長井氏の自己紹介

長井大輔氏:私は途中ジョインというより、私自体が創業メンバーの1人なので、そういった目線でPMが増えてきた経緯みたいな話をできればと思っています。

まず簡単な自己紹介です。あらためまして、長井と申します。COOという役回りです。川崎出身で、ディー・エヌ・エーに新卒で入社して、当時は飛ぶ鳥を落とす勢いだった「Mobage」の事業をやって、そのあとに新規事業をやったり、子会社に行ったり、カーシェアリングのサービスを立ち上げたり。約7年間在籍してそういったことをやっていました。

その後はBCG Digital Venturesという、ボストンコンサルティンググループという外資向けのコンサルティングファームのデジタル部門に転職をしました。実はこのBCGのプロジェクトでやっていたものが、DROBEという会社の前身プロジェクトになって、それをスピンアウトし、同時に創業して、今までCOOとしてやってきているかたちになります。

株式会社DROBEの概要

会社の概要も1枚で簡単に紹介します。サービス名と同じで、ワードローブから取って「DROBE」という会社名、サービス名で運用しています。

2019年4月に私の古巣であるBCGと三越伊勢丹さんが、当初はジョイントベンチャーとして会社を設立していました。なので、いわゆるスタートアップや起業とはちょっと違う立ち上げ方をしていました。ちょっと特殊な会社の立ち上げ事情になります。

その後はクローズドβみたいな話から始まってリリースをしたのですが、2021年5月、約2年ちょっと前にシリーズAの調達をして、その時にMBO(Management Buyout)し、そのタイミングでいわゆるスタートアップ、独立したベンチャー企業になっています。

そのあと2022年の11月にシリーズBの調達をして今に至る、5期目の会社です。ということで、簡単な会社の紹介です。

「DROBE」の概要

今は単一のサービスを運用していて、キャッチコピーは「スタイリストがつくネットショッピング『DROBE』」です。簡単に3行でまとめをすると、最初に70問のアンケートに答えていただきます。

女性向けのサービスなのですが、例えば洋服の好みや体型、好きなブランド、体型のお悩みなど、会員登録としては長ったらしいことにはなると思うのですが、けっこうこってりと体の特徴、好みから聞くのが我々の会員登録です。

そのあと、先ほど簡単に(話題に)出てきたのですが、洋服を選ぶスタイリスト方々に、その方のプロフィール情報を読み解いてもらい、約5点をご自宅に箱に入れて送るかたちになっています。

(スライドを示して)あくまで参考例としてですが、右側のように、基本的にはトータルコーディネートですね。「スカートは穿かないよ」という方にはスカートは送らないし、「パンツを穿かないよ」という方には(お送りするのは)ワンピースなどになります。そのように、事前にNGも聞きながら約5点を送る流れになっています。

3つ目です。気に入ったものだけ購入してもらい、それ以外はすべて返品できます。別の言い方をすると、返品前提のECサービスになっています。あくまで5点全部を買ってもらう必要はないし、究極的には全部買ってもらわなくてもいいわけです。

サービス料だけは2回目以降かかりますが、そういったかたちで「好きなものだけ買ってください」というビジネスモデルでやっているというのが簡単なサービスの紹介です。

PMの変遷

ここから本題に入ります。PMの変遷ということで簡単にまとめてみました。タイトルにもあるとおり、私が1人でPMをやっている時から、今はPMは私を含めて4人いる状態になっています。

時間軸でいうと、最初、創業の時には私1人でプロダクトマネージャーをやっていました。(スライドを示して)あくまでイメージで書いているのですが、売上がゼロの時から1人でやっていました。

だいたい1年半ぐらい経ったタイミングで2人目のPMがジョインして、二人三脚、背中を合わせてがんばる(ことをやっていた)のがだいたい3年弱という感じですかね。直近では2023年7月にPMが2名新たにジョインして、4名でのPMチーム、PM組織で今やっています。

1人の時と2人の時と4人の時でぜんぜん違う見え方もしているので、1期1観点ずつぐらい、失敗もたくさんしてきていますが、ちょっとした学びを伝えられればなと思っています。

1人目PMに求められるのは「イチ事業家としての振る舞い」

最初の1人PM期です。おそらく今日(登壇される他)のお二人も、基本的には1人目PMでジョインしたという意味では、立場は変わらないかなと思います。

稲垣さん(稲垣慶典氏)の(セッションの)中にももしかしたら一部あったかもしれないのですが、1人のPMとして振る舞うというよりは、イチ事業家としての振る舞いが1人目のPMにはやはり求められるんじゃないかなと思っています。PM論とか、PMとはという話は、たぶん世の中にいっぱいある気がします。

シンプルに1人の事業家、もしかしたら事業責任者や1人の経営者かもしれないですが、そういった振る舞いがやはり1人目PMには求められるのではないかと思っています。

もうちょっと噛み砕くと、例えばユーザーさんのことも考えたり、「ビジネスになるか」も考えたり、技術やテクノロジーやデベロップメントのことも考えたりということがやはり求められると思います。

