フィードバックとは何か

湯前慶大氏(以下、湯前):EM.FMは「エンジニアリングマネジメントをもっと楽しく、もっとわかりやすく」をコンセプトにお届けするPodcastです。お相手は、ゆのんです。

広木大地氏(以下、広木):広木です。よろしくお願いします。

佐藤将高氏(以下、佐藤):佐藤です。よろしくお願いいたします。

湯前:EM.FMでは、毎回ちょっとためになる情報を紹介していきたいということで、1つのテーマを掘り下げて学んでいこうと思っています。今回はですね、佐藤さんがプレゼンターです。佐藤さん、今日のテーマは何ですかね?

佐藤:今回のテーマは「適切なフィードバック」です。

湯前:おぉ、フィードバック。

佐藤:いろんな観点で何にしようかなと思っていたんですけれども。ちょうど自分もまだまだ修行が必要だなと思うところがあったので、今回みなさんとお話をしながら勉強できたらなと思って持ってきました。

やはり聞いていただいているリスナーのみなさんもEM、エンジニアリングマネージャーを中心にエンジニア職の方が多いかなと思うんですけれども、たぶんさまざまなタイミングでフィードバックをすることがあるかなと思うんですよね。「フィードバックとか、レビューとかってあるなぁ」と、ちょっと最初に思ったんですけれども。やはりフィードバックという言葉を、ちょっと最初に揃えながら話に移れればなと思っています。

まずフィードバックに近い言葉の「レビュー」と何が違うかをいろいろと調べていくと、レビューに関しては作業の出力とか成果物に対する評価で、成果物とか、プロジェクトの品質とか、完全性、効果性を評価するものとあって、フィードバックはどちらかというと、個人のパフォーマンスとか行動に対する意見とか、指摘を提供するプロセスというのがありました。

その中にパフォーマンス、行動、アプローチというものに対して改善点や強みを指摘していくみたいなところがあって、似たようなところではあるが若干違うんだな。若干というか、違うものなんだなということを調べて思ったりしました。

フィードバックの実践と重要ポイント

佐藤:今回はそのフィードバックに対して焦点を当ててお話をしたいなと思っているんですけれども。特にピープルマネジメントの側面でのフィードバックというところかなと思うんですが、これをゆのんさんにおうかがいしたいんですけど。最近どんなフィードバックをしていますか? というところとか、あとはそれをする上で大事にしているポイントはありますか?

湯前:そうですね。フィードバックと言っても、たぶんポジティブなのかネガティブなのかみたいなところはあると思うんですけれども。まず心がけていることとしては、その人にとって価値のあるフィードバックにしたいなということです。こちらの勝手な欲求を満たすようなフィードバックではなくて、その人にとって意味があるだろうなと思ってもらえるような言い方で言うとか、状況を説明することをけっこう心がけています。

かつ、そのフィードバックをする時には、基本的にはポジティブなことを言おうと思っています。特にその人が気づいていないであろう良かったところとか、その人が普通にやっていることでも、こっちにとってはすごくいいと思ったことをカジュアルに伝えるようにしているという感じですね。重い言葉でダラダラとしゃべってもあまり意味がないかなと思っています。それよりもいいことを素早く言うみたいな意味でのカジュアルさがけっこう大事かなと思っています。

逆に、その人にとってたぶん改善したほうが、気づいてもらったほうがいいだろうなと思うようなことについては、けっこう長めに時間を取ります。その人がどういうことについて考えてそういう行動をしたのかをこちらが理解しつつ、もしかしたらこういうふうにしたほうがいいかもしれないみたいなことを言って、行動とか考え方の参考にしてもらうみたいな感じで伝えるようにしていますね。

佐藤:ありがとうございます。やはり相手に響くように伝えるというところはすごく大事かなと思います。僕はやはりフィードバックするタイミングが、昔よりはちょっとはうまくなっては来ている気がするんだけれども、どうしたらうまくなるんだろうなというところでぜんぜん見えていなかったので、このあとも広木さんにおうかがいしたいんですけれども。ちょっといろいろ調べて持ってきたので、まずはお話しをできればなというところです。

フィードバックの種類と観点

佐藤:まず組織におけるフィードバックを考えた時に、特にピープルマネジメントの観点でのフィードバックを考えた時に、けっこういろんなタイプのフィードバックがあるなと。それで「フィードバックの種類って何ですか?」と、「ChatGPT」とか、いろんな記事とかで聞いてみたり探してみたりしたんですけれども、フィードバックの種類にもけっこうたくさんあって、観点としては3つ。

なぜフィードバックをするのかという目的。どんな目的なのかというところと、実際にフィードバックをするタイミングはいつなんだろうというところと、どういった人からのフィードバックなのか。フィードバックのジャンルはだいたいこの3つの観点で大きくカテゴライズできそうだなというところです。

