入社当日から有給休暇を15日付与・10連休は年間で3回以上

2つ目ですが、休みをだいぶ増やしました。我々の会社は中途入社が多くて、中途入社はだいたい入社後半年で有給10日が日本の一般的なルールかと思いますが、中途入社だって休む必要があるよねと。子どもが病気になるかもしれないし、いろいろあるから入社当日から有給休暇を15日付与する。これは2011年の話ですが、そういう制度を作りました。

10連休は年間で3回以上ですね。年末年始はその有休を組み合わせることによってだいたい17連休とか。去年1番(連休が)多かった人は、24連休を取っていました。残業に関しては、ゼロが理想ですよね。マイナスでも良いと僕は思っています。

フルフレックスなので、マイナスの場合は給与が減ってしまいますが、先ほどのバイオリズムの波や人生の波があるので、今の期間は例えば自分の勉強や研究。個人的にやっている研究に時間を使いたいから、残業はマイナスにする。あとでまた戻ってきて成果を出せば問題ないので、ここはそういう考え方でやっています。

なぜこれをやっているのか。エンジニアには時間が必要なんですよね。成長するためにはどうしても時間が必要。毎日終電までやっていたら、帰って本を読むとか新しい脆弱性を試してみるとか、新しいその技術をインストールして触ってみるみたいなことをする余裕がやはりないんですよね。なのでエンジニアの成長には、こういう休みが必要であると考えています。それでこれをやりました。

エンジニアが「これをやりたい!」と言ったことに対して「No」は言わない

3つ目は、裁量を増やしたということですね。原則、エンジニアが「これをやりたい!」と言ったことに関しては、いったん「No」は言わない主義をやっています。本当にそれを続けるかどうか、その投資を続けるかどうかはその成果を見て判断すればいいと考えていて、とりあえずエンジニアが「やりたい」と言ったことに関してはチャレンジさせてあげると考えています。

エンジニアが転職する理由は、やはりだいたいキャリアアップ、スキルアップ、給与、もしくは労働時間じゃないですか。社内でチャレンジできて、給与も上がって、ライフワークバランスが取れるのであれば転職する必要ってないんですよね。この会社の中でどんどん自己実現というか、やりたいことはできる。

これにはけっこういい側面もあります。車の自動運転が始まった時……2017年、2016年ぐらいだと思いますが、Teslaを買ったんですよ。まだそういう事業もなかったんですけど、みんなで分解して、はんだ付けして、分析しました。その結果、日本の各車メーカーから「実はセキュリティを心配しているから見てほしい」という依頼が来るようになりました。2023年もかなりこういう仕事が多く入って来ています。

エンジニアが「やりたい」と言ったことで始めたことなのですが、今となってはすごく大きな事業になっています。僕自身、1回分解して組み立てたTeslaにしばらく乗っていたのですが、70km/hの時だけ変な音がするんですよね。共振だと思うのですが、変な振動がしたので処分しましたが、けっこういい思い出というか、こういうこともあるなと。

成長の起点はいつも「Give」であるべき

会社の考え方ですが、やはり成長の起点はいつもGiveであるべきだと思うんです。(スライドを示して)この左上ですね。世界一働きやすい環境を作るというのが、先ほどの給与、労働時間、あとは裁量ですね。3つのポイントが、世界一働きやすい環境と考えていて、やはりまず会社がこれを整える。それで最高に働きやすい環境をエンジニアのみなさん、クリエイターのみなさんにGiveするということがこの起点になると思います。

そうすると、(スライドを示して)この右下ですね。こちらのPersonというところなんですが、やはり必然的にいい人たちが集まってきます。チャレンジもできるし、そこでは評価される。だから多様な才能が集まってきて、この尖った人たちが活躍する。なので必然的に品質の高い仕事ができる。プロダクトや品質の高いものをお客さまに届ける。

しかもぼったくるんじゃなくて、我々は最高品質、最低価格という考え方をしているのですが、多くの人が使える価格で提供する。そうすると必然的に儲かるんですね。会社はこの10年間右肩上がりというか、成長を続けているのですが、これは当たり前といえば当たり前なんです。最高にいい品質のものを最低価格で提供しているので、お客さまからしたら買わない合理性がないですよね。

もっと品質が悪いものだったり、価格が高いところから買う必要性ってないですよね。この儲けをもう1回みんなに還元する。(スライドを示して)この左上ですね。会社の内部留保にしたり、最初に株主に還元したりするんじゃなくて、集まってきてくれた才能のあるエンジニアやクリエイターたちに第一に還元する。そのあとでもちろん株主に還元したり、会社の内部留保したり、というのはありますが、第一に人ですね。

そうするともっといい人たちが集まってくる。それで(スライドを示して)これがグルグル回る。我々はこれを「はずみ車」と呼んでいるのですが、これが我々の成長の仕組み。これは必ずGiveから始めなくちゃいけないんですね。これを2011年からやり始めた結果、天才ハッカーがものすごくたくさん集まりました。

フェルミ推定なんですが、日本で一番多く集まってきていると推測できます。僕の実感としてもこれはそうなんじゃないかなと思いますし、今もなお、続々と人が集まってきている。

