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【小規模チーム事例】“やりたい” ドリブン開発(全1記事)

“やりたいドリブン開発”をする理由は「ビッグウェーブに乗るため」 “あえて取り組む”からこそ得られる、中長期的なバリュー

大規模組織と少数精鋭チームそれぞれの方に、ステークホルダーとの合意形成の大変さや対応の工夫を聞く「チーム規模で違う?プロダクト開発の意思決定と合意形成の裏側を聞いてみた【開発PM勉強会vol.23】」。ここで株式会社Rebaseの髙畠氏が登壇。“やりたいドリブン開発”について話します。

髙畠氏の自己紹介と、「instabase」の紹介

髙畠裕二氏:よろしくお願いします。開発PM勉強会に参加のみなさま、こんばんは。株式会社Rebaseの髙畠です。私からは「“やりたい” ドリブン開発」と題して、簡単に気づきを共有します。

まずは自己紹介からします。髙畠裕二と申します。株式会社Rebaseの共同創業者でCTOを務めています。ふだんは「instabase」(以下、インスタベース)の開発・運用を行っています。CTO室の活動としてR&Dも行っています。

趣味はSFを読むことです。(スライドを示して)左のイラストは社内のデザイナーさんに書いてもらったものなんですが、手をよく見てもらうと、劉慈欣の『三体』を持っていることがわかると思います。また、3人の子持ちです。

次に我々が運営しているインスタベースについて簡単に説明します。インスタベースは全国に2万9,000件あるレンタルスペースのマッチングプラットフォームです。インスタベース上にスペースを掲載してもらうと、スペースを利用したい方が1時間から1日単位でスペースをレンタルして利用することができます。利用用途は幅広くて、ミーティングなどのビジネス用途から、セミナー、勉強会、レッスン。撮影とか、パーティ、ジムでのフィットネスなどで利用されています。

重要度は高いが緊急度が低いものをあえて取り組む“やりたいドリブン”

さて、まずは“やりたいドリブン開発”について説明します。みなさまは、日々とても多くの量の仕事をこなしていると思います。その仕事の優先順位は、例えばこのように決めているのではないかと思います。(スライドを示して)縦軸が重要度、横軸が緊急度だとした時に4象限の2の部分。つまり、重要度が高くてかつ緊急度が高いもの。

そして“やりたいドリブン”というのは、例えばこの表でいうところの1の部分である、重要度が高いけれども緊急度が低いものをあえて意識的に取り組むことだと考えています。

“やりたいドリブン”に取り組むことがなぜ必要なのか

なぜでしょうか。それは、ビッグウェーブに乗るためなんです。図を使ってもう少し詳しく説明をしたいと思います。(スライドを示して)ここに海と陸があります。陸の上に我々がいるとします。たまたまビッグウェーブが来ました。海抜の関係でとても大きく、こっちに迫ってきています。乗ろうにも相当ビッグなのでなかなか乗れません。すごい人は乗れるかもしれない。

大きすぎて自分とは無関係と思ってしまったり、拒否反応を起こしたりするかもしれない。

当然、理想はビッグウェーブに乗ること。

そのためにまずは沖に出て待機しておきます。ポセイドン的な人、例えば私だったり、リーダーとか、やりたい方が自ら波を発生させてもいいんですが、波がまだ小さいうちから波に向かってバドリングをする。そしてみんなでビッグウェーブに乗る。

大事なポイントとしては3つで、全員で沖に出て待機しておく。自ら波を発生させる。波が小さいうちからパドリングをする。

「インスタベース」における2つの“やりたいドリブン”

もう少し弊社の具体例を使いながら説明してみます。まずは題材のプロジェクトの説明をします。インスタベースに「ChatGPT」を導入して機能開発を行いました。大きく分けて2つです。

1つはスペース紹介文のAI自動生成機能。インスタベースのサービス説明のとおりインスタベースはマッチングプラットフォームなので、スペースを掲載してもらって、貸し出してもらう。その際に、スペースの紹介文も記載してもらいます。スペースを掲載してもらう方の多くは、その物件のオーナーさまだったりするので、Webのマーケティングには必ずしも得意な方が多いわけではない。

