ChatGPTは株価予測ができる

森正弥氏:こんな使い方もありますみたいなところで、大企業でもいろいろ進んでいるのは財務分析で、「財務データを入れて分析して」と言うと……ちょっと(スライドの)真ん中の文字が小さくて見えにくいですが、一般的な財務分析をしてくれます。

ちょっとインパクトがあったのが、ChatGPTは株価予測ができるという話ですね。これは普通にAIやマシンラーニングをやられている方からすると、「おいおい、それは言い過ぎだろう」と思ったりするわけですが、この論文の中身を読んだり、あるいは株価予測を業務としてやっている方からすると「まぁ、そうだよね」と思うところがある。

それは何かというと、株価予測だけじゃなくて金利の予測とか、そのマーケットの予測とか、あるいは原材料の価格予測でも共通の話です。基本的に今のデータからマシンラーニングの予測モデルを作って予測していきます。過去データから作るので、ある種の周期性や季節性での予測が成立します。

ただ、昨今はコロナとかウクライナの侵攻とか、あるいは今のイスラエル、ガザ地区の話とか、予想できないことが起きてマーケットがすごく乱れるわけです。そうすると、過去のデータから予測しても外れがすごく大きくなっちゃう。例えばそういうのを、あらかじめどういうふうに修正していくか、というのをやりたいんですよね。

昔からニュースの情報とか、アルファブロガーのブログとか、あるいはソーシャルメディアでのさまざまな人の観測とか、動きとか、呟きみたいなことを分析していくことで、マーケットの変化の予兆をつかんで反映させていきたい。予測モデルを修正していきたいというのがある。

さまざまなNLP(多層パーセプトロン)の技術を使ってやってきたんですが、なんだかんだChatGPTが一番性能が良いよねということがわかって、ChatGPTを使うとこういう予測モデルの精度を非常に高めることができるとなってきている。そういう応用まで出てきているという話ですね。実際に我々もこれで、ある製造業さんの原材料価格予測の支援をしています。

業務への適用で効率化を実現

もうちょっと業務での適用というところに一歩入ると、これはある会社さんでやった稟議書の作成で、(ChatGPTを)使ったらどれぐらい効率化しましたか? みたいな話です。(スライドを示して)上は、トータル16時間かかっていたものが「6時間20分で済みました」「半分以下になりました」みたいな話ですね。「そうだよね」みたいな話なんですけど。

例えばChatGPTに叩き台を作ってもらうとか、社内のフォーマットに則した感じで書いてもらうとか、書いたものの誤字脱字をチェックしてもらうところでも、すごく効果が出ています。これを実際にやったところ、この時間の効果よりもはるかに社員の方の心理的なメリットが強かったというのが、(スライドを示して)ここの赤字の部分ですね。

社内の手続き文書などを連携して、この稟議書の決裁ルートと決裁者を教えてもらうということをやりました。これは会社さんにもよりますが、例えば決済者と決裁ルートがわからない稟議書や申請がすごくいっぱいあると。ある部署に聞いたら、「先月までうちだったんですけど、今月は違うんですよ」みたいな話が返ってきたり(笑)。

問い合わせると「問い合わせる前に文書を読んでから問い合わせてください」みたいなメールが来て、リンクが来て、リンクを押すとリンク切れとか。そういうことはよくあると思うんですよ。みなさん、ありません(笑)? これでもう半日ぐらいかかって、「この会社を辞めてやる!」と思ったりするわけですよ(笑)。

それがきちんと連携していると、全部同じインターフェイスで決裁者も教えてもらえるし、フォーマットも教えてもらえるし、書いていて構成までできるみたいな感じですよね。それは時間よりも心理的な効果がすごく大きいよねという話がちょっとありました。つまりこれが何を意味しているのかというと、時間だけじゃなくて社員のエクスペリエンスも変えていくことができますよねということです。

システム連携というところまで来ている

さらに言うと、これはうちの会社でちょっと作ったやつなんですけど。ちょっとマッシュアップするだけでこんなことも普通にできます。ChatGPTのパワフルさというか、ポテンシャルがあるところですかね。ちょっと動画を流します。

