2024.10.10
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伊藤和子氏(以下、伊藤):アダルトビデオ違約金訴訟に関する判決のご報告の記者会見を始めさせていただきたいと思います。
私、本件の被告代理人弁護士の伊藤和子と申します。まず、私のほうからレジュメをもとにご説明させていただきたいと思います。
本件、高校生のときにタレントにならないかということでスカウトをされた女性が、未成年のうちからプロダクションに所属をする。そして、契約をするということになったわけですけれども。
契約書にサインをしたことを逆手にとられて、最初から仕事がわいせつな出演を繰り返す仕事であった。
そして、それを断りたいと言っても「違約金がかかりますよ」と言われて、断れないということで出演をさせられ、そして成年になってもそのような状態が続き、アダルトビデオの出演を強要されてしまうという事案です。
作品に出て、非常に深刻な被害、そして心的外傷を負われまして、「もう辞めさせてほしい」と言ったところ、「すでにあと9本の作品への出演を決めているので、出ないと1,000万円の違約金がかかる」と脅され、死にたいというぐらいに思いつめられました。
そしてこちらの支援団体にSOSを求められ、弁護士につながったという事案です。
伊藤:その9本の作品に出たくないということで解約・解除の申し入れをしたのですけれども、解除をした後も(女性を)物理的に奪還をしようというものすごい暴力的、強制的な行為がプロダクションからございました。
最終的に代理人の私のほうで正式な内容証明を出して解除をしてきたところ、2,460万円の支払いを求めて係争されたという事件になっております。
事実経過のところに書きましたとおり、2014年の10月に提訴、そして11月に第1回期日がございました。
この事件、裁判所の心象は最初から「非常にひどい」ということだったのか、証人尋問は実施せず、(原告)主張のみを行いまして、2015年7月に結審、そして判決が2015年9月9日に出されたということになります。
控訴期限が9月25日でしたので、心配しておりましたけれども、昨日の夜、裁判所に確認しましたところ、控訴がないということで確定したということになりました。ご本人にもご報告をいたしまして、大変ほっとして喜んでいらっしゃいました。
ここから内容に入りますが、請求金額2,460万円というのはどういう内訳になっているのかといいますと、300万円をプロダクションがとる。そのうち本人には80万円をあげるということを勝手に決めて、「220万円は自分たちの取り分である」ということで請求してきた。
それから撮影キャンセルに伴う損害というのが80万円、売り込みのために用意した経費ということで400万円の請求がありました。
被告代理人は私たち2人のほか、角田由紀子弁護士ほか23名が代理人としてついております。
現在、被告のプライバシー保護のために、記録は全部閲覧制限をかけていただいておりますので、みなさまには配慮をお願いしたいと思います。
伊藤:本件は女性が委任契約になっていまして、女性が委任者、そしてプロダクションが受任者としてマネジメント業務、パブリシティをプロダクションに委任するという契約になっています。
そして女性に報酬が入る。女性が得られた報酬のうち、合意のもとにプロダクションに支払われるということになっています。
違約金条項はありますけれども、いくらという金額の明示はない。それから委任者であるはずの女性からの解除事由が非常に制限されているという状況になっています。
そして、女性に無断で仕事を入れることが多く続きまして、女性に対して一方的に通告をする。そして女性が嫌だと言うと、「契約した以上、現場に行かなければならない。契約上の義務である。従わないと違約金を支払わなければならない。そして親にばらす」と。
親にばらされるというのは非常に深刻なことですので、そのようなことを言って脅して、わいせつな作品への出演をさせていたということでした。
未成年当時は本人に対する報酬の支払いは1円もなく、すべてプロダクションが搾取をしている状況でした。
契約書のコピーも交付されないために、何を契約したのかよくわからない。どのような義務があるのかわからないということで、最初はすごく少なかった違約金という話が具体的になって100万円になり、最終的には1,000万円になるということで、どんどんと本人が払えない額に上がっていったということになります。
