登壇者の自己紹介

李奨培氏(以下、李):みなさんお待たせいたしました。本セッションは、「ぶっちゃけAI活用推進する際に現場で一番困ることってなによ」と題して、エンジニア、クリエイターとしてAIとどう付き合っていくべきか、そして組織、経営層としてどういうサポートをしていくべきかといった話を、AI業界のトップランナーである木内さん、茶圓さんをお迎えしてお話を聞けたらと思っています。まずは自己紹介からお願いできればと思います。では、木内さん、よろしくお願いします。

木内翔大氏(以下、木内):株式会社SHIFT AIの代表を務めている木内翔大です。GMO AI & Web3株式会社のAI活用顧問も務めています。最近では「教えて.AI byGMO」という生成AIプロンプトポータルサイトを運営する「GMO教えてAI株式会社」を合弁会社で設立して、そちらの取締役も兼任しています。

ふだんSHIFT AIでは「日本をAI先進国に」というビジョンを掲げて生成AIの活用普及を推進しています。現在は600名ぐらい(※2023年12月時点)のコミュニティ生と生成AIの活用を学んで、研究しています。「X」でも発信していて、6.5万人の方(※2023年12月時点)にフォローいただいていて、講演活動なども行っています。本日はどうぞよろしくお願いします。

:ありがとうございます。それでは茶圓さん、よろしくお願いします。

茶圓将裕氏(以下、茶圓):株式会社デジライズの代表と、GMO AI & Web3株式会社の顧問、また先ほど木内さんからもあったように、「教えて.AI byGMO」という生成AIプロンプトポータルサイトを運営する「GMO教えてAI株式会社」を合弁会社として設立しました。

簡単な自己紹介ですが、起業家として主に企業さま向けにAI研修や、企業向けの「ChatGPT」を開発して提供しており、本当に毎日いろいろな企業さまと商談したり研修を提供したりしています。今のリアルタイムの日本の企業のAIに対する温度感などがわかっているので、今日はその話をできればと思っています。

もう1つインフルエンサー的にも活動をしていて、Xで今はなんと(フォロワーが)10万人を超えています。(※2023年12月時点)ありがとうございます。ちょこちょこ「ABEMA NEWS」や、サンジャポさん(『サンデージャポン』)にも一応AIの専門家的な立ち位置で出演する中で、世の中にAIを広める活動をしています。本日はお願いします!

:ありがとうございます。そして本日モデレーターを務めます、GMOインターネットグループ株式会社の李奨培と申します。よろしくお願いします。

木内:お願いします。

茶圓:お願いします!

トークテーマは「生成系AI」

:今日のこの背景、どうですか?

木内:画面で見ると、なんかすごいですよね。

:緑の匂いがしませんか?

茶圓:めちゃくちゃ近未来的で。

:未来の匂いがしますね(笑)。

木内:確かにしてきますね。

:実はこれ、画像生成AIの「Adobe Firefly」です。

茶圓:あ、そうなんですか?

木内:発音が(笑)。

:ごめんなさい、発音がちょっと良すぎました。

(一同笑)

茶圓:ネイティブですね(笑)。

:「Adobe Firefly」を使って、元ネタを生成して3D化したものになるんですね。今までこういったものを作るとなった場合、専門家になんとなくイメージを伝えて作ってもらって、「これでどうですか?」というアウトプットを見て、「なんか違いますね」とか、そういったやり取りを数回繰り返して、「これでいいね」となったら本番に適用するという流れだったと思うんです。

だけど、今の時代はクリエイターでなくてもこういったものを簡単に作れてしまうんじゃないかなと思っていて、今日の話とも通じるところがあるのかなと思っています。

木内:これは奨培さんが作ったんですか?