:今話されていた内容が起こされていて、議事録のフォーマットを指定して「これを議事録にまとめてください」とすると議事録が出来上がるという話ですね。音声認識とかを組み合わせて、話していることが起こされていくということから、さらに議事録の作成まで一気通貫でやれるという話で、こういうものが簡単に作れる。

各業務を見ていくと、やはり先ほどの稟議書の作成もそうなんですが、いろいろな効果的な活用ポイントがあって、きちんとその業務を見ながら適用していくことで非常に効果を高めることができるよねという話です。これは日本企業がすごく得意な領域でもあって、RPAとかもありましたね。得意な領域でもあるので、だからこそ日本での活用のブームがすごく盛り上がっているのかなと思うわけです。

さらにシステム連携というところまで来ています。

ちょっとここから展開が怒涛な感じになっていくんですが、これはいわゆるRAGですよね。Retrieval Augmented Generationというものの活用を、本当に大手企業はほとんどみなさんやられている。あるいは着手しているという、これはまたすごい話ですね。海外ではこんなことないです。

例えばこれは、Chat UIで質問を受けたら、その質問を受けた内容をAzureのOpenAI ServiceでGPTに渡して、そこから文書の検索クエリに変えて、社内の文書の検索をして、返ってきた結果をまたGPTに渡して「回答を作ってね」とやって返すみたいな話ですね。GPTにそのデータを学習させたり、ファインチューニングをしたりする必要がなく、社内のデータと連携した回答を生成できる。しかもある種のマッシュアップなので、簡単に……。「簡単に」とは言い過ぎですが、簡単に作れるよねという話です。

また、OpenAIが嘘を答えるというのがすごく話題ですよね。いわゆるハルシネーションという現象で、今はOpenAI社も凄まじい対応しているので、回答の精度が上がってきていて、昔は嘘を答えていたものが今は正解を答えるようになっちゃっていて、なんとなくつまらないみたいな葛藤がありますけれど(笑)。

この方式だと、事実そのものは自社のデータから引っ張ってきているので、嘘が混ざりにくいのでハルシネーションが起きにくい。ここまで見据えて動き始めています。例えば現在のやつはいろいろなシステムが分かれていて、サイロになっていて、データベースも分かれていて、このChatGPTをインターフェイスにして全部統合することができます。

例えば、財務に関する質問をしながら計画を作っていこうとした時に、最初に日本語で「8月や9月のデータを基にしながら原因を分析して対応を考えたいんだけど」みたいなことを言うと、それが内部的にはSAPのクエリに変換されて、SAPからデータを引っこ抜いてきて、その表形式に表示しながら対応策を出すみたいなことがやれるという話ですよね。

さらに言うと、そういうふうにいろいろなところにリンクしてデータを引っ張ってきているという話から、RPAや他の技術も組み合わせてここから逆に処理をキックしていくみたいなこともできたりする。

我々も最初はちょっと夢物語というか、将来こうなりますよねという話をしていたんですけど、今まさにこういうふうシステム連携をやる企業さんも出てきています。

RPAによる自動化を紹介

さらには、モジュールとしてシステムの中に組み込んでいくというパターンです。(スライドを示して)例えばこれは何かというと、RPAによる自動化です。この真ん中のところがRPAによって自動化されたという話です。

自動化できなかった部分もありますが、Generative AI、これは決してChatGPTに限らず、「PaLM」とか「Llama」とか、あるいは「Dolly」とか「MosaicML」とか、LLMを使うことで自動化をもっと拡大できます。

例えば文章を書かなきゃいけないところとか、ある程度の言葉を作らなきゃいけないところはもちろん生成AIで対応できるし、さらに言うと例えば認識するところですよね。このニュースはこっち側にプラスの作用がある、こっち側にマイナスの作用があるみたいなことを判定させて後ろに流すみたいなことができるようになってきている。

我々もさまざまなRPAの会社さんと組んで、ここらへんの分析を進めていて、いろいろある業務パターンを、どう自動化でカバーできるかというのを3つのパターンにまとめています。