伊藤:次のページになりますが、撮影には詳細のシナリオがない。シナリオを見た上で納得して出ているのではなくて、まずは撮影現場に行かなければならない。
そして衆人環視のもとで、とにかく性行為を強要される。そして全裸になるため、嫌でも逃げ出すこともできない状態のまま撮影が続いていく状況だったということです。
当方の本件における主張なんですけれども、まずは本件契約、それから違約金条項が公序良俗に反して無効であるという主張をしましたが、裁判所は今回それについて判断をいたしませんでした。
次に委任契約の解除ということも主張したんですけれども、最終的に裁判所はこれを採用せずに、「雇用類似の契約」と見て、雇用契約の解除という構成をとりました。
裁判所の見解としては、契約の実態に即して考えれば、本件については雇用の規定および労働基準法等の労働法規が適用されるべきと考えられる。
これは私たちの主張なんですけれども、そしてこの意に反してアダルトビデオ出演を強要されて仕事を入れられたというやむを得ない事由があるということで、民法628条に基づいて雇用契約の即時解除ができるということを私たちが主張しまして、最終的には裁判所がこれを採用したということになります。
伊藤:ここで判決を見ていただければと思います。判決の1ページ目は当時者が書かれておりまして、請求金額が2,260万円。
そして、原告の請求を棄却するという主文が書かれていると思います。申しわけありませんが、ご本人の希望で事実関係については白紙にさせていただいております。
9ページ以降に裁判所が認定した事実ということで、第1次契約というのが、これがまず未成年のうちの契約になります。
そして成年になった段階で第2次契約ということになるんですけれども、ここで1,000万くらいの違約金がかかるということを示唆されるということになっておりまして、その業務内容にアダルトビデオが明示されているということになっております。
そして、本人としては解除をしたと。支援団体を通じて、第1次契約、第2次契約、いずれも解除をするという主張ということになっています。
裁判所の判断部分なんですが、第1次契約、第2次契約はいずれも被告が原告に対してマネジメントを依頼するという被告中心の契約ではなく、原告は所属タレントないし所属女優として被告を抱え、原告の指示のもとに原告が定めたアダルトビデオに出演させることを内容とする「雇用類似の契約」という認定になっています。
そうすると、2年の定め、第1次雇用契約、2次の契約の解除をすることができる。主にやむを得ない事由がある場合は、契約を直ちに解除することができるとなっています。
伊藤:そして次に、直ちに解除するについては、ここが非常に重要ですけれども、アダルトビデオへの出演は、原告が指定する男性と性行為をすることを内容とするものであるから、出演者である被告の意に反してこれに従事させることが許されない性質のものといえる。
それなのに、原告は被告の意に反しているにもかかわらず、被告のアダルトビデオへの出演を決定し、1,000万円という莫大な違約金がかかることを告げて、アダルトビデオの撮影に従事させようとした。
したがって、このような契約を解除するやむを得ない事由があったということで、即時解除を認めております。
そして、解除が即座に認められるということで、一切の債務不履行はないという構成になっているというのが今回の判決であります。
最後のページは、そのような論点について、例えば公序良俗などについて判断するまでもなく、債務不履行と損害賠償責任を負わないというところになっております。
今回、こういう判決が得られて非常によかったと思いますが、同様に苦しんでいる被害者の方はたくさんいらっしゃる。後でお話しされると思いますけれども、80件以上の被害相談が来ていると聞いております。
こういった悪質な違約金の脅しにより強要することをなくさせるために、この判決をもとにそういった法的な規制が進んでいくことを望んでおります。
また、同種事例の被害に遭って悩んでいる方、こういう形で解決する方法もあるんだ、司法的な見解が得られるんだということ、それから意に反して出演するということは、判決にもとづいて許されないという認定がされたということをぜひ伝えて、強要されないように逃げていただきたい、そして相談機関に来ていただきたいと思います。
そして、まだまだ被害に遭う女性たちが多いと思いますので、こういった安易な誘いに乗らないでほしいということを申し上げたいと思います。
私からは以上です。
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