2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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片山俊大氏(以下、片山):最後は京都大学の大森さん、お願いします。
大森香蓮氏(以下、大森):はい。京都大学総合生存学館の大学院生で今は修士1年目です。こちらのみなさまの中では、普通の一般の人間かなと思うんですけども、ちょっと特殊なことをやっていまして、その活動を紹介したいと思います。総合生存学館というのはなかなか知られていないんですけど大学院の1つで、いろんな分野からの知識を統合させて学問を社会実装していこうという大学院になります。
そこの5年一貫コースの1年生です。本当に普通の学生なので経歴もそんなにないんですけど。学部時代はロケットを作ったりとか。ものづくりをされている方がいらっしゃるとおっしゃっていたと思うんですけど、ロケットを作っている人と本当にそのへんにいる学生の1人だったんで。今は京都大学の大学院で人工重力を備えた宇宙構造物というのを研究していて、ちょっと特殊かなと思います。
私たち京都大学が有している宇宙関係のセンターにSIC有人宇宙学研究センターというものがあります。ここは5つぐらいの研究プロジェクトが並行して行われていまして、今(スライドの)上にいろいろと先生方がいらっしゃるんですけど、それぞれが協力をしながらこのプロジェクトを進めています。1つ目の先ほどの住友林業との木造人工衛星、昨日そちらのブースで見られた方もいらっしゃるかと思うんですけど、そちらもこのセンターの1つのプロジェクトです。
私が関わっているのは2つ目の「宇宙居住研究」というもので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれないんですけど、鹿島建設の大野さんと私のボスが協力して始めたプロジェクトになります。
大森:山敷庸亮先生という私のボスの紹介をしたいんですけれど、この先生は有人宇宙学研究センターを始動してまとめながら進めています。分野は航空宇宙工学だけではなくて、たぶんご覧いただいたらわかると思うんですけど、いろんな分野から人が集まっていくことによって進められているので、本当に違う分野の人が参画しているんだというのが、ちょっとわかりやすいかなと思います。
その宇宙居住プロジェクトの中でやっているプロジェクトで、私たちが提案しているコンセプトがあります。月に「ルナグラス」という人工重力施設、火星に「マーズクラス」という人工重力施設を作ることによって、今、微小重力下で問題視されている人間への健康状態の解決の1つの方法として提案をしています。
また、この惑星間というのも火星に行くには往復で3年かかりますけれども、今の宇宙飛行士も最長でISSにいたのはだいたい1年半ということで、その倍以上の時間がかかり、かつ滞在がある中で、本当に人体に微小重力が影響ないのかといったら、たぶんある。ということで、その期間の移動中でも人工重力の重力下にいることによって、その変化への影響を小さくしようというようなコンセプトを考えてやっています。
私の研究内容としては、この人工重力……。これは回るんですけど、遠心力によって人工重力を発生させる建物、宇宙船を作るというコンセプトがありますので、私の研究としてはその人工重力がどのように人体に影響があって、それがどういうふうに違うのかとか、そういう研究とか。プロジェクトとしては、それを踏まえてどういうスペースにどのような改善を加えたらよいのかという研究をしています。今日はよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
片山:ありがとうございました。サラッとお話しされていますけど、けっこうぶっ飛んだことをやられているんだなというのが、京都大学の特徴なのかなと私は思っています(笑)。簡単に解説すると「地球環境がまずいよ」となった時に、イーロン・マスクとかはもう火星に「地球のバックアップを作ろうぜ」と言っているじゃないですか。月は氷があるので水素と酸素で電気分解をして、そこでエネルギーを補給して火星に行って、火星と月と地球を一体開発するみたいな。
それをアルテミス計画として、アメリカ中心でやっていたりするんですけど。その先に、人がこれから住むには重力がちょっと足りないよねということで、じゃあ人工重力装置を月に作りましょうと。それでこれを今作ろうとしているわけですよね。
大森:そうですね。さらに今イーロン・マスクとかは行くという部分に取り組んでいると思うんですけれども、そこに人が住むとなった時に、行ったり住もうとしている段階でどういうふうに人体に影響があるのかというのは、やはりいろんな医学研究が進む上でも、問題が発生しています。
