本セッションの概要

Jesper Essendrop氏(以下、Essendrop):本日ここに来ることができてうれしく思います。このセッションに参加いただきありがとうございます。みなさまになんらかのヒントを与えることができたらうれしいです。

みなさまはどのようなかたちでトラフィックを管理しているでしょうか? 事業促進につながっていくことなので、Eコマースであろうと、金融、いかなる業界にあったとしても、インターネットでのトラフィック管理は今後とても大事だと思います。トラフィック管理ができていなければ、ビジネスそのものがうまく促進できません。

そこで今日は、Queue-itがAkamaiとともに、どのようなかたちで両社がいろいろな大きなイベント(が起きたり)、あるいはトラフィックが急激に増えるような場合において、どうやってそれを回避してきたかという話をしていきたいと思います。

我々はAkamaiのグローバルパートナーとして、アメリカ、ヨーロッパ、そして日本においてもパートナーシップを結んでいます。日本においては40社以上のお客さまがいて、Queue-itとAkamaiのパートナーシップが非常に効果を生んでいると思っています。

まず、申し訳ありませんが10分ほど私が英語でお話しします。そしてペターセン花野から、日本語でプレゼンしてもらいたいと思います。日本語セッションもあるということで、安心してもらえればと思います。いわゆる実例ということで、お客さまが実際にどのようなかたちで当社のソリューションを活用しているかを話していきたいと思います。

Queue-itについて

Essendrop:まず、私たちの紹介になります。グローバルでトップブランドから信頼を受けている仮想待合室のマーケットリーダーということで、デンマークで創業しました。そして年間に世界人口の3倍ものビジターがいて、業界ではナンバーワンです。

アメリカのミネアポリス、シドニー、オーストラリアに支社があります。従業員は200人以上で、15人が日本人、日本語が話せる社員です。なので、日本は弊社にとっても重要なマーケットであることを認識してもらえればと思います。

Queue-itが使われている場面

Essendrop:そして、「こうした場面で当社のサービスが使われている」という紹介です。(スライドを示して)例えば左側の小売業ですね。アメリカの某大手ということで、スニーカー販売会社では、年に200回ほどイベントをやっています。多くのイベントをやっている会社ですね。スニーカーを販売しているわけですが、同時待合人数がなんと2,430万人というケースがあります。

2,500万人ものお客さまのアクセスに対して、どう対応していったらいいのか。1分あたり6,000回もの接続がある状況なので、これにどうやって対応していくのか、さばいていくのかということです。

(この場合は)しっかりと待合の列、キュー(待ち行列)が正しいことを担保しつつ対応しています。(スライドを示して)次に香港のチケット販売です。例えば香港のある人気チケット販売では、1日単位で500万人もの方が並んでいます。

そして公共事業ということで、例えば確定申告などの手続きなどに対応もしています。その他教育事業とか金融業界などでも、給料の支払い日のように(アクセスが)集中する日があるので、そうしたところでも利用いただいています。

The North Faceなどのグローバル企業をはじめ、日本でも大手航空会社、株式会社ポケモンセンターや、東京都などにお使いいただいております。

一大イベント時代から多様・頻繁なブランド体験時代へ

Essendrop:日本だけではなく、グローバルのトレンドについて話したいと思います。Eコマース、あるいはチケット販売など、あるいは公共事業においても、いろいろと大きなイベントがあります。

過去にはブラックフライデーとニューイヤーの販売が、非常に大きなピークタイムであったわけです。例えばiPhoneなどの発売開始日、大きなイベントがありましたね。あるいは半年に1回の大きなEコマースのイベントなどもあります。

そのような状況は、ずっと続くわけではありません。今後はこのような一大イベントが集中するタイミングから、多様なブランド体験を頻繁に行うような時代に変わっていくと思います。

ほぼ毎日のようにどこかでセールがあって、The North FaceだったりFoot Locker、あるいは大きなブランドでセールが行われる。そして消費者がそれに殺到するというような状況が生まれます。

公共事業も同じです。また、金融業界でも同じようなことが起きるわけです。教育業界もそうですね。そうしたところでしっかりとキュー(待ち行列)を管理していかないと、オンラインでの対応がうまくいかないことになります。

