木村氏の自己紹介

木村塁氏:日本ヒューレット・パッカードの木村と申します。食事を召し上がられているみなさまの前で発表するのは私自身初めての経験なので少々緊張していますが、ぜひ箸が進むようなプレゼンをしたいと思うので、ゆっくり聞いていただければと思っています。

先ほどご紹介いただいたとおり、通信・メディア系のお客さまを担当しているソリューションアーキテクトです。特にサービスプロバイダーの方とかを担当させていただくことが多いです。

一方、もう1つ役職があって、我々はハイブリッドクラウドの日本法人ですが、こちらの技術テーマのCoE、組織のセールスリードも務めています。

今回はハイブリッドクラウド時代、そして今回のカンファレンスの1つのキーワードであるAI時代。そこに求められるインフラはどんなものになってくるのかに関して、私から紹介させてもらえればと思います。

「理想のITインフラ」はまだ存在しない

さっそくではありますが、タイトルでも名付けているように「理想のITインフラ」。これはみなさま一人ひとり意見があると思いますが、どんなものだと思いますか?

もちろんサービスプロバイダーの方だったり、システムを提供されている方は、一度は「こんなインフラがあったらいいな」と、そう思った経験もあるかもしれません。

もちろん理想のITインフラは十人十色なので必ずしも正解が1つなわけでもありませんが、例えばインフラは拡張性が無限大で、100パーセントの可用性が提供できたり、データの保護、機密性だったり、完全性、可用性が完全に担保されている。あとはリソースをいつでも払い出せるようにしたり、アプリケーションがどんなものでも動かせて、なおかつインフラと完全な疎結合になっているとか。

そんなインフラを日本各地に展開して、それぞれ利用者さま、運用者さまにわかりやすいUIを提供する。「こんなインフラがあったらいいな」といったところは、一度はみなさまも考えたことがあるのではないかと思っています。

ただ、そういったインフラを作り上げている企業さまは、むしろそこを目指して作っていっている側面が多いと思います。結局のところ、日本、海外を含めてまだまだOne Fits Allな、完璧な理想のインフラ、クラウドサービスは存在しないと我々は考えています。

これは私見だけではなく、実際に調査結果としても定量的に現れているところで。

(スライドを示して)こちらは1,000人近いお客さまにアンケートを取った結果です。具体的な質問内容は、「社内で使っているインフラの組み合わせモデルに近いものを選んでください」といったものになっています。

左から順にパーセンテージが大きくなっていますが、ざっくり区分すると「たった1つのシングルプラットフォームを使っている」お客さまが10パーセント未満。そして9割以上のお客さまが「さまざまなプラットフォームを使い分けている」というような実情があるという調査結果です。

これは私個人としても、お客さまと話をさせていただく中で日々痛感するところでも、実際にHP(ヒューレット・パッカード)という名のイチITユーザーの観点でも痛感しているところです。

インフラを選ぶ価値基準が変わってきているのではないか?

というのもですね、HPは、いわゆるサーバーの会社、ストレージの会社、ネットワークの会社と思われる方が多くいらっしゃると思いますが、実は社内のITは思った以上にオンプレミス、オンプレミスしていないです。

2014年ほどから社内ITシステムの刷新の開始を実施していて、実はもうすでに40パーセント近くはSaaSを活用しています。残った40パーセントに関してはプライベートクラウドだったり、パブリッククラウドだったりをベストオブブリードで活用して、開発基盤として利用しています。

あとは実際に弊社の市場競争力を高めるデータとかを格納する。特に業務データ、製造のサプライチェーンのデータ。そういったところはしっかり信頼性を担保してオンプレミスで構えるというところです。

弊社の例を取ってみても、非常に多くのお客さまが、単一のプラットフォームを求めているのではなく、結果的にハイブリッドクラウドだったりマルチクラウド、マルチプラットフォームを利用するといった実情があるかと思っています。

