2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:新経済連盟
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小澤博史氏(以下、小澤):ありがとうございます。次に海外との対比の話を少しできればと思います。このあとのセッション「FinTech最前線」では海外の会社のみなさんばかりがプレゼンをするということなんですけれど。
海外、とくにUSですかね。そういうところと比べて、みなさんがやっておられるそれぞれの分野で、何が違うのか。どうやったらもっと追いつけるのか。はたまた日本独自、日本初のグローバルサービスみたいなものが出てくるのか。どうやったらそういうものが出てくるのか。そういったところのご意見をいただければと思います。
もちろん環境もいろいろ違って、日本はお金をどんどん貯蓄に回していくというカルチャーだったり、クレジットカードの普及率も違ったり、環境ももちろん違うと思うんですけれど。そういうこともふまえて海外との対比についてご意見いただければと思います。
小林重信氏(以下、小林):先ほどクレジットカード決済比率がまだ2割を切っているという話がありましたが、やはり海外と比べて日本は、すごく現金文化・紙文化だと思うんですね。
これが、例えばクレジットカードでも、ネット決済でも、電子マネーでもいいんですけれど、現金以外の手段であればデータがクラウド化されて、さまざまなサービスと連携される。それこそ会計の連動もできると、便利なことが多いです。
現金と紙がなくならない限りは、このFinTechに代表されるすごく便利なインフラというものがなかなか使いづらいので、なんとか現金の打破というか、紙から脱却というか、それが進められれば、海外並みの便利な決済ができる世の中になっていくんじゃないのかなと思っています。
それを、この新経連でも議論しています。なんとか規制も含めて、打破していければなということを今、考えています。
小澤:佐々木さん、お願いします。
佐々木大輔氏(以下、佐々木):おもしろいことに海外のFinTechシーンを見てみると、やっぱりまず最初にスタートアップがワーって出てきて、1回市場を、めちゃめちゃというのは言葉が悪いですけれども、ひっくり返すようなことが起きます。
それに対して、今度は大手のトラディショナルな金融機関がスタートアップと手を組むなり、あるいは本当に競合として参入していくなりということを、例えばゴールドマン・サックスさんもスモールビジネスのレンディングとかに参入されたんでしたっけ? (参入され)るんでしたっけ?
小澤:まだ正式ではないと思いますけれど……。
佐々木:そういう噂があるということだと思うんですけど。
でも、そこで考えてみると、日本はおもしろくて。そこをすっ飛ばして、私たちとかマネーフォワードさんもやっておりますけれど、金融機関と連携して、融資のプロダクトを考えていこうとか。その先に見えているフェーズに、まず1個飛ばすというかたちで出てきているんじゃないかなということを思っていて。
それは、さっき佐藤さんが言ったような、短期的にはバランスシートがある人とそうじゃない人で役割分担しましょうねといったところに、うまく後発だからこそ入ってきてるところはあると思うんですよね。
やはりガラケーみたいなものじゃないですけど、1個先に進んだものがあると、それが負債になるということがあるので。
その最初のスタートアップだけが盛り上がってるフェーズというのが、世界の中ではもうそこまで1巡してしまってるなかで、日本としては、新しいかたちを作っていくということが求められてるんじゃないかなと思います。
小澤:佐藤さん、お願いします。
佐藤航陽氏(以下、佐藤):私たちも世界中でビジネスをしてるんですが、金融の領域というものはものすごく国によってカルチャーだったり、使い方というものが違うなと思っています。
なので、この領域においては確かにアメリカと中国が先を走ってるように見えますけれども、実際はめちゃくちゃいろんなところにチャンスがあって。例えばクレジットカードって東南アジアとかアフリカみたいな国では、ぜんぜん普及していないので。また、別な決済手段が使われていたり。
あと、アフリカとかだとおもしろいのが、携帯電話にチャージした通話時間を、あたかも通貨のように交換しあったり、それで払ったりってカルチャーがあって。お金のあり方というのはもう世界中でぜんぜん違うんだなと。
なので、どこかの企業が、例えばGoogleとかFacebookみたいに圧勝してしまうということはなかなか起こりにくいんじゃないかなと思ってます。
日本でいうと、韓国と日本だけは電子マネーがすごく進んでいて。逆にアメリカとかだとクーポンのカルチャーが中心なので。電子マネーという領域においては、日本はかなり強みを発揮できるんじゃないかなとは、今、思っています。
