「Center of Excellence」とは何か

島崎純一氏(以下、島崎):そこで、私のほうでいろいろ調べていった中で、Agile Center of Excellenceというものが引っ掛かりましたので、ここについて調べて検討してみましたというお話ですね。

Agile Center of Excellence。ご存じの方もいるかなとは思いますが、一応ここで、定義をお話しさせていただきます。

まず、「Center of Excellenceって何?」といったところでいうと、組織内に対して、一定のスキルを拡張するために活動するチームや組織と定義させていただいています。

その中でもアジャイルに特化した知識を持って組織の変化を導くチーム、組織をAgile CoE、A-CoEというかたちで定めているというかたちです。

「どんな役割なんでしたっけ?」といったところ。ここに書いてある内容ですね。やはりアジャイルになるので、組織の変革を促進する、アジャイルの学習促進、リーダーシップメンバー、実際に仕切るメンバーなどへのコーチング、あと、プロジェクトやプロダクトマネジメントのサポート、こういったところがA-CoEの役割として立てられそうです。

調べる中で、「どんな評価をするんだっけ? 求められる成果はどんなのだったっけ?」というところも見えてきたので、いったんこちらを記載しています。

ほかにもありますが、今回のお話に近い内容だけをピックアップしている状況ですね。やはりアジャイルなので、スクラムみたいなところで考えても、リリースの実行回数、間隔、市場への適応みたいなところを柔軟に行えるところを評価の1つとしてやっていくかたちですね。

といったところで、先ほどの課題に照らし合わせて必要性を少し検討しています。やはり、(スライドを示して)この、人によってアジャイルの知見が異なる、とか、誤ったスクラムの導入、それぞれ、アジャイルの知見をさらに浸透していくという役割になります。なかなか良さそうですね。

そのほかにも、プロジェクトの質に合わせて、適用すべきかみたいなところの提案もできるんじゃないか。

もちろん、スクラムをはじめとした、大規模みたいなところまで含めたフレームワークの導入も、知識として持っていければサポートできるんじゃないかというところですね。

アジャイルを正しく理解してもらうために伝えるべきこと

こんな感じで見ると、A-CoE、めっちゃ良さそうですね。「よし、じゃあ、A-CoEやっていこうぜ」といったところで伝えていくのですが、この伝え方を間違えると、誤解が確信になってしまうアジャイルになってしまうかなと感じています。

例えば、早くなるみたいなお話ですね。うまく伝えられないと、それが逆に確信になってしまうといったところで困ってしまうので、ここで、私自身の知識を再構築というところでリビルドのお話になります。

まず、私自身に問いを投げました。「アジャイルをみなさんに正しく理解してもらうためにはどうしたらいいんだっけ?」というところですね。

間違えないように伝えることとして、「早く」はならない。これは伝えるべきかなと思っています。場合によっては、早くできる可能性もあるとは思いますが、やはり適宜見直しながら進めていくというケースがかなり多くなってくると思うので、ゴールへの最短距離かと言われると、なかなかそうならないケースもあるんじゃないかなというところで、伝えていくべきことかなと(思います)。

「じゃあ、何がいいんだっけ?」といったところですね。やはり、何回も顧客の声を聞きながらやっていくので、企画の成功率が上がりますというところをお伝えできたらいいかなと(思います)。

一方で、「じゃあ、これをやっていけば企画の成功率は100パーセントで、絶対成功するんでしょう?」と言われちゃうと、そうでもないというのは、実際あります。そもそもの最初の時点で問題を履き違えてしまうパターン、やっていく最中で問題を間違えてしまったパターン、そんなかたちで、本当は右に行きたかったんだけど左に行っちゃったみたいなケースなどもあるかなと思います。

といったところで、「アジャイルは何がいいんでしたっけ?」を振り返ってみると、私の中でまとめているのは、(スライドを示して)このようなかたちです。

市場の変化に対しての適応。ここは間違いなくあるかなと思います。顧客の声をしっかり聞いていくといった点ですね。

プラス、私から伝えたいなと思っているのは、(スライドを示して)この、企画の成功率をちょっと上げるといったところです。

この「ちょっと」といったところが肝です。絶対成功するというものではないと思ってはいますが、やはり顧客の声を聞いて、「本当の課題って何だっけ?」というのを考えられれば成功率は上がると確信しているので、「ちょっと上げる」というかたちで説明できるといいんじゃないかなと思っています。

