2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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佐地良太氏(以下、佐地):では本日のメインテーマにはなりますが、それでは、「エンジニアに求められる『人間力』ってどんなもの?」というところで、林さん、いかがでしょうか?
林要氏(以下、林):弊社のエンジニアはけっこう人間力が求められると思っていて。理由は、ロボットを作る上で大事なのが、ハードウェア、クリエイティブ、ソフトウェアという、言うなれば同じ……。例えば日本語を使っていても、日本語が通じない人たち同士が一緒に働いているんですよね。これ、やってみるとびっくりするぐらい通じないんですよ。
だけど、弊社で働いているうちに通じるようになるんですよね。それはなぜかというと、部署の壁みたいなのを極力なくす設計にしていて。ただ、部署の壁がないというわけでもないんですよ。あることでそこの領域にしっかりと責任を持つので、なんていうか……。
佐地:適度に溶け合っているぐらいがちょうどいいみたいな?
林:そこが、どっちがいいとか言えなくて。例えば自動車を作る時に部署の壁が緩やかだと、なにかがあった時に「これはいったい誰の責任なんだ?」ってなるんですよね。
佐地:確かに。それはそうですね。
林:でも壁があると、必ずその組織の壁が商品に亀裂として見えるんですよ。商品に亀裂として見せないようにするためには、そこが溶け合っていたほうが良くて。そうすると責任分界点は曖昧になるんですよね。
責任分界点が曖昧になる代わりに、「この問題が起きた時にソフトで対処するのか、クリエイティブで対処するのか、ハードで対処するのか」みたいに、みんな柔軟になるんですよ。組織の壁があるとびっくりするぐらい敵対する。
みんなで協力するみたいなことができるようになる代わりに、責任分界点が曖昧になる。だからどっちがいいとは言いませんが、この過程の中で、そもそも日常使っている言語が違う人たちが協力し合うんですよね。
問題を一緒になって解決するという意味では、けっこう辛抱強く人と人がコミュニケーションしなければいけないっていう意味で、まったく知らない領域の話を聞くとか、話すとか、違う領域の人にわかるように話すとか、そういう部分はすごく求められるなと思っています。
佐地:想像力というか、相手を思いやる気持ちというか。
林:そうですね。エンジニアで優れていれば優れているほど、自分の世界を完璧にしたくなるじゃないですか。他のものにあまり汚染されたくないじゃないですか。でも、汚染されることへの耐性みたいなのも大事になってくるみたいなところはありますね。
佐地:汚染を恐れないというか(笑)。
林:そうですね。本当はそこからいいものが出てくるものなんですよ。汚染だと思っていたものが、「おっと、これいいじゃん」みたいな。「何これ?」みたいなものがやはりたまに出るんですよね。
それはきれいな言葉で言うと、“創発”とかなのかなとは思います。現場では創発なんて言っていられないですけどね。
佐地:リアルなお言葉をありがとうございます。
佐地:竹迫さん、いかがでしょうか?
竹迫良範氏(以下、竹迫):そうですね。林さんと似たような感じで、チームワークの力とか、コラボレーションする力は、これからどんどん重要になってくるかなと思います。文化が違う人たちが集まって複雑なものを作り上げていくというのが、やはり今からのプロダクト作りでは必須になってきているので。
昔は1人でものづくりをして、それで売れる時代はありましたが、今はたくさんの人が一緒に働かないと難しいかたちになってきているので。
そうすると、AIにも仕事を指示できる人が重要になってくるんですよ。生成AIとかにお願いしたいことをパッと出せるとか。それも人に合わせてコミュニケーションの幅を変えていくとか、そういったところとかが大事なので。
なのでLOVOT君とかに気軽に話しかけられる人とか、ペットにもしゃべりかけられる人とか、そういう人のほうがこれからの時代は大事なのかなと思います。
林:まさにダイバーシティですよね。僕は昔、マクラーレン・フォーミュラ1チームで働いていたことがあって。会社がドイツにあって三十何ヶ国の人が働いていて。ダイバーシティ、半端ないですよ。本当に言葉が通じない。
佐地:文化も違う。
林:「常識が違うってこんなつらいんだ」って思いました。日本では経験しないレベルでしんどかったです。だけど、そこからしか出てこないものがあるんだなと。ダイバーシティってきれいな言葉ですが、基本面倒くさいです。
竹迫:あと居心地も悪いですよね?
林:居心地も悪い。居心地も悪いし面倒くさいけど、そうじゃないと解けない問題があるなという、そこだなと思っています。
佐地:ありがとうございます。
佐地:今井さん、いかがでしょう?