例えば視力が落ちていて地球に戻ってきてもその視力が改善しないとか、そういう人体の影響があると言われていて、それをどういうふうに改善してさらに人類が発展させていくところの一助になるかというふうな研究をしています。
片山:はい、ありがとうございます。というメンバーでということで、これからディスカッションに入りたいと思いつつも、あと18分ぐらいになってしまったので(笑)。もう、こうなったら単刀直入に「人類課題の解決に宇宙産業は、どう貢献できるのか」という今日のテーマを(聞いてみたい)。これもなかなか壮大なテーマなので最後の締めとかに質問したいなと思っていたんですけど、最初から聞いてみたいなと思います。
では、すごいむちゃぶりな質問かもしれないんですけど、佐藤さん。これについてどう思われますか?いろいろお話しください。
佐藤航陽氏(以下、佐藤):私は宇宙って道具に過ぎないかなと思っているんですよね。インターネットも産業の拡大をしてGAFAみたいな企業を生み出していて、こういう場所というかコミュニティを生み出したっていうことも派生的に起きましたけれども、宇宙に関してもおっしゃったとおり特別なものじゃなくて、ちゃんとしたインフラなのかなと思っているので、それをプラスに使うのか、マイナスに使うのか。または何に使うかというのは人それぞれが選べるんじゃないかなと思っているんですね。なので、この問いも、はさみをどう使うんですか?という感覚の質問と同じに感じてしまっているんですね。
片山:そうですね。確かにちょっとフワッとし過ぎました。確かにおっしゃるように宇宙は100キロメートル以上(離れているん)ですね。私は東京から来ているので400キロメートルぐらい移動したとすると、宇宙よりだいぶ遠いところから来ているんですけど、これはただの空間の話。
佐藤さんに質問したいのは、今は仮想空間に宇宙を全部再現するというか、作ろうとされているじゃないですか。それは決してリアルの否定ではなくてリアルともちゃんと一体化しながら仮想空間に宇宙を作っていくというところだと思うんですけど、そこをもう少しお聞きしてもよろしいですか?
佐藤:そうですね。今私たちは部分的な宇宙に住んでいて、重力があってという状態だと思うんですけども。仮想空間、仮想宇宙も物理宇宙も変わらないんじゃないかと思っているんですよね。多少、物事が動く条件が違うだけなので、将来の人間はたぶん仮想空間、今のデジタル空間とかメタバースみたいなもの。あとはインターネットのコミュニティみたいなものと宇宙を並行で捉えるようになっているんじゃないかなと思っているんですね。
前澤(友作)さんみたいに、誰もがお金を払って宇宙空間に訓練して行けるかというと、そうじゃないと思うんですけど、将来的には地上から遠隔操作でロボットみたいなものを経由しながら月面の探査を手伝ったりとか、ISSに入っていったりとかができるようになる。
だとすると、今私たちがスマホの画面を見たり、コンピューターで通信したり、ZOOMでミーティングしたりする感覚で、未来としての宇宙を捉えているんじゃないかなと。そういう意味では、マルチバース的な未来感が私の中にあります。将来の人類にとって物理的な宇宙というのは、いろんな100個、1,000個、10,000個ある宇宙の中にある1個に過ぎないという感覚になっていくのかなと。そのためのインフラを作りたいなと思いまして、こういう活動をしています。
片山:佐藤さんの事業を拝見すると、宇宙空間を地球上で体験できるようなメタバース空間と、地球上のいわゆるデジタルツインのような、地球を宇宙の衛星とかを使って再現するみたいな。この2つは、佐藤さんの中では一緒かもしれないんですけど、一般的な観点からするとぜんぜん違うような気がするんですよ。ビジネスで言うと、どういう役に立つところを想定されているんですかね。
佐藤:地球のその空間を再現するところに関しては、ありとあらゆるもののところで、けっこう需要をいただいているんですね。自動運転のコースに学習したいとか、あとは都市開発に活かしたいとか。あとはそうですね、防衛とかのシステムで使いたいとかがあるんですけど。ビジネスとか事業というのは、あとからついてくるものだと思っていてですね。
先に技術とかテクノロジーを作ってしまえば、それをどう商売に活かすかというのは、わりと自然発生的に時間が経てば生まれてくるものだなと思っています。地球に関しても生まれてきているので、宇宙のデジタルツインに関しても、今は宇宙開発を使っていただきたいと思うんですけど、エンタメとか、私たちが想定していないものに使われるだろうなと思って、世の中にボールを投げて楽しんでいるような感覚がちょっとあります。
片山:なるほど。例えば先ほどの自動運転とかだったら、公道で自動運転をしてAIがそれを学んで、時々ぶつかってそこから学習してみたいなものも、「時々ぶつかっていたら困るんですけど」という時に、その仮想空間の中でいろいろ学習させるとか、そういうことですよね?
