2024.10.10
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任天堂株式会社 株式会社ディー・エヌ・エー 業務・資本提携 共同記者発表会(全1記事)
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司会:皆様、本日は大変お忙しい中、任天堂・DeNA共同記者発表会にお集まりくださいまして誠にありがとうございます。本日は任天堂株式会社取締役社長・岩田聡。株式会社DeNA代表取締役社長兼CEO・守安功。こちらの2名からご挨拶及びに本日の発表内容について、ご説明させていただきます。
それでははじめに任天堂株式会社・取締役社長の岩田聡からご説明申し上げます。
岩田聡氏(以下、岩田):本日は急にお集まりいただきありがとうございます。任天堂社長の岩田でございます。本日はDeNAの守安社長とともに本日両社がそれぞれ発表しました業務提携、資本提携に関してご説明させていただきます。
私が守安さんとはじめにお会いしたのは2010年6月のことです。最初はモバゲーに任天堂IPを供給していただけないかというご提案からはじまったやりとりでした。
しかし守安さんは任天堂と組む可能性について非常に情熱をお持ちで、その後も継続して話し合いを続けてきました。
大きな環境変化に向き合う今、両社の組み合わせがグローバルに相乗効果を生み出すチャンスが大いにあるということを、ある時わたしは確信しました。
その後、私と守安さんに続き、両社の複数のキーマンたちが話し合いを重ねてきました。その結果、業務提携をして協業し、双方の強みを活かし合うことで、大きな相乗効果が生み出せるのではないかと判断しました。
おそらく今日お集まりの皆様にとって、私たちの提携というのは意外に思われることが多いと思いますので、まず任天堂がDeNAさんと業務提携をするに至った決意と背景について、私からご説明させていただきたく思います。
岩田:ご存知の通り、これまで任天堂は1983年のファミリーコンピューター以来、ハード・ソフト一体型のプラットフォームビジネスをワールドワイドに展開してきました。おかげさまで任天堂は世界で広く認知されるビデオゲームのブランドに成長することができました。
一方で、ここ数年、スマートデバイスの普及により、ゲーム専用機ビジネスの将来について悲観的なご意見をちょうだいすることが増えてきました。
ちょうど任天堂がプラットフォーム移行のタイミングに超円高が重なり、収支のバランスを崩してしまったことや、任天堂DSから任天堂3DS、WiiからWiiUへのプラットフォームの移行が必ずしもスムーズに進まなかった時期と重なったことも影響していると思うんですけれども。
これまでデジタル音楽プレイヤー、あるいはデジタルカメラ、カーナビゲーションシステムなど、色々な専門システムがスマートデバイスに飲み込まれてきたと言われているのと同じように、ゲーム専門機もスマートデバイスに飲み込まれるのではないかというのが代表的なものでございます。
しかし、これまでスマートデバイスが飲み込んできたといわれる他の専用デバイスと違い、任天堂のゲーム専門機ハード上で動くコンテンツ、すなわちゲームソフトの最大の供給者はゲームハードの最大の供給者である任天堂自身です。
岩田:コンテンツを誰が提供しているのか、というのはとても重要なことなはずなんですが、ゲーム専門機に対する悲観論はこの前提を無視したご意見とも言えます。
家庭用ゲーム機市場で史上初の出来事が起こりましたが、このことが示すようにスマートデバイスが広く普及した後も、購入していただいた家庭用ゲーム機専用ハード上でも、ソフトの販売は順調です。
もちろん、スマートデバイスが広く普及したことでゲーム専用機のハード普及が以前に比べて難しくなったと、そういう課題はありますけど。ハード、ソフト一体型のビジネスモデルは現在も有効に機能していると認識しています。
その意味で私たちは家庭用専用機の未来を決して悲観視してはおりません。
一方でこの状況を分析すると、任天堂の強み、言い換えればお客様がもっとも価値を認めている対象。
すなわち、お金を払っても良いと思っている対象は、我々が家庭用ゲーム機の歴史とともに積み上げ発展させてきた任天堂のソフトやキャラクター等の「任天堂IP」であると考えられます。
インターネットの発展。ソーシャルメディアの発展。世の中の生活者の皆様のライフスタイルの変化に柔軟に対応していくと。
任天堂はこれまでゲーム専用機に集中させていた任天堂IPの価値を最大化するために戦略的な取り組みを開始します。
これは昨年1月の経営方針説明会でお話した、任天堂IPの活用。スマートデバイスの活用の経営方針の延長上にあるものです。
ただし、このお客様のアテンションを獲得するのが厳しい時代に任天堂IPの価値を最大化するためには、世界中の様々な環境の人たちに任天堂IPの価値をお客様視点で、ストレス無く体験していただけるようにして、お届けしなければなりません。
そのために、任天堂はスマートデバイスを積極的に活用していきます。
岩田:これは、テレビの存在しなかった125年前に創業した任天堂が、かつてテレビをメディアとして積極的に活用するようになったことと、構造的には同じです。
スマートデバイスはいまや人々が、パーソナルに社会と繋がる窓に成長しているわけですから、活用しない手はありません。
また、これは機会を改めて具体的にお話するつもりですが、それ以外にも任天堂IPの映像コンテンツ化や様々なキャラクター商品化など、様々な伝達手段を柔軟に活用して任天堂IPの価値を最大化させていく取り組みが進行中です。
任天堂は過去30年以上にわたり、色々なIPを生み出し、シリーズ展開を重ねる中でその価値を積み上げ、それぞれのIPには多くのファンのお客様がおられますが、それぞれのIPによってお客様の構成は異なりますし、ライフスタイルも異なるのが現実です。
当然、個々のIPに最適な伝達手段は異なるでしょうが、最適な手段を選択し、任天堂IPに触れる人口を最大化し、結果、ゲーム人口を拡大させていく。というのが私たちの基本的な戦略になります。
これら、さまざまな伝達手段の中でスマートデバイスはグローバルな稼働台数、接触頻度、そして1回あたりの時間は短いのですが、合計の接触時間において強力な存在です。
