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三菱自動車 相川哲郎社長 記者会見(全2記事)

三菱自、燃費不正会見「全貌はまだ見えない」国内外向け車両に残る疑惑

2016年4月20日、国土交通省に提出した燃費試験データにおいて不正操作が指摘された三菱自動車工業株式会社・相川哲郎氏が記者会見をしました。データ不正の経緯や今後の調査について回答した、質疑応答部分を書き起こしました。

車の燃費を測定する「高速惰行法」

記者:朝日新聞です。今出ているものについて、燃費をどういう感じで、本来どうあるべきものがどうだったのか、などは現時点ではわからないんですか?

相川哲郎氏(以下、相川):中尾のほうから……。

中尾龍吾氏(以下、中尾):それにつきましては、私からご説明させていただきます。先ほど相川が申し上げましたとおり、走行抵抗の……。

記者一同:ぜんぜん聞こえません! マイク使っていただいていいですか?

中尾:すみません。それでは私からご説明いたします。先ほど相川が申し上げましたとおり、走行抵抗を低く設定していたということで、現在正規の走行抵抗値をとり直して、燃費、開発試験を実施いたしております。

その結果に基づきまして、実際の燃費値がどれだけ乖離するのかという結果を別途発表させていただきたいと思っております。

記者:読売新聞の○○と申します。どのような試験が行われていて、どこで実施されていたのか教えてください。あとは、この車の本来の燃費を確認のため教えてください。

横幕康次氏(以下、横幕):今のご質問に対しまして、私からお答えいたします。まず、今回走行抵抗を測っておりますのは、自社のなかで測ってます。

実際に燃費排ガスの測定をする前段階といたしまして、規定に定められた惰行法というものがございます。惰性の「惰」に「行」という惰行でございます。

これは実際には、ある一定の車速で走って、ギアをニュートラルにいたします。その際にスピードの変化を見るわけですが、国が定めております惰行法は、時速90キロからプラマイ5キロの範疇内の10キロを減速するのに何秒かかるかということを測定するものでございます。

今回、我々が行った試験は、高速惰行法と呼ばれるものでございまして、ある車速からスピードごとではなく一気にスピードを下げてまいります。考え方といたしましては、10キロ下がるのに何秒かかるかが定められたルール。

我々がやっておりましたのは、1秒間に何キロスピードが減速するかというものを測っていたものでございました。

いずれの場合も、ご質問にありました我々の社内での試験でございます。その走行抵抗を測定したものから二乗平均というかたちで各車速の平均をとります。

その平均をとった値をもとに、シャシーダイナモという台上試験に車をセットいたしまして、走行抵抗負荷をシャシーダイナモにインプットしまして、実際の燃費・排ガスを測るというものでございます。今申し上げたところはいずれも自社内で実施している試験でございます。

燃費データ不正操作の経緯

記者:実際に、この車種の燃費はどのぐらいなんですか?

横幕:今のカタログ値といいますか、数字でございますか? 少々お待ちください。

記者:JC08で試験をする前に、自社から持っていって、その試験におけるデータを不正したということでよろしいんですか?

横幕:先ほど申し上げました走行抵抗データというものが近似線で示されます。通常ですと測ったデータの中央値をとるわけでございますが、ここの走行抵抗を意図的に小さいものにして燃費・排ガスの計測を行ったということでございます。

記者:すみません。燃費がまだ答えられてないです。

横幕:はい、申し訳ありません。

記者:データの乖離の質問も答えられてません。

横幕:現在届け出をしている、一番新しい「eKワゴン」でございますが、2WD車におきまして、初級車で燃費値が30.4キロ、標準車で2WDが26.0、標準車の4WDは26.6キロ、ターボチャージャーの二駆は26.2キロ、ターボチャージャーの四駆につきましては25.0キロ。いずれもパーリッターの値が届け出の燃費値となっています。

記者:これに関しては、日産の車両も同じ仕様ということでしょうか?

横幕:はい、基本的には同じ走行抵抗です。

記者:JC08のデータに対して、今回の乖離は何パーセントといった数字があるのでしょうか?

