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亀山塾・ヤンキー編(全6記事)

「愛嬌」さえあればどこでも生きていける? DMM亀山会長が出会った“ある友達”の話

若者の就職支援を行う、株式会社ハッシャダイ。地方在住で18〜24歳の中・高卒者たちに、自らの選択肢を広げることを目指した「ヤンキーインターン」というプログラムを提供しています。2019年3月には、インターン生に向けた研修講演が行われました。ゲストは自身も高卒18歳で上京したDMM.com亀山敬司会長。インターン生を交えたトーク内容を6回に分けてお届けします。第3話の今回は、20代のうちの勢いと、友達の大切さを語ります。

生きるためには「仲間」、幸せになるためには「友達」が必要

橋本茂人(以下、橋本):ヤンキーインターンは6ヶ月の期間ですが、「いるうちにこれだけは意識してやっておけ」ということがあれば教えていただければと思います。

亀山敬司(以下、亀山):「友達作っておけよ」って感じかな。この先、みんなはそれぞれに違う会社に行くんだろ。今は一緒に暮らしてても半年経ったら別れる関係。なんの利害もないから「友達」になれるよ。

お前らがそれぞれの会社に入ったら、その会社の社員達と「仲間」になってくわけ。会社という同じ船に乗って一緒に稼ごうっていう「仲間」にね。だけど、上司から命令されたら納得できなくてもやらなきゃならないし、嫌いなやつと組んで仕事をすることもある。本音をなかなか言えないときもあるよ。

「仲間」ってのは、助け合ったり、譲り合ったり、空気読み合ったりだから。でも、社外にいる「友達」なら、好きか嫌いかだけで付き合えばいい。

愚痴や本音が言えるやつがいないと、やっぱ人生は辛いよ。だから、みんなで連絡取り合って、たまには会ってみたらいいんじゃないかな。生きるためには「仲間」が必要だけど、幸せになるためには「友達」が必要だから。

20代のうちは「今の自分がカッコいいか?」を追求した

橋本:では、ここからはインターン生から直接質問をしてもらえたらと思います。

インターン生(以下、イン生):今、21歳で人生の目標がないんですけど、亀山さんが20代の時にしていた目標設定の仕方とか教えて欲しいなと思います。

亀山:目標設定ね〜。21歳の時は目の前の食っていくことばかり考えてたからなぁ。稼がなきゃダメだって感じで、特に大きいビジョンはなかったな。

20代の目標設定なら、せいぜいモテたいとか、収入多くしたいとか、その程度で十分かなと思うよ。学生時代だったらサッカーとか勉強ができたらモテるけど、20歳過ぎたら仕事くらいできないとモテないからな。

今はとにかく自立することを目標にしな。人に迷惑かけずに生きていけるように。友達から金借りる必要がないように。あと、彼女ができたらプレゼントくらいはできるように。

イン生:もうちょっと大きな目標を持ったほうが良くないですか。

亀山:「社会を変えたい」とか、無理に目標を持ってもなかなか続かないだろ。まずは、今の自分が想像できる範囲でなりたいものを目指せばいい。俗っぽいものでも何でもいいから、欲しいものを手に入れる。やりたいことをやる。そして、そのあと「これだけじゃつまんねえなぁ」と思えたら、次を探せばいい。

お前たちもハッシャダイに来ただけで、考え方が少しは変わっただろ。どうせ目標なんて歳とるごとに変わるんだから、動きながら考えればいい。むしろ、歳とるごとに変わるほうが正しいから。考えすぎて体が動かないのが一番まずいよな。

俺なんかは成り行きで生きてきたから、毎年目標が変わっていった。成り行きだったけど、時々「今の自分がカッコいいか?」とは振り返っていたかな。「自立しないとカッコ悪い」と思ったときは稼いだし、「稼ぐだけじゃカッコ悪い」と思ったときには、次のカッコいいを探した。