スマートデバイスはもちろん任天堂IPの伝達手段としても活用していきますが、お客様に継続して密に接触いただくために、任天堂IPを活用したゲームビジネスも展開していきます。
今日お集まりの皆さんの中には、これまで任天堂はスマートデバイスのゲームビジネスに対して、ずっと慎重な姿勢を崩さなかったのにどうして方針転換するのか? ということを、疑問に思われる方も多いと思います。
昨年1月の経営方針説明会でもスマートデバイスのゲームコンテンツは禁じ手にしないと申し上げたとおり、私はスマートデバイスでゲームを作ることそのものに否定的だったわけではありません。
しかし、デジタルの世界ではコンテンツ価値が容易にデフレ化し、消耗しがちであることや、スマートデバイスではコンテンツの新陳代謝が激しく、個々のコンテンツの寿命が短くなりがちで、コンテンツ価値の維持が容易ではないということもあって、どうすれば任天堂IPの価値を維持、発展させながら、ビジネスを展開できるか。それには、どういう条件が必要なのかということを考え続けてきました。
岩田:そこにようやく任天堂なりの答えが出せたということです。スマートデバイスのゲームビジネスの世界では非常に大きな収益をあげておられるコンテンツがいくつか目立っておりますので、世間一般では楽に儲けられるビジネスであると認識されている面があるようですが、現実には競争環境も厳しく、持続的に成果を出されているコンテンツ供給者は全体の中でほんの一握りというのが現状です。
任天堂にとっても、少数の勝者の一員になれないのであれば、スマートデバイスでのビジネスに参入する意味がありません。だからこそ、やる以上は絶対の勝算を持って臨みたいと考えておりました。
任天堂は長年、発売時に高い品質でお客様に満足していただく必要があるプロダクトの会社として結果を出してきましたが、スマートデバイスとしてのコンテンツはプロダクトとしての性質だけではなく、毎日変化し続けるサービス運営としての性質を持たなければ、お客様にご支持をいただくことはできません。
任天堂はこの勝算をDeNAさんと協業することで、一緒に作り出すことを目指します。今日もお話した通り、任天堂の強みはグローバルなお客様からご支持いただいているIPにあります。DeNAさんの強みは、世界トップレベルのWebサービスの構築・運営ノウハウにあります。
任天堂とDeNAさんはグローバル市場を対象とした、スマートデバイス向けゲームアプリを共同で開発・運営していきます。この取り組みにより、任天堂IPを活用した新しいエンターテイメントをスマートデバイスを介して、グローバルに提供することになります。
岩田:当然ながら、この事業に取り組む以上、億単位のお客様に楽しんでいただくことを目指したいと思います。活用する任天堂IPについては特に例外を設けるつもりはなく、すべての任天堂IPに関してスマートデバイスで活用するチャンスがあると思っていますが、先ほど申し上げたようにスマートデバイスのゲームは最初に完成度を追求するプロダクトという側面よりは、継続的に進化し続ける運営が必要なサービスとしての側面を持ちますので、同時に展開するタイトルをむやみに増やしても、運営のエネルギーとお客様のアテンションが分散するだけで、ビジネス規模の拡大は望めません。
したがって、ある程度タイトル数を絞り込む形で展開・運営する形になると思います。一方で、IPが同じであるからといって、ゲーム専用機向けのタイトルをそのままスマートデバイスに移植することはしません。
ゲーム専用機のコントローラーとスマートデバイスのタッチスクリーンは操作の特性、強み、弱みが大きく違いますから、ゲーム専用機の過去タイトルをそのままスマートデバイスに移植することは一切予定していません。
最高のプレイ体験をお届けできないのであれば、任天堂IPの価値に傷がつくだけにしかならないと考えているからです。
これからの開発について申し上げれば、ゲーム専用機には、ゲーム専用機向けのタイトルをこれまで通りしっかり開発し、スマートデバイス向けには同じIPを活用するとしても、スマートデバイスのプレイスタイルに合わせた全く別のゲームをつくることになります。
スマートデバイス向けのゲームアプリについての詳細は改めてお知らせすることにしますので、続報をお待ちください。
岩田:また、今回の協業には直接関係するわけではありませんが、誤解のおきることがないようにお話しておきたいことがあります。
任天堂がスマートデバイスでゲームビジネスを展開することにしたのは、ゲーム専用機ビジネスに対する情熱や展望を失ったからではありません。むしろ、どうやってスマートデバイスを活用するか決めたことで、今まで以上にこれからのゲーム専用機ビジネスへの展望や情熱を持っています。
ゲーム専用機で展開されている素晴らしい価値のあるゲームソフトについて、世界中のより多くのお客様に対して、認知してもらうきっかけを作るためにスマートデバイスを活用するこのアプローチが合理的だと考え、決断しました。
ちなみに任天堂がゲーム専門機ビジネスに対する情熱を持ち続けていることの1つの証明として、今のビジネス環境に適合するために任天堂は全く新しいコンセプトのゲーム専用機プラットフォーム、開発コード「NX」として現在開発中です。
今は具体的なことをお話する段階ではありませんが、詳細は来年にお話できると思います。スマートデバイスは最も間口が広く、多くのお客様とつながる可能性が高いデバイスと言えます。そこで、お客様をゲーム専用機にいざなうことができるよう、スマートデバイスとゲーム専用機の間に、架け橋をかけていきたいと考えています。
そしてスマートデバイスを通じて任天堂とつながり、任天堂IPに興味を持ってもらったお客様にはよりプレミアムなゲームプレイ体験を、任天堂ゲーム専用機を介して提供したいと思います。
このような方針を取ることにより、スマートデバイスに参入することで、より広い間口でお付き合いする世界中のお客様に任天堂IPの魅力にふれていただき、スマートデバイスとゲーム専用機が限られた需要を奪い合うのではなくて、新しい需要を創りだして、相乗効果を生み出していけると確信しています。
このスムーズな移行を実現するために、任天堂3DS、WiiU、そして今お話した全く新しいコンセプトのゲーム専用機「NX」。そして、スマートデバイスやPCなど。複数のデバイスを統合する新しいメンバーズサービスを、DeNAさんと任天堂が、共同で開発し、任天堂が中心になって運営します。