中尾:それにつきましては、現在正しい走行抵抗値で再試験をやっている最中です。今の状況からきますと、5〜10パーセントの乖離があると見ていますが、いずれにしましても、最新の数字を国土交通省に提示することになっています。

記者:確認ですが、これは意図的な操作によって行われたものなのか、そうであれば、なぜこういった意図的な不正が行われたのか。社長はそれに対して、どう責任を受け止めていらっしゃいますか?

相川:まず、この操作は意図的なものであると考えております。その理由は現在調査中でございますが、数字をよく見せる、いい燃費に見せようという意図があったのは確かでございます。

なぜ不正をしてまでやろうとしたかは、現在調べておりまして、わかっておりません。私としましては、この件は把握しておりませんでした。その点は、経営者として責任を感じております。

記者:ご自身の進退もふくめて、今後の責任の取り方をどのようにお考えでしょうか?

相川:まずはこの問題を解決する。そして、再発防止に向けて努めることが私の責任であると考えています。

それ以上のことは、今は考えておりません。

不正は日産自動車の指摘で判明

記者:すみません。誰がやったのか、部署とか、組織だとすればどのレベルなのか、社長が知ったのはいつで、日産から問い合わせがあったのはいつなのか。国が検査をしなければいけないと思うんですけど、それをどのようにスルーしたのか。具体的に教えていただけますか?

中尾:私が回答させていただきます。この数値の不正を行ったのは、当社の性能実験部というところです。どのレベルまで関与していたのかという点は、今現在調査中であり、社内調査だけでは透明性がないと考えておりますので、外部の独立した有識者の調査もふくめて、全貌を解明していきたいと思います。

日産自動車から指摘があったのは、昨年の8月に、当社と日産自動車が協業でつくっている軽自動車の次期車を、今後日産自動車でお願いすることが決まりまして、そこで日産自動車側の開発がスタートしました。

そのあと11月頃に、次期車の軽自動車の燃費試験を始めるために、現行車の1号型の「デイズ」の燃費を日産自動車が測定したところ、届けリストの乖離があると。

ということで、昨年の12月に、「本件について合同で調査をしたい」という申し出がございました。

それを受けて2月に、当社と日産自動車で一緒になって、実際の車の燃費を調査しまして、3月にそれを分析した結果、走行抵抗に差があることが判明しました。

それにもとづいて、4月から当社内で、なんでこんなに差があるのか調査を始めまして、最終的に不正が行われていたということが判明し、社長に報告したのが4月13日でございます。

相川:また、この件を日産自動車に報告したのは4月18日でございます。

国の検査とユーザーへの影響

記者:すみません、国の検査をどうやってスルーしたのか答えてください。

中尾:国の検査については、我々から走行抵抗値を出しております。先ほど横幕がご説明したとおり、台上で燃費試験をするシャシーダイナモというものがございます。

そこにその数字をインプットして、JC08のモード運転をするもので、その結果は必然的にインプットした走行抵抗値の値で出てくるものですから、国としては走行抵抗値が正しいと思ってインプットした結果で、走行抵抗値に不正があったかどうかはわからないということになります。そのように考えております。

記者:インプットは御社の人間がやるということですか?

中尾:我々は速度ごとの走行抵抗値を資料として提出しておりますので、その値を国がインプットするということになります。

記者:先ほど「意図的」とおっしゃいましたが、これまでの調査で当該部署の社員から「意図的」と思わせる言質などはあったんですか?

中尾:社員からの言葉というよりも、実際にとったデータを開発本部でチェックしたところ、データの近似曲線の中央値をとるべきところを、下方にとっていたというところから意図的にデータをとっていたということが判明しました。

社員に対して、なんでそのようなことをやったのかということは、まだ調査が進んでおりません。

記者:社長にうかがいます。燃費性能が10パーセント程度劣っている場合、各家庭でどの程度、ガソリンなどの支出になるのか、説明していただけますか?

