2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
提供:リクルートライフスタイル
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林信行氏(以下、林):今のお話からすると、やっぱり20世紀は、大量生産の商品も含めて、みんな紋切り型が同じ、最適化した解がこうだという形で、一様化していってしまったのかな。
21世紀は、もっと個性豊かに、人間の個の顔が見えるような時代になってきたなというふうに思うんですけど。たぶん、大宮さんはそういう方にいっぱい会ってらっしゃいますよね?
大宮英紀氏(以下、大宮):そうですね、本当に多くの方に会わせていただいています。やっぱりお店の方々が、1店舗を立ち上げようとするときは、目的や思いというそれぞれのストーリーがあるんですね。
ストーリーはあるんだけれども、結構飲食店さんもそうなんですが、固定制みたいな形で、「前、働いていたところがこういうもの(システム)を使っていたから、引き続き同じようにします」と、あまり考えずにそういうことをする。
でも、正直「それって考えなきゃいけないのかな?」って思っていて。いいもの(システム)と出会って、考えなくても済むようになると。
そして、自分たちの思いというか、お店が作れるようになるというのは、ある意味、分業制というか、支援してもらえる人とパートナーシップを組めばいいと思っています。
私たちでいうと、そういうことをするのがAirレジで、お店らしさを出していただくのはお店のみなさんという関係性でやっていきたいなと思っているんですね。
林:遠山さんのやっているお店もすごい個性的ですけど、例えば「今、何々料理が流行っているから、うちも儲かりそうだから」ってやっちゃうと、先ほどの遠山さんの話じゃないですけど、儲からなくなったらすぐにやめちゃうと。そうじゃない、強い個性を持ったお店とか……Airレジのお客様はどうですか?
大宮:そうですね、本日午前中からいらっしゃった方は(Airレジを導入している)清澄白川のフジマル(醸造所)さんのムービーを観られていると思うんですけど。
やっぱり(Airレジを)売ったときに、オーナーさんは元々大きな飲食店で仕事をしていて、仕方なく書類作業を会社に報告しなきゃいけない。会社が何のために使うかわからないけど、そういう義務を負わされていて、そういうことをやらざるを得ないということを言っていたんです。
そこから自分の店を起業されて、「そこって本当は必要なかったね」という嫌な思いがあるときに、本当に個人がやりたいことを支える仕組みだったりサービスが、世の中にもっと溢れればいいと思ってるんですよ。それが、スマートフォンが出てきたことによって身近になったというのは、本当に大きなところだと思っています。
僕は、個人が自己表現をするところをうまく支援できるサービスが、今後生き残っていくと思いますし、求められるんじゃないかと思っています。
林:実際にAirレジを導入されているお店は、飲食で半分ぐらい?
大宮:半分くらいですね。今のところ、私たちAirレジのサービスは個店さんが多いです。 飲食店で言えば、起業がしやすいという反面、飲食店業務を2年間続けるのに、実は半分ぐらいまでいってしまうと閉店してしまう。
それが悪いと思っているというよりも、それくらい起業が活性化して、新しいお店が増えるということはすごいすばらしいことだと思っています。
ただ、店内を改装しきゃいけないとか、新しい機器をまた買わなきゃいけないとか。そういうものはやっぱり重荷になっていて、やりたいことが自由にやれないということが増えていると思いますので。それがお店が継続しづらくなる(理由の1つだと思います)。それが、今あるものを手軽に、簡単に使いこなせるようにしていきたいなと思っています。
林:まずAirレジだけ導入して、そこから「便利になったし、最近行列ができるようになったからAirWAITを使う」という形で発展する感じですか? それとも、最初からガツンと全部導入しちゃう感じですか?
大宮:お店の方々は、自分の作りたいお店のイメージがすごいあって、やっぱり課題が違うんですよ。課題が違うというときに、正直Airレジじゃなくてもいいと思ってまして。
そのときに、順番待ちのサービスだったりとか、Air受付のサービスだったりとか、お店を作りたいと思われている方々に、何かしらのきっかけとしてご提供させていただきたいと思いまして、いろんなサービスを展開していると。
なので、先ほどお話させていただきましたように、あくまで人とか個人のやりたいベースでやって、それを支えるのがサービスであると思っているので。
そういう立ち位置は変えずに、そういう方にいかに喜んでもらえるものを作れるかが、僕らみたいに企業向けサービスをやっているところが、選ばれるか選ばれないかの大きな分岐点になるんじゃないかなと思っています。
林:朝の基調講演を聴いていて「あ、そうきたか」とか「ここもやるのか」ってびっくりさせられたんですけども。
Airサービスのロケーションがどんどん増えてますけど、これはやっぱり飲食店のオーナーの方から要望があって、一緒に話しながら作っているみたいな感じですか?
