「飛び込んでから準備」で形成したキャリア

越川慎司氏:ルー大柴の親戚であるコッシールーです。815社、17万3,000人のキャリア・働き方改革の支援をしている会社の経営をしています。

以前はMicrosoftにいました。テクノロジーが働き方を変えるのではなく、「働き方を変えるためにテクノロジーをどう活用するか」という行動実験を日々行っています。

結論から言うと、私のキャリアはほぼすべて「偶然の運命」から生まれたと言えます。もともと私は能力が低く、例えば、未熟児で生まれて体も弱いですし、頭脳も弱いです。高校受験も大学受験も失敗し、大学受験なんて3回失敗しています。

そんな体も頭も弱い私が、今こうして2つの会社を経営し、前職ではMicrosoftの役員を務めることができたのは、行動実験をもとに偶然の運命を引き寄せることができたからだと思っています。

例えば、1社目は大手通信会社のNTTに入りました。そして29歳の時にふと、「このままでいいのか」と考えて、英語がしゃべれないのに外資の企業に挑戦したんです。多くの方から「無理だ。絶対に活躍できない。無謀だ」。「安定を捨てて、なぜ外資に行くんだ」と言われました。

でも結果として、外資に移ってよかったと思います。もし、英語がしゃべれないことを理由に外資に挑戦していなかったら、その先のキャリアは切り開かれなかったんじゃないかと思います。

その転職の時は、日本企業からも内定をいただきました。たくさん面接に行って、光栄なことに7社くらいから内定をいただくことができました。その中に外資のグローバル企業が2社あって、どうしようかと。実は報酬が一番高かったのが日本の通信会社でした。

でも、英語が必須のアメリカ系の通信会社に入りました。上司もオーストラリア人で、英語がしゃべれないと仕事にならないところに飛び込んだんです。転職して1年目はものすごく勉強しました。その時の英語の勉強が今も役立っていて、4ヶ国でグローバル事業を支援させていただいています。

転職した外資系での1年目の英語の努力があったからこそ、今のグローバルビジネスを掴むきっかけになりました。できないことを言い訳にせず、飛び込んでから準備・勉強したことが、自分のキャリアにつながったと思います。

「伝える」ではなく、「伝わる」コミュニケーション術

それから私は30年近くキャリアを積んでいますが、その中で一番タメになったのが、Microsoftで最高品質責任者をやった時です。

「チーフ・クオリティ・オフィサー(CQO)」という、ちょっとかっこいい名前の役職があります。当時、クラウドサービスが出たての2011年に就任しました。品質改善の責任者として、トラブルがあったら本社と交渉して、うまく調整して日本のお客さまに迷惑をかけないようにする仕事でした。

はじめは大丈夫かなと思いました。おそらく謝罪訪問が多いだろうと思ったので、怖かったんです。でも、その時に社長だった樋口さんから声をかけていただいて、やってみたらすごくよかったんです。

謝罪訪問は500件以上しましたが、その時に、「相手を観察する」「相手の感情に寄り添って、自分の発言を『伝える』のではなくて『伝わる』にする」「相手の感情を理解して、一緒に行動を変えていく」といったコミュニケーション術が役立ったんです。

トラブルは非常に怖いですよ。怒られることもあります。でも、逃げずに対応したことが、その後の忍耐力、継続力、そしてコミュニケーション術、特に「伝わる」コミュニケーション術につながったと思います。

3年間で500件以上やった謝罪訪問によって、追加契約をしてくれたお客さまは、なんと28パーセントです。大変多くの契約をいただいて、ビジネスを生み出すことができました。ビジネスは、信用を信頼に変えて、信頼によってお金をもらえるということに気づかされました。そこが今になって、非常に役立っています。

2017年に、自らMicrosoftの役員を退職して起業したのですが、始めてすぐにお客さまになってくれたのが8社です。そのうち4社は、なんと謝罪訪問でお詫びに行った先のお客さまでした。そこで信頼を獲得できたから、起業してもつながることができたのだと思います。

「伝える」から「伝わる」のコミュニケーション術。そして、できないことを理由にするのではなく、ポジティブサイドを見て、考えながら行動実験を続けていけば、あなたも必ずキャリアを磨くことができて、運命の出会いを獲得できます。

私にだって、運命を引き寄せることができたんです。失敗なんてないですよ。ぜひみなさんも、小さな行動実験で、学びに変えていきましょう。そうすれば、あなたのキャリアも必ず、必ず磨かれていきます。