エンジニアリング組織のマネジメントで重要なのは“バリュー”

今村雅幸氏(以下、今村):次にエンジニアリング組織マネジメントですね。エンジニアリング組織マネジメントもいろいろと要素はありますが、会社の成長を支えていく上でエンジニアリング組織マネジメントはメチャクチャ重要です。「エンジニアリング組織マネジメント」と一言で言っても、すごくいろいろと要素があります。全部は紹介しきれませんが、今日はその中でも特に重要だなと思う要素をピックアップしたので、それに関して話ができればなと思っています。

まずエンジニアリング組織をマネジメントしていく上で一番重要と言ってもいいようなものがあります。それは何かいうと、バリュー、行動指針ですね。強い組織を作っていこうとしたら企業文化は非常に重要になってきます。要は、阿吽の呼吸だったり暗黙知と呼ばれているものだったりを、1から10まで説明をしているのではなく会社のカルチャーとして染み込んでいて、それぞれのメンバーたちが自ら行動してくれるという状況をいかに作りだすことができるかというところ。

そういう文化を醸成するために、ミッション、ビジョン、バリューみたいなものが非常に重要だと思っています。この手のものをどのように作っていくかですが、従業員や会社の良いところや、メンバーの良いところをまずはしっかりと上げて、その要素+僕ら経営陣として大事にしたいコアバリューみたいなものを入れる。さらに今後会社として強みにしていきたい部分も入れる。

こういうことによってこのバリューを守っていければ、みんな同じ方向を向くし、会社として経営陣として伸ばしたい方向に組織を成長させていくことができるので、非常にこのバリューというものは重要だなと思っています。こういう感じで作っていくと、非常に使いやすいバリューができるんじゃないかなと思っています。

これがなぜ重要かというと、どの会社にも評価制度みたいなものがあると思いますが、やはりこのバリューを中心にして評価制度を作っていくことが重要かなと思っています。要は会社として一貫した方向性ですね。会社としてどういう行動をした人間、どういう行動ができる人間かを評価します。どういう人を優秀だと定義するかみたいなところで、きちん一貫したポリシーを貫くためにはこういうものが重要だなと思っています。

これは後々エンジニアの評価をする際に、このバリューの観点を組み込んでいくことが非常に重要かなと思っているので、後々エンジニア評価をする際の観点としても使えるような仕組みにしておいたほうがいいかなと思っています。

BuySellのミッション、ビジョン、バリューを紹介

例えば私たちのミッション、ビジョン、バリュー。ミッションが「人を超え、時を超え、たいせつなものをつなぐ架け橋となる。」ですね。ビジョンが「優れた人と新たな技術で、循環型社会をリードする。」

このビジョンはこの間新しくしたのですが、どういう世界を作ることによってこのミッションを達成していくかというところでこの中に技術みたいなワードを入れて、エンジニアたちにもしっかりと意識させたり、他のメンバーたちにも技術を意識させていくところによって、これからはしっかりテクノロジーや技術を活用していくんだという意識をうまく調整していくというところまでやっています。

バリューも「HOSPITALITY」「PROFESSIONAL」「CREATIVE」と私たちは3つ持っていて、これは全従業員にアンケートを取ってBuySellの人たちがいいなと思う価値観や行動をピックアップして、私たちとしてもこういうところを評価していきたいというので作りました。

HOSPITALITY、PROFESSIONAL、CREATIVEみたいなところはエンジニアを評価しようという時にも非常に使いやすいものになっているかなというところで、このあと紹介しますがエンジニアの評価に関しても、この3つの観点を盛り込むようにしています。大事なのは一貫したミッション、ビジョン、バリューを作って、それをもとにしっかりと社員の行動や評価を行っていくというところで、これが文化の醸成では非常に重要かなと思っています。

エンジニアの採用数はアクション数に比例する

次にあるのはエンジニアの採用です。会社を成長させていく上でエンジニア採用はもちろん当たり前ですが重要です。たぶん、エンジニアの採用に苦戦していたり難しいなと思っていたり、ぜんぜん採れないよと思っておられる方が今日も参加しているんじゃないかなと思っています。いくつかの会社を見てくる中で、これはやったほうがいいということが僕の中にあります。なのでそれをちょっと紹介していきたいなと思います。

大きく分けると3つですね。採用体制の構築、これが一番重要です。次に新卒採用と中途採用です。順番に紹介していきます。

採用体制の構築。たぶんエンジニアに関してはこれだと言っても間違いないんじゃないかなと思います。基本的にエンジニアの採用数はアクション数に比例します。これは当たり前ですが、採れないのは純粋にアクション数が足りていないということだと思っています。なのでしっかりと採用プロセスを回せる仕組みを作ることが何よりも重要だと思っています。

