2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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五味洋治氏(以下、五味):今回の金正男さんの毒殺については、個人的にも非常にショックを受けております。私だけではなくて、私の妻も非常にショックを受けていて、昨日も、夜、何回も泣いておりました。
先ほどより、本の話がありましたが、本の出版を一番反対したのは、私の妻です。それは、2011年1月に金正男さんと会ったときに、妻が同行してくれたからです。
当時、私は子供がいませんでしたので、もし、金正男さんと取材してトラブルに巻き込まれたときに、私だけ行方不明になるのはまずいと思って、妻に率直に話をして、一緒に行ってくれと頼みました。彼女は同意し、私が取材しているところを写真に撮ってくれました。
会社には取材のことは言わず、机の中に、手紙を置いていきました。万が一、私の行方がわからなくなったら、ここのホテルに泊まる予定だったと、この飛行機の便に乗る予定で、ここに行く予定だと、いろいろな日程を書いておきました。金正男氏が来ない可能性もあったので、来ない場合は、2人で観光旅行をしようと思っていました。
私が、なぜ、そんなリスクを冒してまで、マカオに行って、彼に会ったのでしょうか。それは、私が長年携わっていた北朝鮮報道に対する考え方からです。ご存知の通り、北朝鮮と日本は最も敵対している関係の国です。しかし、うわさ話や政府当局者の話が先行し、直接実名で語ってくれる人が、ほとんどおりません。
そのため、私は彼に、実名で写真を撮って、ビデオも撮っていいかと、きちんと確認した上で、取材をし、それを本人にも事前に原稿を見せて、東京新聞で記事にしました。そのあと、金正男氏はいろいろなところから、勇気のある発言をして嬉しかったと、とくに韓国からそういう連絡を受けたと言っていました。
その記事が出たあと、みなさんご関心があると思いますが、金正男氏からEメールが来て、「北朝鮮本国から警告があった」と、メールがありました。「ですから、これからは政治に関することはしばらく話しません」と。「でも、あなたとの交流は続けましょう」と言っていました。
その年の5月に北京で再開し、その前後も継続してEメールのやり取りをしました。その年の12月に、金正日総書記が亡くなり、北朝鮮の将来に対する懸念、不安が高まりました。
金正男氏には、私がこれまで積み重ねてきた取材、Eメールについて、本にしてもいいかということについては許可を受けています。ただし、「タイミングが、今は悪い、ちょっと待ってほしい」と言われたのは事実です。
私はタイミング的には非常に微妙な時期ではありましたが、彼の思想や北朝鮮に関する考え方、人間性を伝えることこそ、北朝鮮に関する関心を高め、理解が進み日本だけでなく他の国との関係が改善されるという信念のもとに、本を出版いたしました。
彼の主張を簡単に要約すれば、北朝鮮の体制のあり方に批判的だったということです。最初には「権力の世襲は社会主義体制と合わず、指導者は民主的な方法で選ばれるべきだ」と言っていました。
「北朝鮮は経済の改革開放、中国式の改革開放しか生きる道はない」とも言っていました.。この発言を報道したり、本にしたことで彼が暗殺されたとみなさまがお考えなら、むしろこういう発言で1人の人間を抹殺するという、そちらの方法に焦点が当てられるべきでしょう。
この3日間英語圏、中国圏、韓国語圏、数百件の電話をいただきました。私はみなさまがたにお勧めします。私に対してすべての答えを得ようとせず、ご自分で直接ソースにあたって、取材をしてみてください。それが北朝鮮を変える力になります。
もともと私が金正男氏に関心を持ったのは、2001年北京の空港で取材の途中偶然出くわしたことからです(注:正しくは2004年)。
遊び人で、女性関係も複雑で、ギャンブル狂でいろんな噂がありましたが、私が合った印象では非常にインテレクチュアル、知的な方で、礼儀も正しく、ユーモアもあって、非常に楽さを感じました。
彼は金ファミリーの一員です。ですから現在の北朝鮮の情勢について、率直に話してくれるのではないかと期待し、それから7年間私なりの努力を続けて彼と接触しようとしてきました。
私もかなりのリスクを冒して彼と会いましたが、今、私が称賛したいのは彼の勇気です。彼がたとえそのあと、命乞いの手紙を出したとしても、彼は彼なりの決心で現在の北朝鮮の体制に関する批判をしたんだと思います。
批判ばかりではなくて、私が彼と会って、一番記憶に残っている言葉をひとつ紹介します。彼は、日本に少なくとも5回来ています。東京の高級な飲食店でお酒を飲むのが好きだと言っていました。
そこには、韓国系、北朝鮮系、一般の日本人もいて、一緒に歌を歌い、酒を飲んで楽しんでいた。「いつか、こういうふうに世界に壁がなくなればいいと思ったものです」と話しました。
私は、今、日本の外交関係の記事を書くことがありますが、ときどき、彼の言葉を思い出しながら記事を書いています。できれば、彼の言葉をより多くの人に知ってもらい、現在の北朝鮮を変えていく力につながればいいなと希望しております。
最後に、今回の事件についての見方に関する質問をたくさん受けます。正直に言うと、私がコメントする十分な材料がありません。推測でいろんな可能性を話すことは、私が最も避けたいことです。
昨日、妻とも話しましたが、私が今やることは、彼の死を深く悼み、彼の思い出を妻と共有し、さらに世界のあちこちにいる彼の友達と共有したいということです。
たくさんの取材の申し込みをいただきましたが、私の思いは今の言葉で尽きております。昔から関係のあるいくつかのメディアの方には、これからもお話しますが、取材は基本的にはお受けすることはしません。ご了解いただきたいと思います。個人的な時間もありませんし、まだ、私は心が非常に混乱していまして、まとまったお話ができません。
では、そろそろ時間になりましたので、このくらいにして、質問を受けさせていただきます。
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