ざっと説明させていただくと、まず1個目が、どんな目的のフィードバックかという観点では4つあります。ポジティブとか、または認知しているよというフィードバックとしてパフォーマンスが出ているよねと、先ほどゆのんさんがお話していた「ポジティブに」というところの、個人の努力とか貢献を称賛するようなフィードバック。

2つ目が、建設的な改善フィードバックで、ネガティブフィードバックもここに含まれるところではあるんですけど。どういうふうに改善したらいいんだということを指摘してあげて、改善方法を提案するというところが2つ目。

3つ目がコーチングフィードバックというのがあって、「もっとこういうふうにスキルを高めていこう」とか、「こういうふうな知識があるよ」といったところの支援をしていくような、個人の成長を促進するようなフィードバック。

4つ目が評価的フィードバックというものがあるらしくて、これはどれぐらい個人のパフォーマンスが達成できているかを評価して、「目標達成が120パーセントだね」とか「100パーセントだね」といった度合いを示すみたいなところでのフィードバック。大きく4つのフィードバックに分かれるということです。

フィードバックの目的と分類

佐藤:2つ目の、いつフィードバックをするかという話で言うと、リアルタイムでかつフォーマルなものか、もしくはそうではないインフォーマルなものなのかみたいなところで分かれます。いずれにせよリアルタイムフィードバック、すぐにフィードバックをするところで調整していくものと、ちょっとカジュアルなタイミングで「そういえばさ、この前のあれってこうだよね」みたいなので非公式にフィードバックをする瞬間があります。どちらも早くフィードバックをしましょうね、というのは調べていると出てきたところでした。

大きい3つ目の、誰からのフィードバックなのかという観点で言うと、ここも5つの観点があります。いろんな人からフィードバックをもらいましょうというような、360度評価の観点もそうかなと思うんですが、そこに対してパフォーマンスを見ていきますよみたいな部分とか。

ピアフィードバックに関しては、同じレベルの同僚からフィードバックをしてもらうみたいなところと、あとは、メンバーが上長とか上司に対してフィードバックをしていくような従業員フィードバック。それの逆として、1 on 1で「こういうふうに改善していきましょう」というようなリーダーからのフィードバックがあります。

もう1つ、ちょっと違う観点で言うと顧客からのフィードバックというかたちで、エンジニアだとそこまで回数が多いわけではないかもしれないんですけれども、「お客さんからこういうふうに言われた」というところで、フィードバックの種類としてだいたい5つあります。なので、これらを組み合わせてどんな目的で、いつ、誰からフィードバックをするかの組み合わせでフィードバックは成り立っているんだなというところが、今回いろいろ調べて出てきたところです。

フィードバックのタイミングと発信者

佐藤:ちょっと僕の課題感というか難しいなと思うところを共有させてもらって、広木さんにも聞きたいなと思うんですけれども。まず、僕はマネジメントをしている立場として、やはりここらへんが難しいなと感じるところが3つあって、まずは期待値調整。2つ目が正論と相手への感情の配慮、あとはやや一方通行になってしまいがちみたいなところで、どれかを意識するとどれかが抜け落ちてしまうこともあったりするなと思っています。

例えば期待値調整は、その目標を決めてお互いの認識を揃えて達成できる目標を立てて、そこに進んでいこうねというようなところではあるんですけど。例えばその期の始まりとか、プロジェクトとか、役割が変わったよねというタイミングで、後々ズレたとか不満が出たということを防ぎたいなと思っているけれども、一方で伝えているけれどもうまく伝わりきれていなかった。言ったけどやれていなかったというところで、お互いの期待値がズレてしまうということが起こるなというのが1個。

2つ目は、その感情へ配慮をしながら言うべきことは言うというところ。事実なんだけど伝え方が失敗して不快になってしまうとか、モチベーションがすごく下がってしまうということも往々にしてあるかなと思っています。けれども、こういった相手の感情とか立場を尊重しながら攻撃しないようにするみたいな。

攻撃的に言っているつもりではないんだけれども、そうなってしまうことを防ぎたいなというのもあったりします。その伝え方を失敗すると難しいなというところもあって、言わないのもそれは違うなと思っていて、ちゃんと言いながらも伝え方を工夫したいなというところ。

最後に、その一方通行になるというところ。やはりフィードバックをし続けることも大事ではあるものの、自分もそのフィードバックを受けることが必要だったりするので、相手からフィードバックを受けないといけないなと思ったりしています。

フィードバックにおける課題と難しさ

佐藤:実際に広木さんは顧問としていろいろと入られたりしているかなと思うんですけれども、なにかフィードバックをする上で気をつけている部分はありますか?