相川:ユーザーの方への対応につきましては、燃料代というところにつきましても、まさに検討している最中でございます。大至急検討の結果を出して、お客様にご連絡しようと考えております。

記者:ユーザーに向けて、改めてひと言お願いします。

相川:間違った数値を出してしまって、本当に申し訳ございません。

記者:現時点でわかっている限りで、その分析方式を使っていたのは、軽自動車に限ったことでしょうか? 軽自動車の生産のずいぶん前からその分析方式を使っていたという話もあるんですけれども、把握している限りでお願いします。

中尾:いま2002年までさかのぼっておりまして、そのなかには軽自動車以外の一般の登録車も先ほどの高速惰行法で走行抵抗をとっています。

したがって、これらの国が定めている惰行法で走行抵抗をとりなおして、両者を比較した結果を国土交通省に提出するということで、進めている最中でございます。

記者:ほかの車両も2002年以降のものは(不正操作の)可能性があると?

中尾:走行抵抗のとりかたは違ったものを採用していたものがございます。ただ、この走行抵抗の値自身が両者でどのくらいの乖離があるかというのは、まだつかめておりませんので、実際にいま試験をやっている最中でございます。

この高速惰行法というのは、米国の審査で使われる走行抵抗を出す手法に類じておりますので、大きく乖離はしてないと思っているんですけれど、我々のほうで全部再試験をいたしまして、両者の差を早急に提出したいと思っております。

不正の指示は、性能実験部で行われた

記者:性能実験部の方は「私がやりました」とおっしゃっているんですか?

横幕:今、確認しておりますところでは、当時の性能実験部長が「私が指示をした」と言っておりますが、その指示を受けた人間のヒヤリングがまだ完了しておらず、会社としてそれが事実かどうかの確認を今、急いでいるところです。

記者:2013年6月に販売開始してから一部改良というのを繰り返していると思うんですけれど、そのたびにこういった試験を行っていて、同じように担当者が数字を出しているんですか?

横幕:はい。今そこも想定して調査を進めております。

記者:一部改良の回数を教えていただけますか?

横幕:これは年式のたびに変更しております。eKワゴン、デイズ等につきましては、14型モデルが当初のモデルでございまして、これまでに販売しておりますのは15型のeKワゴン、デイズ、また我々のeKスペースとデイズルークス。16型におきましては、eKワゴン、デイズをすでに販売をしておるというところまででございます。

他社の技術に対する焦りはなかった?

記者:今、市場で高効率エンジンの開発が進んでいるんですけど、御社が不正をしてしまった背景には御社のエンジン技術が他社に対して遅れていて焦りを感じていたというところはあるんでしょうか?

中尾:そういったことはないと思っております。今の軽自動車に使われているエンジン自身はそんなに古いエンジンではないものですから、そこでそういった焦りでやったということではないと考えております。

ただ、なぜそういう不正を行ったのかということにつきましては、やはり徹底的に原因を調べていく必要があると思っておりますので、今後外部の有識者の方も参加していただいて、調査していきたいと思っております。

記者:アウトランダーとかEVに関しては関係ないですか?

中尾:関係ないというのは、不正ですか? EVに関しては、そういったことはやっておりませんので……。走行抵抗を意図的に低めに設定しているという事実はございません。

記者:PHEVは?

中尾:PHEVも同じでございます。

記者:走行抵抗値が違うということは、燃費だけではなくて、排ガスにも影響すると思うんですけれども。そちらについてはどうなんですか?

中尾:それにつきましては、今、燃費・排ガス同時に試験をやっておりまして、途中段階ですが、排ガスの値につきましては、四つ星レベルは確保できているという状況でございますので、排ガスはそんなに影響は出てこないと考えております。いずれにしましても、正しい試験結果を国土交通省に提出する予定にしております。

記者:外部調査の結果の目処ですが、いつくらいまでを目指すとか、そのあたりどうなんでしょうか?

相川:これにつきましては、現在まず外部委員の人選を行っている最中でございまして、それを踏まえてさらに我々の社外取締役を含む取締役会で決定するプロセスを踏もうとしている。そのなかで、いつまでというのを明確にしたいと思いますので、現時点でまったく決まったものはございません。

記者:まったくなしですか?

相川:通常は3ヶ月程度と思っております。できればもう少し早くとは思いますけれども、調査の内容にもよるかと思います。

三菱自工の体質はなにも変わらない?

