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AV違約金強要事件記者会見(全3記事)

過去のAV作品の回収はむずかしい ポルノ被害の次なる課題

2015年9月29日、昨年2014年にアダルトビデオの出演を拒絶した20代の女性が、所属プロダクションから金2400万円以上の違約金を請求されたAV違約金強要事件について、「ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)」が記者会見を開きました。本パートでは、「被害女性が増えている背景」や「強要されて出演してしまったAV作品の回収はできるのか」など記者からの質問に答えました。 ※被害女性による手記全文はこちら

ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)への相談

伊藤和子氏(以下、伊藤):それでは、質問を受け付けたいと思いますので、よろしくお願いします。

記者:プロダクションの所在地等は出せないということですか。

伊藤:ちょっと本人に確認をしていないので、プロダクションついては出せないと言っていました。

記者:PAPSさんに相談をしたいという場合は、どちらに連絡をすればいいんでしょうか。

宮本節子氏(以下、宮本):ホームページがありますので、そちらから入っていただけると。ここにメールアドレスも書いてありますので。

記者:電話番号というのは、特にないんですか?

宮本:基本的には電話ではやり切れないんで。

記者:14年度、15年度で(相談件数が)急増してますけれども、何か考えられる事情というのはあるんですか。

宮本:考えられるのはは、伊藤和子弁護士がブログに、「アダルトビデオに巻き込まれたようになって困っている方へ」という長文のブログを書いていただいて。

それが2〜3万件のアクセスがあって、それ以来ワッと増えた。私たちのホームページへもアクセスがうんと増えたということで、相談件数が増えてきた。

ただし、私たちに相談する人たちの悩みは、とても、とても深くて……(私たちは)どこの馬の骨ともわからない団体なわけですよね。

誰も知らない、公的機関がバックにあるわけでもない。それが本当に信じられるか信じられないか一種の賭けをして、アクセスしてきているので、ホームページまでたどり着いたけれども、信じられなくてアクセスしなかった人も大勢いるだろうなと思っています。

記者:宮本さんは代表世話人ということですか。

宮本:世話人が4人おりまして、それぞれ役割分担をしていて、私が相談支援事業の一応担当の世話人という形です。

記者:今回の訴訟の被告の女性ですけれども、“20代女性”という表記でしたら問題はないんですか。

伊藤:はい、大丈夫です。

記者:○○県にお住まいというのは難しいですか。

伊藤:難しいです。

記者:わかりました。

一度契約してしまっても諦めないでほしい

記者:契約しないようにということでメッセージを伝えられたかと思うんですけど、仮にこうしたことがあるって知っていたとしても、芸能プロダクションのスカウトを装っているがゆえについていってしまって、密室の中で契約を迫られるといったような女性も出てくるかもしれないと思うんです。

そういった場合、契約を拒むことで暴力をふるわれるかもしれないという恐怖もあると思うんですけれども。

契約をしてしまって支援団体に行くのがいいのか、どういった形で逃げるのがいいんでしょうか。

伊藤:契約しないのが一番いいとは思いますけれども、すぐに解除してしまうのが一番いいと思います。ただ、契約をしたからといって遅くはないので、そこから解除ができるということになったのが今回の判決のいいところですので、いったん契約をしてしまったとしても諦めないでほしいということを伝えたいです。

宮本:プロダクションやスカウトマンは手練手管にたけているので、目をつけた女性について絶対契約させるので、若い女性1人では対抗できないです。契約させられるのが普通なんです。それで諦めちゃう。そこで諦めないでほしいと思います

タレントやアイドルを夢見る女性を利用

記者:声をかけてきたスカウトマンなんですけども、これはプロダクションを名乗って声をかけてきたということなんでしょうか。

宮本:プロダクションは全然関係なくて、「あなたタレントに興味ある? モデルに興味ある? アイドルに興味ある?」という形で通りすがりの女性たちに声をかけて、「じゃあ、ちょっと話聞かせて」「僕の話聞いて」という形で声をかけていって、(女性が)だんだん、だんだん深みにはまっていくわけです。

たいがいの女性は、最初からアダルトビデオに出演したいというわけではなくて、「モデルになりたい」「タレントになりたい」「アイドルになりたい」「有名になりたい」というふうに考えて、スカウトされるような自分が認められたということですごくうれしい気持ちになるというふうな、そういう構造です。

記者:その方はタレントになりませんかということで声をかけられたんですか? モデルになりませんかという。

宮本:タレントです。

記者:その女性の方にはそういう願望はもともとあった。

宮本:ありました。

記者:この人へ声をかけた人は男性ですか?

宮本:男性です。

契約書にアダルトビデオの記載はあったのか

記者:未成年時での契約は親に同意もなしの契約だと思いますが、裁判所はそれ自体は判断しなかったんですか。

伊藤:そうですね、はい。第1次契約については未成年、合意がなかったということは書いてますね。

記者:それについて(契約が)有効かどうかについては、裁判所は判断してない?

