2024.10.10
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大隅良典氏ノーベル医学・生理学賞授賞式 帰国会見(全1記事)
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司会者:ただいまからノーベル賞授賞式を終えられまして帰国されました、大隅栄誉教授、ならびに萬里子夫人の帰国会見を行いたいと思います。
大隅先生から最初にひと言、どうぞよろしくお願いいたします。
大隅良典教授(以下、教授):本日、ストックホルムから無事に帰ってまいりました。日々、どうやって過ごしたかあんまり覚えていないという1週間で、こういうふうにノーベル財団から私にスケジュールを全部書いてくださったのが……(スケジュールを取り出す)8時半にどこにいってなんとかっていうのが。
けっこうハードなスケジュールで、次の日のこともあんまりあれしないで、とにかくこなすというような日々でした。
ですが、一つひとつの行事がすばらしく、もちろん大変でしたけど、大変感銘も受けました。ほとんど外に出ることができなかったんですけど、昨日は雪の中ノーベルの墓に花を手向けてまいりました。
それで自分のなかで一区切りがついたかなと思いました。以上です。
司会者:ありがとうございます。それではご質問のある方はお願いいたします。
記者1:お忙しかったとは思いますが、今回もっとも印象的だったシーンについて教えてください。
教授:たぶんそういう質問があるだろうなと思って、どれが一番だったかということを考えてもみたんですけど、まだ私のなかで1週間がきちんと総括できていないというか。
もちろん授賞式は大変感動的なものでしたし、メダルを実際にいただくのを機にノーベルファウンデーションに行ったのは12日ですから、わずか1日前で。
そこで色紙にサインする作業と、歴代の受賞者が各々サインをしている本を見せていただいて、それこそ私が科学の教科書で学んだような大先輩から、私が大学院時代に憧れた研究者の名前から最近の研究者まで見ていると、そういうところに私の名前を記すことになったというのは、そのときは大変感慨深いものがありました。
晩餐会は晩餐会で、ロイヤルマーケットという王室のマーケットも大変すばらしいものでしたので、どれが1番どれが2番ということはちょっと申し上げられません。
記者2:奥様にとっても印象的だったシーンがおありになると思うんですけれども、それを教えていただきたいのと、改めて大隅さんに、奥様に対する感謝の気持ちなどお言葉をお聞かせいただければと思います。
大隅萬里子氏(以下、夫人):同じように、本当になにからなにまで初めてのことで、どれも印象深く、やはり大隅がレクチャーをして、そのときにみなさまからいろいろと拍手をいただいて、そのときにかなり胸に迫るものがありました。
また授賞式、晩餐会は聞いていた以上にすばらしく、それこそロイヤル、王族の方たちのそばで食事をするなんてことが自分の身にあるのだろうかという感激で、おいしかったんですけども、なかなかゆっくり味わう間もなく過ぎました。
教授:どこかで申し上げたように、私はずいぶんいろいろなところで支えてもらったと思っています。
ノーベル財団は「とにかくこれは個人の賞なので、家族を大事にしろ」ということを再三言ってくれて、私も家族を授賞式などに呼べて、一緒に壇上に上がったりすることができたということは大変思い出深いことになりましたし、家族というのを大事にしようということを改めて思う機会になりました。
記者3:ニッポン放送です。お休みになる前になにかしたいことがございましたら。
教授:もう2週間近く海外で過ごしたので、まずは我が家で足を伸ばして、今日は疲れてるんでそのまま寝ると思いますけど(笑)。
ただ、いっぱい宿題もあって。向こうでもたくさんお祝いの言葉、手紙をもらったりしていて、この間もたくさんの方からメールが入っていて、そういうことを処理し始めたらあっという間に数日すぎるのかなと。うれしいような……とても大変だろうなと思っています。
記者3:萬里子さんはいかがですか? お休みになる前になにか。
夫人:帰ったらゆっくりお風呂に入って、すぐに寝ようと思っています。洗濯物もたくさんありますので。
記者4:朝日新聞のクマエと申します。向こうで、「酵母への感謝」ということをたいへん印象深く聞いていたんですけれども、お酒はゆっくり味わえましたでしょうか?
教授:いろんなレセプションとかなんとか前に必ずあとと前で、シャンパンにはじまっていろんなお酒をいただきましたけど。やっぱりどこかで緊張していて、お酒がおいしいなと思ったことはあんまりというかありません(笑)。
まあ、それはしょうがなくて。たぶん胃袋のほうがあんまり受け付けなかったんだろうなぁって思いました。昨日の夜、仲間内で小さいところで飲んだら、ようやく「お酒がおいしいな」と(笑)。
記者5:ここ1週間たいへんお疲れですけれども、これから先もまだ研究がやりたいと思うことがたぶんあったんじゃないかと思うんですが、ぜひこれだけはやりたいといったら、どんなことをやりたいですか?