小澤:辻さん。
辻庸介氏(以下、辻):あと追加するとすると、やはりコミュニケーションの、Facebookとか、LINEとか、要はコミュニケーションってテキストデータをやりとりしてるだけだと思うんですけど。
貨幣データもテキストなので、基本的にはああいう完全にプラットフォームを捉えた方々が送金サービスするというのは、テクノロジーサイドから見るとすごく自然な流れで。なぜなら、ユーザーにとって最適なUXとかを用意されているので。そういう流れは確実に来るでしょうし。
そうすると、またFacebook、Google、Appleなどで、例えばApple Payが日本で使えるようになって、ハードがAppleなので、それこそ決済は全部Appleですね、みたいな世界観が来る可能性がおそらく高い。
そのなかで、日本という国の中でどう最適化していくかとか、ユーザーの利便性をとっていくかみたいなところは、海外のプレイヤーを無視して、またガラパゴスみたいに作っちゃって、結局スマートフォンのプラットフォーム取れませんでしたね、みたいな話になるのは避けるべきですけれど。
一方で、全部オープンにして取られちゃいましたというのも、戦略としてはどうか、というところなので。
中国みたいに、成長するまでずっと遮断して、すごくでかい企業を作って海外に行くみたいなことも、あれもかなり戦略的です。結果を見れば、いいか悪いかは価値観で別ですけれど、あんな大きな会社が中国から出るというのは、かなり戦略的にやられてるんだろうなとは思います。
小澤:ありがとうございます。今、お金のあり方という話が出ましたので、少し脱線してしまうのかもしれないんですけれど。
いわゆる仮想通貨みたいなものについてはみなさんどんなふうにお考えなのか。もしくは将来的にどうなると思ってらっしゃるのか。このへんのご意見をいただければと思うんですけど、いかがでしょうか?
すみません。これ、事前に出してなかった質問なので、突然なんですけど(笑)。佐藤さん、お願いします。
佐藤:仮想通貨に関しては、完全に私の私見なんですけれど、今、国家が為替とか通貨の供給量というのをある程度コントロールしながら、経済そのものをハンドリングしていくというのが一般的だと思います。
今後は企業も自分たちで通貨を発行して経済圏を構築して、じゃあ、どういう経済のあり方というのが一番いいのかということを、各企業ごとに考えなきゃいけなくなるだろうなとは思ってます。
楽天さんとか、LINEさん、あとヤフーさんとか、いろんな企業が自分たちの経済圏、電子マネーを供給していっているので。あのモデルというのは、私は世界に広がっていくんじゃないかなと思ってます。
そのタイミングで、今の中央銀行とか彼らがやってきたことが民間でなぜか必要になるという、逆流の現象が起きてくるのかなと思ってます。それがたぶん20年とかのスパンなのかなと。
小澤:辻さん。
辻:ブロックチェーン、ビットコインはもちろん新しいインターネット時代の通貨として、いろいろ紆余曲折あると思うんですけど、ある程度、通貨として定着はしていくと思います。
今までグローバルに見て、交換手段がお金というものしかなかったと思うんですけど、いろんな通貨も出てきますし。
あと、信用というものがクラウド化して、シェアリングエコノミーで見える化されたので、この信用の見える化がひょっとしたら交換ツールになってくるかもしれない。その交換手段がすごく多様化していくんだろうなとは思います。
それの流れとして、「Occupy Wall Street」みたいな、一部の人が圧倒的な富を持っていることに関して、資本主義の弊害も出てきていて。
一方で、次のポスト資本主義というのはまだ見えてないので、その5年、10年とか、20年のなかで、そういうものが新たにできてくる可能性はあると思ってます。
そういう意味では、もともとお金って交換手段だったと思うんですけど。その手段が、お金を「稼ぐ」という目的化をまさにしてるという、主従が逆転してる流れになってると思います。そういう流れはどこかで是正されるのかなとは、完全に仮説ですけど思います。
小澤:ありがとうございます。時間もないので、ここで一度、オーディエンスのみなさんからご質問がありましたらお受けしたいと思います。では、一番後ろの方。
質問者1:たいへん興味深いディスカッションをありがとうございました。
商社の方からよく聞かれる質問として、どのようにすれば彼らのデータを収益化することができるのか。例えばサービスを開発して、金融データを管理する。そしてそれらのデータを金融機関またはパートナーに販売してるわけですけれども。
では、実際の消費者そのものが自分のデータを収益化し、より関与することができるようになるのでしょうか?
