか。共に生きられる社会を創っていけばいいのか。それを考える2日間にしたいと思っております。

2日目はこちらの緑色のゾーンの展示ブースが公開になります。こちらではサイボウズとパートナーさまが共に生きた結果、生まれたソリューションをたくさん展示しておりますので、ぜひお立ち寄りいただければと思います。

立ち寄っていただきましたら世の中こんなに便利なったんだと、そんなたくさんの発見があるんじゃないかと期待しております。どうぞ展示物のほうも後ほどよろしくお願いいたします。

サイボウズですが、この数年、大変注目いただける企業になってきました。たくさんメディアにも取り上げていただくことができるようになってきました。ただ、私たちが目指している理念があります。それがこちらになります。

まずは、チームワークあふれる「社会」を創るということ。そして私たち自身がチームワークあふれる「会社」であるということ。この2つが私たちの目指すところになります。

では、このチームワークあふれる社会を創るためになにをしているのか? それが私たちの事業のグループウェアになります。さまざまな情報をチームで共有することで、もっとみんなが楽しく働ける、もっと効率よく働ける、そんな社会を創っていきたいと思っております。

そのために今、私たちが出しております製品、主力商品がこちらになります。中小企業さま向けの「サイボウズOffice」、大企業さま向けの「Garoon」、それからアプリケーションを開発するための基盤となる「kintone」、そしてメールを共有する「メールワイズ」というソフト、そして無料で家族でもお使いいただける「cyboze Live」、これが今の私たちの主力商品になります。

100人いれば100通りの人事制度を

ただ、私たちにはもう1つ理念があります。チームワークあふれる会社を創るということです。

残念ながらサイボウズは、過去、チームワークがまったくあふれていない会社でした。2005年のサイボウズの離職率は28パーセントです。4人に1人は1年後にいない。長時間労働は当たり前、休日出勤も当たり前、そんな会社でした。

これはいかんということで方針を改めました。その時に作った方針がこちらです。100人いれば100通りの人事制度。

つまり、一人ひとり個性が違うんだから同じ働かせ方をしようと思っても駄目だと。長く働きたい人もいれば、短く働きたい人もいる。では、その一人ひとりの個性に合わせて多様性を受け入れて職場を創っていけばいいんじゃないか。こんな働き方改革に取り組みました。

例えば、働く時間、場所を自由に選べるようにしよう。それから副業。サイボウズ以外のところでも自由に働いていいよ、副業もできるようにしよう。それからサイボウズを1回辞めても戻ってこれるようにしようと。

こんな人事制度をたくさん入れましたところ、離職率がこの赤の線のようにダダダダダっと下がってきまして、28パーセントあった離職率が4パーセントを切るところまで下がってきました。結果的に、業績も最近は上向いてきております。

160万回再生された動画で伝えたかったこと

こんなことをしてますと、メディアの方もなにかおもしろい会社があるぞということでずいぶん取り上げていただきました。

最近は海外からも取材が来るようになりました。これは今年、デンマークの公共放送ですね。デンマークのNHKのようなテレビ局から取材を受けたり、スウェーデンの新聞社から取材を受けたり、こんなことも起きています。

それから先月はダボス会議、ダボス会議のYoungGlobalLeader's、40歳以下のグローバルリーダーを集める会がなんとこのサイボウズの日本橋オフィスで開かれました。働き方についてヤンググローバルリーダーとディスカッションする、こういった機会も得ることができました。

私たちはこの働き方改革のなかで気づいたことがたくさんあります。例えば、こちらです。ワーキングマザー。

ワーキングマザーは本当に大変なんです。働きながら子育てをする。本当に大変です。でもこれがわからない人が多過ぎる。なぜこんなに知らないんだ、と。私も知らなかったのであまり偉そうには言えないんですけれど。

これはもっと発信しないといけないということで、女優の西田尚美さんを起用しまして『大丈夫』というタイトルで、3分の動画を作りました。これをちょうど2年前のこのイベントで発表しましてインターネットで公開したところ、大きな反響を得ました。

政治家や芸能界の人たちも巻き込んで大きな議論が起きました。動画の再生回数もまだ伸びておりまして、160万回を超えるところまで来ています。

ついに変わるときが来た

でもなかなか働き方改革は進みません。そこで昨年は「変える覚悟、変わる覚悟」というテーマでこのイベントを行いました。「もう変えよう」と。ここに集まった人から働き方改革をしていこう。そんなテーマで去年は取り組ましていただきましたところ、どうでしょう、少しずつ社会が動いてきたような気がします。

昨年の総務省に続きまして、今度は霞が関全体で官僚の人たちが働き方改革に取り組んでくださるようになりました。私も外部アドバイザーとして呼んでいただきました。これは河野太郎さんのプロジェクトです。

それから厚生労働省では働き方の未来を考えた上で政策に落としていこうということで、「働き方の未来2035」というプロジェクトが立ち上がりました。これに私も呼んでいただきまして、働き方の未来について提言させていただきました。

ここまで来たらもう一歩と思っていたら、ついに来ました。9月に安倍総理がこの働き方改革が「最大のチャレンジだ」「これから国家を挙げて、これに取り組むんだ」と。こういう方針を出してくださいました。

そして「働き方改革実現会議」が開かれ、今日この後、ゲストでご登壇いただく白河桃子さんもこの会議に参加されています。どうでしょう。ついに変わるときが来た。そういう実感を持っています。

ただ、始まったばかりです。先日、電通で大変痛ましい事故が起きました。まだまだ働き方改革、これからです。まだまだ私たちは古い価値観と新しい価値観が葛藤するなかで改革を進めていかなければなりません。でもぜひ、ここに集まったみなさんから一緒に進めていきましょう。

働き方改革の先にある未来は?