分散化されたプラットフォームを多くのお客さまが選ぶという実情から、我々も「お客さまがインフラを選ぶ価値基準が変わってきているのではないか」と思っています。

実際に昨今流行りのInfrastructure-first。特にクラウドファーストというような潮流が、徐々に消えていっているのかなと思っています。

具体的にクラウドファーストというと、資産を手放したり、人件費を最適化して開発の迅速化だったり。どちらかというとコストを下げる側面が強かったかと思います。

ただ、先ほども紹介したとおり、やはりデータをどこに配置するか。例えば弊社の業務データであればオンプレミスに配備したり、プライベートクラウドに配備したりして、あまり関係ない人事データとかはSaaSに出す。ビジネス観点で、データを活用すると企業として、成長できるデータをインフラと価値基準でプラットフォームをしっかりと選んでいく。

というところで、こういった現状を「Data-First」と呼ばれる価値基準で今は提唱しています。

先ほど弊社の事例も出したとおり、実はインフラに手を加える前は、弊社には25,000以上のオラクルのインスタンスが業務ごとにサイロ化されていました。そういった中で、やはりデータの連携とかがうまくいかず、その結果、業務に支障をきたしてしまう。

スピード感が保たれないといったところで、パブリッククラウドに出すか、プライベートクラウドで自社で作るかといった中で、我々の成長ドライバーであるデータは、プライベートクラウドでガバナンスをしっかり持って、DB as a Serviceのようなかたちで社内に展開することで、業務を最適化させた事例もあります。

といったところで、そういった経験をしたお客さまは多くいらっしゃるのかなと思っています。そういったデータを基準にインフラプラットフォームを選んでいくとなると、ますますインフラが分散化するような状況になってくると思います。

これからはどんな要素が求められるか

そんな中、今回参加いただいているクラウドサービスプロバイダーの方々を含めて、「サービスを提供される方々に求められる要素はどんなものがあるだろう」ということをHPなりにまとめましたので、そちらを紹介させてもらえればと思っています。

一言で言うと、やはり利用者さま観点からも、運用者さま観点からも、Data-Firstという考えに基づいて、データ活用を促進できるサービスを配備しながら、お客さまが所有しているインフラやエッジロケーション、あとはパブリッククラウド。

みなさまが提供されていないサービス以外も網羅的に管理できるようなプラットフォームを用意しながら、提供されるサービスにうまく寄せていくような導線を作っていく。こういったことが求められるのではないかと考えています。

(スライドを示して)そこからそれぞれ因数分解をして、具体的にどういったことが求められるかを整理したのがこちらです。

利用者さま側から順に、分散化するプラットフォーム、まずはこれを抽象化する、自動化する機能。そして、実際にみなさまが提供されるクラウドサービスのところでは、より競争力のあるサービスとインフラ。

そして運用者さまの観点から言うと、プラットフォームの分散化に追従できるようなサービス提供体制を実現する機能。こういったところを、我々としても提供できるのではないかなと考えています。

(スライドを示して)具体的に紫色の四角という観点で、より細分化した時に、クラウド、Day0、Day1、Day2という区分でそれぞれどういった機能が必要になるかをまとめたのがこちらです。

やはり最終的には自社の提供クラウドサービスにぜひ寄せていっていただいて、プロフィタブルなクラウドサービスにしてもらえればと思います。

しかしそうなった時に、利用者さま側からすると、自社のオンプレも利用しているクラウドサービスも含めて、単一のUIでセルフプロビジョニングができたり、APIの管理ができる。あとはセキュアにロースベースのアクセスができたり、はたまたFinOpsのような概念を取り入れて、適宜コストを可視化しながら適切なプラットフォームを選択していく。こういった機能が求められてくるのではないかと思っています。

また、逆の側面。運用者さまからの視点でいうと、やはり自社で提供しているクラウドサービス以外も網羅したプラットフォームといったところで、それでも運用負荷が高くなりづらい環境の整備が必要になってくると思います。

例えば、高い可観測性を維持できるUIや仕組みを取り入れたり、あとは維持・運用になるべく人手をかけないで、自動化・自立化をする。今回のキーテーマでもあるAIをしっかりと活用して、運用の負荷を低減するとか。

あとは単純に、インフラのリソースを増強する上でのデプロイメントの自動化・簡素化。ゼロタッチプロビジョニングとか、いろいろなキーワードがありますが、そういったところが求められてくると思っています。