大宮:半々ですね。先ほど遠山さんのお話にもありましたように、僕らの自己表現というか、「こういう未来があったらいいよね」というところから、Airレジはスタートしてるんですね。
例えばヒアリングをしても、iPadのレジが欲しいという人は、ほぼ皆無ですよ。今あるPOSレジの不満だとかそういうことしかなくて、未来から逆算して考えたときに、もっと自由であってもいいんじゃないかと思っているので。
そういう視点で(サービスを)考えています。ただ一方で、先取りしすぎるというか、テクノロジーに寄り切り過ぎても意味がなくて、本当に主張せず、お店の方々が望むものとか、やっている行動にスムーズに入っていけるようなものとなると、現場の話も聞かなきゃいけないので。
行ったり来たりしていますが、基本的には、「10年後、こういう未来があったらいいよね」とか、「5年後こういう未来があったらいいよね」というところからスタートする感じですね。
先ほど遠山さんがおっしゃっていた(新しいビジネスを始めるときの)4つの理由を聞きながら、自分ながらに思っていたんですけど。やっぱり4つの理由にいろんな当てはまり方がありまして、「自分たちで世の中を変えるサービスを作りたい」という、エゴかもしれないですけど、そういうものがありました。
世の中でまだ見えていないことを見えるようにしたいとか、新たな可能性を見出したいという必然性だったり、意義だったり、いろんなものがあってスタートしているので。
極端な話、僕はリクルートじゃなくてもよかったんですけど。ただ、リクルートという壁があったからこそ、やれることや選択肢がたくさん増えるんですよ。
そうなると、僕らがやりたいことは、多くの人に使ってもらうというのが最終的にはゴールなので、そういうマインドを忘れずに、リクルートの場でチャレンジさせてもらってますし、引き続きやってきたいなと思ってます。
林:今日の朝から、「もっとお店を自由に」ということをおっしゃってますけど。遠山さんがいろんなチャレンジをされた中で、業態の違う、常に新しい価値観を作っている感じで拝見しているんですけども。
テクノロジーの質問をするよりかは、自分がやりたいことの中で障害になっていることは何なのかというのを(お聞きしたい)。
遠山正道氏(以下、遠山):うちの会社は理念みたいなものが結構いるので。あるいは私が「美意識だ」と言うと、結構みんなビビるというか(笑)。ハードルが上がっちゃうというのがあって。だからもっと気楽っていうのかな、いろいろチャレンジできるようにしてみたいなと思いますね。
わかんないけど、例えば2軍みたいなファームを作って、それはメディアに出ていかないとか。あるいは、うちのテストキッチンが3階にあるんですけども、何か思いついた業態を、そこで1日オーナーみたいな感じでやってみたらいいんじゃないかな。
お店の名前もロゴも書いて、看板があるなら作ってみて、お客さんを呼んで、料理を作って提供して、そのときにちゃんとオーダーを取って、料金もいただいて、それこそAirレジを登録しておいて、本当に1日ちゃんと営業をする。そうするとすごく責任も出てくるし、「おいしかったよ」とか、評価も直に聞けるので。
そういうのをどんどんやって、敷居を下げていきたいなというのはありますね。トライアンドエラーをするときに、Airレジは本当に有効だなと思いますね。
大宮:ありがとうございます。
林:僕はいろいろ取材をしていて、今はこういったテクノロジーもあって、試行錯誤しやすいというか、チャレンジしやすくなっていると思うんですけど。
実際にやっていらしてどうですか? 最初のSoup Stock Tokyoのときから、PASS THE BATON、giraffeのときまで、環境の変化というものは感じていますか?
遠山:そうですね、私はどちらかというと、数打ちゃ当たるみたいな感じではなくやってきているんですね。Soup Stock Tokyoも、10年間それ1本でやってきましたし、PASS THE BATONを出店するのも、相当場所とかを考えたりするので。
気楽にやるという感じはあんまりないんですよ。でも、それじゃいけないから、みんなには気楽にやってもらおうという話なんですね。だから、環境を自ら変えていかなきゃいけないかなと思います。
繰り返すようだけど、個人がもっと生きていくのに軽くやりたいですよね。大事にしているところは、さっき言った意義や新しいアイデアとかなので。
何ぼお金かけたから立派とか、そういう話じゃないですから。大事にするところをより大事にするということで、変な負担をなくすというのは、個人が際立ってくるということでもありますね。
さっきの話の(銀座で本屋を立ち上げた)森岡君なんかも、5坪という本当に小さな店だからこそ、それがぎゅっと際立ってくるということもありますし。ハードは低くて、アイデアとか情熱とかセンスは高いみたいな、うちが言っている「低投資高感度」という、まさにそういう感じですよね。
林:ちょっと話が変わっちゃうんですけど、お店をずっとやってきて、だんだんブランドとしてのお店の価値が上がってきて、伝統は革新の連続じゃないですけど、ある程度ローテーションを起こしていかないといけないと。そういうところのバランスはどういうふうに考えていらっしゃる?