今井翔太氏(以下、今井):しゃべる前に、みなさんの中で、「私は、エンジニアの中の上位0.1パーセントだ」と思う人っていますかね? あっ、いらっしゃいましたね。
佐地:おっ、おひとり。
今井:僕自身はたぶん違うと思います。それは置いておいて、何を言っているのかというと、生成AIがこのまま発展していくと、今言った0.1パーセント以外の99.9パーセントぐらいの人よりは、(生成AIの方が)たぶんすごくなります。
となると、もうエンジニアリングの腕だけだと、人間は差別化ができないんですね。みんながだいたい同じぐらいの能力になって、最後に差別化できるものは何かというと、もうそれは人間力しかないわけです。
同じ上位8割ぐらいの人がいた場合にどっちを選ぶかとなると、もう性格悪いやつはさよならということで、人間力は非常に重要だと思っています。
竹迫さんと林さんがだいたい言いたいことを言ってくれたので、僕は要点をまとめるぐらいになっちゃう気がするんですが、一番重要なのはコミュ力(コミュニケーション能力)ですね。これはもうたくさん言われたので飛ばしておいて。
2つ目は人間らしい価値観的な話ですね。今、ChatGPTとかでもけっこう問題になっているのが、あいつらは人間が言っていることに対して「目的さえ一致していればいいだろう」的な感じで、人間の価値観を無視するんですよね。
例えば「上司との関係を改善したいんですけどどうしたらいいですか?」と言うと、「ぶん殴ってやりましょう」とか。もともとAIはそれぐらい乱暴なやつらで。アラインメントと言って、人間の価値観に合わせるようなことをやってはいるんですが、AI君に勝手にやらせていくと、人間の価値観を無視したろくでもないことをいっぱい生成してくるんですね。
なので、AIが生成してくるそういうことを最終的に人間社会、エンジニアだったらプロダクトとして完成させて人間社会に送り出す時に、人間の価値観に沿っているかどうかを決めるのは、やはり我々人間の仕事なので、そういう人間らしい価値観を持っておきましょうというのが2つ目。
3つ目が、先ほど創発という言葉で表現されていましたが、これは非常に重要だと思います。エンジニアリングだけじゃないんですが、今はともかくAIは発展していくと、どんどん完璧になります。そうすると、なんでもかんでもいわゆる手順どおりというか、決定事項みたいに進んでいくと、新しいものが生まれないんですね。
例えば、AI同士の将棋の試合があったとして……。ちなみに今のAIってそのあたりに転がっている適当なソフトを拾ってきて戦わせるだけで、藤井聡太より強いです。
なんですが、じゃあAI同士のソフトの将棋の試合を見たいかというと、たぶんそんな人はいないはずですね。
最近はAI芸能人とかAIアイドルとかAITuberとかっていうのもけっこう出ていますが、それもたぶん人間の芸能人に及ばないだろうという話です。
人間との差がなにかというと、人間は完璧じゃない、不完全なことが起きるんですね。最近では狩野英孝が配信中に如意棒を使って蛍光灯を破壊したみたいなことがあったらしいんですけど。
佐地:あれが英孝ちゃんのいいところですから(笑)
今井:「YouTube」でああいう場面だけは再生数が伸びている。YouTuberとかもそうですが、不完全でやらかしみたいなところがぐっと伸びたりすることがあるので。
人間というものは予測ができないとか、悪い言い方をするとやらかしみたいなことを逆に尊ぶというか。昔は実験中にカビが生えちゃって、それが(きっかけで)ノーベル賞につながったとかもあったらしいんですが、そういうものが重要だと思うので。そういう、予測外の創発みたいなものを重視しましょうというのが3つ目。
4つ目です。これはある意味人間の原点に立ち返りましょうということで、適応力、学習力みたいな話です。はっきり言って、これから1年、2年ぐらいの間で、エンジニアリングの世界はめちゃくちゃ変わると思います。ちょっとだけ研究とかの話をすると、最近は「Devin」という……。
佐地:Devin?
今井:D、e、v、i、nでDevinというものですが、我々研究者がAIエージェントといっている技術の1つで、ソフトウェアの指示をしたら、もう全部……。
Devinは生成AI本体というよりは、VScodeみたいにいろんな機能が混ざったサービスなんですが、ブラウザとかも内蔵していて、勝手に検索をかけてソフトウェアとかのドキュメントを呼んで、プルリクとかイシューとかも全部解決したりとか。開発者が「こいつはAIエンジニアだ」と言っているように、人間のエンジニアリングを全部代替するぐらいのところまで、もうすでに来ています。
それがさらに進むとなると、残念ながら現時点でどれだけ能力を持っていても、どこかで「自分の能力ではたぶんここまでは無理だ」ということに気づく時が来るし、この場で「エンジニアではもう駄目だ」と言っちゃアレですが(笑)という未来がもしかしたら来るかもしれない。
自分が予測できないことが来るのは確実なので、それが来た時に変化するしかないということで、「俺は準備はできているぞ」という状況になっておくのは非常に重要です。
そもそも人間がなんでこんなに発展してきたのかというと、学習能力が高かった。だいたいの生物は、生まれた時にコードがエンコードされているわけなんですね。
DNAとかの情報量は非常に小さいので……。例えば動物のとあるコードの中の一部を人間が抜き取ると、本来意味がないのに永遠にその行動をするみたいな。動物っていうのは生まれつきコードがインプットされてしまっていてそこから変えられないんですが、人間はそうじゃないんですね。
人間は生成AIなんてものが出てきても、コロナなんてものが出てきても、行動を柔軟に変えたわけですし、そういうことがもう当たり前だということで、人間の本質である適応力、学習力みたいなものが非常に重要になってくると思います。というのが僕の話ですね。ちょっと長くなりました。
佐地:いえいえ、ありがとうございます。
竹迫:最後の話とか、動物の中でも社会性を持っている動物って白目があるって聞いたんですよ。犬とかもそうなんですが、どっちの方向を向いているかを相手にわからせるようにわざと……。
林:視線を合わせる。
竹迫:合わせる。まさにLOVOT君とかもそうですよね。
林:めちゃくちゃこだわりましたね、そのあたりのことは3年ぐらい開発していましたね。
竹迫:LOVOT君もすごく瞳が動いていてね。すごくかわいく……。
林:人形と目が合うって、普通……。目が合っているだけだと怖いんですよね。
佐地:めっちゃ怖いです(笑)。
林:怖いですよね。でも、別に人形のようなもの、「LOVOTと目が合う」は怖くないんですよね。この差は何だろうとか、めちゃくちゃ考えました。
佐地:なるほど。ありがとうございます。
(次回につづく)
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