創業4年目で4つのプロダクトを作ってきた株式会社フツパー

司会者:フツパー、取締役CTO、弓場一輝さまです。持ち時間は6分間です。ご準備はよろしいでしょうか?

弓場一輝氏(以下、弓場):はい、大丈夫です。

司会者:それでは、お願いします。

弓場:最後なので声を出していきます。フツパーの弓場です。本日は、「世界で戦えるAI企業を目指すためのプロダクト戦略」というテーマで発表します。

さっそくですが、みなさんは日本の製造業のGDPの割合をご存じですか? 日本の製造業はGDPの約2割を占める一大産業となっています。しかしながら、労働人口の不足などにより深刻な人手不足といった課題を抱えています。

私たちフツパーは、そういった製造業の課題の解決のために、「最新テクノロジーを確かな労働力に」をミッションに事業を展開しています。製造業の事業所数・密度、共にトップの大阪で創業をしました。

今期でフツパーは4年目ですが、これまでに4つのプロダクトを作ってきました。

工作機械向けのIoTソリューション「振動大臣」。データ分析AIの「Hutzper Analytics」。そして、製造業向けAI人員配置最適システム「スキルパズル」。最後に、本日メインでお話しする、製造業向け外観検査AIの「メキキバイト」です。

このメキキバイトは、ハードウェアからソフトウェアまで一貫して価値をお届けする外観検査AIのプロダクトです。ソフトウェアは、エッジコンピューティングで動くアプリケーションと、外観検査の結果を管理するクラウドのアプリケーション、2つの要素で成り立っています。こういったサービスを多くのお客さまにご利用いただいています。

外観検査AIサービス「メキキバイト」

ここから、メキキバイトの戦略の部分について語らせていただきます。

(スライドを示して)まずこちらはクラウドの画面ですが、AIがノーコードで集めたデータセットを構築可能になっています。

フツパーは、ここに一歩踏み込み、この外観検査のスコアを定量分析する機能も携えています。現場の作業員の方の既存の品質改善の業務に、このアプリケーションを使っていただけるという特徴があります。

そして、このメキキバイトにはコンセプトが1つあります。(スライドを示して)それは、この「『はやい・やすい、巧い』AIを。」です。牛丼屋で聞いたことがあるようなこのフレーズ、なぜこういったフレーズなのかというと、市場のマスを取っていきたいと考えていたからです。それはなぜか。インターネットの外の領域で勝負したいという考えがあったからです。

どういうことか。これまでAIの学習の場合、データセットは基本的にインターネット上のものを集めたものが通常のものでした。しかし、そういったところで製造業のデータはインターネット上にはありません。

というところで、このインターネット上にないデータセットを作れれば、強固な価値が1つあります。そして、私たちしか持っていないデータセットを使うことで、より強固なプロダクトを作れるのではないか。そういった考えがありました。

しかしながら、これを言うのはめちゃくちゃ簡単ですが、やるのはめちゃくちゃ難しいなというところがありました。

プロダクトを成熟させていくためにチーム体制の強化に注力

(スライドを示して)こちらは外観検査AIの導入フローです。さまざまなステップがあり、こういったところで多岐にわたっています。そして、そのステップごとにそれぞれ専門的な課題がたくさんあります。といったところで、プロダクトを成熟させていくためには、この課題一つひとつをひもといていかないといけませんでした。

そこで私は、チーム体制の強化に注力しました。具体的には、スペシャリストの採用、そしてアサインの工夫です。

採用については、通常の面接フローに加えて、エンジニアの方々と対談していただく時間を設けて、多面的なプロダクトの理解や、入社後のコミュニケーションが円滑になるような採用体制を敷いてきました。

アサインの工夫については、組織が小さい時は、基本的になんでもやるという姿勢で仕事を行っていたのですが、組織の拡大に伴って、得意な領域に注力してもらい、開発の効率を重視する体制に整えていきました。

その結果、最初はぽつんとした組織でしたが、今では専門知識を有する素敵なエンジニアの方20名に囲まれた組織に成長しています。プロジェクトについても専門家をそれぞれアサインすることができ、開発のスピードが上がってきました。

その結果、フツパーしか持っていないデータを収集できるようになり、メキキバイト以外のソリューションの開発にも従事することができるようになりました。

検品に特化した生成AIの開発事例とこれからの展望

(スライドを示して)こちらは、集めたデータセットを使って、検品に特化した生成AIを開発した事例です。左側のきれいなパンケーキの画像が一般的な生成AIで作ったパンケーキの画像。右側がフツパーのデータセットを使って作った生成AIのパンケーキの画像です。