これは今まで運営してきた「Club Nintendo」に代わり、お客様と一対一でつながり、複数のデバイスを統合したサービスを提供する任天堂の新しいプラットフォームの中核要素の1つになります。
今日お話したこれらの取り組みにおいて、任天堂の強みとDeNAさんの強みは極めて強力な組み合わせになり得ると判断し、このような提携を行いました。
ではここからはDeNAの守安さんからお話いただきます。
守安功氏(以下、守安):こんにちは、DeNA社長の守安功でございます。改めまして本日はお忙しい中、また急にお知らせしたにも関わらず、多くの皆様方にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
私からはDeNAサイドから見た今回の提携の背景・狙いについて説明させていただきます。DeNAは1999年の創業以来、数多くの様々なインターネット関連のビジネスを展開してきました。特に2004年からはモバイル・インターネット分野へフォーカスを定め、世界でもトップレベルのモバイルインターネットサービスを構築し、運営するノウハウを貯めてきました。
モバイルインターネットのノウハウとは具体的に申し上げますと、大規模なトラフィックをさばくインフラの構築能力や、利用者を的確に分析してスピーディーにサービスに改善を加える、サービスの運営力。
そして、モバイルの特徴である小さい画面や、隙間時間での利用に最適化させるサービス設計力などがあげられます。今回の提携においても任天堂さんにこれらの強みを評価していただくことによって、実現したと考えております。
2006年からモバゲーを開始して、そこからはモバイルゲーム事業を主力に会社を成長させてきました。ここ2〜3年はガラケーからスマートフォンへの利用者のシフト、またスマートフォン上においてもブラウザからアプリへのシフトが起こり、適応するのに想定以上の時間を要しました。
昨年、ようやくスマートフォンのゲームアプリでも内製においてヒットタイトルを生み出すことができました。このゲームの、スマートフォンでのゲーム市場においても戦える、十分にやっていけると、そういう手応えを掴んでおります。
一方でスマートフォンでのアプリゲームの競争は激化してきています。日々いろんな新作がリリースされるものの、利用者が一日の時間の中でプレイできるゲームの数は限られています。
そのためゲームを手にとて遊んでいただくことがどんどん難しくなって来ています。これは日本だけではなくグローバルの傾向と捉えています。大量にて供されるゲームの中で、利用者の方に選んでいただく、遊んでいただくためには、他のゲームとは明確に異なる差別化要素が必要になってくる。
最も明確な差別化要素がIPであると考えています。任天堂さんは全世界の中で最もユーザーに支持されるIP、最も有力なIPを保有している会社である。これは我々DeNAだけではなく、ここにいるみなさまが同じ認識と思っています。
その任天堂さんと共同でスマートデバイス向けの開発ができることは、我が社の主力であるモバイルゲーム事業を成長させる上において、考えられるいろんな戦略オプションの中で最良のプランであると考えています。
守安:先ほど岩田さんよりお話がありましたが、我々が最初にお会いしたのは2010年6月のことです。その後何度かお会いさせていただいたのちに、昨年の夏頃、今回の具体的な提携アイディアの形が見えてきました。
それから両者で何度も議論を重ね、私も現場の方々と直接お話をさせていただきましたが、議論が深まるほど、両者の強みが補完関係にあるということがわかってきました。
これは両社が組むことで、世の中にこれまでにない大きなインパクトがあるものを生み出せるのではないか。そういう思いが日増しに強くなってきました。
また、皆様の中には、両社の企業文化はまったく合わないのではないかと感じていらっしゃる方もいらっしゃるかと思いますが、実は真逆であると考えていまして、現場レベルにおいてもお互いの強みにリスペクトを持ってそれによって信頼関係を構築して、プロジェクトが円滑に進行し始めております。
両社で共同チームを編成することによって、大きな化学反応が起きて、利用者に新しい価値を提供できる作品・ゲームを生み出せると私は確信しています。
岩田さんから説明いただいた今回の業務提携の内容をまとめました。ひとつめが、任天堂さんのIPを活用したスマートデバイス向けアプリを共同で開発し、運営していくということ。2つめが、任天堂さんの新メンバーサービスを共同で開発していくということです。この2本立ての業務提携内容になります。
そして業務提携に加えて、両社で株式を持ち合うという資本提携も同時に行ないます。今回の座組においては、両者がお互いの強みの源泉であるノウハウを相互に提供しあうことになります。そのため長期に強固な信頼関係を構築する必要があり、そのために相互に株式を保有しあうことが重要だろうと考えました。
資本提携まで踏み込む目的・意義ですが、今回の業務提携において、短期のプロジェクトではなく中長期視点で大きな事業にしていくことにあります。
そして、今回発表した2件の業務提携にとどまらず、お互いの企業価値を向上させうる取り組みについては、今後も是々非々で検討していこうと考えていますので、今後の両社の新たな展開についても注目いただければと思います。
私からは以上になります。最後にひとりのゲームファンとして言わせてください。子供の頃から慣れ親しんだ任天堂さんのIPを活用したゲームをスマートデバイス上、いつでもどこでも手軽に遊べるスマートフォンでそのゲームが遊ぶことができる。
このことについて、私自身、今からどんなゲームになるんだろうと。非常にわくわくしております。
また、DeNAとしての抱負ですが、ゲーム専用機の分野で長らくユーザーからもっとも支持されているゲームを提供し続けている任天堂さんと組む以上は、スマートデバイス上においても、もっともユーザーさんに喜んでもらえる、愛される、そういうゲームを提供していきたい。
そういうゲームを提供できるチームになりたい、と考えています。ありがとうございました。
岩田:では最後に私の方から。協業というのは、それぞれでは単独で実現できないことを強みを生かして、協力しあうことで実現させるために取るべきアプローチだと思っています。
その意味で、強みが異なる両社が、提携することには大きな意味があると思っていますし、その提携を中・長期的に考えられるよう、資本の提携を行うことにいたしました。