「毎日がビッグデーである」という認識が必要だと思います。半年に1回の対応では良いわけじゃないということですね。そのようなかたちに世界がなっています。

また、実際にみなさんのサイトに来るのは、ボットじゃなくて、本当に人間のお客さまが来るといったことを確実にする必要があります。

まずはトラフィックをきちんとコントロールする。それが私たちがお客さまに対して提供したいと思っていることです。

Akamaiと私たち(のサービス)を使ってもらえれば、グローバルブランドを守ることもできるし、今話していたような巨大イベントに対してスケーリングをする必要もなく、その負荷もけっこう軽減されるはずです。

(スライドを示して)箱が3つあるんですが、ここから花野さんが一つひとつに対して、お客さまの収益の最大化、ブランドの保護、強化、そして運用コストの効率化を、Queue-itとAkamaiを組み合わせてどうやってやっているかというお話をしていきます。

花野さん、ここからは日本語でお願いします。みなさん、どうもありがとうございました。バトンタッチします。

「仮想待合室」はユーザーのストレスを軽減する

ペターセン花野氏(以下、ペターセン):あらためまして、ペターセン花野と申します。どうぞよろしくお願いします。

初めにみなさまにお伺いしたいのですが、私たちが仮想待合室と呼んでいる、待ち時間の目安が出てきたり、「あなたの前に今何人並んでいますよ」という情報が載っていたり、プログレスバーというところにQueue Manがとことこ歩いているような画面を目にしたことがある方はこの会場にどのぐらいいますか?

(会場を見て)ほぼ全員ですかね。95パーセントぐらいの方が手を挙げていました。

弊社では、日本市場展開を始めた当時から、約4年間かけて日本市場で展開してきました。今は(弊社には)日本人が14人ほどいますが、だんだんと浸透してきたサービスなのではないかと思います。

これがなかった場合、ソーリーページが出てきて、「今アクセスが集中しています。あと何分か経ってからまた入ってきてください」というメッセージが表示されます。

そうすると、実際どういう状況になっているのか、いつになったらつながるのかがわからないので、ユーザーとしてはイライラしてしまう、不満が溜まってしまう、というようなことになりかねません。

しかし、この仮想待合室があると心理的なフォローにつながるので、ユーザーとしてはストレスがもちろん少しはあると思いますが、それが格段に軽減できるメリットがあります。

今日はユーザーから見た視線というよりは、お客さま、企業さまが使うことによってどういったメリットがあるのかに注目して、お客さまの実際の事例を含めながら説明したいと思います。

トラフィック管理のメリット「収益の最大化」

ペターセン:1つ目のビジネスメリットとしては、収益の最大化があります。こういったアクセスがガッと集中してくるところというのは、そもそもそれなりのリソースをかけて、マーケティングの方々がすごくがんばって集客をしていたり、商品を企画される方が良い商品を取り寄せて、それをお客さまに提供できるようにというかたちで、すごく力を入れているものが多いかと思います。

ただ、それに対してシステムが耐えきれないと実際の収益につながらなくなってしまうので、ロスにつながりかねないです。

実際にサーバーダウンしてしまった場合。仮想待合室だったりを設けていないとサーバーダウンしてしまったり、エラーメッセージが表示されたりしてしまうことがありますが、そういったことが起きると、日本円で4,000万円から1億5,000万円ほどのコストがかかると言われています。

このうちの53パーセントのコストは、機会の損失から来ているものだというデータが出ています。これはどちらかというと大企業の方々のデータになるので、中小企業の方はもちろんもう少し規模は少なくはなりますが、かなりのロスになることがわかると思います。

HILLS FIELDさまは弊社のお客さまです。アウトドアブランドで、アウトドアに使う用具などを売られている企業さまですが、新商品の発売のたびにアクセスが集中していました。

(スライドを示して)この写真にパイントグラスというものがあるんですが、これを発売した際に、アクセスが集中してしまって不具合が起きてしまった。その結果、予想していた半分までしか売上につながらなかったことがありました。

その理由はやはりアクセス障害が大きいということで、対策を立てなければいけないということからQueue-itを導入いただきました。

その結果、パイントグラスの売上自体は前回よりも倍になりました。それ以外に、グラス以外の商品の売上も3倍につながったという結果が出ています。

やはり目玉商品や目玉企画をする理由として、それの売上ももちろんありますが、そのほかの商品も一緒に買ってもらったりとか、そこで購入する経験が良かったので、また戻ってきてくれるというところが大きな目的の1つだと思うんですよね。