上から見ているようなかたちになっていると思いますが、検品検査のシステムを導入する時は、基本的に対象物がコンベアなどの搬送系を流れています。

というところで、カメラを上からつけることが多いのですが、そういったように見えているというところで、検品検査という領域に特化したものが作れるようになりました。こういったところの不良画像の生成が可能になることで、開発効率が飛躍的に上昇してきています。

最後に、今後は検品検査という領域から裾野を広げていって、製造業の課題にフォーカスをして、工場全体の最適化を事業として推し進めたいと考えています。

私たちフツパーは、現場で本当に使えるものをこれからも作り続けていくというところをしっかりやっていきたいです。

以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

AWSではなくメキキバイトを使うメリットは?

司会者:ありがとうございました。それでは、質疑応答に移らせていただきます。審査員のみなさま、挙手をお願いします。

それでは塚田さま、お願いします。

塚田朗弘氏(以下、塚田):プレゼンテーションをありがとうございます。開発されたAIのモデルは、カメラなのか製造ラインのエッジで基本的に動くという理解で合っていますか?

弓場:そうですね、基本的にはエッジコンピューターの中にクラウドで学習したモデルなどをデプロイして、現場で動かしています。

塚田:先ほどハードウェアのチームもあったと思いますが、そこのカメラもフツパーさんでやられている? 工場の中にある既存のカメラへのデプロイに対応していくのかとか、そのあたりはどんな感じになっているんでしょう?

弓場:ハードウェア自体の開発、カメラを作ったりとかはしておらず、既存のカメラを購入して、コンピューター自体にAIを入れ込んで開発しています。

塚田:なるほど、ありがとうございます。あと、AWSにも外観検査のサービスがあるんですけど(笑)。

(会場笑)

塚田:AWSじゃなくてメキキバイトを使うともっといいんだという点があったらぜひ教えてください。

(会場笑)

塚田:日本の製造業に特徴的なところはやはり強みなのかな。逆に、日本以外の外観検査にも発展していけるのかなと少し想像していたのですが、いかがでしょう?

弓場:そうですね。ほかのところと違うのは、先ほどスライドでも挙げたとおり、外観検査の結果を定量化できる部分です。一応海外の事例も今2件あるので、海外についてもそのニーズがあるところに関しては、導入可能かなと考えています。

塚田:はい、ありがとうございます。

司会者:ありがとうございます。

これからに対して技術的、経営的にどう考えているのか?

司会者:竹内さま、お願いします。

竹内真氏(以下、竹内):ありがとうございました。

1個まず簡単な質問ですが、創業から今何年ぐらいになるんでしたっけ?

弓場:今、4期目です。

竹内:4期目。4期目で4つのサービスがあったと思うので、すごい勢いで増やされているなと。

例えば、1つのサービスや事業を伸ばして奥行きを取っていくとか、いろいろなものを展開して面を取っていくとか、考え方はいろいろあると思いますが、そのあたり、技術的にどういう考え方なのか、経営的にどういう考え方なのか。なぜ今、いろいろなものをやっているのかを教えてもらえますか?

弓場:そうですね。メキキバイトに関しては、今ちょうど奥行きを取っていくフェーズになってきていると思います。

ただ、製造業全体の課題を見た時に、いろいろな入り口があってしかるべきかなと思っているので、そういったところで、数を最初に作って取っていく面と、実際にお客さまに活用していただいて出てきた新しい課題は、プロダクトごとに深堀っていって奥行きをつけていくというかたちで考えています。

竹内:なるほど。ほかのサービスは、わりとドアノックツールみたいな部分もあるんですかね?

弓場:そうですね、はい。

竹内:なるほどな。じゃあ、メキキバイトから奥に行くよみたいなものがありましたが、あそこが大本命でやられていると。

弓場:はい、今はそのつもりでやっています。

竹内:次に除去みたいなところもありましたが、一気に難易度が高そうな問題だなと。ソリューションとして思い描かれているものはあるんですか?

弓場:除去に関してはもうすでに何件か導入実績があるので、そこまで難しいとは今は捉えていないですね。

竹内:楽しみにしています。ありがとうございます。

弓場:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございます。それでは、お時間が来てしまいましたので、これにて質疑応答を締めさせていただきます。審査員のみなさま、ありがとうございました。

発表していただいた弓場さまにも大きな拍手をお送りください。

(会場拍手)