教授:私の研究分野であるオートファジーという領域は、今ものすごい勢いで、まだ右肩上がりでいっている分野で。これが本当に病気の克服につながるということがはっきりしているということはありません。
ただ、非常に大事な、細胞が持っている大事な機能なので、必ずやいろんなところでいろんなことに絡んでくるということは私は確信していますが、どの病気のどれにどう治せるかとかようなことに関しては、まだほとんど手がついていない領域です。
日本ではそういうことありませんけど、ノーベル賞もらったらその領域からは若者が逃げ出していくという国もあるんですが、オートファジーに限ってはこれからもっともっといろんな人が参入してきてくれて、もっとたくさんのことがわかってほしいと思っています。
私自身も、これもいろんなところで言っていて、私たちの達成度は30パーセントぐらいだろうと言っていますので。私は歴史的にも、動物細胞はみなさん関心高いんですけど、基本問題を酵母でもう少しがんばって解いて。
それで、酵母でしかできなかったという意味で、動物細胞のオートファジーの研究にインパクトが与えられるようなことにしたいと思って、あと4年間時間が与えられていると思っているので、そういう努力をしてみたいと思っています。
記者6:東京新聞のミワと申します。最終日にノーベルのお墓に行かれたということなんですけど、自由時間が少ないなかでなぜそこを選ばれたかということと、あとは、そこに行ってどういうお気持ちになられたかというのを。
教授:もちろんストックホルムはきれいな街でたくさん観光するところあったと思うんですけど、ノーベル賞の原点というか、ノーベルという1人の科学者・実業家というのことに思いを馳せて、ぜひ時間があったら行ってみたいという思いでした。
私、すごい寒いストックホルムを予想していたんですけど、最初の3日か4日は比較的暖かくて「ああ、こんなもんか」と思ったんですけど、最後の2日間ぐらいに雪景色のストックホルムを見れて。ノーベルのお墓も雪をかぶっているという静かな墓地で、たいへん感慨深いものがありました。
記者7:西日本通信社です。ちょっと地元のことで恐縮なんですけど。授賞式の時に合わせて、化学部の同級生たちが祝賀会を非公開でやられてたんですけど。まあ、なかなかお忙しくて帰るお時間はないんでしょうけど、いずれ帰って会いたいというような気持ちはありますでしょうか、という質問です。
教授:この間も、もちろん日本のなかも含めて、毎日のようにいろんな依頼がまいりました。どれもこれもある意味では無下にすることはできないものが多くて。それはたいへん……まあ行く前からそういう状況で。全世界の学会から、いろんな国から講演の依頼が来ていまして。
私もこの間忙しかったので、仲間たちと飲んだりする機会もあんまり取れなくて。いろんなお祝いの言葉とか、いろんなこと言ってくれたたくさんの仲間がいるんですけど、そういう人たちと一つひとつ丁寧につきあいたいなと思うんですけど、どれぐらい時間が(笑)、そういうことが許されるかということがまだ見えません。
いろんな過去の受賞者の方から聞いても、これからも大変なんだということを聞かされているので、どうしたら本当の日常の、研究室に大半入れるというような生活に戻れるのかなというのは。
あと20年も30年もあればいいですけど、私、先ほど言ったように、それほど長く残されていないと思うので、静かにそういうことを。自分の希望がいれられて、いろんなことが行動できたら、これほどうれしいことはないなと思っています。
記者8:TBSです。大隅さんは記念講演でも基礎研究の重要性や、「科学を文化の中核として育む社会になってほしい」というメッセージを世界でも発信されましたが、改めて、そこのところを強調された思いのところを教えていただけますか。
教授:私は日本人なので、日本の状況というのは若者にとっても、今一生懸命研究している大学生にとっても、必ずしもそんなに住みやすくないということで危機感を持っています。
そこで、私が思ったのは、受賞者も含めて海外の人が、もちろんみなさんの報道のおかげということもあるかもしれませんし、スウェーデンテレビの1時間番組をものすごくたくさんのスウェーデン人の方が見てらして、それはちょっと日本と違うのかなという思いがありました。
もちろんノーベル賞というのはスウェーデンの国家事業ではないんですけれども、王族が出られるような行事になっていて、寒い暗いスウェーデン・ストックホルムで毎年やられる一大イベントで、たくさんの人が本当にサイエンスに……。
もちろんその式典で「今年は王子様がどういう服装だった」ということも語られる一面はあるんですけど、非常にまじめにサイエンスの紹介があったりするということも含めて、そういうことが日本の科学の賞にもだんだん定着していってくれるといいのにな、という思いがしています。
なので、例えば物理学の真髄をみんなが理解するのは大変難しいことなんですけど、こういうことですばらしいことがあったんだっていうことが共有できるようになってくれるといいなと。
スウェーデンに行って、本当にノーベル賞がスウェーデン国家あげての行事なんだということを改めて思いました。
記者9:ノーベルコインを1,500枚ご購入されたと聞いているんですけども、どういった方にお配りになられますか?
教授:数えてみたらそうなったからっていうほど厳密な数ではないんですけど、私の研究仲間、妻の交友関係、私の交友関係とか。たくさんのお祝いをもらったので、その1つのお返しとして。といったら1,500ぐらいになった。
息子共にも分けたので、我々のところで1,500枚配るよということがどうなるのかわかりませんけど、足りないよりはあったほうがいいやということで、雑な議論ですけど、それぐらい購入したという次第です。
司会者:それでは最後の質問にさせていただきたいと思いますので、どなたかございましたら。
よろしいでしょうか。なければフォトセッションに移りたいと思いますので……。
教授:あ、向こうに1人。
記者10:スウェーデンではみんながサイエンスを楽しんでいて、日本もそうなってほしいという話だと思うんですけど、大隅さんがそういうことで、「こういうことをやっていきたい」というのはあったりするんでしょうか。例えばイベントでこういうことをやっていきたいとか、そういう構想とかがあれば。
教授:例えばもちろん今大学の方はアウトリーチ(注:地域社会への奉仕活動)みたいなことを一生懸命やりましょうというのは1つの方針になっているのを私も理解していますし、私もそういったことには参加していますが、まだ大事なところで私もなにがあったらいいのかっていうのはよくわかりませんけど、まだまだ考えてみないといけないことがあるんじゃないかと。
それはマスコミの報道も含めて、もう少しこうしてほしいな、ということはどこかできちんと注文つけたいと思ってますけども(笑)。そういうことも含めていろいろなことが変わってほしいなという思いがあって、まだ私のなかでも整理がついてません。
司会者:ありがとうございます。
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