今日のテーマはこの先です。この働き方改革を進めた後、どんな社会が待っているんだろうか、どんな問題が起きるんだろうかということです。

一言で言うならば、多様化が進む。私はこのように考えています。長く働く人もいれば、短く働く人もいる。会社に来て働く人もいれば、自宅で働く人もいる。サテライトオフィスで働く人もいる。男性もいれば、女性もいる。日本人もいれば、外国人もいる。

多様な属性を持った、多様な価値観を持った人たちがどうすれば共に生きられるんだろうか。これが次の大きなテーマになってくると思います。

昨日、トランプ氏が大統領なりました。事前の予想を覆すものでした。今年の6月にはイギリスがEUを離脱する、そういったこともありました。これも事前の予想を覆すものでした。

私たちは自分のなかで当たり前だと思っていることが他人にとって当たり前ではないということを認識しなければいけません。「共に生きる」。これから一緒に考えていきたいと思います。

シングルマザーが陥る貧困の問題

今日はそのなかで3つテーマを取り上げさせていただきます。まず1つ目が経済格差です。いくつかデータをご紹介した上でゲストをお招きしたいと思います。

まず1つ目のデータが、正社員と正社員以外の人の給与格差を示したものです。青いほうが正社員ですね。正社員の人が年齢がいくとともに給料が上がっていくのに対して、赤いほう、正社員じゃない非正規の方々はなんと初任給のままずっと上がらない。なので40代、50代になると倍ぐらい収入に差がつく。こういったデータが出ています。これはなかなか大変です。

次のデータでは、青い点線がGDP、赤い実線が相対的貧困率を表わしています。GDPは上がってきまして、今、日本は横ばいに入ってるわけですけれど、赤い相対的貧困率はずっと上がってるんですね。もう16パーセントぐらいが貧困と。そんなに貧困ってあるんだと思います。

ただこれちょっと聞き慣れない言葉があります。相対的貧困という言葉ですね。調べてみました。

私たちがすぐに想像する、いわゆる絶対的貧困というものは、1日1ドルで暮らす人ということなんです。1日1ドル未満で暮らす人。これは生きていくのが大変ということですね。それに対して、この相対的貧困というものは、今日本においては年間で122万円ぐらいだそうです。

どうでしょう。私が大学生の時、これぐらいですね。大体、月10万円ぐらいで暮らしていました。ただ生活費ですので、学費はそこから出せません。本当にひとりで暮らしていくので精一杯ぐらいの金額ということになります。この相対的貧困という率が上がっていると。

次のデータです。ひとり親世帯になりますと、貧困率がさらに上がります。ひとり親世帯の子供の貧困率、日本はなんと57.3パーセント。つまりシングルマザーの家庭は、2世帯に1世帯は貧困になってしまっている。そういうことになっています。

比べてみますと、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、いわゆる北欧の国は非常に貧困率が低いです。イタリア、フランス、オランダ、ドイツ、メキシコ、オーストラリア、イギリス、カナダ、アメリカ、日本。日本よりひどいのはトルコだけ、こんな感じになってるんですね。

どうでしょう。共に生きられてない感じがします。

自己責任論で問題は解決するのか?

よくこういうことを言う人がいます。 「いやあ、俺も子供の頃、貧乏でさ」みたいに。この貧乏と、現代で起こっている貧困というのはちょっと質が違うそうです。

貧乏というのは、単に貧しい状態。ただ、近くに親がいたり、兄弟がいたり、親類がいたりして助け合ってなんとかしてる状態。例えば、醤油が足りないので醤油をもらいに行くとか、子供を預かってもらうとか、そういうことができる状態です。

しかしながら、現代の貧困というものはもっと大変です。例えばシングルマザー、子供を預かってくれる人もいない。保育園に預けていても熱を出したら迎えに行かないといけない。そうすると、フルタイムで働けない。非正規の時給の安いアルバイトのような仕事しかできない。でも頼る人もいない。これが現代における貧困です。まったく昔の貧乏とは質が違うということです。

よくこの貧困に入ってしまった人に対して、自己責任論を唱える人もいます。「それは本人が悪いんだろう」「努力不足だ」と。意味はわかるんですけれど、どうでしょう。「お前のせいだから、お前が頑張れ」と言ってその人が貧困から抜けられるんならいいんですけれど、そうはならないわけです。

そして、その困ってる人を助けられない私たちもまったく幸せではありません。私自身会社を創業した時、お金には相当乏しかったです。でも周りの人にたくさん助けていただきました。親にも助けていただきました。親類にも助けていただきました。自治体にも助けていただきました。だから今こうやって私はここでサイボウズを経営することができています。

なんとかもっと助けあって共に生きられる社会が創れないでしょうか?

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