「新しいクラウド」という本の新しいチャプターを開く

Chetan Venkatesh氏:みなさま、本日はこのような機会をいただき大変に光栄です。東京は本当にすばらしい都市で、エネルギーにあふれてワクワクする、そしてイノベーティブな都市です。そして、日本からは多くのすばらしいテクノロジーが出てきています。なので、私の人生においても(この瞬間は)本当にすばらしい瞬間であると思っています。また、Akamaiのみなさまには、今回このような機会をいただいたことを、あらためて御礼申し上げます。

新しいアイデア、より戦略的なクラウド、私がElysian Cloudと呼ぶものについて話したいと思います。クラウドが始まって約15年になります。クラウドを新しいものとしてずっと議論してきましたが、実はしばらく経っているものなんですね。そして、クラウドに関わるストーリーは、もうすでに古いものになっています。

なので、本日は「新しいクラウド」という本の章、新しいチャプターを開いていきたいと思います。そして「Akamai Connected Cloud」とMacrometaで、共に新しい低遅延のアプリケーション、API、そしてデータデリバリーを実現していきたいと思います。

従来のモデルを根本的にひっくり返すことで、特定のクラウドにロックインされること、そして囚われの身となることを心配することなく、みなさんがオープンなクラウドでAPIやアプリケーションを使って、みなさんが本当に戦略的なデリバリーによるイノベーションを起こせるようにしていきたいと思います。

Chetan氏の自己紹介と、Macrometaについて

私はChetan Venkateshと申します。MacrometaのCEO兼共同創設者です。企業がより効率的、効果的にクラウドを活用するお手伝いをしてきました。そして、競争優位性を出すところをサポートしてきました。大手企業とも共にやってきました。

私のクラウドの旅は2008年に始まりました。当時、AWSはまだ本当に小さなスタートアップでしたが、私が最初に導入したプラットフォームの1つでありました。

そして、大手金融機関や、それ以外の顧客をサポートしてきました。クラウドプラットフォームを導入し、新しいアイデア、アプローチを導入し、よりイノベーションをスピードをもってやってきました。

私はテックオタクと言っても良いと思います。ビジネスとテクノロジーの接点が大好きで、23個もの特許を持っています。データベースとかに関わる特許も持っています。

MacrometaはDurga Gokinaという共同創設者と一緒に始めました。私がこれまで一緒に働いてきた中では、最もすばらしいテクノロジストだと思います。2015年頃、新しいタイプのクラウドプラットフォームを構築しようというアイデアから生まれました。(一方)Akamaiというのは何千、何百というロケーションを持っていますが、非常にパワフルなプラットフォームを提供しています。

データベースとかコンピュートサービス、AI などの影響力が高まっていますが、我々が現在パブリックのハイパースケールクラウドで運用しているようなものが、より速くエッジで実現できるようにやってきました。その結果、我々は、CDN(Contents Delivery Network)に関わるものですが、Global Data Network、GDNと呼ばれるプラットフォームを提供しています。

幸運なことに、この数年間はAkamaiとパートナーシップを組むことによって、この技術を多くのエンタープライズ顧客に提供しています。世界最大級のeコマースプラットフォームにも提供しています。また、ある世界的なハイテク企業は、世界でも最大手のコングロマリットですが、MacrometaのAI capabilityなどを使っています。

クラウドは“エデンの園”のようなもの

では、さっそく本題に入っていきたいと思います。ここから、(従来型の)クラウドが何に向いているのか、そして何にあまり向いていないのかという話を少し見ていきたいと思います。クラウドは本当にすばらしい。他にはない特異なテクノロジー、エデンの園のようなもの、特別な場所だと思います。もちろん、それにはちゃんとした理由があります。

大手のクラウドプロバイダー、ハイパースケールプロバイダーは、本当にイノベーティブなサービスを提供しています。Googleなどは、何百、何千という新しいサービスを提供しています。そしてパフォーマンスも高い。

そして、非常に混乱したものを単純に、シンプルにすると言ってくれるわけです。そして、非常に洗練されたツールやセキュリティ、プライバシーを提供しています。多くのユースケースがあり、簡単に導入、適用できるものがあるわけです。こういったものによって、テクノロジーとビジネスが交わり、クラウドを通じてみなさんのようなリーダーがいろいろな成果を出すことができるようになっているわけです。

ただ、そうは言っても、少し注意しなければならないところがあります。それについてここから話をしていきたいと思います。

エデンの園のようなものは多くあります。1つではなく、たくさんあります。AWSもそうですね。Microsoft、Google、Tencent。本当にたくさんのエデンの園が存在しています。

なので、一つひとつをよく見て、何が特別なのかをしっかり精査する必要があります。一つひとつ見ると、実は全部同じだったりします。ほかのエデンの園が提供しているものはほかのところでも提供している。同じリンゴ、同じ野菜を提供しています。

つまり、ハイパースケールクラウド間での違いはほとんどないということです。ただ、なんらかの理由でロックインされてしまう、1つのクラウドから別のところに移行するのはほぼ不可能という状況になっています。

これは私の観点ですが、クラウドがコモディティ化している。じゃがいもとかタマネギのようなものになっている。あそこのタマネギを買っても、じゃがいもを買っても同じ。(それらを使えば)フライドポテト、天ぷら、なんでも作れると思うんです。違いは価格だけということになってしまいます。いろいろなオプションがあふれていて、非常に競争力のある価格で提供されています。

ハイパースケールクラウドは戦略的なのか?