なので、ユーザーエクスペリエンスを改善することでまた戻ってきてくれるお客さまをどんどん増やしていくというところに弊社のソリューションが貢献できているかと思います。そういったところも含め、全体的に費用対効果が高いと言ってもらえています。

こういったかたちで「ここでアクセスが集中するだろう」ということがもう事前にわかっているところもありますが、ほかにも「まさかそこで」というようなところでアクセスが集中することも非常に多いです。

例えば世界と比べて日本で多いのは、テレビ放送の力がまだまだ強い。なので、テレビで取り上げられたり、「このコラボ商品はそこまで人気じゃないかな」と思っていたところ、ドンとSNSでバズったりで人気になることもあります。

こうした予想外のアクセス集中も収益を高めるチャンスではありますが、それに耐えられる仕組みがなければ台無しになってしまうので、ちゃんとチャンスとして捉えられるようにするためには、それに向けたソリューションとして対策をしていくことが大切で、それがQueue-itでもできるようになっています。

トラフィック管理のメリット「ブランドの保護&強化」

ペターセン:2つ目がブランドの保護と強化というところがあります。これはブランドだけではなくて、政府機関だったり大学の方だったりチケット販売とか、いろいろなところに共通して言えることですが、やはり問題が起きてしまったサイトに対しては信頼感が薄くなってしまうので、そういったふうにならないように保護していく意味でのものです。

(スライドを示して)バックグラウンド(に使っている写真)は弊社の社員ですが(笑)。こういったTwitter(現X)とかSNSとかで、「なかなかつながらないんですけど」「何時間も待っていたのに結局は売り切れてしまったのはどういうこと?」というようなネガティブな書き込みがたくさんされてしまったりだったり、酷い時にはニュースで取り上げられてしまったりを経験されている方も、もしかするとこの中にはいるかもしれません。こういったことで頭を痛めている方もいるのではないかと思います。

実際に一度問題が起きてしまったサイト、一度問題を経験したユーザーの3人に1人は、「もうそこで買いたくない」というような考えに至ると言われています。これが2、3回続けて起きると、90パーセントのユーザーは「そこでは買わずに、ほかのところに行きたい」という方向で考えてしまうので、それは防ぐ必要があると考えています。

モスフードサービスさまでは、人気キャラクターとのコラボ商品とお食事券がついた福袋を販売した時に、それがすごく人気で、アクセスが集中してしまったことがありました。

その際に「朝からリロードしているのになかなかつながらない」というようなことがSNSで広がるだけではなく、店舗とかカスタマーサービスに対しても問い合わせがすごく多くなってしまって、全体的にお客さまからの評価が下がってしまいました。

(スライドを示して)それをどうにかしようということで、次の時にはQueue-itを利用いただいて、こういったような画面を見せていました。そのページの最終更新の時には、リアルタイムでメッセージが送れたり、順番が来た時に通知をする機能なども利用いただきました。

そうすることで、実際にトラブルはありませんでしたし、お客さまからの声が、ネガティブなものではなく、ポジティブなものに変わったということで評価されています。

あと、ここには載っていませんが、Queue-itがあることで、先ほどの写真にあったように頭を抱えていたことが1つ解決に至ったので、1つのイベントに向けて準備をしていく時間とコストの削減になった。そうすることで、本当はやらなければいけなかったことや、「もっとほかにどういうことができるだろう」ということに時間を費やせるようになったという声をいただいています。

これまでの2つの事例はトラブルがあって、それをどう解決していったかという事例になりますが、それ以外にもQueue-itは使えます。

その1つの例として、13年間このサービスを1プロダクトで提供してきた会社として、お客さまからの声をいろいろ取り上げて「どんなことができたらいいですか?」ということを聞いてきた中であったのが、「First In, First Outで先着順にアクセスを許可できるのはいいんですが、それでいきたい場合と、特定のユーザーに対しては優先的に早くアクセスを許可したい」とか、「特定のユーザーのみ入れるような仕組みにしたい」という声もありました。それができるようになったのが、「招待制待合室」という機能です。