広木:そうですね。僕が1個あるのは、フィードバックをしてどういうことをもたらしたいかというと、増やしたい行動があるとか、減らしたい行動があるとか、考える量が増えるとか。なんかそういうアウトプットというか実際に起きてほしいことがあって、それを実際に増やせるのかとか、そういうことのほうがけっこう重要で、そのあとに次の行動につながったりするわけじゃないですか。

けっこう難しいことをやろうとしてフィードバックをしちゃうと、難しいことの行動を増やすのはなかなか難しくて。次の日からやることが少し変わることとか考え方が少し変わることとか、そういう行動変容をもたらせるポイントや気づきの量を増やすポイントが増えるのかどうかが上にとってはけっこう重要です。

それが芯を食っているか。芯を食っているなら食っているでいいんですけれども、なんか急に難しいことを言っても仕方ないなというのがあります。その人が「あっ!」と思った時に「広木がこんなことを言っていたな」とか、「こういう疑問が浮かんだな」とか、「こういう言葉が出てきたな」というのを積み込むようにしたいというのが基本的なスタンスとしてあってフィードバックをしているかな。

もう1つが、自分はそう思うという話と、あなたはどう思う? という話の区別をちゃんとするというところかなと思っています。けっこう人からアドバイスされたからといって良くなるかというと、そうじゃないと僕は思うんですよ。なんか一時期「アドバイス罪」みたいなものがあったじゃないですか。なんというか、アドバイスしてくる罪みたいな。

そういう気持ちになるのって何だろうなと思ったら、俺がお前にそうしろという構図がアドバイスに近いものと捉えられていると思うんですよね。あるいは「これは世の中的に良くないからこうしなさい」とか、「正しいのはこちらだからこうしなさい」とか、「正しくない行動を取っているからそうしなさい」みたいな話がフィードバックの要因、フィードバックとかアドバイスの一部に含まれちゃっているんだろうなと思っています。

それは確かにやられたらイヤだよなと思っているんですよ。例えば、遅刻をすごくする人がいたとします。その時に、「1人で待ちぼうけでショックだったんですよ」は、僕はいつでもできるフィードバックだと思っているんですね。これは私がそう感じたので、あなたは私にそう感じさせましたとアサーティブに伝えているだけじゃないですか。この話と遅刻をするなよという話は、また違うと思うんですよね。

効果的なフィードバックの方法

広木:次に、僕はこれはちょっと悲しかったなと思ったあとに「すみません」と言って、「どうして、何があったんです?」と聞いて、「こういうことがあって、ちょっとすみません。完全に寝坊なので」「ぜんぜん謝らなくていいんだよ。寝坊とか、そういうこともあるよね。最近、疲れているの?」みたいな話で原因の話を聞ける。「いやちょっとその……。けっこう最近寝つけないんですよね」みたいな話になったら、その寝つけなかったりすることについて一緒に話していくとかに変わるじゃないですか。

どちらかというと僕はこの行動を減らしたいと思った時に、まずどう思ったかに関して言えば素直に言ったほうがいいと思うんですよ。「イヤな目にあったと思った」と。イヤな目にあったのは僕の感情だから僕のモノなんですよ。それを相手に伝えるのはフィードバックではあるけどアサーティブにするんですよ。そのあとに、それを改善する方法については向こうの話で、向こうの課題なんですよ。

向こうの課題だから、「世の中的にはこうだから」とか、直接減らしてほしいというメッセージをして減るんだったらそうするし。基本的に課題解決をしないと減らなさそうだったら、もしかしたら別の課題も潜んでいるかもしれないから、そのことについて話しましょうとなっていくほうが自然かなみたいな感じがしています。

僕にとってフィードバックすることは、その先にある行動変容自体が目的であって、行動変容自体が目的だからといって自分が思ったことを言わないのはストレスだと思っています。それはあまり健全じゃないかなと思うので、自分が思ったことを「世の中はこうだから」とか「あなたのためにならないから」とか、その種の話を込めて話すのは欺瞞性を伴うから、言いにくいなと思っています。

僕は単純にイヤな思いをしたし、「変な感じだなと思ったよ」とか、「イヤだなという感じがしたよ」とか、そういうふうに思いましたけど。だからといって、これで何回も繰り返しちゃうとちょっとしんどいなと感じるということを伝えられないで、やはりしばらくしてからフラストレーションを爆発させるよりは、思った瞬間にそれを言えたらいいなと思っています。だから僕はその人のためにフィードバックするという要素そのものよりも、常に私がどうだったかのほうをまずは最初に言う。

あとは減らしたい行動とか増やしたい行動があるんだったら、それを良くしていくための仕組みなり考え方を一緒に獲得していこうという感じの流れにしたいかなとは思っているんですよね。うまくいくことばかりじゃないんですけど。どちらかというと手段と目的がコミュニケーションなどで転倒しちゃうことが多いから、僕は基本は思ったことを伝えられる方法を手に入れようという感じで動いているというところですかね。

佐藤:なるほど。自分の感情もちゃんと素直に伝えるというところがプラスですごく大事なポイントかなと、僕も思いました。ありがとうございます。

(次回につづく)