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「自分のサービスで生きていく」 個人開発者入江慎吾氏に聞く、プロダクト開発のこだわり(全2記事)

【個人開発者に聞く開発の美学】「リリースしても95パーセントぐらいは失敗」 「MENTA」開発者・入江慎吾氏が語る、個人開発の“醍醐味”と“怖さ”

個人開発によって生まれたプロダクトにはどのような思いや情熱が込められているのか。「個人開発者に聞く開発の美学」は、さまざまなプロダクトを開発している個人開発者に、これまでの経緯を振り返っていただき、開発に対するこだわりを深掘りしていくインタビュー企画です。 第1回目の今回は、入江慎吾氏にこれまでの個人開発を振り返りながら、それぞれの開発に対するこだわりや開発の裏側などをおうかがいしました。

受託開発をする中で芽生えた「自分でビジネスをしたい」という思い

ーーまずは、個人開発に至るまでの経歴を教えてください。

入江慎吾氏(以下、入江):この業界に入って20年ぐらいなんですが、もともとはWeb制作会社でホームページを作る仕事をやっていました。

10年後に独立して、デザインとか、プログラミングとかをやっていたのですが、最終的にはエンジニアが一番自分に合っていると思ったのでフリーランスエンジニアになりました。

結局15年ぐらい、ずっと受託で、お客さんから要望があったものを作っていたんですね。受託開発の場合、お客さんのビジネスなので、お客さんが最終的に何をやるかを決めるんです。

こちらからいくら、「これがいいと思う」と提案しても、やはり最終的に決めるのはお客さんで、主導権はお客さんにあるんですよね。あとは、そのプロダクトを使っているユーザーの声もあまり入ってこなかったりするんですよ。

そういうことをやっている中で、自分でなにかビジネスをしたいという思いがどんどん芽生えてきて、iPhoneが出たぐらいのタイミングで自分でアプリを作った時に、それが人に使われて楽しいという経験をしました。

個人開発で作り始めたのが2010年とか2011年ぐらいなんですけど、2018年までは、どちらかというと、本当に趣味の延長で仕事の合間にやっていたんですよね。仕事の合間に開発をやっていたので、売上を上げるとかお金を儲けるとかは、あまり考えていなかったんですよ。

受託をやりながら個人開発でプロダクトを作っていく中で、やはりだんだん厳しくなってきて、自分は個人開発をやっている時のほうが楽しいなって思ったんですよね。となると、きちんとビジネスとして成り立たせないとそっちのほうに永遠に行けないなと思って。

2018年の時に、受託開発を1度すっぱりやめるという宣言をしてやめたんです。お客さんにも伝えたし、自分のWebサイトでも、「もう仕事は請けません」というかたちにしました。実際1年分ぐらいの貯金があったので、それで駄目だったらもう1度戻ろうと思っていたんです。そういう感じで、もう個人開発をやるしかないという状況に追い込んで、「MENTA」という、学びたい人と教えたい人をマッチングするサービスを作りました。

ラッキーなことにそれがヒットして伸びていったので、それが一番のきっかけですね。収益がきちんと生まれたのも、そのサービスが大きかったです。今は個人開発というか、プロダクトを作るところだけをやっています。

ーー「受託開発を1度ストップします」とご自分の中で決意した時は大変でしたか?

入江:迷いはありました。でも、開発する時間も足りないし、やはり中途半端にやってもうまくいく気がしなかったので、1年間チャレンジしてみようと思って、思い切りました。

自身の実体験から生まれた、スキルシェアサービス「MENTA」のアイデア

ーー「MENTA」開発のアイデアを教えてください。

入江:実体験があって、僕自身がエンジニアとして最初に学んだ時にプログラミングの本があまりなかったんです。

その当時いた、大学生の先輩のエンジニアに1、2ヶ月ぐらいの間教えてもらって、やっと習得できたという、今よりも習得するハードルが高かったんですよね。

そういう体験がまずある中で、2018年当時って、プログラミングスクールが出始めかピークの時で、スクール費用が30万円とか40万円とかなり高いけど、通っていてもあまり身につかなかったみたいな話を聞いたことがあって、「そんなにお金かけなくてもできるんじゃないかな?」と思ったんです。