最後に、両社の協業を始める上での、私の抱負をお話しておきます。
ひとつは、スマートデバイスで成功されている、コンテンツ供給者さんは単一のヒットタイトルに依存している構造になっていることがほとんどなんですけれども、我々が任天堂IPを活用して取り組む以上は、スマートデバイスで早期に複数のヒットタイトルを生み出せるようにしたい、ということがあります。
もうひとつは、従来のゲーム専用機のプラットフォームの定義がデバイス単位だったことに対し、世の中の広く普及しているスマートデバイスやPCを取り込み、ゲーム専用機とスマートデバイスという複数のデバイスを統合して、より多くのお客様に私たちの作るソフトをより的確にお届けしたいということです。
これは、いわば、任天堂のプラットフォームの再定義への取り組みになります。
DeNAさんという、任天堂と異なる強みを持つパートナーとの協業で、これをより早期に実現することを私は目指しております。
本日のプレゼンテーションは以上です。これからご質問をお受けいたします。ありがとうございました。
司会:それでは、これより質疑応答。ご指名はこちら司会サイドが行わせていただきます。
なお、本日ご質問はお1人様1つでよろしくお願い申し上げます。それでは質問があります方、挙手でお知らせください。
記者:先ほどプラットフォームのところは、任天堂さん主催で秋ごろにはじめるということだったんですけども、この協業IPを使ったゲームはいつごろどのような形で、どちらが主体でやるのかというのを教えてください。
岩田:はい。まず、個々のゲームタイトルがどんなもので、いつ開始なのかということは、具体的には個々のタイトルの準備ができた段階で順次お知らせしていくことにしたいと思っていますが、さすがに今年中にアウトプットが無いというスピード感では業務提携をする意味がございませんので。
今年中には何らかのアウトプットを一緒に出していくということになると思います。
また、ゲームタイトルごとに両社の役割分担というのは色々と変わってまいりますので、当然世界に向かって打ち出すときに任天堂が表に出たほうが有利ということであれば、任天堂が表に出ていくということが割合として多くなるとうことは考えられるんですけれども。
実際に役割の分担によって、どういう使い方をするかということは個々にお話していくと思います。何か補足があればお願いします。
守安:まず役割分担については両者の強みを活かす形になると思いますので、多くの場合はフロントサイドのところを任天堂さんに作っていただいて、我々はサーバーサイドやバックエンドの開発といったところを担当することが多くなるというふうに思っております。
ただそのあたりもIPのタイトルの、どういうタイトルで、どういうゲームにしようかというところから考えて役割分担を決めていきますので、個々のタイトルによって、どういう役割になるのかは変わってくると思います。
岩田:多くの方がおわかりだと思いますが、念のため誤解のないように申し上げておきますと、フロントサイドというのはお客様がスマートデバイスで実際に操作するスマートフォン上で動くアプリのほうですね。
これは任天堂が手触りみたいな部分をつくることに関しては、ノウハウがたくさんありますので我々がやるほうがお客様への理解があるだろうと。逆にウェブサービス、サーバー側、お客様の行動分析といった部分はDeNAさんに知見がたくさん溜まっておりますし、そこから得られるデータをどのようにサービスに進化させていくのかという分析能力はDeNAさんが非常に高くお持ちですので、そのように分担をする可能性が高いだろうということであります。
記者:今の発表の途中で、岩田さんが今までスマートデバイスでゲームを出さなかったのはいくつか課題があったからだと。消耗がはやいですとか、そういうお話で。
答えが見つかったとおっしゃられたんですけれども、その答えというのはどこにあるのかというのを教えてください。
岩田:ひとつは非常にシンプルなことなんですけれども、同じゲームを両社に出さないということです。今までも、たくさんの別のデバイスにあったゲームをスマートデバイスにシンプルに持っていくという事例は多かったのですが、ではその体験はもとのデバイスが持っていた最高の体験を提供できているのかというと、必ずしもそうではなかった。すると、確かにさわっていただくお客様は増えるんですけれども価値が下がってしまう。
あるいは同じものを両者に展開すれば両者のビジネスモデルの違いからくる価格帯の違いが鮮明に見えてしまって、お客様からすると納得がいかないというような、いろんな課題があったと思うんですけれども、これはスマートデバイスとゲーム専用機というのは、ゲームができるという点では非常に近しく見えるんですが、実は別物なんだということを我々の中ではっきり整理できたところがとても大きなポイントです。
こんな単純なことになんでこんなに時間がかかるんだというふうにご指摘を受けるかもしれませんが、これをクリアに発言している意見を私はあまり読んだことがないですし、我々自身が実際にゲーム専用機のIPをスマートデバイスの上で展開するときに、任天堂が言っていたのはこういうことかと。こうすれば確かに両方にとってプラスだなというふうな形で展開をしていきたいと。
ただそれを我々単独でやるよりは、有力なパートナーと一緒にやったほうがスピーディーにできるだろうと。なので今回、このような提案をしたと。ですから、我々がスマートデバイスをどう活用し、何をするかということの考えを、ずっと考え続けていた時期と、DeNAさんとこんな形で協業できないだろうかと話していた時期というのは実は並行で進んでいまして。
その中である意味、私は天の時が来て、両方に良い答えが出たのかなというふうに思っております。
記者:コンテンツの消費でいきますと、いわゆるガチャっていう方法でどんどんお金を稼いでいく方法を、これで消費が早くなっているって考え方もあると思うんですけど、ある種、射幸心を煽っていると言われているこの方法に対して、岩田さんはどのようなお考えを持っていますか。
岩田:私はあの、このアプリが任天堂のIPを活用してお客様に提案される以上、当然のことながら協業の上で任天堂が納得しない方法でお客様とビジネスをすることはありえないと思っています。