人事に全部エンジニア採用を任せるよりは、やはりエンジニア採用を行う専門のチームを作るべきだと思っています。どういう構造にするといいかというと、このエンジニア採用を行う専門のチームの中身でいくと、弊社の場合は(スライドを示して)この右の図でやっています。CTO室みたいにエンジニアの採用を全部取りまとめる部隊を僕の直下に作ります。その中に1人、エンジニア採用専門のエンジニアリングマネージャーを置きます。

その人を中心にして人事と一緒に協力する。かつ人事側にもエンジニア採用だけを行う担当者を置く、これが非常に重要かなと思っています。ほとんどのケースの場合は、人事はいろいろな採用を兼務してもらうケースが多いと思いますが、やはり純粋に使える時間がエンジニア採用にはないんですよ。でもエンジニア採用って、普通の採用に比べてメチャクチャ手間がかかるものだと思っています。

だからこそしっかりと人を区切ってそれだけを行うというリソースを強制的に作ることが重要かなと思っています。僕らの場合だと、エンジニア採用専門のエンジニアリングマネージャーと、エンジニアリングマネージャーと、テックリードおよび現場のメンバーみたいな構成ですね。人事側は、エンジニア採用専門の人事担当者を置きます。

その中の内訳としては、新卒エンジニアの採用担当と中途エンジニアの採用担当者があります。弊社の場合、新卒エンジニアの採用とエンジニア採用の担当者はもともとエンジニア採用をやっていた方々ではなく、エンジニア採用が未経験の方でした。それでも1年ぐらい採用に関わっていれば、採用を回せるようになります。なのでエンジニアと採りたいなと思ったら、まずはしっかりとエンジニア採用専門の人事を置くなどのリソースを割くことが重要です。

エンジニアリングマネージャー、テックリード、現場も採用プロセスに巻き込んでいくことが重要かなと思っています。当然一緒に働く人たちを採っていくのでCTOだけや人事だけで決めるというよりは、しっかりとエンジニアリングマネージャーやテックリードたちを巻き込んでいくことが重要です。

ただやはりエンジニアリングマネージャーやテックリードを巻き込むといろいろな日程調整ややり取りが増えます。やはりエンジニアたちも忙しいので、そのあたりの手間を嫌って採用に協力してくれないみたいなことがけっこうよく起きるんです。なので、そういう業務負荷軽減のために日程調整や手続きなどを専門に行うコーディネーターと呼ばれている人を内部や業務委託で置いて、極力エンジニアの負担を減らして採用に協力してもらうようにすると、よりうまくリソースを活用できるし、より協力してもらいやすい体制を構築できるかなと思います。

組織をより成長させていくためには新卒エンジニアが必要

新卒エンジニア採用も同様です。「新卒エンジニア採用はまだまだできないよ」と思っている会社もたくさんあると思いますが、個人的にはやはり中長期にエンジニア組織を成長していく上で、新卒エンジニアは本当に必要不可欠だと思っています。特に「組織規模が小さいからなかなか……」と、新卒を採るのをためらっている会社もたくさんあると思いますが、最近の新卒エンジニアはメチャクチャ優秀です。

下手したら中途の人たちよりもぜんぜん優秀だなと思う人たちがゴロゴロ転がっているので今、新卒エンジニア採用はスーパーレッドオーシャンになっています。ただし、やはり組織をより成長させていくためには新卒エンジニアは必要だと思うので、そこにもしっかりと投資をしていく必要性があるのかなと思っています。

パイプライン作りでいくと、新卒紹介に強いエージェントを利用する。「サポーターズ」「アカリク」「ジースタイラス」「ローカルイノベーション」「レバテック」などはすごく有名な会社さんですが、逆求人イベントにも参加して、エージェントから個別紹介を受けていく。逆求人イベントというのは、参加した方はわかると思いますが、1日拘束されて学生たち10人ぐらいに1回30分ぐらいの面談を8ターンとか9ターンとか行って、マッチングを行うイベントです。

エンジニアの採用だとこれがけっこう主流になってきているかなと思います。そういうところでパイプラインを作っていくのもそうですし、既存社員の後輩や内定者インターンから後輩を紹介してもらうとか。あとは大学生のやっているプログラミングサークルを支援したりして関係値を作って、そこから紹介してもらうのも非常に有効かなと思っています。

あとはパイプラインを作って採っていくだけじゃなく、そもそも新卒エンジニアの待遇改善も行う必要性があります。ちなみにみなさん、いわゆるIT系のメガベンチャーだと今エンジニアの新卒初任給ってどれぐらいかわかります? だいたい500万円以上。会社によっては550万円や600万円ぐらいまで出すようになってきています。

なので正直相場はメチャクチャ上がっていますし、逆に言うとそれぐらい出してもぜんぜん良いと思える人たちが増えてきています。なので「新卒だからこの給料ね」という考え方は捨てて、しっかりと1人のエンジニアとして評価していくところで待遇改善にしっかりと取り組んだほうがいいかなと思っています。