とにかく今は、自分が生きていける分の金を稼いどきな。少なくとも「やりたくないことをやらずにすむ自由」が手に入る。

恐る恐る話しかけた露天商に弟子入り

イン生:露天商に弟子入りしたみたいなことを『ウィキペディア』に書いてあったんですけど、なぜその世界に踏み込んだか聞きたいです。

亀山:19歳の時に、貸しレコード屋やろうと思って300万貯める計画を立てたんだ。それで、オカマバーで踊ったり居酒屋でアルバイトしてたんだけど、仕事帰りに六本木の日比谷線前で始発を待ってたときに怪しいおばちゃんに出会ってね。恐る恐る話しかけたら露天商をやってる人だった。「手作りアクセサリーは儲かるわよ」って言うんで、その日のうちに弟子入りしたよ(笑)。

さっきの営業力じゃないけど、誰かに話し掛けるか掛けないか迷ったら、話し掛けたほうがいい。ちょっとした出会いから人生が変わることがあるからな。可愛い子ならともかく、お前らがうつむいてても、誰も話し掛けてくれないからな(笑)。

イン生:それはわかってるんですけど、ちょっと恥ずかしいです。

亀山:俺たちには勢いしか売りがないんだからビビってちゃダメよ。若いうちの恥なら大抵はあとで笑える。話しかけても別に怒られることはないよ。せいぜいスルーされるか、笑顔が返ってくるだけ。世の中そんなに甘くはないけど、そんなに辛くもないものよ。

イン生:亀山さんはいろんな人と出会ってきたと思うんですけど、「こいつはめちゃくちゃ面白かったな」っていう人を紹介して欲しいです。

亀山:難しいぞ、そんなん。

イン生:一番印象に残っている方でいいです。

亀山:う〜ん。そうだなぁ。昔うちで子会社の社長をやっていたやつが面白かったかな。俺が20代の頃から20年くらい一緒に仕事をしてきたやつなんだけど。頭が良くて営業力があって、とにかく仕事ができるやつだった。でも、女に弱くて、金づかいが荒くて、かなりいい加減なやつだった(笑)。

「愛嬌」さえあればどこでも生きていけるけれど……

亀山:そいつは給料をいっぱい貰ってたから毎晩銀座で飲み明かしていたんだけど、宵越しの金は持たない主義らしくてね。最後は道を聞いたおばちゃんに「ありがとう」って言いながら1万円を配ったりしていた(笑)。

その日のうちに財布の金は全部使い果たす、そんな破天荒なやつだったんだけど、とにかく面白かった。面白くて愛嬌もあるから、みんなに迷惑をかけても憎めなくて、ダメなところも含めて社員たちにも愛されてた。

だけど、そんな周りの愛情がそいつをいい気にさせちゃった。いい加減なことをやっても悪ふざけが過ぎても、みんなが許してくれるから変われなかった。そして甘えがだんだんとエスカレートしていって、最後は会社の金を横領してクビになった。その後は、知り合いに金を借りて、闇金に借りて、行方知れずになって、結局最後は誰にも会えなくなっちゃった。

イン生:その人のことは許せませんか?

亀山:彼のことは今でも好きだし俺の友達だよ。フラッと現れたときには酒くらいは奢るさ。でも、もう同じ船に乗る「仲間」にはなれない。

お前らの周りにもいない? 悪いやつじゃないんだけど人に迷惑かけるやつ。何度言っても約束を破るとか、酔っ払ったら暴れるとか、失敗ばかりする困ったやつ。だけどなぜか憎めない。

「二度としません」と謝ったら許してもらえる。そんな愛嬌のあるやつはこの中にも一人くらいはいるんじゃない?

橋本:確かにいますね〜(笑)。

(会場笑)

亀山:でも、愛嬌のあるやつはそれに甘えすぎてちゃいけない。「許されてるから」と自分を変えないと、しまいには誰も叱ってくれなくなる。信用をなくして、呆れられて、最後は誰もいなくなる。

さっきも言ったように、「愛嬌」さえあればどこでも生きていける。犬猫でも生きていけるさ。でも、それが路地裏かもしれないってこと。

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