佐藤:そうですね。これを物理的な実験として公道で走らせたりすると、凄まじい調整が発生する。国土交通省とか、都庁とかと調整してやらないといけないんですけれども。仮想空間であれば何百万回トレーニングしたところで、ほとんどコストがかからない。宇宙開発に関してもロケットを打ち上げたら、何億円、何百億円もの損失が出ますけれども、仮想空間上であれば何千万回やったとしてもコストもそこまでじゃない。そういう意味ではこういうものを使っていただきながら、ちょっとコストを下げていくようなことをしようかなと思っています。
片山:ちなみにそれってプラットフォームビジネスっぽい感じがして、いわゆるGAFAMに勝ちにいくみたいな壮大な、日本にとっては苦手っぽい領域なのか。いやいや、AIの時代だからその考え方自体が変わってきているんですよみたいな、そのあたりはどういう勝ち筋で考えられているんですか?
佐藤:これはちょっと話しづらい話ではあるんですけども、私はITの産業にいてGAFAみたいな企業は自然発生的に生まれたものだと思っていたんですよね。なんかガレージから生まれて企業が始まりました、それで大成功してGoogleやFacebookが出ましたというような、無邪気なストーリーを信じていたんですけれども、自分も事業をやってきた中でぜんぜんそんなことなくて、国策と極めて近いですね。
つまりアメリカ政府として、今後覇権国家として何が必要なのかという時に、情報産業は絶対とらなきゃいけない。ということで、バックアップもあって、完全に官と民と連携して動いたのが、あのGAFAというもんだったんですね。私たちは無邪気だったので、うまくいけばAppleやGoogleみたいになれるんじゃないかと思ってやってきましたけれども、ぜんぜんあの時は甘かったなと思うんですね。
今回の宇宙産業に関しては、これは民間だけでビジネスモデルを組む話じゃない。全員と連携しながら取りに行かなきゃいけない産業だと気づいているので、同じ失敗はしないんじゃないかなと思っています。かつ、防衛系の人も絡んでいるので、他国に受け渡ししていい話かというと絶対に違うなと思うので、ちゃんと国の方々もそれを見据えながら育てていこうという流れになっているから、むしろこここそ私は起業家が取り組むべきテーマだなと思います。
片山:そうですよね。インターネットも、もともと安全保障上のために開発されて官民が連携して、こういうIT革命みたいなことが起こって。これが今宇宙レベルでもう1回起ころうとしているみたいな話ですよね。
佐藤:覚えていらっしゃる方というか経験されている方がいるかどうかわからないんですけど、当時の2000年代のIT企業は胡散臭かったんですよね。極めて胡散臭いやつらだったので、大企業からすると規制対象だったんですよね。こいつらは悪さをするから早めに潰そうぜという空気感の中で、今の楽天とかソフトバンクみたいな企業ががんばっていて、あまり政府のサポートも受けられない中で、どうにかこうにか産業を作っていったんですよね。
でもアメリカはそんなことはぜんぜんなくてですね。バンバン国防総省も含めて、GAFAMみたいな企業を育てようと支援していたんですよね。だからそのスタートの土台がぜんぜん違う中で勝負していたので、ああいう結果になりましたけれども、今回は違うんじゃないかという期待を持っていますね。
(次回へつづく)
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