あともう1個ですね。そんな話をしていくと、「すべてアジャイルがいいんだっけ?」という話も出てきます。アジャイルにもたぶん、強い、弱いといったところがあるので、そこの点を整理をしているという状況ですね。

クネビン・フレームワークを使ってアジャイルを適用すべきかどうかを判断

今回は、(スライドを示して)この、クネビン・フレームワークを使って、問題の質に合わせてアジャイルを適用すべきかどうかを判断すればいいんじゃないかと、検討しました。

左側ですね、そもそも問題がわかっていないChaosな領域、問題はわかっているけれど、それに対してどう対応していったらいいのかがわからないというComplexな問題。ここに関してはアジャイル、スクラムが得意とする領域。

逆に、もう答えはわかっているし、やったことあるというシンプルな問題だったり、専門家がいればどうにかなるようなComplicatedな問題、このあたりは予測型、ウォーターフォールが得意とする領域。そんなかたちで特性を捉えて、何を適用すべきかを決められればいいんじゃないかと考えました。

ということで、問題の性質に合わせて戦略を変えるといったところで、効率的になりそうだと。

課題に対して動いてみた結果

じゃあ整理した内容をもとに、なんとなく自分でA-CoEっぽく2つの課題に対して動いてみましょうと、実際にやった結果ですね。

まずは、プロダクト責任者、PM向けに戦略の幅を増やすというお話です。実際のチームで、アジャイルのメリット、スクラムの得意とするケースを実際に教育して、結果、企画の質に合わせて進め方を制御できるチームになってきたかなと(思います)。

ちょっとこれだけだとよくわからないので、実際の例だけ紹介いたします。今回、問題として、初期設定が難しくCSの工数が増えているという問題があります。要求としては、「技術を用いて、なんらかのかたちでこの初期設定を削減するツールを作ってほしい」と言われるわけです。

ただ、課題としては、どんな機能があればこの工数削減できるかがわからない状況だったり、もちろん、どのような機能を作ったらいいのかがわからないので、技術として何を使うべきかもわからないという課題が出てきている。

つまり、問題はわかっているんですが、それを解決するための因果関係がわかっていないComplexな問題だと捉えて、チームで会話した結果、複数のタイムボックスを使って調査や作成を繰り返しながら、もちろんCSメンバーの声を聞いて、といったところで、スクラム開発で進めるという判断ができました。先ほどの教育をやっていくことで、選択肢としてスクラムを選ぶことができました。

スクラムへの理解促進のためにやっていること

もう一方で、スクラム開発の理解についてもお話ししていきましょう。こちらは、コミュニティとして動いています。

(スライドを示して)こんなかたちでやっています。輪読会とか、スクラム研修とか、企画して実際にやってみる。あとは、「dip_scrum」ラジオの開設といったところでやってみているという状況です。

コミュニティとしての活動ですね。輪読会、『SCRUM BOOT CAMP THE BOOK』を使って、「そもそもスクラムって何?」といったところ、「役割って何?」というところも含めて、イチから説明させていただく場を作りました。実際に30人ぐらい参加していただいていますが、満足度としてもかなり高かったです。

実際に、下に挙げさせていますが、「透明性、検査、適応みたいな言葉、スクラムの特徴について理解することができました」と。基礎的なところが理解できたというかたちですね。

そのほか、外部のコンサルティングを使って、スクラムトレーニングの実施、などもやっています。ここに関しては、先ほどのと似たように、「良かったよ」という点が出てきているのですが、そのほかにも、「今の組織だとスクラムを導入するのは難しいね」というような組織的な課題も確認できたかなと思います。

最後ですね。dip_scrumラジオ。「何だ、これは?」という話なんですが、毎週30分ぐらい、スクラムに知見のあるメンバーが、スクラムのなんらかのテーマについて話をするという企画です。みなさん、リスナーというかたちで聞いていただくところがメインですが、直近は、『スクラムガイド』をやっていて、いろいろな解釈、見え方が新鮮らしく、参加者の方からも「勉強になるね」という声もいただいています。

ということで、コミュニティのほうも、参加してくれた人の知識が深まっていい感じだなと思っているという状況ですね。

まとめ

まとめてみています。こんなかたちでいろいろやってきていましたといったお話です。

最後に、Agile Center of Excellenceといったところを意識して、自身のアジャイルの知識も更新をしつつ、実際に適用し始めてみたらハマる部分があったというお話になります。

以上になります。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

スクラムやアジャイルに興味を持ってもらうためのアプローチ法は?