大事なのは、そのすべてに触れていないとどうしても意思決定できなかったり、創業メンバーがいた時に意思決定がズレたり、認識がズレたりしてしまうので、そういう(ものに)触れられる状態をいかに自分の中に作るかが大事なんじゃないかなと思っています。

私はたまたま創業メンバーだったのでそういう状態も作りやすかったと思うのですが、そういった状況を作れたというところが、一番意思決定をしやすくした要因かなとも思っています。

そこであらゆる対話や観察、これはユーザーさんとの対話や、メンバーとの対話という時もあれば、時には投資家との対話や観察を通じて、いかに解像度が高い状態を自分の中に作り続けるかが意思決定の精度を左右するんだろうとも思っています。

やはりPMが1人しかいない状態になると、どうしても(その1人が)最終意思決定者になるので、そういった状態を作り続ける(ことが大事だと思います)。

その結果として、イチPMというよりはイチ事業家として振る舞うことが、1人目PMというところでは一番大事だったんじゃないかなと思っています。

よくいうPMトライアングルという話でいくと、1人目PMの時はどこかに精通している人がいいというよりは、真ん中にズブッと入って「全部やってやるんだ」という気合いでやること自体が一番重要かなと思っています。

2人目のPMがジョインしたら「WHYの引き継ぎ」を意識する

次に二人三脚期ですね。2人目のPMが入ってきたところですが、ここは大いに失敗に通じる話があるかなと思っていて、「WHYを紡いでいく」という表現をしました。

やはりPMはWHYとWHATとHOWに分解をすると、なぜやるのかとか、なんで今やるのかを一番考え抜くべき職種だなと思っています。

2人目PMが入ってきた瞬間はどうしても引き継ぎやドキュメントを作ってという話が出てきます。何をやっているかとか、どうやってやったかという話は、実装やコードを見るとある程度わかるものがあるのですが、なぜこのタイミングでこういうふうにしたのかとか、なぜ今このタイミングでこういうことをするのかという話は、けっこう意識して言語化しておかないと頭の中にしか残っていないという状況があるかなと思っています。

正直、2人目のPMがジョインして引き継ぎをする時に、私はめちゃくちゃ苦労をしました。自分の中にしか残っていないことも多かったので、互いにすごくストレスフルな状態が続いてしまったなと思っています。

すべてをドキュメント化しておくこともやはり難しいので、何を一番意識してちゃんと引き継いでいくかでいうと、HOWやWHATよりはWHYです。なぜこの時にこれをやったのか、どういう分析結果をもとにこういう意思決定をしたのかがやはり大事だったなと思っているし、翻って言えば、やはりPMは「なんで?」というところに一番説明責任があると思っています。

WHATやHOWは、デザイナーやとかエンジニアのほうが考えるのに長けている部分も多いと思います。そういう意味では、よりそこを意識するためにもこういったことは重要で、私はめちゃくちゃ失敗しましたという話です。なので、今後私も起こさないようにしたいとも思っています。

PMがチームになったら「権限委譲」が大事

最後がやや直近の話なので、ここはまだ手探りをしながらやっている話にはなるのですが、PMチーム期の2人から4人になっての話をしたいと思っています。このタイミングになると事業の売上が数億円みたいな規模感を超えて徐々に大きくなってきました。

全事業の全体の解像度を高めるのが1人ないし2人ではなかなか難しくなってきたタイミングだったので、採用を決めてチームになりました。

やったこととしては、ドメインで分割することを最初にやりました。(スライドを示して)あまりここから拾えるものがないかもしれないのですが、我々の話でいくと、左下にあるように商品供給という、我々の中では商品をお送りして販売していくのが1つのバリューチェーンなのでそういったところ。

あと、逆に商品ではなくて顧客の体験を作っていく右側。大きく左と右に分けて、それぞれにPMを置くようなかたちでドメインをバチッと定義して分割しています。

ここで大事になってくるのは、人に権限委譲することかなと思っています。やはり創業期からずっといるとなると、自分が歴史的背景も仕様もWHYもなんとなく全部知っている状況になり得ます。

(スライドを示して)(ドメインで)分けたとしても「あの人に聞かないと何もわからない」という状況になると、自分がボトルネックになるので、権限委譲をしていって、右側にあるようなかたちにしました。

デリゲーションポーカーというフレームワークを使って整理したのですが、「この部分については完全に委ねる」とか「この部分については2人で合意形成をして決めようね」という、いわゆるデリゲーションのレベルを、ビジネスドメインと各アクションで大まかに決めてすり合わせをしています。

そして、「ここはもう完全に任せるから」というところと、「ここらへんはまだまだこっち側でやるね」というところをすり合わせることを今のところは同時並行でやっています。

PMの変遷に伴って起きた変化

(スライドを示して)まとめとしてはこのようになるかなと思っています。1人目PM期は、イチPMというよりはイチ事業家としてすべてに触れることが(必要で)あったり、2人目になったら「なぜやってきたのか」というところをしっかりと紡いで、その上で背中を預けられる関係性になる。PMチームになったら、ドメインを分割して各ドメインの解像度を最大化するというのが、今まで約4年間やってきての学びかなと思っています。

ということで私の発表は以上です。ご清聴ありがとうございます。