CLOSE

メルカリでの生成AI活用(全1記事)

「AIドリブンでやろう」 “Enabling”と“Building”で進める、メルカリ社の生成AI活用

自社における生成AIの活用について発表したのは、株式会社メルカリの石川佑樹氏。日本CTO協会が主催した「Microsoftと語る LLM実装の最前線」にて、活用事例を話しました。

登壇者の自己紹介

石川佑樹氏:みなさま、こんにちは。メルカリの石川です。よろしくお願いします。「メルカリでの生成AIの活用」ですね。6月末頃にちょうどマイクロソフトさんのイベントで似たような内容で発表させていただいて、方針自体はそこまで変わっていないので、一部被る部分もありますが、3ヶ月間でどう変わったか。付け足しの部分などを口頭で補足しながらお話できたらなと思っています。

あらためまして石川と申します。メルカリには今はもう6年ぐらいいて、基本的にずっと「メルペイ」や新規事業を担当してきています。2021年に新規事業のソウゾウという会社を作り、直近まではそこの代表をしていました。「メルカリShops」というB toCサービスをやっていました。今年に入ってから、生成AIの専任チームを作るというところで、ここの責任者をやっています。

「AI Driven For UX 」「 AI Driven For Engineering 」「 AI Driven For Employee」

メルカリでの生成AIの活用ですね。まず全体の方針として、どういうかたちで進めているか具体的に話を進めていければなと思っています。

メルカリとしては、AIドリブンでやろうというところ。これは生成AIに限った話ではありませんが、これまでもAIの部分にはずっと投資をしてきています。マシンラーニング専任のエンジニアもたくさんいるのですが、あらためて方針を掲げています。

1つずつ軽く触れますと、AIをベースにしたプロダクト体験を作る必要があるというところです。

今のメルカリも、一部でAIをすでに使っているのですが、さらにお客さま体験としてAIをベースにした物を作れるんじゃないか。むしろ作らないと、置いていかれるんじゃないかという危機感を持って進めています。AIを前提にしたプロダクトを作るためには、そもそもAIが活用しやすいデータ設計やAPI設計ができていないといけません。

エンジニアリングとして、ここに基盤投資をしていくというのも、なかなか難しいところではありますが、方針として出して徐々に進めていっています。

もう1つ、今回の生成AIの変化というのがプロダクトとエンジニアリングだけに留まらず、あらゆる領域・職種に対してインパクトをもたらすというところから、そのAI活用を前提とした業務設計であったり、組織設計をしていくべきというところです。

ここは次の年内のクォーターで、より踏み込んで試していければというところで進めています。

AIドリブンに組織、プロダクト、エンジニアリングの基盤を動かしていくために、専任チームの組成をして、Move Fastに物事を動かしています。ミッションは「生成AI/LLM技術を用いて新たなお客さま体験を作る」と「事業インパクトの最大化」。メルカリは今2,000人以上従業員がいるのですが、もう1つのミッションとして社員の生産性を劇的に向上させるということをミッションに進めています。

EnablingとBuildingというかたちで生成AIの活用を進めている

具体的にLLMチームでやっていること。今回の生成AIの技術は特定のチームだけに限るべきではなく、メルカリの従業員2,000人全員が生成AIを使えるようにするということを僕らのチームでやっています。Enablingという部分と、実際にプロダクトを作るBuildingというかたちで進めています。

こちらも(スライドに)記載のとおりですが、もともとメルカリではAIはマシンラーニングのエンジニアチームでやっていましたが、今回の生成AIの技術革新によって、一般のソフトウェアのエンジニアの方でも触れるようになったなと思っています。

ただ、それに伴ってデータの取り扱いであったり、どういう学習のかたちをするべきかだったりも一定の指針を出した上で進めるというのが、けっこう重要かなというところで、ガイドラインの策定をしたり、はたまた機会を作るという観点でハッカソンの開催したりしています。

Buildingという観点で初めにやったのは、けっこういろんな会社さんでやっているところだと思いますが、メルカリ社員専用の「ChatGPT」を作って、社内の活用を進めています。これを出してからだいたい半年ぐらい経ちました。けっこういろいろな使われ方がされていて、その使い方に応じて、このインターフェイスを一部変えていくということにも着手しています。ここについてもまた別途パネル(ディスカッション)や、他のイベントなどでご紹介できたらなと思っています。

僕もここには注力していて、既存プロダクトへの適応というところで、メルカリの社内では、さまざまなFunctionのチームがあるのですが、そのチームと連携をしてプロダクト適応を進めています。