アメリカのThe North Faceさまでこの機能を利用いただきました。コラボ商品の発売をする際に、その商品を買うためのページに入る前に一度待合室が構えられていて、その仮想待合室に入るためには会員であることを証明するステップが必要になる。会員でないお客さまは、そこでサインアップができるようにしました。これをすることによって、新規の会員登録、会員を獲得することも狙っています。

結果的に全体では100万人単位に招待をして、結果的に5万人を超える新規会員を2回のイベントで獲得できました。

こういった例は最近もいくつかあります。例えばある世界的に人気の歌手がワールドツアーを行った際のチケット販売や、日本でも株式会社ポケモンセンターでお使いいただきました。

トラフィック管理のメリット「運用コストの効率化」

ペターセン:3つ目のところが、先ほどの例でも少し触れましたが、運用コストの効率化というところがあります。これは、私が今までお客さま対応してきてすごく感じることですが、先ほどの収益の最大化というようなところって、企画をする上でどのぐらいの収益になるか、リターンになるか、企画する側やビジネス側の方々はやはりすごく気にする。そのために、「システムのほうは絶対支えてくださいね」というプレッシャーがシステム側の方々にはすごくかかる。

ただ、その中でリターンに対してどのぐらいのコストを使えるかという予算はけっこう限られていたりします。その間の板挟みになっているシステムの方々とたくさん今まで話をしてきました。そこにどうにか貢献できないかというところでお手伝いしています。

ダウンタイムコストは、先ほどのように収益が半分になったりもありますが、そのほかにも、一度障害が起きてしまうと、それに対して復旧するためにいろいろなコストがかかったり、予定していた作業ができなくてほかの作業に影響が出てしまう。そういったようなことも発生してくるし、また再販しなければいけないとなると、そこでのプロモーションもまたしなければいけない。

そういった全体的なコストを考えると、ダウンタイムが頻繁に起こる企業というのは、ない企業と比較してコストが16倍ほどかかってしまっているというのが実状です。

(スライドを示して)楽天フランスではブラックフライデーのイベントで、やはりすごくアクセスが集まります。それに対してすごく不安を抱えていました。それとプラスで、テレビ放映によるアクセスのピークがいつ起こるのかわからないところに対しての不安を抱えていました。

そこでQueue-itを利用いただきました。弊社ではコネクタを25種類以上用意していて、そのうちの1つがAkamaiの「Akamai EdgeWorkers」です。それを利用することで、既存のインフラに手を加える必要もなく、そのまま取ってつけられるというか、そのままのものに簡単に実装できます。

弊社の場合、最短で「今日やるので今日お願いします」という問い合わせをもらうこともあるし、日本では商談から導入まで、最短1週間で至っています。なので、すごくスピーディに課題解決ができます。

テレビ放送って、メディアの方からいきなり取材が来て、それに答えてすぐに放送になったりするので、それに向けて用意している時間はほとんどない。なので、それに対して耐えられるようにするには、事前に対策を打っておく必要があります。

事前に対策を打ってあったのでどんと構えていられたというような、「おかげで安心して臨めるようになった」という声をもらっています。

(スライドを示して)こういったかたちで、いろいろな悩みを抱えているお客さまに対してサポートしている日本人チームが今このぐらいいて、ほとんどがデンマークのコペンハーゲンから勤務しています。なぜこんなに日本人がデンマークにいるのかはまた後でお声掛けいただければよろこんで説明します(笑)。

オーストラリアにもオフィスがあるので、技術的な支援などはオーストラリアからも行えます。また、日本のお客さまは深夜のイベントも多く、例えば午前0時からの販売だったり、逆に「早朝の午前5時からやります」とかも多いので、そういったところもちゃんとサポートができるような体制を取っています。

営業チームはデンマークからのサポートになるので、少し距離も時差もありますが、それでも迅速に対応できるように心掛けています。そういったところも良いフィードバックを今までいただいています。

プラットフォームは今のところ英語ですが、こちらも日本語にしようと動いているので、今後さらに日本のお客さまが使いやすくなると思っています。

駆け足で進めてしまったので、まだ(発表の)時間は余っていますが、私からの説明は以上となります。本日は弊社から3名参加しています。私とJesperのほかに鈴木菜という者も参加しているので、ぜひブースや、この後のレセプションでお声掛けいただければと思います。では、ご清聴いただきありがとうございました。