司会者:ありがとうございました。それでは、ここから5分間のAsk the Speakerに移ります。質問がある方は、挙手をお願いします。いかがですか?

質問者1:ご講演ありがとうございます。私自身も社内でアジャイルの事業推進といいますか、アジャイルのマインドやプロセスとかの勉強会などを広める活動をやっていて、先ほど説明していただいた、『スクラムガイド』の読み合わせじゃないんですが、勉強会とかもやったんですけど。

参加者がけっこう少なくて、機会を提供するけれど参加してくれる人がなかなか来ないという、今ジレンマに自分自身が立ち向かっています。スクラムとかアジャイルに対してどう興味を持ってもらうかというところで、どうアプローチされたとかがあれば教えていただきたいです。

島崎:はい、ありがとうございます。やはり参加者を増やしたいというところでいうと、私たちも、これをやってきたけど参加者が増えてきたかというと、やはりそうではないケースも出てきています。

やはり知ってもらう活動は重要かなと思っていて、その活動の一歩として、弊社だと、みなさんで情報共有する場があるのですが、そこのチャンネルで、実際にスクラム、アジャイルの実例とか、知識的なものをアプローチしながら、私たちは、今、A-CoEコミュニティというかたちで共有しているのですが、コミュニティ名も含めて共有して、少しずつ理解していただいているという状況です。

こうすれば絶対に人が増えるかというと、なかなかボトムアップだと難しい部分もあると思うので、どこかのタイミングでトップダウンで、みたいなところも出てくるんだと思いますが、やはりそういったところをやっていくべきかなというのと。

あと、直近、今回は書いていませんが、「やはりコミュニティの活動として本当に有効なんだっけ?」「そもそもアジャイルってうちの会社、どうなんだっけ? どういう位置付けで今理解されているんだっけ?」みたいなところからCTOとお話しして、経営層みたいなところも含めて、少しずつ、領域として広げていくという活動を今やっているという状況ですね。

質問者1:はい、ありがとうございます。

問題の捉え方を間違えないようにするためには?

司会者:ありがとうございました。そのほか、いかがですか?

話者1:「Miro」からいきますね。「企画の成功率は上がるけれども、問題の捉え方を間違うと失敗するというところで問題の捉え方を間違えないようにするために、なにかコツはありますか?」と(笑)。

島崎:(笑)。ありがとうございます。これもおそらく、こうやれば絶対成功率が上がるとか、顧客の課題が絶対わかるとか、そういったものは難しいかなと思っています。

弊社の企画のメンバーの場合、顧客の課題を捉え間違えないというところもそうなのですが、まずは、企画をするメンバーがしっかりとお客さまのもとに行って、お客さまと会話をしましょうというので今動いています。

なので、実際になにかを考えていくメンバーがお客さまの立場に立つというところに関して、まずはアクセスしていこうというかたちで今工夫しています。

話者1:はい、ありがとうございます。

KPIはどう設定しているか?

話者1:じゃあ、会場からもう1個ぐらい。

質問者2:A-CoEを立ち上げて活動していくにあたって、目標というかKPIみたいなものが、どういう指標かをちょっと教えていただきたくて。よろしくお願いします。

島崎:そうですね、申し訳ないです、明確な答えはなかなか伝えにくい部分ではあるんですけれども。

現在だと、今はまだコミュニティというかたちで、実際にA-CoEというかたちで社内的に認められているわけではないんですね。ただ、そのメンバーとは、「じゃあ、何をもってこのA-CoE、ゴールなんだ?」といったところの話をしています。

まず1つは、顧客満足度といったところは1つ、サブの要素としてあるよねというお話。

あと、一番大きいのは、やはりリリース間隔ですかね。自分たちのリリースまでの間隔、プロセスをしっかり見直しながら、アジャイルを適用すべきところはアジャイルを適用してやっていきましょうというかたちでやっていきたいよねというので。

指標としては、おそらく今のリリースサイクルと、実際に自分たちが目指すべきリリースサイクル、「そういったところはKPIになるんじゃないか?」という話をしていた感じですかね。

質問者2:ありがとうございます。ほかのところでもリリースのサイクルが出てきているなと思っていて、やはりみなさん、そこは意識をされているんだなというのがわかりました。はい、ありがとうございます。

司会者:それでは、お時間となりましたので、ご講演を終了させていただきます。島崎さま、ありがとうございました。

島崎:ありがとうございました。

(会場拍手)