:いやっ……。

木内:(笑)。

:作った体で言っています。

木内:作った体なんですね(笑)。

(一同笑)

茶圓:いいですね。

:ということで、今日のトークテーマですね。2023年は「ChatGPT」、文章生成AIですね。それから「Midjourney」、「Stable Diffusion」といった画像生成AI。「GitHub Copilot」といったコード生成AIなど、さまざまなAI技術が話題になって、企業として、そして企業に属する一個人としても今後AIをどんどん活用していかなければいけないと、切に感じています。

そんな組織に属する立場からの疑問であったり、エンジニア、クリエイターとして必要になってくるスキル。また、2024年以降の社会がどのように変わっていくかについて、お話をいろいろとうかがえたらなと思っています。

木内氏が考える、AIを活用できている企業のポイントとは?

:それでは1つ目のテーマです。我々は社員のことを「パートナー」と呼んでいますが、2023年、GMOインターネットグループでは、AIに関する技術革新や普及スピードに対してすべてのパートナーが対応するべく、「ChatGPT業務活用コンテスト」や、定期開催のパートナー向けの「AIセミナー」、そしてGMOインターネットグループ独自の全パートナーが合格必須のAIテスト「AIパスポート」に積極的に取り組んで参りました。

木内さんと茶圓さんにもちょうど2023年5月からですかね。AIセミナーに関わっていただいて、講師を務めていただいています。他の企業さまともいろいろと関わりがあると思うので、そのへんの話も聞けたらいいのかなと思っています。

最初の題目である、実際に「ChatGPTを使いこなす組織」と「そうではない組織」の違いについてお話を聞けたらいいのかなと思っています。まず木内さんからお願いできますか?

木内:はい、ありがとうございます。ちょうどChatGPTがリリースされてから記念すべき1年が経ちました。

茶圓:1年がね。アイコンの上に帽子が付いていてかわいい、ちょっとそういったお茶目なところもありましたよね。

木内:(リリース日が)2022年11月30日で、1年が経ったというところで、活用できている企業と活用できていない企業の差がかなり生まれてきているな、というのは、僕も茶圓さんも感じていると思います。

茶圓:間違いないですね。

木内:活用できている企業に関しては、本当にどのように現場で業務を効率化していくか、とか、そこから新しいイノベーションを生んでいくというレベルにもう移行してきていますが、活用できていないところに関しては、これからやっと導入みたいな。でも「なかなかうちは厳しくて導入できないんですよ」といったように、かなりレベルの違いが出てきているのかなと思うんです。

そこで、何が違うんだろうなと考えた時に3つあるなと思っています。1つ目の大きいところは、やはりトップダウン、経営層の意識でやっているかどうか。あとは、、現場で活用していくというボトムアップの現場のリテラシーがあるかどうかです。

そして、結局GPTの導入や生成AIの導入は突き詰めると業務改善でしかないので、やはり一つひとつの業務を洗い出していって、それをどうAIに置き換えていくのかという業務改善のPDCAが回せるかというところです。その3つのポイントが重要なのかなと思いますね。

その中でGMOさんはやはり、創業者の熊谷代表(熊谷正寿氏)自らChatGPTが出た当初から触っていました。僕もXで発信を始めたのが2023年1月の末だったのですが、おそらくもう2月の下旬には熊谷代表にフォローをいただいて、すごくうれしかったです。早い段階で情報収集もされて、ご自身で活用されていました。GMOさんだけじゃなく、ソフトバンクさんもそうですし、サイバーエージェントさんもそうですし、やはりトップが圧倒的に活用されています。

トップの号令があって、現場からいろいろな活用のアイデアが出てくる。そういう環境の整備や現場のレベル感の育成が進んでいる企業がやはり早いなと思います。そこらへんはやはりGMOさんが進んでいるので、僕らも関わらせてもらいながら、現場のリテラシー向上のために毎月ウェビナーを交互にやったり、質問に答えるかたちで現場の活用、育成をしているのかなと思います。

あとは業務改善ですね。日々PDCAを回している企業、あるいは個人ほど、生成AIを使いこなしていくことができるので、業務改善のPDCAがどれだけ回っているのかは、組織単位で変化が出てくると思います。

茶圓:なるほど。

:やはりこういった変化の激しいタイミングでは、トップの判断や意思がすごく大事になってくるのかなと思うんですね。

「セキュリティ問題」と「知識不足」がAI導入の壁

:茶圓さんはいかがでしょうか?