大きく、2つのやり方があって、LLMの専任チームがオーナーシップを持って、企画から実装まですべてをやってしまうというやり方が1つ。

もう1つ、Functionチームの中には、マシンラーニングのエンジニアがいるパターンもあるので、そういった場合にはリードをFunctionチームにお任せして、私たちにはLLM固有の部分についての質問や相談をいただくかたちで共創する。並走して一緒にやるというかたちを取っています。基本的には、この2番の共創のかたちをなるべく多く増やして、僕たちが単独でやるというところをなるべくなくしていくようにしています。

この半年では、僕らがリードして生成AIを入れていくプロダクトが一番多いのですが、ドメインによっては私たちよりもうまく使うチームが徐々に出てきているので、こういったところをさまざま増やしていきながら同時多発的に生成AIの活用を進めていきたいと思っています。

既存プロダクトにはさまざまドメインがありますが、社内ツールに関してもいろいろなエリアがあると思っていて、ここもそうですね。マイクロソフトさん、Googleさんが実装されるものも含めて、ある種の学習も兼ねて、車輪の再発明上等で、このあたりのプロダクトを作っています。

この半年の変化で言うと、(スライドを示して)この1番目の「ビックテックのLLMのAPIの活用」というのがまず何よりも先決で、いろいろなところに活用するというのをやってきていました。引き続きそこも進めていきながら、OSSとファインチューニングしてやる部分も徐々に見えてきている部分もあると思っているので、このあたりも含めていろいろな研究開発を進めていっています。

リリース済みのプロダクトを紹介

一部リリース済みのものについてご紹介すると、初めにリリースしたものは、SEOの改善にLLMを使ったものでした。メルカリはアプリがけっこう有名で、よく使われているのですが、Webもコロナ以降けっこう使われていて、SEOの主にmeta infoのところ。LLMで良い感じにタイトルを抽出して、生成して、実際のSEOスコアが上がったかどうかというところ。

あと、それにかかったコストをバランスして、ROIが合うのかを見るのにけっこうわかりやすいジャンルだったので、まずここから始めました。基本的に、今のところはけっこうプラスで、引き続きこの領域をどんどん拡大させていっているかたちです。

もう1つ、これもちょっと似た使い方ですが、今まで裏側で人手でルールベースを作っていたものをLLMで置き換えて、どちらが数字としてプラスになるかを試しています。

これもテストを走らせていて、実際にLLMのベースのものがけっこう勝っている状況になっていて、けっこう精度としてわりと細かい改修がLLMベースだとできるので、そういったところで勝っているのかなと見ています。

これは7月ですね。ChatGPTのプラグインを出していて、ChatGPT Plusに課金されている方は、使えるんですけども。例えばChatGPTに対して、キャンプの初心者の方が何を持って行ったらいいのかというのを質問すると、「こういうテントがいいんじゃないですか?」と提案をしてくれて、メルカリの中で検索をしてくれるというものになっています。ちょっとこれはPDFなので動いていませんが、もし(ChatGPT)Plusの課金をされている方がいればぜひ使ってみてください。

あとは、メルカリはCtoCなので、お問い合わせが非常に多いです。カスタマーサクセスについても非常に投資をしていて、これはまだクローズドで、裏側で試しているところなんですが、生成AIが(カスタマーサクセスで)使えるかなというところで精度を見ています。

あとはクリエイティブですね。ここも徐々に活用を広げているというかたちで恐る恐るやっているところです。7月に、僕らのチームの採用クリエイティブで「GenAI」を使ったものを試して、そこから8月、9月とキャンペーンに使ったり、広告クリエイティブで使ったり。おそらく動画のところも今着手して試しているところです。

ちなみにこれは、弊社でこういったクリエイティブを散々作ってきたクリエイティブデザイナーの方を巻き込んで一緒にやっているところです。生成AIで作って、それを編集するみたいなところも実際にやっていて、クリエイティブデザインをずっとやられてきた方だからこそできるクオリティの部分も多少あるのかなと思っていたんです。

7月時点ではそうだったんですが、直近でこのあたりも編集できるものがリリースされました。僕はこのクオリティは作れないなと思っていたのですが、2023年9月時点では、下手すると僕もこういうものを作れる可能性が出てきているというかたちで本当にどんどん変わっていっているんだなと思っています。

それ以外にも、今さまざまな施策を動かしているところです。まだリリースできていない物も含めていろいろ動かしているので、パネル(ディスカッション)の時や、その後の懇親会などで実際にどういうかたちで進めているか、みなさんのお話もお聞きしたいなと思っているので、よろしくお願いします。

メルカリグループの生成AIのチームはエンジニアを募集しています。もし興味ある方がいましたら「チームはどんな感じですか?」という中の話などもお話できると思うので、よろしくお願いします。ご清聴ありがとうございました。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 1年足らずでエンジニアの生産性が10%改善した、AIツールの全社導入 27年間右肩上がりのサイバーエージェントが成長し続ける秘訣

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!