当然内定したあとは入社するまでが採用なので、内定したあとも内定者インターンなどをしながら関係値を作っていくことも非常に重要になってくるかなと思います。

中途エンジニアの採用ではエンジニアリングマネージャー側と人事側の“密な連携”が重要

中途エンジニア採用に関しては、特に採用プロセス管理と流入媒体経路別のマネジメントが重要になってきます。採用プロセス管理に関しては、各社やっているところもあると思いますが、各ファネルにおける情報共有をエンジニアリングマネージャー側と人事側で密に連携を行ってやっておくのが非常に重要です。

採用プロセス管理方法

採用管理ツール、ATSと呼ばれているものですね。それを導入して、しっかりと各ファネルのKPI管理を行う。これは意外とやっていない会社が多かったりするんですね。このあたりは当然のようにやります。応募したプロセスに関して、プロダクトチームとして、そもそもどのポジションが必要なんですか? みたいなところですね。

意外とこの募集要項が古かったり、ぜんぜんアップデートできていなかったり、現場での募集のニーズを把握できていなかったりするので、このあたりはしっかりと随時アップデートしていく。かつその候補者にもいろいろなところからスカウトが来るので、日程調整ツールを活用してよりスケジューリングをうまく進めるのも秘訣かなと思っています。

面談ですね。面談はすごく活用しておいたほうがいいかなと思っています。カジュアル面談ですね。ラフにやって候補者に寄り添っていく。選考プロセスは1次、2次、最終みたいな感じで頭の中で切られているかもしれませんが、実際に1次、2次、最終で決めないといけないかというと、まったくそんな必要性はないんですよ。

私たちの場合もそうですが、最初のカジュアル面談とか、1次と2次の間とか、2次と最終の間とかにも面談をひたすら入れています。面接や面談のあとに先ほど紹介した採用担当のエンジニアリングマネージャーと、しっかりと一人ひとりに寄り添ってインタビューをしたり、今の選考の状況をしっかりとキャッチアップをして候補者の本音を引き出すことによって関係値を作っていくというところで面接をしています。

単純に選考をしていれば採れるかというとそういうわけではないので、しっかりと候補者に寄り添うというところもやっておくべきかなと思っています。面接に関してもエンジニアと人事が同席して全部の発言のログを人事が取っておく。採用基準を作ってその基準をきちんと満たしていますか? みたいなところで、それぞれやっていく。

かつ、振り返りでも何が合格だったのか、何が不合格だったのかという軸をPM側と人事側がしっかりと擦り合わせていくことによって、チームとしての採用レベルがどんどん上がっていく。擦り合わせができていくので、やはりすべてのログをきちんと取っていって振り返りに活用するのが非常に重要だなと思っていますし、これは非常に有効だなと思います。もちろん私たちもやっています。

流入媒体別のマネジメントをどうするか

流入媒体別のマネジメントみたいなところでいうと、リファラル紹介ですね。これは非常に重要です。候補者との会食費も全額負担したり、リファラル奨励金を出したり。あとはリファラル洗い出し会をやって、とにかくいろいろな社員に「良い人を紹介してください」みたいなところを推進していくのも仕組み化しています。

エージェント紹介の場合はエージェントと定例をそれぞれ設けて情報をアップデートしていきます。エージェント向けの説明会もしっかりとやって、エージェントに自社のファン、BuySellのファンになってもらって紹介してもらう。その時に「BuySellの良いところはこういうところなんだよね」と、非常に言いやすくまとめて何回も伝える。

それをそっくりそのまま言ってもらったり、自社のファンになってもらって自分の言葉で言ってもらう。そういう売り出し方みたいなところもしっかりとエージェント側に伝えていくことが重要ですと。単純に「紹介してくださいね」と言ってもやはり紹介されないですね。エージェントは「いいな」と思った会社から紹介してくれると思うので、BuySellがそういう立ち位置になれるようにしっかりと情報を提供していく関係値を作っていくことが重要です。

スカウトに関しても、スカウト媒体の運用を分担して回します。やはり現場を巻き込んでいくのはいろいろと分担をしていかないといけない。かつ媒体ごとにスカウトを打つ層が違います。今回はマネージャー層が欲しいとか、今回はテックリード層、メンバーレベルがいいとかあると思います。その場合使う媒体もやはり違うし当然書く内容も違うので、そういうところも意識を擦り合わせていく。

かつ、ピックアップをして実際にスカウトを送るところまでもしっかり分担しながら、どういう観点からピックするかとか、どういうスカウトを文章を作っていくのかというところでしっかり仕組み化して、スカウト自体の数を増やしていくことが重要かなと思っています。なので、各媒体でそれぞれに合ったマネジメントみたいなところをやっていく必要性があるかなと思っています。

(次回へつづく)