それは両社合意の上で決めていきましょうねということは、十分に合意できていますので、その意味で我々はお客様に安心してご提供できると。もちろん、フリー・トゥ・スタート、アイテム課金のすべてを一律に否定するつもりはありませんけれども、ただ、世の中でこれは少しビジネスとして行き過ぎじゃないの? とか。あるいは、子供さんに向かって提案していいの? と言われているような方法が、任天堂のIPで使われるということは任天堂は望んでおりませんので。
そうなれば、我々の協業の結果出ていくアウトプットが、そのようなアウトプットになるということは無いと思っています。
司会:では、続けてご質問のほうお願いします。
記者:岩田さんと守安さん、両名にお伺いしたいんですけども、はっきり言ってしまうとやっぱり一社ではできないというスマホ向けゲームを、やはり一社ではできないという相当の危機感があったと理解をしていいのかっていうのを改めてお2人にお伺いしたいなというのと、あと守安さんの方の会社としては任天堂にIPを使ったゲームと自社のゲームっていうのもこれからも作っていくと思うんですが、その住み分けみたいなものをお考えでしたら教えてください。
岩田:よくいろんなメディアに「任天堂は追い込まれている」などと書かれることが多いのですが、私は追い込まれているとはまったく思っておりません。
ただ、世の中がどんどん変化していくので、それに対応しなければどんな企業も必ず衰退していくという当然の危機感は持っていますけど、こうしなければできないから追い込まれて消去法で選択をした結果このような提携をしたということは、まったくの誤解であると申し上げたいと思います。
むしろ、守安さんとお話を重ねる中で、いちばん最初にお話をしたときに一緒になにかできる可能性はあるんだろうか? っていう段階から、お話をすればするほど、自分たちがご存じないことをたくさんご存知で、そしてそのことについてある部分では黒子になってでも我々の一緒の事業をすることを考えたいと言ってもらえたことや、逆に我々自身が単独でするよりもスピードにおいても、お客様に提案できる体験においても、ずっと魅力的なものが提案できるのであれば、これはむしろポジティブなチャンスとして生かされると。
だから、ネガティブな消去法で選んだというよりは、そういう意味でいうと任天堂はこの間いろんな会社から様々なお誘いを山ほど頂いておりますから、その中で我々は積極的にDeNAさんを選択し、今回の発表にいたったとお考えいただくとよいと思います。では、守安さんおねがいします。
守安:我々サイドから、DeNAサイドから見た場合なんですけれどもスマートデバイス、スマートフォンでのアプリゲーム市場というのは注力ど真ん中の事業になります。そういう意味で、最近ヒットタイトルも出せましたし、ちゃんとやっていけるという手応えはつかんでおります。
その上で、この主力事業を大きく成長させようとした場合に、どういう選択肢をとり得る手段があるのかなと考えたときに最も事業を成長させる、会社を成長させる上で有効だろうと考えると、この任天堂さんの強いIPを活用して一緒に共同でゲームをつくることが事業を成長させるという意味において、非常に有力だというふうに考えたから、この提携は筋が良いというか、我々サイドからした場合には本当に嬉しい提携になっている内容です。
先ほどもうひとつのご質問として、共同で作っていくIPと我々自身がつくるオリジナルタイトルでどう住み分けるのかという話ですけれども、これまでもDeNAとしては色々な、様々な会社さんとIPを活用したゲームというのは作ってきておりますので、IPというのは非常に利用者のアテンションをひきやすいということで非常に有力な手段ですので、このIPタイトルというのは非常に力を入れてやっていきます。
一方で、そのオリジナルの自社IPをつくりたいという思いも持っておりますので、そこについては並行して進めていくと。年間に1本とか2本しかゲームを作らないわけではございませんので、何本も作っていくゲームの中で共同でやるものもあれば、自社オリジナルで単独でやるものもあるというふうに理解していただけると。
記者:特に岩田さんにおうかがいしたいんですけれども、任天堂のIPを出していく上において、スマートデバイス向けとしては完全に1社に対して独占的に提供するという理解でよろしいかということ。
それからビジネスモデルとして考えたときに、スマートデバイス向けの任天堂としてのビジネスモデルはこれまでのコンソール向けとは大きく変わってくるという理解でよろしいのかという、その際にどういう方向性で考えていらっしゃるのか、その点を教えてください。
岩田:まずこうやって提携の発表をしたわけですから、まず最初に出すタイトルを他の会社さんとやろうということはもちろん考えておりません。
一方で、私はこの提携がうまくいくと確信してはじめるんですけれども、両社がこうやってご縁があってはじめる事業が100パーセント、必ずお互いの思う通りになる。お互いがウィンウィンになるようにちゃんとやっていきたいと思いますけど、それは誰も保証できませんから。未来永劫独占的ということはございませんから、ただ我々はまずDeNAさんと一緒に共同開発し、共同運営するものに注力するということですね。
それからビジネスモデルという意味では、今のご質問というのはゲーム専用機というのは基本的にパッケージ型の売り切りスタイルで、それからスマートデバイスではフリーミアムに代表されるような無料ではじめてここから先は課金をしていただくというようなスタイルが多いという意味の違いをさして、おっしゃっているんでしょうか?
その意味でいうとスマートデバイスのお客様に受け入れていただいて、たくさんのお客様が実際に遊んでいただけてはじめて、我々がスマートデバイスの展開をする意味というのがあるわけですから、たくさんのお客様に受け入れていただけるかって考えたいんですが。
一方で任天堂というのはあまのじゃくな会社ですので、世の中でこういうのがうまくいくとされているからその通りやりますというだけでは、我々が取り組み上ではちょっとつまらないので。それをもっと改良できないかとか、こんな新しいビジネスの構造がないのかとうことを、守安さんと一緒に色々トライすると思います。
今日抱負のところでまだ言うのははやいかなと思っていて言わなかったんですけれども、もし新しいビジネスモデルの発明ができたら最高ですよね。
記者:2点、確認させていただきたいんですけど、グローバル市場というのは日本を含むのかということと、第一段のゲームを出していくにあたって、どこで市場をつくるのかというターゲットはあるのでしょうか?