伊藤:最終的には、(契約が)解除されたということで、そのような判断をする必要はないということです。

記者:なるほど。それと成年になったときに、アダルトビデオも含めたまた別の契約をしていると思うんですけど、アダルトビデオの出演のプロダクションの場合、ジャンルを分けて「このジャンルは嫌だ」とか「このジャンルはOKです」という契約を結ぶこともあるんですけども、それはなかったんですか。

宮本:それはないですね。聞いてないです。

伊藤:契約書にはアダルトビデオというのは1行書いてあるだけなんです。いろいろな業務が書いてあって、モデル何とか、いろいろ書いてあるんですね。グラビアとか書いてある。その中にアダルトビデオという1行をつけ加わえているだけなんです。

中西俊枝氏(以下、中西):本件については、事実経過にちょっと書いてあるのですが、説明後に契約書にサインをさせられているので、本人は撮影の段階ではまだ契約書のアダルトビデオという文字は見てないです。

記者:あともう1つ、この判例がわりと広まった場合……この女性はアダルトビデオ全般を拒絶したわけですが。

でも、中には同意していないのに別のジャンルに同意して出演されたということもあるんですけど、その場合にはこの判例を盾にできるんですか。

伊藤:「出演者の意に反して、これを従事することが許されない性質の業務である」ということですから、これは意に反していない、これは意に反しているという言い方はできるのではないかと思います。

記者:例えば、最初の契約時でOKしてしまったんですけど、あとあと嫌がってもいいんですか。

伊藤:これは一回一回判断しなければならないということになっています。

記者:なるほど。わりました。

記者:まず、PAPSさんは任意団体ですか?

宮本:全くの任意団体です。

記者:“都内の”とかというのはつけないほうがいいですか。例えば、拠点が大阪府のとか東京都のとか。

宮本:拠点といっても、私たち事務所もありませんから。

記者:ファックス番号が03なので、どこに拠点があるとか……東京のとかつけても。

宮本:そこをお借りしているということで。事務所がないんで。それが持てないぐらいの弱小団体だということです。

記者:ご相談は、これ全国からでよろしいんですか?

宮本:圧倒的に関東近辺ですけども、北海道、九州、全国からもきています。

AV違約金裁判の過去の事例

記者:今回の判決なんですけれども、これまで似たような裁判、訴訟というのはあったわけですか。

伊藤:ないですね。

記者:AV違約金の裁判自体が初めてだったんですか。

中西:違約金の裁判自体はあったんですが、結構古かったというのと、状況がかなり違ってですね。

本件はスカウトされた若い女性ですけど、ある裁判例は、(アダルトビデオに)何度も出てた人が違うプロダクションに出ちゃって違約金を請求されている事例なので、かなり事案が違うものでして。

記者:前にあった事案というのは、「意に反した」というところはあまり問題にならなかったんですか?

中西:専属契約違反だったと記憶しています。本件の参考となる裁判例は、私たちが調査した範囲ではなかった。

記者:例えば、裁判をやっても業者側に負けちゃうよというので、裁判を起こすまでに至らなかったのか、裁判を考えた方って多分たくさんいらっしゃると思うんですけど、今回のように提訴までいったケースというのは、結構まれな例だったわけですね。

伊藤:プロダクション側が提訴しましたからね。違約金を。

記者:向こうから。

伊藤:それ自体、常識に反しているなと思ったんですけども。それであれば判決をとりたいなと思いました。

記者:そうすると、AV業界全体に関して、女性が「意に反してるよ」と言ったらいつでも辞められるよという判例ができたという。

伊藤:そうですね。そのように確定いたしましたし、今後も同種の事例を積み重ねていきたいと思います。

過去の出演作品は回収できるのか

記者:あともう1点、この女性に関しては出演作品1作品。

伊藤:ここにはそう書いてありますけど。

記者:2回撮って。

伊藤:そうですね、あまりそこについてはっきりと……。

記者:まあ何作品かは別として、手記のほうでもご本人からの訴えでGoogleとかデータに残っちゃうという話ですけど、あとDVDになっているものがあるなら、回収とかそっちのほうの救済という意味では何かできるんですか?

伊藤:そういうこともあると思いますが、今回それも差し支えるので、そういう一つひとつのアクションを理由として、本人が特定されてしまう場合もありますので、今どうなっているかということについては、今日はご回答できません。

記者:ただ、契約自体を解除したわけですよね。1作品目は向こうは訴えてきてないわけですよね。もらえるはずのものがもらえなかったということにはなってないわけで。

伊藤:そうですね。ただこれは、プロダクションと製造メーカーが違うんですよね。こちら(プロダクション)との関係が切れたとしても、それを理由として販売回収するというのはなかなか難しい。

記者:向こうのほうでそこを切っているわけですね?