あれなんですよね。「おいしいラーメン屋さんを見つけた」みたいなノリなんですよ。人が来て「あ、ここめちゃくちゃいいじゃん。一緒にやろうよ。一緒に行こうよ」と。それでリファラルでどんどん人が集まる。リファラルだとお互いに期待値を知っているじゃないですか。この会社がどういうもので、もちろんできないところもある。

そこを知った上で来てくれるので、退職率が極めて低いです。天才ハッカーだけに着目すると、この10年間で辞めた人は1人もいないので退職率0パーセントですね。役員やマネージャーは残念ながらよく辞めていきますが、レベルの高いエンジニアはまったく辞めていない。

残念ながら合わずに辞めていく新卒はいますが。その結果、今は230名という規模になり、みなさまから「エンジニアの楽園」と言われるようになってきています。残念ながらまだ「クリエイターの楽園」というところまではいけていませんが、こういう状態になっています。

ハッキングコンテストではだいたい国内1位

冒頭にもありましたが、優秀な天才ハッカーが日本で一番集まっているので当たり前かもしれませんが、世界で1位も取ることができました。「DEFCON31」というのはハッキングコンテストで、これはまぁ数学オリンピックとか、化学オリンピックみたいなものでハッキングスキルを競い合うコンテストなんですね。

このコンテストに我々のチームが参加をして圧勝しました。(スライドを示して)これはまだ途中のスコアボードなのですが、一時期は2位にダブルスコアに近い点数を付けて勝ちました。本当に完勝ってこういうことなんだなと思うんですけども。

このクラウド、CTFですね。だいたいAWS、Azure、Google GCPがそのハッキングの題材に使われているのですが、我々はMicrosoftすら知らない脆弱性を見つけて、それをMicrosoftや運営チームに教えてあげたと。想定されている解き方を越えた勝ち方だったので、「完勝」という言葉はふさわしいんじゃないかなと思います。

ほかにも、いろいろなハッキングコンテストに出てはいますが、だいたい国内1位。2023年に7回か8回かはちょっとアレですが、だいたい1位を取らせていただいています。

あとは、ここまで優秀な人たちが集まっているので、見つけている年間の脆弱性は40件以上です。Apple、Microsoft、Ciscoを含むところのゼロデイ脆弱性を研究をして見つけている。あとはペネトレーションテストという、侵入試験の侵入成功率が90パーセント以上です。

SOCの監視、セキュリティソフト、IPアドレス制限、2要素認証という、いわゆるセキュリティの製品やセキュリティ対策ですが、これをバイパスして侵入して見つからないというところを実現できています。

あとは防衛省とか警察庁に協力をして、日本のサイバーセキュリティを守るというのが、我々の1つのテーマではあるのですが、ここに少しだけ貢献することができているんじゃないかなと思います。

芸術レベルまでサービスを昇華した会社が勝つ

GMOは日本のインフラですね。ドメインの81パーセント、サーバーもクラウドとかレンタルサーバーというポスティングの57パーセントを持っているんです。ドメインは日本の80パーセントを持っているので、これにサイバーセキュリティをかけ算で組み合わせて、日本のインターネット、日本全体を守るということに対してチャレンジをしているというのが、今のところになります。

サイバー攻撃の「ネットde診断」という、980円で使えるサービスがあって、これが今の我々のチャレンジです。これができる理由は、この尖った人たちがいるからなんですよね。この世界トップレベルの人たちがいるから実践できる。この人たちが出す成果というのは、もう期待値を超えて芸術レベルなんじゃないかなと個人的には感じています。

勝つサービスも同じなんじゃないかなと思うんですよね。セキュリティだけじゃなく、機能だけではサービスの差別化がなかなか難しい時代じゃないですか。なので、なにかを突き詰めていくと芸術レベルに至る。この芸術レベルまでそのサービスを昇華した会社が勝つ。この会社が勝つし、こういう会社が多い社会や国が勝つんじゃないかなと考えています。

理想は「いろいろな才能が集まって結果的に大きな円ができること」

最近はダイバーシティということで「多様性」という言葉がよく使われていますが、僕が理想とする多様性はこういうことなんです。性別や国籍という話ではなく、いろいろな才能が集まって結果的に大きな円ができるというのが僕が理想とする多様性です。なので性別や国籍ではなくて、才能の違い。違う才能がたくさん集まっているのが多様性のある会社だし、社会だと思うんです。

今回のテーマは「Re imagination」なので、一緒に想像してほしいんです。この時代の価値を創っているのはエンジニアやクリエイターなんですよね。この人たちは会社の宝だし、社会の宝。日本の宝、世界の宝と言ってもいいと思うんです。この才能が正しく評価されてこの人たちがきちんと活躍できる。その成果に対してお金できちんと報われる。

それを子どもたちが見て、憧れを抱くじゃないですか。YouTuberじゃないですけど。YouTuberじゃなくてエンジニア、クリエイターになりたい。あの人みたいになりたいという、そういう憧れを抱いてもらいたくて、それが将来の夢になっていく。これがどんなにすばらしい世界なのかということを、ぜひ一緒に想像していけたらうれしいなと思います。

僕からは以上です。ありがとうございました。