小澤:じゃあ、北澤さん、お願いします。
北澤:僕、辻さんのご意見が一番聞きたいところではあるんですけど(笑)。
ただ、我々としても、どんどんこうやってお客様からのデータを取り込むとか、あと事業提携機関からの個人情報のデータというのを活用することによって、個人が資産運用をするにあたって、自分がどの位置にいるかとか、どういった資産運用を例えば同年代の人がすべきかみたいなことっていうのが緻密に分析できるようになって、アドバイスができるようになると。
そういう意味では、情報を提供して下さった方々の情報をもとに、サービスがどんどん向上することによって、ユーザーの方々にベネフィットするというところまでは、我々としても構築ができているんですけども。それを具体的に現金化するというところは、我々としてはまだサービスとして、考えきっていない部分であります。
小澤:ほかに、辻さん、何かありますか?
辻:例えば、我々の個人向けのビジネスですと、プレミアム課金と有料課金。それで、サービスの一部が使えますという有料サービスと、あと会員様向けの広告サービスと、BtoBの会社様への提供。我々のマネタイズはそういうかたちでやってます。
カスタマーサイドのマネタイズはこれからだと思ってます。ユーザーに対して、例えばアメリカで情報を売ってますよね。情報を出すことでいろんな提案をもらったりお金をもらう、そういうプラットフォームがあって、「自分の情報を売ります」みたいになってると思うんですけど。
結局そのユーザーの持ってるデータが会社に対してどのぐらいの価値があるかと。それに対してマッチングがどうできるかというところが、たぶん次のステージになってくると思います。
日本において、情報というのは、やはりプライバシーの問題もありますので、これは今年、来年すぐにやれるものじゃないと思いますけれども、基本的には匿名性をある程度担保すれば……。
この前、エストニアの首相が「マイナンバーの番号を知られて何が問題なんだ?」と新経連のミーティングで言っていてビックリしたんですけれど、「なるほど」と思ったんです。そういう考え方もあるので、それは徐々に進んでいくべきなのかなと思います。
佐々木:僕1つだけ付け加えたいのが、データを売るということは僕たちはしないと思うんですよね。たぶん、やるのは結局そのデータを活用することによって、何か提供する別のサービスの利便性が上がるとか、ユーザーエクスペリエンスが上がるとか。
それによって企業側からも何かを提供するコストが下がって、ユーザー側からも何かを探すコストが下がる。それって両者がハッピーだよねというのが、このデータを活用していきましょうというところの本質で。
それを企業側が売るとか、ユーザー側が売るとか、それで長期的なビジネスは築けないんじゃないかなと思っています。
小澤:ありがとうございます。もう1つぐらい。では、あちらの方。
質問者2:ありがとうございます。質問ですが、みなさんはFinTechと銀行業界との関係について、どうお考えですか? 今の関係、それから将来の関係はどうなるでしょう?
なぜこういう質問をするのか、2つ理由があります。1つは、私はどのような会社でも、人のお金を取り扱えば取扱うほど、コスト、それから責任が高まると思うんです。そうなりますと、規制の障壁があります。規制のエリアでは、いわゆる既存の大手金融業界はこれに長けていると思うんです。
2つ目の理由ですけれども、人々の決済とか、あるいは貸付融資を手掛けると、いずれはやはり既存の銀行口座との関わりが出てくると思います。
ですから、FinTech企業の将来、いずれは例えば伝統的な既存の大手銀行と連携する、提携する、あるいはそこに身売りをする状況になるのか? あるいはFinTechの企業が、今の金融機関あるいは銀行業の収益をほとんどもっていってしまうことになるのか?