遠山:ちょうど今日、日経新聞から発表されたんですけど、うちのスマイルズという会社からSoup Stock Tokyoを分社化するんですね。来年2月なんですけども、新しい会社にする。
そうすると、私はSoup Stock Tokyoのブランドは、まだぜんぜんうまく使い切れてないと思っていて、より魅力(のアピール)をどんどんやっていこうという独立の意義と、会社がいくつかできると、社長が出てきて、役員も増えてくると。
ちなみにその新しい会社には、今度初の女性役員が生まれるんですね。彼女はアルバイトからSoup Stock Tokyoに入ってきて、店長になって、(役員になった)。そういうのは、小さい会社だからこそできる。
今のスマイルズだと、たぶん彼女は取締役にはならないけど、その子会社だったらなるという。それを革新というのかわかりませんけども。
私は、どんどん小さくしてくことが、より魅力やいろんな機会を生むことにつながっていくなという感じがします。この「自分らしいお店を作る」というテーマで言えば、小さいほうが相対的にいい。大きいビジネスは人数もたくさんになっちゃうので。100分の95だと赤字ですけど、4分の5だったら黒字じゃないですか。
そっちのほうが健全というか、100やってるから偉いみたいな感じは、今はもうあんまりないんじゃないですかね。「サラリーマンやりながら、いつか独立したいな」とか、昔の脱サラみたいな言い方があったと思うんですけど。
今はそうじゃなくて、もっと一人ひとりの人生と仕事が重なっていくような時代になっていくんじゃないかな。
例えば、お蕎麦でもカフェでもいいですけども、フランチャイズチェーンみたいなものをやってみたいと思っているんですね。
自分たちがシステムとして、デザインとかメニューとか食材の提供とか、そういうことを4割やってあげて、6割は個人の方の(個性でお店を作る)。
例えば、オーナーがウエスタン好きで、夜はライブやっちゃうとか。そういう自分らしい個性があれば何でもいいってわけじゃないと思うんですけど(笑)。でも、やっぱりそれぞれセンスがあって、こだわりを持ってやっていけば、きっとおもしろい店になると思うんですよね。
どこにでもありそうな「(今の流行りが)サードウェーブだから、あと1個コーヒーやっときゃいいかな」みたいなことよりも、ウエスタンの店のほうが、私もよっぽど行ってみたいですよね。
林:時間もなくなっちゃったんで、最後に1人1個ずつぐらい(コメントを)と思っているんですけども。この未来の店舗経営、どんな理想が(ありますか)?
大宮:そうですね。(テーマに)「自分らしいお店」って書いてあるんですけど、自分らしいって言われると、好かれるときもあれば、好かれないときもある。
そういうものも含めて個性だと思ってまして、そういう意味では、僕らは個性を出してやっています。個性と個性がぶつかり合うとマイナスかというと、そうでもなくて。個性と個性がぶつかり合うからこそ、やれる可能性が大きくなっていくなと改めて感じています。
Air(サービス)を喜んで使っていただいたり、僕らがそれに対して真剣に取り組んで、喜んでいただくということが増えれば、Airという個性も際立ってくると思いますし、それをご利用いただいているお店の方々も個性的なお店を開いていける。そういう意味で、本当にお互いがお互いを必要としていると思いますので。
そういうことを本当に突き詰めていきたいなと思っていますし、そういうリアルがきたら本当に楽しいんだろうなと思ってわくわくしながら、もっと気合いを入れてこれからサービスを作っていきたいなと思います。
遠山:さっきのテクノロジーのお話をもう1回すると、いい話じゃないんだけど、私の知り合いのお店で現金事故が起きちゃって、要するに盗難にあったんですよ。(犯人が)身内なのか外なのかわからない。身内だとすれば、仲間を疑わなきゃいけない。
そのオーナーがすごく悩んで、何をしたかというと、「現金を扱うのはやめよう」と言って、飲食店で現金(の扱い)をやめたんです。すごい意思決定だと思ってたけど。
それは確かに、ある種のいい解決方法で、テクノロジーというのはそういう人を疑うことを減らすことにもなりうるなと思いますし、それはやっぱり、個人オーナーの店だから、そういう意思決定ができるわけですよね。
チェーン店でやってて「うち、現金扱いません」とか本部に言っても、「何やってんですか!」みたいなことになっちゃうんで。個人というのは、そういうおもしろさもある。
先ほどから申し上げているように、自分らしさを出すということもあるし、個人でやるということは、結局自己責任ということだと思うんですよね。
だから苦しさもあるし、その分やりがいもある。そういう「何くそ!」みたいに踏ん張っている背中とか、お客さんが入ってきて本当にうれしそうにしている顔とか、結局のところそういうのが踏ん張りとか喜びになって、経営や魅力の根っこになってくると思うんですね。
私は三菱商事から来て、もっとやっていきたいんだけども、つい個人のところに行っちゃう。むしろそれが価値の源泉なんだなと思っているので。ぜひそういうユニークな、小さないいお店が出てくるといいなと思います。
林:ありがとうございました。これで最後のトークセッションを終わらせていただきます。ご清聴どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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