そこで、インスタベースがあらかじめ用意した学習モデルを使って、インスタベースの利用者にとって最適な文章を1クリックで生成できるようにしました。

具体的には我々がメタ情報と呼んでいるスペースの事実情報、固有情報を入力してもらってAI自動生成ボタンをクリックすると、メタ情報から魅力的な文章が生成されます。インスタベースの掲載者と利用者の双方にとってメリットのある機能だと思います。

もう1つがAIコンシェルジュ機能です。この機能は例えば「10月1日の12時から17時で使えるセミナー会場」みたいに自然文を解釈して、逆にメタ情報に変換する。先ほどと逆方向に変換することで、最適なスペースを提案するコンシェルジュ機能です。ChatGPT pluginsで提供したあと「LINE」や「Slack」からでも利用できます。無料なので、ぜひみなさまご利用ください。

どのように“やりたいドリブン”したのか

この一連の開発についてどのように“やりたいドリブン”をしたのか、具体例を見ていきたいと思います。今回のプロジェクトでは、大まかにこれらの5つのステップで行いました。参加者全員が業務で忙しかったので、サイドプロジェクトで行いました。1から5までがだいたい3ヶ月ぐらいで、4にTODO/DOING/DONEと書いていますが、それが1ヶ月ぐらいのスパンです。

まずは意義作りを行いました。なぜやりたいのかを自問自答して、まわりのメンバーとも話します。今回に関しては、例えばChatGPTとか、もしくはまた違うAI的なサムシングが世の中のスタンダードになることはもはや遠いSFの話ではないということとか。AIコンシェルジュをサービスとしてプロダクションでリリースして改善をし続けることで、会社として経営資産を積んでいきたい。そういったこと。

そして今回はChatGPTの登場もあって、社内でチャットボットを作ったり、ファインチューニングをして遊んでみたりしていたので、すぐにプロトタイプを開発して、社内のメンバーにSlackで使ってもらったりしました。体感することで……。今回プロトタイプがあったから、経営的な意思決定もスムーズにできたと思います。

2番目にキックオフミーティングを行いました。もしかしたら大きな会社だと参加者がプロジェクト内で増減したりするかもしれませんが、この時はできる限りすべての関係者を最初のタイミングで集めました。これは小規模チームのメリットだったかもしれないです。

今回はリーガル、IR、PR、開発、デザイン、CX、マーケティング。この7名が参加してくれました。これがつまり「沖に出てもらうこと」かなと思います。

そして、意義や目的を共有して合意形成を行いました。プロジェクトメンバーの目線を揃えることがミーティングの目的なので、同意形成ではないですね。視点、つまりパースペクティブは一致させないことで、それぞれの専門領域の能力を発揮してもらいやすくなるんじゃないかなと思います。

さらに3番目として、リスク洗い出し会というものを行いました。これはキックオフミーティングとはあえて別の日に開催しました。そして、あえてタイトルに「リスク」という文言を入れることで、例えば私のように熱狂している人に水を差すというかたちにならず、リスクとして認識できた。

On the same pageとかいう言葉があるように、人でなくプロジェクトという事象に対して向かう。また、リスクがあればそれをTODOやスケジュールに落とし込むことができます。

あとはTODO/DOING/DONE。それぞれのタスクを進行します。DOINGがまさにバドリングしている状態だと思いますが、リスクが洗い出されているから不確定要素が少なくて、実質の実行時間が短くてサイドプロジェクトも存分にメンバーの専門領域を発揮してもらえたのかなと思います。

そしてリリースですが、この時点でもビッグウェーブに乗っている感覚は実際にはないと思っています。つまり、中長期的に振り返った時に「(ビッグウェーブに)乗っていて良かったな」「あのタイミングで乗っていなかったら乗れていなかったんじゃないかな」とか、そういったことが思えることができるのではないかなと思っています。

日々の業務は緊急度が高くて重要度も高いものが山積み

まとめです。日々の業務は緊急度が高くて重要度も高いものが山積みです。緊急度が低くて重要度が高いものに意識的に取り組むことで、長期的に振り返った時に、「バリューが高い仕事ができたかな」と思えるのではないかなと考えています。

そして緊急度が低くなった時に「重要度」の主語の基準が自分に近くなっていく。つまりそれが自分がやりたいことで、(それに対して)“やりたいドリブン”という言葉を付けたいと思います。

ということで、みんなでビッグウェーブに乗っていきましょう! ありがとうございました。

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