CLOSE

小泉純一郎元首相記者会見(全2記事)

「日本は原発ゼロでやっていける」小泉純一郎氏が語った“専門家のウソ”

2016年9月7日、元内閣総理大臣・小泉純一郎氏が記者会見を行いました。小泉氏は、アメリカ海軍による東日本大震災の復興支援「トモダチ作戦」で、米兵が被曝した可能性を示唆。首相を辞任したあとに、原発ゼロ運動を始めた理由を語りました。

原発ゼロ運動を始めた理由

小泉純一郎氏(以下、小泉):今日はせっかくの機会だから、私がなぜ原発ゼロ運動をしてるのかというのを、時間がもうちょっとあるから話します。

私に対する批判の一番大きな点は、「なぜ総理のときは『原発必要だ』と言っていながら、やめたら『原発必要ない』と言い出したのか?」という、この批判ですよね。

それはね、専門家の意見を信じてたんですね。まず「原発は安全」「コストは他の電源に比べて一番安い」「CO2を出さない、永遠のクリーンエネルギー」。専門家が言うのは、この3つですよね。

確かに日本は資源をほとんど外国から輸入している。文明生活を送るためには、これからも原発が必要だという意見を信じてたんです。

しかし、5年前の3月11日の東北大震災。地震、津波、そして福島原発のメルトダウン。これを見て、私は自分で勉強し直しましたよ。

これを調べていくうちに、この3つの推進論者・必要論者が言ったのは全部ウソだとわかったんです。原発の導入の経緯、実情、歴史、それを調べてみて、よくもこんなウソを信じていたと自分を恥じました。

(会場笑)

昔からこういう言い古された言葉がありますよ。「過ちを改むるに憚ることなかれ」「過ちを改めざる。これを過ちという」。過ちとわかったんだから、改めなきゃいかんと思って、この原発ゼロ運動を始めたんです。

「日本の原発は大丈夫」という専門家のウソ

まず、原発が導入されて50年。その間、大きな事故が世界で3つありました。

まず最初、1979年、アメリカ、スリーマイル島。これはアメリカですよ。原発の本場。依然として、あの地域は人が住めませんよね。あのスリーマイル島は今でも人が住めませんよ。

1986年、チェルノブイリ。これまた原発事故。今でもひどい状況ですよ。最近、チェルノブイリは30年経ったけれども、25年目に、あのチェルノブイリ事故において、けっこう病人が出ている。後追いしていたお医者さんたちがいたわけですね。その資料もいろいろ見てみました。

そのチェルノブイリの実情・健康被害を調べていって、25年だから子供も大人になってます。そういう状況を、日本の北陸の医師会が日本語に訳してるのが、私のところに送られてきましたよ。日本語に訳されている。

1986年ですから、まだソ連崩壊の前です。隠されていたこともけっこうあった。その当時の甲状腺がんとか白血病は、大人には出てましたけれども、その子供が今20代、30代になっています。その子にも影響が出てるのはわかってきましたね。

そのスリーマイル、チェルノブイリ事故が起こったあとも、「日本の原発は違うんだ」「日本のは絶対安全なんだ」「多重防護されてるんだ」と。これが専門家の意見でした。

ところが5年前のあの福島のメルトダウン。これは最悪のチェルノブイリ級、それに勝るとも劣らない、そういう被害でしょう? 「日本は大丈夫だ」と。そうじゃなかったんですよ。

「安全第一」ではなく「利益第一」

今、50年間にこれだけ大きな事故が起きてるんですけれども、それ以外に人為的なミス、機械の故障、これを数え上げればもうきりがないほど、原発というのは事故なり故障なり、ミスを起こしてるんですよ。

推進論者は「小泉さん、機械に、産業に絶対に安全なものはない」と言ってる。「飛行機にしても自動車にしても、みんな絶対安全でやってるんだけれども、事故は起こるんだ」と。そう言ってますよ。そのリスクと恩恵、それを勘案しながらさまざまな技術が発展してきたんだと。

しかし考えてみれば、原発というのは、ひとたび事故が起これば、飛行機とか自動車の事故とは桁外れに違う大きな被害を現す。

福島のメルトダウンにおいても、広島・長崎の原爆を落とされたあとの放射能に関して言えば、100倍以上の放射能が拡散したっていうんですから。

いまだに福島近辺の住民のみなさんは帰れませんよ。これから何年経ったら帰るのかわからない。大人の人も5年10年いけば、もう年取っちゃって帰れない。若い人は、移ったところで新たな生活ができる。帰りたくない。故郷がなくなっちゃうというのはわかったわけですね。

最近わかったのは、「安全第一」と言いながら、「収益第一」なんですよ。東電も原発会社も。安全第一じゃない。安全第一じゃなくて利益第一。経営第一。利益第一。安全二の次! 社長も安全よりも原発会社の経営が第一なんですよ。それがわかったんです。

あの福島のメルトダウンが起きる前から、「これ安全対策不十分じゃないか」という声はあったんです。しかし、「チェルノブイリと違って、1つ来られてもまだ多重防衛してるから大丈夫だ」というのが専門家の答えだったんです。

良い例が、あの事故が起こった直後……原発は原則廃炉40年、40年経ったものはもう廃炉にしろ。なぜか? 長い年月経てば、あの原子炉が劣化する。事故が起こりやすくなるから、40年で廃炉しなきゃいかない。今、変わっちゃったよ。

今は例外じゃなくなっちゃった。どんどん申請してくれれば、政府も認めるようになっちゃった。原発を動かさないと、原発会社は利益が上がってこない。ところが……。

司会者:すいません。Q&A……。

小泉:Q&Aね。時間どおりやるから。なぜならね……どこまで話したっけな?