岩田:グローバル市場で日本を含まないというのはありえないことですので、世界の市場、スマートデバイスがお客様に一定以上普及しているところであれば、どこでも市場になり得るというのがスマートデバイスの電子配信によってソフトが届けられるということの1つの大きな意義や意味だと思っていますので、ぜひそうして行きたいんですが。
一方で、同時にできることっていうのはどんな組織も、人的あるいは時間的に有限ですから。1度に世界中すべてで展開するっていうことが本当にできるかどうかはこれからの段階になりますので、我々としてはそれぞれのどこの地域でどんなふうに展開していくのかっていうことが確定次第、順次ご案内していくという形をとりたいと思います。
今日はまず両社がこのようにしっかり提携をして、最初の一歩を踏み出すという発表になりますので、今日の時点でそこの具体的な内容について。例えばどのIPを使うのか。どこで最初に出すのか。グローバル展開はどういう順序で広げていくのか。そのときに誰がどう前面に出るのかということは順次、確定次第お知らせしていくと。
ただ、それがずっと今年いっぱい何のお知らせもできないというわけではなくて、順次お知らせできるということなのでご理解ください。
記者:岩田さんにおうかがいしたいんですけれども、任天堂はやっぱりパッケージゲームで、一物一価で。子どもたちが安心して遊べるゲーム市場っていうのを創りだした企業というふうに認識しております。
今回のスマートデバイスのゲームで、そういう安心というか。子どもたちにどういうふうに遊んで欲しいかっていうふうに考えているかというのと、一方で、コンソールゲームを展開できない国でも、スマートデバイスなら展開できることもあるかと思いますので、どのような国の人にどういうふうに遊んで欲しいか、そういうイメージがあればお聞かせください。
岩田:まず任天堂ブランドの中には、その意味として子どもさんに安心して与えていただけるという信頼が過去30年以上の間に積み上がってきていて、これは任天堂のとても大切な財産だと思っていて。
こういうお客様からの信頼を維持できるようにしたい、それを壊すようなことは絶対にしたくないと思っておりますので。先ほどスマートデバイスのビジネスモデルも、何か今あるものにプラスアルファの工夫が必要じゃないかと。
こういうふうにするとスマートデバイスでは収益が上げやすいという。今ある業界も今日現在動いていて、守安さんがスマートデバイスの世界もどんどん変化しているんですとおっしゃっていましたけど、たぶんこれからもどんどん変わっていって今機能しているとされてるビジネスモデルが今後もずっと続くとは限らないんですよね。
むしろモバイル、ソーシャルゲームがまずあって、スマートデバイスのアプリがゲーム化されて。どんどん普及していく過程で起こっていった変化を見ていくと、かつての家庭用ゲーム機で10年かけて起こっていたことが、2年くらいで物凄いスピードで起こっているように見える部分もあったりはしますから。
そういう意味ではビジネスモデルってどんどん変わっていくはずなんです。お客様が納得し、受け入れていただけるものが。ですからその中で我々は子どもさんを含めて、安心して遊んでいただけるっていうものを大事にしながら、一緒に事業を展開したいというのが基本です。
それからおっしゃる通り、新興国の中でハードを売るチャネルがないとか。ハードを最初に買っていただくための価格的ハードルが高すぎて、なかなか我々の商品が届かないということが存在するのは事実でして。
スマートデバイスで実際に我々のIPが提供できるようになると、その問題は1つ解決するという面があるんですね。一方で、これだけですべてが解決するかというと、新興国市場というのはスマートデバイスに加えてもうひと工夫必要だと思っていまして。
それは今日の提携発表の議題ではないのでお話いたしませんけれども、そういうことも含めて考えていることなんですが少なくともお客様に任天堂IPを載せていただくという意味では、とても適応範囲の広い。世界中にハードをお持ちの方がたくさんいらっしゃるわけですから、その人たちに向けて我々のIPをお届けできるっていうのは大きな意義があることだと思っています。
特定の国はありますかというご質問に対しては、先ほどどういう順序で、どの国で展開していきますかというものと同じで、我々の中でまずここをこういう形でやりましょうというのを決めてから、順次ご提案、お知らせしていきたいと思っています。
記者:岩田さんのほうに質問させていただきたいんですけれど、戦略的な目的。今回は戦略的な活用という話をされたようなんですけれども、戦略的な目標としてDeNAさんと資本提携をする理由はどこにあるのか。
今回も新しいプラットフォーム「NX」についても発表されたと思うので、この場で発表する目的というのが存在すると思うんですけど、どのあたりに狙いがあってそういう発表をされたのか。目的を達成するための課題点はどこにあったのかについて、コメントいただけますでしょうか?
岩田:まずDeNAさんと、ある意味スマートデバイスの展開に関してはかなり深いところで一緒に中期・長期で考えていきましょうということをお話しておりましたから。ではそれは紙の契約があって、このような業務提携をしましょうというようなだけのものではなくて、資本の関係まで持つくらいの、お互いにお互いの経営までしっかりと興味を持ち、そして日常的に色んな案件を優先的にやりとりしながら、色々な我々が取り得る戦略オプションを模索する。
それらをより近く、深くお話するためには資本提携までする価値があるだろうということで、これはどちらか片方が言い出したというよりは話が煮詰まるにつれて両社でここまでいくなら、これくらいの関係になったほうがいいですかねということで今日の発表に至っております。
確かに、今日の一連の流れの中ですと我々の全く新しいコンセプトの将来のゲーム機「NX」というのは我々の提携とは直接関係ないんです。では、なぜここでお話するかというと、私は皆様に誤解なく、任天堂はこれからもゲーム専用機のビジネスをしっかりやっていく情熱と展望を持っていますと。
スマートデバイスの問題に整理がつき、どうやってより多くの人に任天堂IPを知っていただくかということの具体的な方法がはっきりいたしましたので。では、そこで関係ができたお客さんに、ゲーム専用機でよりプレミアムな、本当にお客様に圧倒的に面白いと言ってもらえるような作りこまれた世界のゲーム専用機を目指していく。
いわば没入感のある世界に、どっぷり浸ってもらえるような。ゲームが大好きな人に心から満足していただけるようなゲームをこれからも任天堂はコアビジネスとしてしっかりやっていきますということを誤解なく今日、ご理解していただかないとゲーム専用機ビジネスに悲観しているからスマートデバイスの発表をしたというような誤解がないようにしたいというのが大きなポイントでございます。
記者:大戦略としての、ゲーム人口の拡大を変えておられないということでよろしいですか?
岩田:全くその通りでございまして。個々のIPの特性に合わせて柔軟に最適な手段を選択し、任天堂IPに触れる人口を最大化することで、最終的にゲーム人口の拡大を目指しています。そのためのスマートデバイス展開であり、そのための新しいメンバーズサービスの共同開発であり、そのための未来のゲーム機であり、全部つながった話です。
ですから任天堂IPに触れる人が増えるほど、そのお客様が任天堂IPに満足いただき好きになっていただければ最終的に、生涯任天堂のゲームに付き合っていただけるような人口は増えるはずだ、ということです。
また任天堂は最近、娯楽の再定義をしますと申し上げておりますので、その娯楽の再定義というのは人々のQOLを楽しく向上させるものは何でも娯楽とよんでいいはずだということも申し上げておりますので。
ゲームというものをなるべく狭く考えずに、ひとまわりふたまわり広く捉えるということをしたいと思います。脳を鍛えることがゲームになったり、リモコンを振ってスポーツをすることがゲームになるのと同じことで、またそういう遊びをぜひ作っていきたいと思っています。
記者:ユーザーのデータベースをどちらが持つのか、課金決済はどちらの担当になるのかっていうところですね。「Club Nintendo」の置き換えをするっていう話もあったと思うんですけれども、仮にそこをモバゲーさんが持つとした場合、ガチャを積極的に扱うようなゲームが任天堂のIPにふれたユーザーさんに届くというようなこともあり得ると。ユーザーのデータを持つのはどちらかということについて、教えていただきたいと思います。
岩田:ユーザーのデータというのはメンバーズサービスのほうを指しておられるのか、それともスマートデバイスで共同開発をし、共同運営をするほうを指しているのか、どちらでしょうか?