一方で、エンジニアの中には、教えてあげてもいいよという人がけっこうたくさんいる。教えるということがエンジニアにとってはやはり学びになるんですね。

なので、そういう人たちをマッチングさせる。教えるほうは、何百万円も稼げるものではないですが、相談に乗るだけでお小遣い程度に月数万円とか稼げる。

教えてもらうほうは、自走型というか、自分で勉強する中でわからないところをメンターに聞けて、かつスクールより安く受けられるというスタイルはいいんじゃないか、ということでマッチングサイトを作ったら、それがはまった感じです。

95パーセントが失敗でも経験から学んで次に活かす

ーー今まで個人開発されたプロダクトの数は、30個を超えるとおうかがいしました。失敗してしまったことはありますか?

入江:95パーセントぐらいは失敗ですね。作ってみて、出してみて、あまり使われないなという時はあります。その中で、続けるという判断をする時もあるし、続けないと判断する時もあります。

続ける時は、自分の中でやり残したことがあって、「これをやったら使われるんじゃないか?」みたいなことがある時ですね。それでやるだけやって駄目だったら、もうそのプロダクトは閉じて、また次に行く感じです。

それでも、1回作ると経験にはなるので、「次からこういうふうにやろう」、「次やる時は、また別の方法でやろう」みたいな学びがあります。やはり、過去に作ったものとまったく同じものは作らないですし、毎回なにか違うことをやってはいます。

入江氏が考える個人開発の醍醐味と怖さ

ーー入江さんが考える、個人開発の醍醐味とは何でしょうか?

入江:醍醐味はたくさんあると思っています。個人開発って、特にマイナスがないんですよね。サーバー代とかもぜんぜん安いし、今だと無料でいろいろ構築もできるので。

しかも、サービスを作ってたとえヒットしなくても、開発する中で新しいことをどんどんやっていくので、自分の技術的なスキルがどんどん上がっていくんですよ。

個人開発の場合、デザインとかマーケティングとか、トータルでやらないといけないので、仕事でエンジニアしかやっていなくても、総合的なスキルがどんどん上がっていきます。

自分に決定権があるのも大きいですね。自分が開発したプロダクトを使ってもらう中で、ユーザーから直接いろいろな反響やフィードバックをもらえるというのは、やはりやりがいもあるので、僕は自分でプロダクトを作るほうが楽しいです。

あとはプロダクトをリリースすることで、ユーザーがつけば、それがビジネスにもなるし、僕も実際あるんですけど、もしならなくても、過去に作った実績を見て「こういうの作りたいんですけど」みたいな相談をもらったりとか、そういうつながりができるので、やることにデメリットはないかなという感じですね。

ーー逆に、個人開発の一番の難しさとは何でしょうか?

入江:個人開発というかプロダクト全般に言えますが、先ほど言ったとおり、出してみるまでわからないというのが難しさというか、怖さですかね。

1週間で作ったものなら別にいいんですけど、例えば3ヶ月とか半年とか、長ければ1年とかかけて開発したものを出す時って、やはりめちゃくちゃ怖いです。リリースする前はやはり、「大丈夫かな?」という気持ちがどんどん強くなっていますが、そこも出してみないとわからないというのがあります。

ーー難しさもある中で、個人開発をし続ける原動力やモチベーションは、どこから生まれてくるものなのでしょうか?

入江:一言で言うと好奇心ですね。これを作って世の中に出してた時に、「すごい」みたいな感じで騒がれるのが好きなので、そういうものを出せるかなっていう想像をするのが楽しいです。

(次回へつづく)

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