伊藤:そうですね。ここのプロダクションから逃れることが仮にできたとしても、過去に出てしまった作品を回収するのは、なかなか難しいという状況がいまだに続いていて。

それが多くの方が違約金を払ってでも回収してほしいと思ってしまうところだと思います。

法外な違約金を払って、食いとめて回収してもらったという人もたくさんおられますし、止められなくて自殺された方もいらっしゃいます。

記者:(女性が)未成年時代に出演したAVじゃないわいせつなビデオというのは、いわゆる着エロとかイメージビデオと言われているような類いのものですか。

伊藤:それについても、ちょっとお答えできない。

記者:わかりました。未成年時代の契約自体は無効になったわけですよね。

伊藤:第1次契約、第2次契約とも解除されたということだったと思います。

記者:そうすると、無効ではない。

伊藤:取り消し得る契約だというふうには言ってますけども。

記者:それをテコに、未成年時代の出演作品について止めたり消したりとかっていうのはできるものなんですか。

伊藤:それについてもなかなか難しいんですけれども。未成年のときにできたものについては、内容証明などで止めるという判断をする業者も中にはあります。

成年時に撮ったものよりも止めるという判断をしやすいところはありますけれども、なかなか難しいです。

プロダクションと相手側の弁護士について

記者:今回、プロダクション側が訴えを提起されたことで、非常識というようなお答えがあったと思うんですけども、こういった訴えを提起すること自体が違法行為に当たるんじゃないかという意見もあるので、その点について。

伊藤:ちょっとわかりませんけれども、弁護士としての品位……。弁護士さんがついてるんですね。こういう依頼を受けたにせよ、このような事案について提訴するというのはいかがなものかという声も聞いております。

記者:今回2,400万円もの訴訟を起こしてきた向こう側の狙いということをどう考えたかということをお伺いしたい。

伊藤:やはり、かなり違約金を払ってしまっている人も結構いたんですよね。こういったアダルトビデオから逃げるという人も少しずつ出始めている。そういう中で、違約金だと脅すことによって女性たちを何とか出演させるようしてきた。

しかし、今回弁護士をつけて違約金も払わないということで強硬な態度をとった。これについて、このようなことはあってはならないということで、プロダクションはプロダクションなりに、きちんとした契約は守れという判例をつくりたかったのではないかと思います。

先ほどから出ていますけれども、強要された性的行為が一般に流布してしまう、そして一生消えないという、それだけの被害を考えた上で、裁判所はこういう判決に至ったと思います。

このような、人の意に反して性行為をさせるというような判断がは許されないのだということを裁判所がきつく示してくれた。

女性に対する性的差別は許されないということが明らかになった事例として、今後アダルトビデオの法規制も含めて取り組んでいってほしいと思っています。

小見出し

記者:実際に違約金を払ってしまったというようなケースは、何件ほどあるんですか。

宮本:点数としては追い切れていない事案もたくさんありますので、わかっている中で数件はある。違約金を払ってもいいから回収したいと言って回収に応じたり、出演に応じてしまったりとかいう事例もあります。

本当に貧しい生活していて、弁護士が間に入ったにもかかわらず、和解になって違約金400万円を払う20代の女性の例がありましたが、彼女はこれからどうやって生きていくんだろうかと思います。

記者:重複する質問だったら申しわけないんですけど、この判決について、女性に対して「強要して出演させた」ということが証明された一番の決め手はどこですか。

伊藤:やはり、1,000万円の違約金ということについて、原告自身が認めました。そういう1,000万円という数字を出したことがやはり大きかったと。

記者:この判決以降の事例に対してすごく効果的じゃないかというところの確認なんですけど。出演させられた側の意に反するということが確認できれば、こういうことがあったとしても回収なりを進められるということ。

伊藤:回収までのハードルはなかなか高くて、これから回収ということもきちんとした判断を裁判所に求めていかなければならない。それが次のチャレンジだなと思っています。

今はっきりしていることは、やはりこのように強要されてる、意に反するということであれば、勇気を出してその場で即日解除すれば、違約金を支払う必要はないということが認められたというところではないかと思います。

みなさん、LINEとかやってらっしゃると思いますので「もう嫌だった」というようなことを残したりとか、いろいろなやり方があると思います。

「これは意に反します」と言った上で、解除してしまうとか、本当にみなさん、プロダクションに囲まれて弱い立場にいますけれども、いろんな形でメッセージを発することはできると思いますので。

ぜひそういう形で被害に遭ってる方々、苦しんでる方を、励ましていただくような記事を書いていただければうれしいなと思います。本日はどうもありがとうございました。

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