(会場笑)

司会者:40年間で。

小泉:そうそう。

司会者:すいません。

日本は原発ゼロでやっていける

小泉:(原発廃炉)40年が「60年まで認めてくれ」とか言ってきてるわけですよ。ところが、「小泉さん、原発ゼロなんて無責任ですよ」。3年前私が原発ゼロ運動をしていたとき、財界のある人が言ってきましたよ。

「2〜3ヶ月ならともかく、ずっとゼロにする。将来の先ならまだだけど、ただちにゼロというのは……。それは寒い冬がくれば、暑い夏がくれば、みんな国民も電気がほしくなる。冷房・暖房、さまざまな電気のありがたさがわかる。そんなのは長くは続きませんよ」と言ってましたよ。

ところがどうですか? 2011年3月に事故が起こった。それ以降、2013年の9月まで原発は日本はたった2基しか動いてなかったんですよ。2013年9月から去年の9月、2年間まったくゼロですよ。

去年の9月から2016年、今、9月に伊方の原発が1基動いたから3基といっても、10月、12月に仙台が止まりますから。ということは1基しか動かないんですよ。

ということは、2基か1基、これは推進論者が馬鹿にしていた、「30パーセント原発が担ったものを、2〜3パーセントの自然エネルギーで代わりになるわけがないだろう」という批判をしてたんですよ。今まで原発が30パーセントの電源を供給していたんですよ。事故前は。

ところが、5年以上経ってたった2基しか動いてないにもかかわらず、暑い夏も寒い冬も、東京も大阪も、全国1つも停電が起きていない。

日本はゼロでやっていけるんですよ。ゼロ宣言してないけども。原発ゼロで5年以上、なんの停電も起きない。電気余ってるの。足りないどころじゃない。余っちゃってるの。自然エネルギーがどんどん増えてる。原発を進めようと思ったら、安全対策でどんどん金がかかる。

日本の原発は一番の金食い虫

もう(会見の)時間を過ぎて、「やめろ、やめろ」というからやめますけど。ただ、「安い」というのはウソよ。原発はますます一番高い。あらゆる産業のなかで一番の金食い虫。とんでもない。よくもこういうウソをついてたなと。

東電なんていうのは事故の時点で、自分たちだけじゃ賠償を払えないと、人や被害に払えないから支援してくれと政府に言った。あの2011年の事故直後ね。じゃあ、5兆円まで政府が支援すると言った。上限が5兆円……5兆円って英語で訳すの難しいか。

(会場笑)

それが去年2015年に9兆円に上げた。9兆円まで支援しようと。そしたら最近、東電は「9兆円でも足りないからもっと支援してくれ」って要請してるよ。

賠償とか除染とか、それから廃炉があるんですよ。廃炉って東電だけじゃできない。原発会社だけじゃできない。政府の金を作らなきゃならない。原発産業というのは、いくら金がかかるかわからない。あとは、言いたけれども、もう時間がないので言わないで……。

ともかく原発はどんどん金がかかる。国民の税金を使う。(高速増殖炉の)「もんじゅ」なんて、永遠のエネルギー、ゴミを使ってまたエネルギーになるんだからと言ってもんじゅをやった。30年前ですよ。

10年後に完成した。(そして)故障。30年経った。一度も動いていないと言っていい。維持費だけで1日5,000万円。これを規制委員会から「もう経営主体を変えろ」と言われながら、まだ文科省はうだうだうだうだしてる。呆れちゃうよね。

(会場笑)

1兆2千億円かかってる。これ全部税金。一度も動いてないと言っていい。2〜3ヶ月動いたんだけど故障してパー。30年経ってできないんですよ。よく「もんじゅ」って名前つけたと。

(会場笑)

もんじゅというのは、お釈迦様で賢い知恵のある言葉ですよ。文殊。「3人寄れば文殊の知恵」、3人集まればいいアイデアが出るという意味ですよ。300人集まろうが、3,000人集まろうが、ぜんぜんいいアイデアが出てこない。

時間過ぎましたので、これでやめますけど。もっと話したいことあるんだけども。あとは質問であるけれども。

ともかく原発は日本じゃやっちゃいけない産業です。ピンチをチャンスに変える一番良いチャンスなんだ。この事故は確かにピンチだけれども、日本は自然エネルギーでやっていける、証明しちゃったの。

自然エネルギーはどんどん増えてくる。無限にある。太陽・風力・水、これを使っていけばさらに日本は発展できる。5分超過しましたけれども、あとは質問を受けますので。

(会場拍手)

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 【全文】親には「辞めてからもずっと言えていなかった」 元ジャニーズJr.がジャニー喜多川氏からの性被害を語る

人気の記事

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!