記者:後者ですね。
岩田:はい。まず前者に関してはこちらは共同開発はいたしますが、運営は任天堂が中心になっているので、任天堂がすべてデータを持っているというふうに認識していただければいいと思います。
後者については共同運営をするわけですから当然、そこにアクセスできなければお仕事ができないので。アクセスはできることになると思います。
ただ、そのアクセスの目的が何で、その目的は我々共同の利益にかなうのかっていう部分で、例えばそのようなことをしたら任天堂がお客様との関係上、問題ではないかということが我々の知らないようなところで起こるようなことはなくなるというのが私の理解です。
守安:いま岩田さんがおっしゃったようにゲームのほうに関しては共同で運営していくので、そのデータをどちらかがビジネスの目的に活用したりだとか。そういうのは当然協議の上で、ユーザーさまのご理解を受けた上で行うことはあるかもしれないんですが、そうではなくてどちらかが勝手に違うビジネスに活用するだとかっていうことはないというふうに思っています。
岩田:その意味ではお客様のご了解を得ているということと、両社の共通の認識があるということがなければ、データの目的外利用というのはありえないというふうに理解していただくと、お客様にも安心していただけるのではないでしょうか。
記者:今もちらっとお話があったんですけれども、メンバーズサービスについて。具体的にどういったサービス、例えばデータの、複数デバイスでの共通利用ですとか、どういったサービスを考えていらっしゃるのか。
課金システムはどのようなふうに構築されるのか、もう少し詳しくおうかがいできればと思います。
岩田:今日の時点で会員制サービスについてお話できるのは、複数のデバイスを対象にして複数のデバイスの間で架け橋をかける。つまり、スマートデバイスで遊ばれたお客様をゲーム専用機にいざなう仕組みを作るであるとか。あるいは、あるデバイスで何かしていたことが、別のデバイスでも活用できるとか、そういうようなことであったり。
あるいは今年の秋から開始で、今までの「Club Nintendo」のようなロイヤリティプログラムとしての側面も持ちますというところまでで、より具体的にこんなサービスにしますというのはもう少し全体像を綺麗に説明する準備を整えてからお話するつもりです。今日のところはここまででご容赦ください。
司会:はい。ありがとうございます。では、こちらのブロックの一番前の方、はいどうぞ。
記者:岩田社長にお伺いしたいんですけど、おそらく最初の質問には答えていただけないと思うんですが、売り上げとか利益はどの程度を予想されているのかというのが1点と、それからもう1点がですね、これは繰り返しになってしまうかとは思うんですが、方針転換の理由なんですけれども。
これまで岩田社長はスマートフォン向けにゲームを出すことは任天堂のハードウェア、ソフトウェア一体型のプラットフォームの価値を損なうとおっしゃっていたんですけども、それは何か外部の環境変化があって方針を転換されたのか、もしそれが外部の変化じゃなくて任天堂の内部のなにか変化があってしたとすると、ちょっと取り組みが遅いんじゃないかと思うんですが。それについてどういう風に思われるかちょっと教えてください。
岩田:はい。ひとり1問とお願いしていたんですが、2問答えましょうか(笑)。売り上げ利益に関しては今日の時点でお話できることはございません。今年の本決算の発表のときに来期の発表をいたしますので、来期の収益見通しの中で我々としてはその時点で想像しうる、予想しうる我々としてのベストな見解をそこでお伝えするというのが基本スタンスです。
それから、これまでと違うことを言っているのはなぜかということについては、ゲーム専用機向けに育ててきた任天堂IPを、スマートデバイスに展開することで、スマートデバイスのビジネスにとってもゲーム専用機のビジネスにとってもこうすればウィンウィンにできるだろうということがようやく答えとしてはっきりした。
それと、そのことによってもうひとつは我々一社がやるのではなくてDeNAさんという強力なパートナーを得ることで、我々の得意でないことで過剰に開発の人員をたくさん投入して、結果ゲーム専用機のソフト作りがおろそかになるというようなことが無いような形で、むしろ逆に任天堂IPをより多くの方に知っていただいて、うまく架け橋をかければ両方のためにプラスになるという答えが見つかったと。
今日の話っていうのは、いろんなことが全部セットになっておりまして、それで私が申し上げていることが以前と変わって聞こえると。
以前からこういう道が見つかればいいと思って色々考え続けてきたんですけれども、ようやく皆様に全体像をお話できるようになった。なので今日私は、すっきりした気持ちになっています。
それから、遅いというご批判についてですが、遅いかどうかは多分、数年後のアウトプットで判断されることで今日遅いとおっしゃっていることはご意見であって、真実は数年後にわかる。むしろ、ベストなタイミングを選んだと言われるのかもしれないとも思います。
私はいろんな意味で、自分の中でいろんな出会いや自分たちの中での議論の進み方や、そこで見つかったアイデアや、いろんなことが同時並行的に起こりましたので、むしろタイミングが今になって来たんだなっていうふうに自分では思っています。これが証明できるように、がんばりたいと思います。
司会:では、同じブロックで参りましょう。中央の中央あたりにいらっしゃる、黄色いネクタイを締めていらっしゃる方お願いします。
記者:今回、協業でやられます2つのビジネスモデルについて詳しく教えていただきたいと思うんですが、要するにたとえば今後、100の売り上げが計上された場合、任天堂さんとDeNAさんでどういう風な按分をされるのか。
ケースバイケースだとは思うんですが、我々も収益の見通しを立てなきゃいけませんので、何かヒントになるような、こういった方向性でやるとか考え方がありましたら教えてください。
岩田:これは両社からそれぞれお答えするのがいいと思います。まず私から。先ほども申し上げたように、ゲームタイトルによって両社の役割分担っていうのは多少変わるだろうというふうな話はしています。
一般論的に言うと、任天堂がIPを出します。そして、それから実際におそらくスマートデバイス上で動くアプリだとか、その上の企画だとか、その場合は任天堂が中心になって行う場合が多いと思います。
一方で、バックエンド側のサーバ開発であるとか、お客様の行動分析であるとか、日々の運営をものすごいスピードで素早くまわすとか。これはDeNAさんが大変得意な分野なのでそういう形で考えると、IPの部分を除くとですね、両社でだいたい半々くらいになるんじゃないですかね。