ここでみなさんに自問自答してほしいことがあります。「このクラウドは本当に戦略的なのか? 自分の会社のニーズを満たしてくれるのか? 我々の目標達成、戦略的目標を達成する上で役に立ってくれているのか?」。私の答えは「No」です。

申し訳ないですが、こういったハイパースケールクラウドは戦略的ではなく、ただのコモディティになっています。新しいプラットフォーム、新しい戦略的なプラットフォームが必要です。そして、そういったものをもって、みなさんが得るべき目標達成をしていく必要があります。

私のほうからは「データ」について話をしていきたいと思います。クラウドは長年存在しています。クライアントサーバーモデルに基づいています。クライアントサーバーモデルは、1960年代に開発されました。そして、クライアントサーバーテクノロジーが進化するのにも、かなり時間がかかりました。

今では商用レベルで使えるほどスケールできるようになってきたわけですが、根本的に、クライアントサーバーテクノロジーでは、常にサーバーは1つの場所にあります。多くの場所に持つことはできません。クライアントはたくさんの場所にあるわけですが、サーバーは基本的には1ヶ所にあります。

クラウドプロバイダーには世界中さまざまなリージョンがありますが、こういったリージョンは他のリージョンとはつながっていない、切断されているような状況になっています。なので、アプリケーションで接続性を構築しない限り、そこにスタックしてしまうということになります。

アプリケーションやデータを地域間、リージョン間で移行するのは難しいです。特にアプリケーションをユーザーの近くとかデバイスの近くで構築しようとすると、非常に高額です。税金とかレプリケーションフィー(Replication fee)など、いろいろな料金が発生して、非常に高額になってしまいます。

そのため私たちは、いわばデータの重力によって搾取されている状況になっています。1ヶ所で保存すると、さらにそこにデータが溜まっていくわけです。そしてここでフィードバックループが生まれてしまって、アプリケーションがデータを生み出し、データが溜まる。

そうすると、データの重力によって1つのプロバイダーにスタックしてしまい、ロックインされてしまいます。これは非常に巨大なロックインになってしまいます。これがみなさまにとっての課題になっているのではないかと思います。

そこで、これについて3つ話をしたいと思います。最初はクラウドプロバイダーの成功者、ハイパースケーラーです。彼らは、みなさまのデータを意図的に取得しようとしています。

これは、みなさまのアプリケーション戦略が(ハイパースケーラーのプラットフォームに)ビルトインされるということは、みなさまの持つデータがハイパースケーラーによって人質に取られているこということなんですね。ある意味みなさまは身代金を取られていると。毎年手数料を払うことになっているわけです。

牢屋から抜け出す選択の場

今、みなさまには2つの道があります。戦略的なオプションである、Akamai Connected Cloudというソリューション、もう1つはコモディティ化している、いわゆるパブリッククラウド、エデンの園に引き続き投資をしていく道です。

一方の道、Connected Cloudは、より戦略的で遥かにワクワクするような、興味深いエリュシオン(※)の地を選ぶことができます。マルチクラウドを前提にしたプラットフォームということで、エンジニアリングとか、そういった面倒な作業は必要ありません。

※(旧約聖書上の楽園エデンの園とは異なる、)ギリシア神話上の楽園

本日みなさまに言いたいのは、これが、みなさまが今人質になっているところから抜け出す、牢屋から抜け出す、1つの大きな選択の場だということです。

この新しいクラウド環境は(データなどの)リソースが単体で存在するわけじゃなくて、すべてつながって構成されています。だからGlobal Data Networkなんですね。(一方で)Akamaiが展開していくのはディープネットワークということで、何千もの地域でクラウドのプラットフォームを持っていくわけです。そして、これらが1つのWebサービスのプラットフォームになっているということなんですね。

その上で、Macrometaのアプリケーションがどこでも使えるようになります。もう、どのリージョンであるか、1つのデータセンターであっても関係ありません。複数のデータセンター、複数のリージョンにおいて、自動的にすべて監視、管理することができます。

例えばゲーム業界では低レイテンシーが非常に重要ですね。あるいはeコマース業界は、やはり数秒でお客さまに対して対応していかないといけません。パーソナライズされたデジタル体験を提供することも必須です。

そうした業界においては、根本的にデジタル体験が変わります。Webサイトであったりモバイルアプリケーションであったり、IoT、あるいはゲーム環境において大幅に変わるということを理解してください。

(次回に続く)