茶圓:まず定量的な数値だと、日本の企業はたぶんほぼ使いこなせていないんですよ。データでは、アメリカのFortune 500というトップ500の92パーセントが、今ChatGPTを導入しているんですね。日本だと東証の1,800社の10パーセント未満と言われているので、まずすごく乖離があります。

理由として2つですね。1つが、やはりセキュリティ問題ですね。弊社も営業しているのですが、やはり海外製品はサーバーが海外にあるので厳しくて導入に進みません。もう1つはやはりリテラシーというか、知識がないので使いこなせないのかなと思っています。

中小企業だったら、もうトップダウンで「行け! Go!」でいいと思うんですよ。大手企業だと、たぶん今はDX推進部や教育人事部が上に上げていく感じで進みそうかなと思っています。

「Excel」や「Word」をみんな使いますが、僕の予想ではあれくらい生成AIは普及すると思うんですよ。今はCopilot(Microsoft Copilot)みたいな感じで「Word」や「PowerPoint」に入ってきていますが、ChatGPTもあれはあれで便利なので、早くしないとあかんなという思いです。

それでいうとGMOさんはすごいですよね。プレスリリースを拝見したのですが、9万6,000時間削減という、異次元の削減でしたね。そのあたりはどんな感じで社内で進めていたんですか?

木内:すごいですよね。

:熊谷代表の号令のもと、3月、4月から一斉に動いてきたというのもあるのですが、やはり精神論が大事なのかなと。

茶圓:精神論ですか!? へー!

:僕はそう思っています。

木内:確かに。

AIの業務活用によって、ビジネスの勝敗は変わってくる

:私たちはグループの幹部向けに「AI活用をしないと淘汰されていきますよ」という危機感を共有するために、共通認識を持つために、共有されている内容があるんです。

それは織田軍の鉄砲隊と武田軍の騎馬隊の戦いとして知られている戦国時代の長篠の戦いの話で、当時、新兵器として知られている鉄砲そのものは両軍とも触れる機会が等しくあったと言われているんですね。

茶圓:へー!

木内:そうなんですね。

:ですけど、火縄銃って一発撃ってから。

木内:装填の時間はありますね。

:そうですね。その中の筒を掃除して、それから弾を込めて、火縄に火を付けてという一連の流れを考えると、「これをやっている間にやられるじゃん」って。

茶圓:なるほど、確かにそうですね(笑)。

:武田軍は火縄銃を積極的に使わず今までのやり方の騎馬隊を積極的に使って戦いに臨んだという話があります。一方で織田軍は「そういう時間がかかるのであれば、ローテーションで3列で回していこうよ」と。

茶圓:見たことあります。3列で交代交代でみたいな。

:これが示唆する話は何なのかというと、結局は今のAIもそうで、ハルシネーションやセキュリティリスクなど、いろいろ課題はあると思うんですね。課題はあるのですが、そういった課題をどう改善して積極的に業務活用していくかというところで、いわゆるビジネスという戦の中での勝敗が変わってくるんじゃないかなと思うんですよ。

木内:熊谷さんの、危機感をきちんと醸成する演説というか、スピーチはすごいですもんね。僕らも感動します。

茶圓:確かにすごいですね。

木内:「やばい、もっときちんとやらなきゃな」みたいな。

茶圓:そうですね(笑)。僕らもそう思わされるぐらいの話ですばらしかったです。

:最初のテーマだけで、もう14分経ってしまいました。

(一同笑)

木内:ちょっと尺を使うのを間違えましたね。

茶圓:これで40分いけそうですけどね。

(次回へつづく)