(スライドを示して)一番上は、LLMや生成AIが文章を書かなければいけないパターンですね。

真ん中のやつは生成AIが分析をしていくことによって自動化が広がっていくパターン。

一番下のやつは、人と生成AIがインタラクションすることがトリガーになっているパターンです。

これでちょっと分類して、いろいろな業務がそれぞれのパターンに対応しているよねというところから、企業の自動化の拡大の支援をしています。

「Salesforce」とかSAPとか、いろいろなものと連携しながら営業のデータを引っこ抜いて裏側に渡していくことが自動化される、みたいなことをやっていますという話。

リアルな人物を作ってインタラクションさせる

そして3番目です。先ほどピザ屋の店員の動画をお見せしたので、それでほぼすべてという感じですが、あれはアニメキャラクターでしたよね。メタバースのトレンドがあったので、リアルな人物を作るというテクノロジーもいろいろあります。

国内では、デジタルヒューマン株式会社という会社が、本当にリアルな人が顧客対応をするみたいなプロダクトを開発しているので、興味があったら見ていただけたら。あとは日本では、スタートアップのオルツがまさに本人とそっくりなやつを作って、LLMを後ろにくっつけて、インタラクションさせるという技術をお持ちです。こんな展開もありますし、実際に取り組んでいる会社もあるという話です。

スペシフィックな領域における独自LLMの開発

4つ目。独自LLMは、ChatGPTがあるのでそれで全部済むんじゃないかみたいな話ももちろんあるんです、業務をいろいろ見ていくと「専用の物を作ったほうがいいよね」という話があります。

(スライドを示して)例えばこれは、ブルームバーグさんがお持ちの過去40年分のデータを投入して、500億パラメーターぐらいの「BloombergGPT」を作っているという話です。

先ほど「こんな使い方もあります」という話の中で、株価予測や原材料価格予測の話をしましたよね? あれは結局何をやっているかというと、ニュースの情報などをGPTに食わせて、このニュースは例えばこの株価が上がる方向に作用する? 下がる方向に作用する? ニュートラル? と判断させて、その結果をこの予測モデルに反映しているわけですね。

ChatGPTのGPT-3.5やGPT-4のレベルでもぜんぜん精度は上がるので、それでいくと、このブルームバーグさん、専門会社さんがお持ちの40年分のデータが投入されたやつのほうが精度が高い判定ができるよねというのが想像に難くないというところで、例えばこういうものとか。

あとは実は化学業界さんとか、製造業のマテリアルズ・インフォマティクスとか、あるいは製薬業界の創薬の世界においては、ChatGPTのトレンドが起きる前から大規模言語モデルを作って、物質探索をやっていこう、薬の新薬の開発をやっていこうというトレンドがありました。このあたりは、独自のLLMを作っていくところにだいぶ投資されてきている世界です。

グローバルな製薬企業はもうこぞってここらへんに投資をしていて、独自のLLMを作ってそれを創薬に活かすということをやっています。

日本でもNECさん、NTTさん、サイバーエージェントさん、LINEさん、ABEJAさん……さらには他の会社さんも独自のLLMを作ってリリースされている。

例えばそのChatGPTは非常に能力が高い。日本語の能力も高いが、英語はさらに高い。さらに言うと翻訳の技術を組み合わせれば、英語で質問をして返ってきた結果を日本語に翻訳すればいいという話があるわけです。ただ、それは例えば日本の法律について把握しているわけじゃないし、日本の会計ルールについて把握しているわけじゃない。

だから例えば日本の法律のデータを投入したLLMや、会計のデータを投入したLLMなど、個別のLLMとして作る意味があって、かつ価値も高いんですね。

例えばそういうスペシフィックな領域、先ほどの製薬や物質探索などマテリアルズ・インフォマティクスを見つけて作っていくとか、あるいはそういう領域での汎用的な業務を支援するためのLLMを作っていく価値はあって、いろいろなところでの開発が進んできています。

(次回へつづく)