これは実際、我々の中で個別のタイトルごとに実際どれだけのエネルギーを両者がかけたかをちゃんと透明に見せ合って、その上でその投資に応じてリターンを分配するのがフェアであろうということで。
ここにおいては、会社の大小ではなくお互いに費やした労力に応じてリターンを頂くというのがフェアであろうというふうな考え方でお話をしております。守安さんお願いします。
守安:ゲームビジネスに関して、スマートフォンデバイス上でのゲームの開発、運営に関して言いますと、先ほど(岩田さんが)おっしゃられたように分担によって当然取り分が変わってきますと。ベースのところでいきますと、だいたいお互い得意なところっていうのは、今お話したような形になりますので、それに応じて収益を分け合うような形になるかと思っております。
DeNAサイドから見た場合になりますと、やはりグロスでといいますか、一本あたりどれくらいのビジネスの規模になるかということが重要になってくるかと思いますので、そういう先ほど岩田さんがおっしゃったように複数のヒットタイトルと呼べるものが出てきた場合に、かなりお互いに大きな収益とインパクトをもたらす、そういう取り組みになるという風に考えています。
岩田:確かに、我々がたとえば収益を何%ずつ分け合えるかっていうことにエネルギーを注いで議論する暇があったら、どうやってお客さんが増えるかって議論したほうがずっと建設的だと思うんです。
世の中にはスマートデバイスをお持ちの方がものすごい数いらっしゃるわけですから。その人たちにひとりでも多くリーチするっていうことの方を優先して考えたいと思っているんです。
今の回答だとアナリストの方には、「考える材料が……」という風になってしまうかもしれませんが、でも我々のマインドはそういうところでどうお客さんをどう増やすかというのが一番に考えようとしていることになりますね。
司会:それでは、隣の女性の方にそのままお願いいたします。
記者:岩田社長にお伺いしたいんですけど、色々ご説明いただいたんですが、なぜ提携相手がDeNAさんだったのかという点についてお伺いしたいと思います。
いろんな各社さんから提案があったという中でもう少し具体的にDeNAが持っていて他社さんが持っていないものを具体的に教えていただければと思います。
外から見てますとゲームアプリ市場というものは、DeNAさん以上に実績を残されている会社さんがいるんじゃないかと正直に感じております。
そういうのを踏まえまして、なぜDeNAさんかという点について教えてください。
岩田:DeNAさんの情熱だと思います。任天堂とぜひ一緒にやりたいという気持ちが非常に強くお持ちであったということ。それは、多くの会社さんが任天堂にはノックをしてくださるんですが、「任天堂は本当に応じるんだろうか」って思っておられたと気がするんです。でも、DeNAさんは繰り返し本気でアタックされたと思いますし。
もうひとつ、我々が得意な分野でその会社さんが力があるかどうかはあまり重要ではなくて、我々がここは自分たちはそんなに得意じゃないなと思うところで、それをしっかり持っておられることや、あるいはその部分について、ちょっと言葉は極端になりますが、「黒子になってもかまわない」という表現を守安さんが私の前でされたことがありまして、どうしてもある分野で実績があればあるほど表に出ないと納得できないとなると、お客様から見るとどこのサービスなのか見えにくいということがありますと。
それは最初に明言いただいていたことで、我々のとりうる戦略オプションが増えたと。たとえば、スマートデバイスのアプリを共同開発運営するだけでは選択肢はもっとあったかもしれませんが、もうひとつのメンバーズサービスを共同開発して、実際ゲーム専用機のプラットフォームというのは、DeNAさんの領域ではないわけですけど。
そのために協力することをいとわない。その中でDeNAさんのエース級の人材を充てていただけるようなコミットメントがあったことで、それだけ任天堂と組むことに対して真剣で高い評価をしていただいたというのが、私側から申し上げられることです。
守安さんはどうして任天堂のドアが開いたと思いますか?
守安:そうですね、今の方(記者)のお話だとDeNAは実力が無いみたいに言われているような気がしてならないんですけども(笑)。
我々は得意な分野に関して、他社さんと比較してどうかはわからないんですけども、十分貢献できるというか、お互いウィンウィンな関係になれるというふうに思ってましたので、非常に自然な形で、良い形での提携、取り組みだと思ってます。
司会:はい。ありがとうございます。
司会:では、時間の都合上次の方で最後とさせていただきます。
記者:ご説明どうもありがとうございました。守安社長に1点ご質問させていただければと思います。
任天堂にとってみれば、DeNAは1%のステークホルダーである一方で、DeNAさんから見た場合に大切なビジネスパートナーということ以外に今後、大株主としても大きくなってくると思いますので、これが今後のDeNAさんのIPを活用したゲーム作りにおいて、今後どうなっていくのかという点についてコメントをいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。
守安:そうですね。DeNAから見た場合、10%保有していただく株主ということで、第2位の株主になりますので、当然影響力は大きくなってくると思ってます。一方で、単純なフィナンシャルの株主って言うことでは当然なくて、戦略的なパートナーシップですね。今回の業務提携をうまくいかせる、あるいは今回の業務提携以外においてもお互いの企業価値を向上させようという形で取り組んでるものですから、そういう意味においてDeNAの企業価値に貢献というか、プラスになるであろう株主であるという風に思ってます。
具体的には当然そのスマートフォンでのゲームづくりっていうのは我々の主力のビジネスになるということですけども、我々、得意分野もあれば、なかなかまだ他社さんと比べてそこまで得意じゃない分野もあろうかと思ってますので。
そのあたりについては今回の協業を通じていろんなノウハウであるだとか、当然作り方や考え方とか、クリエイティビティですとか、任天堂さんから盗むって言うのはあれなんですけど、色々ご教示いただいて、我々単独でも素晴らしいゲームが作れるようになっていきたいと思っております。
岩田:お互いがんばりましょう。盗むっていうのはちょっと聞こえが悪いですね(笑)。
守安:(笑)。そういう形で10%の株主なんですけども、DeNAにとっては非常に重要な意味を持つ企業価値を一緒に上げていけるパートナーであるというふうに思ってます。
司会:では、時間の都合上、以上で質疑応答終わらせていただきます。ご質問ありがとうございました。
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