記者:言いたくはないですが、何年か前にも1回やって、外部の有識会議もやって。先日は開発のメンバーを社長自ら更迭なさっていると。そして今回だと。

我々が見ていても、「三菱自工の体質はなにも変わっていないんじゃないの?」と感じるんですけれども。社長が就任されて、まだそんなに時間が経ってらっしゃいませんけれど、もともと技術屋さんでもいらっしゃいますし、三菱自工はもうこんな嫌な体質から抜けないんじゃないかと思いますが、それはいかがでしょう?

相川:それにつきましては、そういう見方も重々承知しております。これまで2000年以降、少しずつ石垣を積み重ねるように改善をしてまいりましたが、やはり全社員にコンプライアンス意識を徹底することの難しさを私自身感じております。非常に無念でもあり、忸怩たる思いでございます。

記者:朝日新聞です。これまでにこの不正な操作に少なくとも何人くらいの社員の方が関わっておられて、その動機ですけれども、経営側から開発部門への圧力ですとかそういったものについて述べている方っていらっしゃるんでしょうか?

中尾:その点に関しましては、調査を始めたところでございまして。そういった部分はまだ明確になっておりません。現時点までで、経営からの圧力ということを言っているものはおりません。

記者:どうして数値をよく見せようという不正を行ったのか。その部分はなにか聞いていますか?

中尾:そこを今、徹底的に追求と言いますか、解明しようとしておりまして。やはりなにか原因が当然あると思っておりまして、根本的な部分につきまして、しっかりと調査をした上で、原因を究明して、再発防止に当たる必要があると考えております。

記者:組織としておうかがいしたいんですけれど、燃費試験というのは1つの部署がやって、そのあとチェックしたりということはないんでしょうか? 

中尾:今、申し上げました走行抵抗というのは、開発段階でその部が測定しているという。走行抵抗自身は、いろんな動力性能のシミュレーションとかそういったものにも使えますので、そういったものを管轄する性能実験部が測定しておりました。

このデータにつきまして、もっと透明性を持たせることがなぜできなかったのかというところが一番の問題だと考えておりまして、それにつきましては、試験結果の透明性がどうなっていたのか、それをどうするべきなのかというところを明確にしていきたいと思っています。

記者:開発とか設計者の方はわからないんですか?

中尾:設計の人間では、この走行抵抗の値はわからないと思います。空気抵抗あたりはわかると思うんですけれど、転がり等と合わさったものが走行抵抗になりますので、これは実際の道路上でニュートラルで車を動かして求めるものですので、設計の人間ではその数値自身は把握できないと思っています。

海外市場向けの車両の調査について

記者:海外市場向けの車両についても調査するとあるんですけれど、具体的にどこの地域のどういう車種、台数としてどれくらいの規模の調査対象になるんでしょうか?

また現時点での業績に与える影響、これについてどう見積もっているんでしょうか? このあたりの今後の調査の拡大の可能性についてもう少し詳しく教えてください。

中尾:海外向けにつきましては、走行抵抗をとる試験法は、それぞれの国の法規に遵守したかたちでとっています。ヨーロッパ仕様から、米国仕様という恰好でございますが、ヨーロッパ向けは、国内の惰行法に近い方法で、ただ速度域が少し違っています。

米国の場合は、先ほど少し申し上げましたけれど、高速惰行法といったところで、これも国内と速度域が若干違っていますけれど、計測の仕方は同じという恰好です。

海外向けにつきましては、それぞれの国で指定されたやり方でとっていることは確認が取れております。

したがいまして、この結果が正しく届けの値に反映されているかどうかを今チェックしている最中でございます。今までのところで変な値で届け出をしているというのは見つかっておりませんので。海外向けに関しては、今回の国内の状況を踏まえまして、やはり全面的にこの値を検証したいと思っております。

記者:御社はアジアの台数が多いですけれど、アジアも対象になっているんですか?

中尾:アジアといいますか、例えばタイなどでCO2の数値といったものが規定されていたりしますけれど、これは基本的には欧州方式になりますので、今申し上げました欧州の試験法、および米国の試験法で世界はほぼ網羅できると考えております。

記者:業績への影響はどう見ているのでしょうか?

相川:業績につきましては、まだ我々も手が付けられない状況でございます。どこまでこの問題が広がるか、とくに国内は全貌が見えておりません。これからの作業になります。申し訳ございません。

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