小澤:どなたか、もしありましたら。
北澤:私が先ほど申し上げたのは、FinTechということ自体は、別になにもスタートアップの会社がやるだけのものではなくて。これは既存の金融機関だったり、さっき佐藤さんがおっしゃったみたいに事業会社だったり、いろんなものの業態が、みんなでやっていくものだと思っています。
ただ、今は新しいアイデアを出せるのが、身軽なスタートアップの会社だからという話だと思っていますので。このFinTechという技術というか、その概念自体は既存の金融機関もどんどん取り組んで、取り込んでいくものだと思っています。
我々としては、我々の技術を提供して、いろんなパートナーシップを組んで、既存のサービスをよりよいものにしていくということもしていきたいと思っています。
ただやはり、2点目でおっしゃっていただいたように、既存のプラットフォームを使うことによるコスト高というのは必ず出てくるものです。そこは既存の金融機関の方にしてみると、ご自身の今の収益源を低減するものなのかどうなのかというジレンマに必ずぶつかると思います。
ただ、そこは今後はそういったあり方ではもうできないんだ、と。もっと新しいサービス、新しい概念を展開しなきゃいけないんだと判断される金融機関と我々は組んで新しいものをどんどん生み出していく。
そうすると、どんどんコストも安くなるし、サービスの質もFinTechという観点からは向上するんじゃないかなと思っているので、スタートアップの会社がスワイプするというような話ではまったくないんじゃないかなと考えています。
小澤:どうぞ。
佐藤:私はもう単純にくっつくのがいいんじゃないかなと思ってます。インターネット企業と金融ってものすごく相性がいいんですよね。どちらが主になるかはちょっとわからないんですけれども。
既存の銀行というのは、たぶんネット企業、テクノロジー企業を吸収していくということを加速させて。逆にテクノロジー企業は、可能であれば、楽天さんみたいに「銀行も一緒にやっていきましょう」と提案をしていく。それを急ピッチにやっていくことが、一番解決策としてはいいんじゃないかなと。
お互いで利益を奪い合うみたいなことをやってもしょうがないと思うので。そこはやれるところは一緒にやって。場合によっては一緒に経営しましょうというのが正解かなと思ってます。
小澤:質問は尽きないと思うんですけど。最後に、もう時間なので、みなさま一言だけ今後のビジョンというか、この先どういう会社になってくのか、そういったところを一言いただければと思います。じゃあ、辻さんからお願いします。
辻:我々は個人・法人、両方やっているので、そのユーザーさんにいかに新しい価値を届けるか。合理化の次に、金融、お金の流れを変えて、本当に今ある課題を解決できていければなと。
我々、やはりアジアとか、海外に行きたいという強い思いがあるので、そういう会社になっていきたいと思います。
小澤:ありがとうございます。佐藤さん、お願いします。
佐藤:私たちはやっぱりテクノロジーの会社ではあるので、人工知能とか、そういったテクノロジーが発達したあとに、経済とか資本主義というのがどう変わっていくかを見たいと思ってますし、自分たちでも作りたいと思ってるので、ここをフォーカスして掘り下げていきたいです。
小澤:佐々木さん、お願いします。
佐々木:僕たちはスモールビジネスに着目していて。本業以外の部分というのはすべて人工知能でもなんでも使って自動化していく、といったところに取り組んでいきたくて。かなりの部分ができるようになる。とくにお金周りではできるようになるというのが、5年後とかそういったスパンで来るんじゃないかなと思います。
それによって、小さいビジネスがより強くなる時代が来ると思っていて。それによって、世の中のイノベーションがどんどん促進していく。そんな未来を作っていくことに貢献していきたいなと。そういうことにFinTechを使っていきたいと思っています。
小林:楽天としては、オープン化が1つ今後のキーワードになると個人的に思っています。グループのなかでは銀行、証券、カード等々ありますけれど、このビジネスをやってみて思ったのは、やはりfreeeさん、マネーフォワードさんもそうですし、クラウド化すると、外部のいろんなデータを扱ってる会社と連携できる。
今回、会場で本当に多くの金融機関の方にお会いしましたけれど、みなさん、すごく関心を持っておられて。実はたどっていくと、必ずどこかつながっているというのが、このFinTechのおもしろいところだと思うので、どんどんオープン化を進めていければなと思ってます。
小澤:最後、北澤さん、お願いします。
北澤:私たちはロボアドバイザーから始まりましたけれど、モットーとしているのは、金融サービスの民主化。私たち独自でも、またはいろんな方と協業しながら、新しい価値観をどんどん生み出して、顧客目線でのサービスの再構築ということをしていきたいと思っています。
そのニーズがあれば、やはりどんどんとアジアを中心とする、まだそういったサービスが行き届いていないような諸国にも広げていきたいと思っています。
小澤:ありがとうございます。これで、このFinTechセッションは終わりとしたいと思います。今後のFinTechの将来像とか、いろいろな話があったと思いますので、オーディエンスのみなさんにもなにかしら参考になるものがあればと思っております。
もしわからないことがあれば、『FinTech入門』に戻っていただくということで、辻さんの本をよろしくお願いします(笑)。パネリストのみなさん、ありがとうございました。
(会場拍手)
新経済連盟
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